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    Categories: 外交

台湾から中国に「自由の象徴・卵チャーハン」の贈り物

「自由って、素晴らしい!」――そう痛感させるような動画を、台湾外交部がX(旧ツイッター)の公式アカウントに投稿しました。動画に登場しているのは呉釗燮(ご・しょうしょう)外交部長で、豪州産ワイン、日本産ホタテ、リトアニア産チョコレート、台湾ビール、そして「卵チャーハン」(!)を次々と紹介していく、というものです。これらについてはどうもすべて「自由がない中国」と関連しているようなのです。

台湾は自由な社会!

ここ数年、日本政府・外務省が刊行する外交青書を読むと、台湾についてはこんなことが書かれています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値や原則を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(外務省『外交青書2023』第2章より)

ここで「自由主義」は一般に、個人の内面に国家権力が介入しない国・社会のことであり、日本と台湾はまぐれもなく自由主義国という共通点を持っていると考えて良いでしょう。

台湾外交部長の「サンタさんの贈り物」動画

こうしたなかで、台湾外交部のX(旧ツイッター)の公式アカウントに、なかなか面白い動画が投稿されています。

動画に登場している人物はトナカイの角を屋はしていますが、その正体はおそらく、呉釗燮(ご・しょうしょう、ジョセフ・ウー)外交部長(※外相に相当)でしょう。

呉釗燮氏の発言の全文は、こうです。

  • Now it is time to see what Santa gives us.
  • Freedom wine from Australia!!
  • Freedom scallops from Hokkaido, Japan~
  • Wow, I love this!
  • Freedom chocolate from Lithuania!
  • Oh! I love this!
  • This is freedom beer from Taiwan.
  • This has got to be…very good!
  • It’s freedom fried rice!!
  • This is all the great tastes of freedom, and to all the freedom-loving people around the world, I want to wish you a Merry Christmas and a Happy New Year.

いちいち「フリーダム」の枕詞を付ける外交部長

サンタさんがくれた贈り物をひとつずつ開けていくという趣向の動画ですが、紹介しているのは、▼豪州のワイン、▼日本の北海道産ホタテ、▼リトアニアのチョコレート、▼台湾ビール、▼卵チャーハン(!?)、といった品物の数々で、それらにいちいち「フリーダム(自由)」という枕詞を付けているのです。

ちなみに北海道のホタテについては中国が今年8月以降に導入した輸入規制のあおりを喰らって日本国内で在庫が積み上がっていることは有名ですが、他の製品はいったいなのでしょうか。

このうち「豪州産ワイン」は、中国が2021年3月以降、大麦やワインなど複数の豪州産品に対し、非常に高い反ダンピング関税(最高218%)を課していることを意味しているようです。

豪産ワイン、28億本余剰に 中国に阻まれ輸出大幅減

―――2023年08月19日20時31分付 時事通信より

次に、「リトアニアのチョコレート」の元ネタは、新型コロナウイルス感染症で台湾がリトアニアに対し2020年以降、医療用マスクを無償提供したところ、翌・21年にリトアニアから台湾に対し、アストラゼネカ社のワクチンが計26万回分、無償提供されたことに由来する友好のやりとりだそうです。

苦楽をともに——深まる台湾とリトアニアの友情

―――2022年6月付 台湾光華雑誌日本語版より

台湾メディア『台湾光華雑誌』(日本語版)の記事によると、リトアニアのガブリエリウス‧ランズベルギス外相は、「自由を愛する人々は互いに支え合わなければならない」と述べ、これに感銘を受け、台湾社会でリトアニア製品の「爆買い」ブームが巻き起こっているのだとか。

また、台湾ビールに関しては、ちょうど1年前の2022年12月、中国が(おそらくは蔡英文=さい・えいぶん=政権に対する圧力の一環として)台湾産のビールや蒸留酒、清涼飲料水などの輸入を停止する措置を講じたというエピソードに由来するものでしょう。

中国、台湾産ビールも禁輸 総統府「厳重な懸念」

―――2022/12/10 20:46付 産経ニュースより【共同通信配信】

卵チャーハンの動画すら投稿できない中国

さらに「卵チャーハン」については、調べていくと、中国の有名シェフがSNSに卵チャーハンの動画を投稿したところ、国家主義者から毛沢東の長男を侮辱しているとの批判を浴び、二度と卵チャーハンをつくらないと宣言せざるを得なくなる騒ぎがあったことに由来するようです。

これについては米メディア『CNN』の次の記事が詳しいでしょう。

中国著名シェフ、二度と卵チャーハンを作らないと宣言 毛沢東の息子侮辱と批判され

―――2023.11.30 18:15 JST付 CNN.jpより

なぜ、ただの卵チャーハンの動画が批判されたのか――。

CNNによると、毛沢東(もう・たくとう)の息子である毛岸英(もう・がんえい)が朝鮮戦争中の1950年11月25日に米軍の爆撃で戦死した原因が、「空腹を覚えた毛岸英が卵チャーハンをつくろうとコンロに点火したところ、煙が上がり、敵機に居場所を知られた」とする伝説(?)と関連しているようです。

つまり、毛岸英の誕生日である10月24日、あるいは命日である11月25日の前後に卵チャーハンに言及すること自体が、一部の中国の国粋主義者からすれば、毛岸英、ひいては毛沢東、そして中華人民共和国に対する意図的な侮辱行為とみなされているのだとか。

なんともバカらしい話ですし、CNNによると中国当局は「噂に過ぎないとして繰り返し否定している」のだそうですが、それでも現実に中国では、たかだか卵チャーハンの動画ひとつ自由に投稿できないほど息苦しい社会であることは間違いなさそうです。

そんな中国社会を強く意識した動画メッセージ、中国の人々はどう受け止めるのでしょうか?

もっとも、呉釗燮氏の動画、そもそも中国本土では閲覧できないのかもしれませんが…。

新宿会計士:

View Comments (7)

  • もし、台湾が米国に宣戦布告した場合 中共は米国と戦争するのか?それとも化外の地と見捨てるのか?

    もし台湾が米国に降伏したあと米国から独立したら独立国家になるのだろうか?

    自分は台湾が独立国家としての条件を全て満たしてると思うので、あとは諸外国がどのように承認する体裁を整えるかだと思うのですが、どうでしょう。

  •  これはプーさんが卵チャーハン作ってる動画を流せばバズるな。二度と中国の地は踏めないないけども。
     ブロッコリー嫌いを公言した大統領に、健康を思った()農家が大量のブロッコリーを送り付けることができた国とは好対照ですね。

  • 中国の有名シェフは何の政治的な意図もなく、ただ美味しい卵チャーハンの作り方を動画で解説しただけなんですよね。それが炎上するというのもすごいもんです。しかも炎上させたのは一般の人民ですからね。毛岸英のことが人民の心にここまで浸透しているのにはびっくりしました。

    クリスマスの動画を投稿しているのは台湾の外交部長ですから、この方の行為自体が国家(日本の立場では台湾は国ではありませんが)の行為として扱われるわけですが、にもかかわらずこんな風刺のきいた動画を投稿する度胸はすごいです。日本の首相や大臣にこんなことをやる度胸はないでしょう。

  • 映っているのは帆立大王 180g 入り大袋のようですね。
    日本鬼子はうちらにとって internet meme に過ぎずすでにキャラが登場しているようですが、帆立マンや帆立男の投稿動画が溢れるのも時間の問題のような。

  • >毛沢東の息子
    朝鮮戦争では「毛沢東の後継者」と中共憲法に一時は書き記されて居た林彪も朝鮮戦争で重い負傷してその際の治療の不味さで阿片中毒に罹ったはずです。確かソ連は中共に命じた訳では無く、中共は金日成に泣きつかれた事と、中共国内まで北進される?と言う恐怖とで「義勇兵」を数百万人規模で送り込んだのでした。
    結局、朝鮮半島を往復ビンタで前線が移動する派手な戦争でしたが、人命に糸目を付けない中共のゾンビ突撃でほぼ38度線迄押し返し、膠着して、スターリンの死去を受けて休戦したのでした。中共は金日成のせいで大損害。アメリカはじめとした国連軍も李承晩に肩入れして大損害。朝鮮半島住民も数百万人の桁で大虐殺。しかも半分は凍死と餓死と医療的ネグレクト。せっかく国連軍が解放した大韓民国ももちろん北朝鮮も権威主義の独裁国になったのでした。
    その点台湾は、なんだかんだで蒋経国→李登輝と奇跡のバトンが渡り民主化。國民党が変に親中に成り下がったが蔡英文総統もしっかりと価値観を共有出来る。だが台湾は本当に中共と縁を切れるのか?

    • 元日本共産党員名無し さま

      >朝鮮半島を往復ビンタで前線が移動する派手な戦争でした

      見事な喝破でございます。そして

      >だが台湾は本当に中共と

      不可解な国共合作、その深層心理に国内主要メディアは正しく辿りつけるのかどうかという、本邦における国内的な課題もあるかと思います。タイムリミット1月13日。