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災害時の内閣・政党支持率の状況

あくまでも一般論ですが、災害時には内閣支持率や与党支持率が上昇する傾向にあるとされます。こうしたなかで、共同通信が発表した最新の世論調査から、内閣支持率や自民党に対する政党支持率が上昇したことが明らかになりました。その一方で最大野党であるはずの立憲民主党や第3党・日本維新の会の支持率はやや下落したようです。

政党支持率、昨年までは低下の一途辿る

当ウェブサイトでは6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社のものと、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)に基づく内閣支持率や(網羅的とは限りませんが)政党支持率を「定点観測」的に追いかけています。

これによると、昨年12月時点における内閣支持率は、読売新聞のものを除き、軒並み前月比でマイナスとなる一方、不支持率に関してはすべて上昇となっており、支持率と不支持率の差は、最も大きな産経・FNNの調査で49.4ポイントにも達しています(図表1)。

図表1 内閣支持率(2023年12月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
産経・FNN(12/9~10) 22.5%(▲5.3) 71.9%(+3.1)
時事通信(12/8~11) 17.1%(▲4.2) 58.2%(+4.9)
日経・テレ東(12/15~16) 26.0%(▲4.0) 68.0%(+6.0)
共同通信(12/16~17) 22.3%(▲6.0) 65.4%(+8.7)
読売新聞(12/15~17) 25.0%(+1.0) 63.0%(+1.0)
朝日新聞(12/16~17) 23.0%(▲2.0) 66.0%(+1.0)

(【出所】各社報道をもとに作成)

自民党の支持率は下がったとはいえ依然トップ

ただ、だからといって今この瞬間、選挙が行われたとして、政権交代が発生するかどうかは微妙でしょう。自民党の政党支持率はかつてと比べてずいぶんと下がったとはいえ、軒並み、自民党が他党を圧倒しているという状況に変わりはないからです(図表2)。

図表2 政党支持率(2023年12月)
メディアと調査日 自由民主党 立憲民主党 日本維新の会
産経・FNN(12/9~10) 27.3%(▲1.7) 7.6%(+1.3) 7.9%(+1.3)
時事通信(12/8~11) 18.3%(▲0.8) 4.4%(+1.7) 3.2%(▲1.4)
日経・テレ東(12/15~16) 30.0%(▲4.0) 9.0% 12.0%
読売新聞(12/15~17) 28.0%(±0) 5.0%(±0) 5.0%(▲2.0)

(【出所】各社報道をもとに作成)

もちろん、これはあくまでも「これらの世論調査を信頼するならば」、という話です。

しかも、現実の衆議院議員選挙では、小選挙区での得票状況がものをいうことも間違いなく、前回までの総選挙の得票状況を見る限りにおいては、やはり自民党が有利という状況に大きな変化はありません。というのも、「当選ギリギリ」のラインにいる候補者は、自民党よりも第2党である立憲民主党に多いからです。

「小選挙区において、2位以下の候補者との得票差が2万票以下だった当選者」を「ボーダー議員」と位置付けると、前回(つまり2021年)の総選挙では、ボーダー議員は自民党で58人、立憲民主党で41人いました。

小選挙区で当選した議員数が、自民党は187人に対し立憲民主党が57人だったという事実を踏まえると、議員の「ボーダー率」が高いのは自民党ではなく、立憲民主党の側です。ちなみに第3政党の日本維新の会に至っては、90人を超す候補者を小選挙区で立てたものの、当選したのはわずか16人でした。

もちろん、昨今の「政治とカネ」の問題などもあってか、今すぐ選挙をやれば、自民党はそれなりに議席を減らす可能性があります。

しかし、果たして自民党が政権を失うまでに惨敗するものでしょうか。

正直、前回までの得票に基づいて合理的に考えたとしても、全国289の小選挙区の半数以上を野党が制するという可能性が高いとは思えません。少なくとも2位以下の候補者に2万票以上の差をつけていた自民党候補者が130人は存在していたからです。

共同通信の調査結果は支持率上昇

こうしたなかで、そもそも世論調査をいちいち話題として追いかけて意味があるのか、という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、いちおう、現状における世論調査の最新版が出て来ています。

6つの調査のうち、共同通信が1月13日から14日にかけて実施した調査によると、内閣支持率は27.3%となり、前月比で5.0ポイント上昇。不支持率は57.5%で前月比7.9ポイントの下落だったのだそうです(図表3)。

図表3 内閣支持率(2024年1月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
共同通信(1/13~14) 27.3%(+5.0) 57.5%(▲7.9)

(【出所】各社報道をもとに作成)

現在のところはこの共同通信のものに加え、(当ウェブサイトでは追いかけていない)NHKなどテレビ局のものがいくつか出ているようですが、このうちNHKについても小幅でプラスとなっているようです。

このあたり、一般に災害直後には内閣支持率が上昇する傾向にある、などといわれているため、一部の傾向だけを見て「内閣支持率が下げ止まった」と現時点で結論付けるには、判断材料としてはやや不十分ではあります。

政党支持率で自民党が+7.3…立民や維新は下落

ただ、ここで注目しておきたいのが、政党支持率です。

今回の調査に基づく政党支持率については、日刊スポーツの次の記事で確認することができます。

内閣支持率が27%に回復も、能登半島地震を巡る岸田文雄首相の指導力に不満の声 世論調査結果

―――2024年1月14日21時6分付 日刊スポーツより

これによると自民党は支持率が33.3%で前月比+7.3ポイントとなる一方、最大野党・立憲民主党は支持率が前月比1.2ポイント下げて8.1%、日本維新の会も前月比3.2ポイント下げて8.8%だったのだそうです。自民党の支持率が大きく上昇する反面、2つの有力野党がいずれも支持率を下げた格好です。

災害時に与党の支持率が上がり、野党の支持率が下がるのは、ある意味では自然な話でもあります。

しかし、『立憲民主党の「次の災害対策担当相」の現地入りに批判』でも取り上げた、立憲民主党の「次の災害対策担当相」であるはずの杉尾秀哉・参議院議員が軽率にも現地入りした、などの話題がネットなどで騒がれていることを思い出しておく必要もあるかもしれません。

しかも、今月5日に開かれた与野党会談では杉尾氏が所属する立憲民主党の泉健太代表自身も参加しており、「物資などの輸送を優先するため、国会議員が被災地入りするのを控えると与野党で合意」していたはずなのに、です。

これからさらに野党の支持率が下がるのかどうかについては、気になる論点といえるかもしれません。

もっとも、共同通信の調査によると、野党の中でも日本共産党が3.9%で前月比+0.6ポイント、れいわ新選組が3.3%で前月比+0.1ポイントと、微妙に上昇していることも見逃せません。

日本共産党やれいわ新選組といえば、所属している議員あるいは党代表がみずから現地入りしたとして、ネットなどでは盛大に批判されていたはずですが、現実には支持率が微増しているのです。

「所属議員の被災地入りなどが批判されれば、その政党への支持率は落ちるのではないか」、というほど単純なものではない、ということでしょう(あるいはその政党を支持しているような人たちが、そのようなことを気にすることはない、ということなのかもしれませんが…)。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • >「所属議員の被災地入りなどが批判されれば、その政党への支持率は落ちるのではないか」、というほど単純なものではない

    被災地入りした偉い人が弱者や無辜の民を励ます絵柄は、本質的にウケがいいのかもですね。
    選挙に出てる人は肌感覚でよくわかっているのかも。
    だからこそやりたがるし、だからこそ党首間合意もしなきゃならなかった。
    かも、と思いました。

  • Xでの被災者の山本への苦言に対して、れいわ信者が「では瓦礫に埋もれていてください」などと宣ったそうでw

    そういう人でなしの情報は拡散してあげないとね。

  • スイカゲーム風に言えば岸田文雄は『総理大臣ぽい』ですね。
    1月9日に今年度・2023年度予算の予備費から47億円余りを支出と発言していたが共産・小池書記局長に少ないと言われ修正していた。
    これでは選挙が始まっても自民党の演説は誰も聞かなくなってしまいそう。

  • >内閣支持率が27%に回復も、能登半島地震を巡る岸田文雄首相の指導力に不満の声 世論調査結果

     嘘ではないが、公平性に欠いたタイトルですね。対応は順当であるという評価は少なくないはずですが。
     当事者以外で、せっせと時にはデマまで駆使して"不満"を振りまいている人達の目的は、これを書かせるための事実作りかな?空挺投下しないから不満、ホテルに避難誘導なんて有料に決まってるから不満とか、低レベルなこと敢えて言ってバカにされてまで。

     ……え、素?

  • 「政党支持率≠選挙での得票率」であるということを踏まえた上であえて言えば、現状の日本政界は「自民党といくつかの泡沫政党」という構成になっていると言えます。民主主義の健全性という観点から見れば、けして喜ばしい状況とは言えません。いつでも政権交代可能な野党があってこそ、国会論戦にも緊張感が生まれるはずで、現状では国会で野党議員がどのような発言をしようが、「野良犬の遠吠え」にしかならないというのは厳然たる事実であると思います。
    その昔、それこそ55年体制の頃は、時々鋭い質問を飛ばし、政府をたじろがせるような野党議員がいましたが、昨今の野党議員は「鋭い追及」と称したただの揚げ足取りか、不祥事を責めるかのいずれかしかなく、政策論争などほぼ皆無です。これでは泡沫政党からの脱却など夢のまた夢です。

    自民党議員が小粒化したなどと言われたりもしますが、野党はそれに輪をかけてミジンコ化しているように思われます。

  • そういえば、2011年3月11日の参院決算委員会で菅直人首相の「外国人献金」の追求があったが、同じ日に震災があり人命救助優先で、有耶無耶になりました。
    https://www.nikkei.com/article/DGXNZO24844380R10C11A3CC0000/

    日本国民にとって震災は最大の不幸でしたが、菅直人首相にとってはツキがあり、支持率アップを狙い、カン違いで、直後3月12日(山本太郎も真似た?)混乱する現場に、陣頭指揮の姿を国民にアピールをしてました。

    今回、震災を利用して野党の国会議員が国民にアピールするのは逆効果でしたね。
    検察の火遊びも、混乱に輪をかけるので(官僚クーデター?)、多分有耶無耶に終わるでしょう・・・

  • 自民党が脱税集団の可能性があるとは?がっかり😞です。もう少し真面目にやって欲しいです。所謂、報道ベースで実際のところは分かりませんが。報道が事実だと、真面目に脱税スキームを考えたくなります。

  • 情報をマスコミが支配していた時代には分からなかった、政府は当然のことながら被災地に対して必要な施策を着々と(でもないけれど)実行に移しているのに対して、野党は政府批判と派手なパフォーマンスに終始しているという構図が国民にも見えてきたからだと思います。

    奇しくも阪神淡路大震災の時も(社会党の村山富市党首を首相とする自民、社会、新党さきがけの3党連立政権)、東日本大震災(民主党)の時も非自民政党が政権を取っていた時期に起きました。被災地に対する施策と同時に政府対応のあり方を比較することも今後の糧となると思います。
    そう言えばラグビーボールを蹴り上げて知事にキャッチさせたり、ミーティングに知事が遅刻したと説教を垂れたりした担当大臣がいましたね。派手なパフォーマンスだけの屁の突っ張りにもならない議員や右往左往する大臣だと、一番困るのは被災地であり国民です。