災害支援というものには段階があり、いきなりボランティアを大量投入しても現場が混乱するだけです。「岸田(首相)はいったい何をやっているのか」、「台湾からの支援を断るとは何事だ!」、「なぜ岸田(首相)は現地入りしないのか?」、「孤立集落にパラシュート投下しないのはなぜか?」、「ボランティアを受け入れないのはケシカラン!」などと叫んでいる人たちに必要なのは、冷静さではないかと思う次第です。
目次
そろそろ1週間…災害支援の在り方を考える
能登半島地震が発生してから、そろそろ1週間が経過します。
こうしたなか、一部の政党関係者やジャーナリスト、「炎上系ユーチューバー」などが相次いで現地入りしているなかで、一部メディアや自称ジャーナリストらを中心に、「岸田文雄首相はいったい何をやっているのか」、といった非難の声が上がり始めています。
「なぜ岸田首相が現地入りしないのか」といった批判に加えて、「早く支援物資を送るべき」、「仮設住宅を急いで作るべき」、とする提言に加え、なかには内閣官房長官記者会見の場で「孤立集落に物資をパラシュート投下したらどうか」、などと演説をぶつ記者もいるほどです。
では、災害における支援の在り方をどう考えれば良いのでしょうか。
災害支援は順序を間違えてはならない
まず、この手の大災害においては、たいていの場合、「段階」があります。
一般に大地震などの災害が発生すると、その直後は被災地外から被災地にアクセスする手段が限られます。とりわけ能登半島の場合、山岳が多い半島地域であるという地形的な問題もあるため、陸路、海路、空路がいずれも大混雑に陥るのです。
これに加えて家屋の下敷きになっている人たちなどを救援するうえでの「72時間の壁」と呼ばれるタイムリミットもあります。
したがって、この段階では、まずは道路等のアクセス手段の復旧を急ぐとともに、基本的に道路は緊急車両や災害復旧車両に優先的に使用させる必要があるのであり、これに続いて支援物資(食料や水、毛布など)を現地に送り、それらを仕分けするなどの要因としてボランティアなどが必要とされるようになります。
この順序を間違えてはなりません。
東日本大震災のときには、首相自らが原発の視察を行ったりしましたが、本来であれば、首相などの最高指揮官に求められることは、必要な場面で適切な判断を下すことであって、パフォーマンス目的で現地入りすることではないのです。
岸田首相・馳知事らの行動は迅速で適切:なぜいま一般車通行止め?
これに関して、現在の岸田首相、あるいは石川県の馳浩知事らの行動は、どうでしょうか。
気象庁ウェブサイトによると、地震が発生したのは1日16時10分のことですが、首相官邸ウェブサイトによると、その5分後には岸田首相自身が「▼津波や避難等に関する情報提供を的確に行うとともに、住民避難等の被害防止措置を徹底すること、▼早急に被害状況を把握すること」などを指示しています。
また、馳知事自身は当日、公務のため、偶然に東京にいたという事情もありましたが、16時45分には馳知事本人が首相官邸で陸上自衛隊に対する災害派遣要請を行っています。偶然に助けられた側面があるとはいえ、地震発生からたった34分後のことです。
これに加えて岸田首相自身の6日付のXポストも参考になるかもしれません。
岸田首相によると、これまで優先されてきたのは「▼倒壊建物等からの救命・救助活動、▼孤立集落の解消、▼被災者の当面の生活を支えるための避難所等へのプッシュ型物資支援、▼その前提となる道路啓開作業」――だったのだそうです。
そのうえで、「避難が長期化する中で避難所の環境改善や被災者の健康維持にも早急に取り組む」、などと述べていますが、これは「まずは初動としての災害復旧と人命救助、これに続いて仮設住宅の建設などの支援、さらには長期的な復興支援」という、大災害の基本に沿ったものです。
100人という方が亡くなる大参事となったことは悔やまれますが、それでも岸田首相や政府、馳知事や石川県の動きは迅速ですし、基本的には大震災のセオリー通りに、段階を踏んで復旧支援活動が進められていると考えて良いでしょう。
こうしたなかで、岸田首相と馳知事が申し合わせたかのように、一部の道路の一般車通行止めを発表しています。
一部政党・ジャーナリスト・ユーチューバーらの軽率な行動
なぜこのタイミングで一般車の通行止めを唐突に導入したのでしょうか。通行止めにするなら、地震が発生した最初から全面通行止めにすればよかったのではないでしょうか?
これにはさまざまな理由が考えられますが、ヒントがあるとしたら、おそらくはこれらでしょう。
れいわ新選組の山本太郎代表や日本共産党の現・元議員らが相次いで現地入りした、というものですが、ほかにも俗に「迷惑系ユーチューバー」と呼ばれている者たちや、一部の自称ジャーナリストらが、相次いで現地入りしています(これらの者たちの宣伝につながりかねないため、該当ポストは紹介しません)。
大変軽率であると断じざるを得ません。
正直、このタイミングだと現場も混乱していますし、なにより現地まで入るために一般道などを通行すると、それによって渋滞が悪化して救援車両の到着が遅れ、「72時間の壁」におくれて助かるはずの命が助からない可能性があるということに、どうして彼らは思いが至らないのでしょうか。
あなたたちにまず必要なのは「冷静さ」
ちなみに国民民主党の玉木雄一郎代表が3連休直前にポストした、こんな内容も参考になるかもしれません。
一般車両の一部通行止めが玉木氏の要請によって実現したのかどうかはよくわかりませんが、玉木氏自身が述べている「停電の復旧が進まない理由のひとつが道路渋滞にある」という指摘は、非常に参考になるものでもあります。
いずれにせよ、災害復旧・災害支援には、段階というものがあります。何でもかんでも岸田首相や自民党を批判したいという人たちが、事実関係や災害復旧のセオリーを調べずに、素人の思い付きレベルで難癖をつけるのはいかがなものかと思います。
「岸田(首相)はいったい何をやっているのか」、「台湾からの支援を断るとは何事だ!」、「なぜ岸田(首相)は現地入りしないのか?」、「孤立集落にパラシュート投下しないのはなぜか?」、「ボランティアを受け入れないのはケシカラン!」などと叫んでいる人たちに必要なのは、冷静さではないかと思う次第です。
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>れいわ新選組の山本太郎代表や日本共産党の現・元議員らが相次いで現地入りした、というものですが、ほかにも俗に「迷惑系ユーチューバー」と呼ばれている者たちや、一部の自称ジャーナリストらが、相次いで現地入りしています
被災地に居る家族・親族に飲料水などを届けたり、自宅や実家の被害状況を確認する為に現地入りするのは理解出来るのですが、国会議員やユーチューバーの現地入りは「不要不急」の案件と思われるので理解出来ないですね。
被災地で、空き巣の下見と思われる県外ナンバーの車の目撃なども起きているようですし。
奥能登に通じる道路に検問を設置するのを検討して貰いたいところ。
危機が迫る中、国民の安全よりも自己顕示(パフォーマンス)を最優先させた驚愕の首相でしたね。
机にかじりついて一生懸命仕事をしているふりをしていた枝野官房長官の姿にも怒りを覚えました。
総大将は、軽々しく最前線に出てはならない。視察を受ける現場にとっては対応が一大時になるし、事態の全容が見れなくなる。指揮系統も混乱する。悪い例が、東日本大震災の時の馬菅。
「話を聞く」ためには、相手に少なくない時間を取らせます
話を聞いて、必要なものを把握して、準備して、届けたい・・・
って善意だとは思うけど、被災者に比べて圧倒的に多くの人が手を差し伸べようと現地の人への接触を試みると、その負担はそれなりに大きなものとなります
せめて初期段階は、事前に準備されてルートを使うってことで、我慢して欲しいと思うのです
被災者を助けたい、現地の様子を知りたいってのが、善意に基づくものでも、量が多いとその処理だけでも大変になると、あたしは思うのです♪
ボランティアという存在も玉石混交で、阪神淡路大震災の時には、ボランティアと称する団体が現地で被災者用の食糧を食い散らかしたり、神戸市の外れで物資を置いて帰ってしまったりして、神戸市の物流は大混乱に陥った。きちんと組織立てて使わないと、ボランティアは有害な事が多い。
ジャーナリストが現地に入らずとも当事者たちが情報を発信でき、政治家が直接出向かなくとも要望や訴えを届ける事が可能になっている時代です。そこに来て"彼ら"は、古いやり方にしがみつき進歩を妨げることで自己の存在意義を作り出そうとしているかのようにすら感じます。
本当に現地からの発信が不可能になったり、発信不能な一部分のみが支援を受け取れなくなる不公平な事態の時のみ、的確に行動してくれれば良いのですが……そんな対応ができるほど有能な方々とも思えません。
>(中略)などと叫んでいる人たちに必要なのは、冷静さではないかと思う次第です
左右問わずキシダガーと火病ってる連中にそん面の求めても無理無駄。
そん面の→そんなのを
>災害支援に大切なのは「順序」…必要なのは「冷静さ」
初動での優先順位は、「緊急度 ≧ 重要度」で良かったと思います。
時間的制約は、如何にしても取り返しのつかない事象だからです。
奥能登被災民です。
延々と続く支援の車列を見ると、感謝の念で溢れます。
通行に支障が出ているのは事実です。ボトルネックになっているのは七尾市から穴水町間です。国道249号線に集中し、消防、救急車両、自衛隊、重機輸送、物資搬送、全て影響を受けています。
道路上にいる彼らの時間と能力がもったいない。単位物量当たりの効率を考えると通行止めは当然の帰結です。
まず救命、次に救援、そして復旧、復興。
現地で直に見ると、それぞれの地域で各段階に応じた必要な事柄を、しっかり見極めて進めていると感じています。
言っていること、行っていることを見ると、政権をとらせてはいけない団体や政治家が見えてきます。
善意も、方法や手段を間違えると、悪意と同じ効果・結果をもたらすことを知って欲しい。
皆様の祈りと支援に心から感謝します。1秒でも能登を考え行動してくださった方々、これから行動して下さる方々に心から感謝します。
救援に参加される場合は、行政や自治体の指示に従いながら秩序をもって参加して下さると更に有難いです。
備考
我が家の損害は軽微、人的被害なし。
避難所の手伝い(物資配達等)を時々しています。今のところ支援救援物資に頼らず生活できています。
m 様
この度は大変な災害に遭われましたこと、心よりお見舞い申し上げます。また、被災地の一刻も早い復旧と復興をお祈り申し上げます。
当ウェブサイトとしてもささやかながら、地元自治体や日赤への寄付、その後はふるさと納税や地元産品の購入呼び掛けなどを通じた復興支援に協力させていただきます。
今はとにかくご無理をなさらず、ご体調等くれぐれもご自愛下さると幸いです。
非常時の行動を見ると、この人に日本の未来を任せられるかどうかがわかります。山本太郎とか、わかりやすいダメな例として、悪い意味で参加になりますが…。