X

「満員電車での通勤続ける日本人は頭が悪い」…本当?

「日本人は頭が悪い。欧州だとオフィスが田舎に移転したり、リモートワークが定着したりするなど、出勤者が激減している。しかし日本では相変わらず満員電車で長時間通勤を余儀なくされている」。こんな趣旨の意見を目にしました。そもそもデータで見ると、コロナ禍以降、通勤通学時間帯の鉄道の混雑率は低下しているのですが、この点を脇に置くとして、「大都市圏に暮らすのは頭が悪い」とする発想自体が正しいのかどうか、疑問です。

「満員電車での長時間通勤」…Xで話題

X(旧ツイッター)上でちょっと話題となっているのが、こんな趣旨のポストです。

  • 東京やその近郊に住む人々のストレスの原因は、大半が長時間通勤。都内ではどこも人が多く、電車は常に満員だ
  • これに対し欧州では出勤者が激減しており、とりわけ事務系の職種ではオフィスが田舎に移転したり、リモートワークが定着したりするなど、通勤すらない。だから(欧州では)ストレスが非常に少ない
  • 日本人は論理的思考ができない●●だらけで、試験勉強ばかりしてきた役人脳だらけだから、起業家精神も柔軟性もなく、いまだに1970年代のような働き方を続けている

原文は、もう少し乱雑(失礼!)ですが、趣旨としてはだいたい上記のようなものです(「●●」には当ウェブサイトで原則的に使用を禁止している悪口が入ります。以下同様)。

そのうえでこのポスト主は、「社屋をなくす」、「田舎に移転する」などの「合理化」ができないのが日本だ、として、現在の日本人の働き方を舌鋒鋭く批判しています(ポスト内容はもう少し続くのですが、引用は上記までとします)。

このポストには賛同者多数

少々口は悪いのですが、このポストに対しては、「通勤時間が長い」と不満を持っている人たちの共感が多数寄せられているようであり、なかにはこんな趣旨のリプライもあります。

首都圏に暮らしていたころは降圧剤を飲んでいた家族も、地方に来てから、自動車通勤で運動量が減ったにも関わらず血圧が下がった。ストレスが原因だろう」。

全米経済研究所による調査では、日本の通勤時間が100分と主要国中で群を抜いて多い。日本よりも通勤に時間を掛けている国といえば、102分の中国くらいなものだ」。

通勤だけでない。休日に買い物に出かけても混雑が激しいのがストレス。喫茶手にに入るだけでも20分待ちとか●●かと」。

  • 通勤ラッシュがなぜ減らないのか不思議でならない」。

このあたり、元ポストやこれに対するリプライで示されている数値などの正確性については、よくわかりませんが、いずれにせよ日本の「通勤地獄」ぶりを批判するポストに対し、賛同コメントが多数寄せられていることは間違いないでしょう。

「リモートワーク定着せず」、本当?

これについて、コロナ禍でいったんリモートワークブームが定着したかに見えましたが、現実には再び通勤が増えた、ということでしょうか。

というよりも、そもそも「欧州では当たり前のリモートワークが日本では定着しなかった」、は、事実認定として正しいのでしょうか。

まず、著者自身の事情は伏せるとして(これは著者自身の働き方があまりにも特殊であり、あまり参考にならないからです)、著者自身がビジネス上関わっている方々の状況だけで申し上げるなら、「事情はさまざま」、といったところではないかと思います。

会社によってはすでにリモートワークが完全に解除され、部署の全員が会社に出社しているというケースもある一方、会社によっては依然としてリモートワークが継続している、というケースもあるからです。ざっくりとした傾向ですが、営業担当者は出勤し、事務作業担当者は自宅でリモート、というケースが多いようです。

通勤電車の混雑率はどうなっているのか

それに、そもそも論として、通勤電車の混雑率は、コロナ禍で大きく落ち込み、それが戻り切っていないとするデータもあります。

たとえば国土交通省が今年7月14日に発表した混雑率調査によると、「通勤通学時間帯における平均混雑率」は、東京圏(31区間)の場合、2019年に163%だったものが、2022年では123%と、コロナ禍前に比べれば減っています(図表)。

図表 通勤通学時間帯における平均混雑率

(【出所】国土交通省・2023年7月14日付『三大都市圏の平均混雑率が増加~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和4年度実績)~』データをもとに作成)

もちろん、2023年は2022年と比べ、混雑率はさらに上昇している可能性はありますが、もしそうだとしても、かつてのような「痛勤」(※「つうきん」の「つう」を「通」ではなく「痛」に置き換えた造語)時代に戻る可能性がどこまであるのかは、個人的には疑問です。

なにせ、生産年齢人口はすでにピークアウトしたわけですし、(欧州在住の方からすれば不十分なのかもしれないにせよ)リモートワークも定着しつつあり、さらには(少しずつではありますが)大都市圏の新規鉄道整備・線形改良・複々線化などの事業も進んでいるからです。

2023年に開通した路線でいえば、首都圏の場合は相鉄・東急新横浜線がその典型例で、これにより相鉄線は、東急、東京メトロ、東京都営地下鉄、東武、西武の各路線とつながりました。すでに2019年に開通しているJR直通路線とあわせれば、広大なネットワークが形成された格好です。

また、同じく2023年、大阪では「うめきた新駅」(正確にはJR大阪駅の新設地下ホーム)が開業しました。

このホームは新設される「なにわ筋線」とつながり、JR難波駅や南海電車に加え、阪急電車の新路線(新大阪から十三を経由して大阪駅に至る路線)とも直通運転を予定しているそうです。

相互直通に適した日本の鉄道設計

その一方で、「日本人は頭が悪いから混雑電車がなくならない」とする発想に対しては、別の視点からの疑問もあります。これに加えて都市設計自体が日欧でずいぶんと異なっている、という事情も見逃せないからです。

欧州の場合は、都市間鉄道の多くが「頭端式」(終着駅方式)となっており、直通運転に向かないのですが、日本の場合は東京駅にしろ、大阪駅にしろ、京都駅にしろ、新宿駅にしろ、主要駅の多くはスルー運転できるような構造です。

したがって、既存の路線に地下鉄や新線などを結節し、相互直通運転をするのが非常に容易です(といっても、なかには大阪メトロの主要路線のように、電力供給方式の違いなどにより直通運転が難しいケースもありますが…)。

それに、鉄道は大量の人員を定期的・反復的に効率よく輸送するのに適した交通手段です。

東京の場合は軌間、給電方式などが共通している路線が多く、かなり複雑な(そして利便性が高い)直通運転系統が多数存在します。

たとえば小田急本線と東京メトロ千代田線、JR常磐線はつながっていますので、ダイヤ設定次第では、理屈の上では箱根から水戸までの約200㎞を乗り換えなしに移動できます。

同様に、相鉄の海老名駅から東京都営地下鉄三田線の西高島平駅まで、相鉄・東急新横浜線、東急東横線、目黒線、メトロ南北線などを経由して一本でアクセスできますし、羽田空港から成田空港まで、京急線、都営浅草線、京成線などを経由して直通運転が実施されています。

そもそも日本の大都市圏の場合、鉄道で移動できる範囲がまったく異なるわけですから、単純比較ができるというものではないように思えてなりません。

「大都市に暮らすから頭が悪い」、本当?

なお、最近だと「限界ニュータウン」という用語もあるとおり、マダラのように開発された住宅地で都市圏がスプロール化し、さらにはスラム化していくことが懸念されていることは間違いありませんが、これは「都市開発」の問題であり、また別の論点でしょう。

また、行き過ぎた混雑、長すぎる通勤が人々のストレス源であるという点については同意するところですが、だからといって大都市圏に暮らすことが「頭が悪い行動」だとする点については、ちょっと容易には同意できません。やはり、物理的に多くの人が集まる場所には商圏ができあがりますし、文化も生まれるからです。

たしかに地方の人口希薄な地域に会社を移すなどすれば、従業員の通勤時間も減るでしょうし、個々人の住環境も改善するかもしれませんが、都市圏に暮らすことの利便性を捨てることになります。

こうしたなかで先日、知り合いから、ちょっとだけ興味深い話題を耳にしました。

コロナ前に東京都心などで盛んに実施されていた、地方の会社に向けたセミナーが一時期、完全にリモート化していた時期もあったのですが、最近、都心で開催されるセミナーが再び増え始めているのだそうです。

素人的には「オンラインセミナーにすれば、地方在住の人たちにとっては参加しやすくなるのではないか」と思ってしまいますが、現実にはオンラインよりも現地実施するもののほうが好まれるのだとか。

その理由は、セミナーに参加する担当者としては、「セミナーに行く」という名目で東京に行けるからだそうです。セミナー会場に行けば講師や他の受講者と名刺交換もできますし、また、セミナーに参加するために上京し、ついでに東京滞在を楽しむこともできます。

東京や大阪、名古屋といった大都市圏の場合、人口が集中していることにより、たしかに「電車や商店などが人で混雑する」などの問題点もありますが、こうした問題点があるにも関わらず、特に東京で人口流入が続いているのは、やはり東京にそれなりの魅力があるからだ、と考えるのが自然ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (41)

  • シムシティ等をプレイしたことがあるならば
    「限られたリソースで最大多数が社会インフラの恩恵下に生活するためには、都市化(集約化)が必須」
    だと、わかりそうなもんですけどね。

    上下水道、電気ガス通信、道路鉄道物流、どれもこれも頭割り人数は多いほど安くて済みます。
    1人で郊外で住みたければ、全部自己負担しろ!と。

    消費金額は、ほぼイコールで消費エネルギーですから、バカにされつつも日本&日本人は世界で最先端の高度にエコロジカルな社会を(江戸の頃から)実現維持管理しとる訳です。

  • 早稲田大学総長によると「戦後日本教育は、答えのないことを考えることを苦手とする教育を続けてきた」とのことです。そして、日本のエリート(?)は、この教育で育ってきました。(もちろん、都会への集中だけではありませんが)「結果的に満員電車で通勤するのは正しい」という暗黙の答えに、エリートになればなるほど支配されているのではないでしょうか。
    蛇足ですが、満員電車での通勤をやめることへのリスク(?)の可能性を、ある種の人を嫌っているのではないでしょうか。(もちろん、本当にリスクが発生するかは、分かりません)
    もしかしたら、元オジサン社員は「自分は長年、満員電車での通勤に耐えてきた。それに引き換え、最近の若い者は」と思っているのかもしれません。

    • 引きこもっていれば、痛勤電車は関係ないし、「答えのないことを考える」時間は、たっぷりありそうですね。

  • 完全なスレ違いですみません。
    自称徴用工問題。
    楽しい事になってきました。

    オラー
    ワクワクするぞ!

  • そんなに満員電車での長距離通勤が嫌なのであれば、ツイートした方や、賛同のリプライをした方々が、率先して田舎に転職すれば良いと思うのだが・・・
    そうしたらその不満は直ぐに解消するだろうし、その分満員電車も空くだろうし。

  • 都市という集中機能・ハブ機能が無ければ、文明文化は開花発展しないでしょう。こんなことは、人類の歴史が証明しています。
    それと、満員通勤電車の問題と同一に考えることは、次元の異なる話だと常々思っています。

    満員電車の問題を解決する方法は、今までも幾らでもあったのに、企業や政府が積極的に取り組まなかったのです。

    先ず、全社員が、職種も職務内容も異なるのに、朝一斉に同じ時間に出社しなければいけないというのが問題です。
    時差通勤を徹底すれば、かなり効果的です。
    又、本社機能を担う全社員が、都心の本社オフィスへ出社しなければならないというのも、非効率なことです。
    首都圏であれば、サテライト的な街にサテライトオフィスを設ければいいのではないかと思います。神奈川であれば、横浜・大船・川崎、東京であれば、町田・立川・八王子・三鷹、埼玉であれば、川越・大宮・浦和・越谷、千葉であれば、松戸・柏・市川・津田沼・千葉、辺りに。
    ついでに、法律で定められた労働時間も短くしたらいいと思います。
    日本は、無駄な手順に時間を使う仕事が多いように感じます。
    デンマークのヒュッゲのような生活ができるように。

    •  時差出勤最高です。
      私、車通勤ですが朝は5時に家を出て5時半には職場にいます。
      夕方は16時少し前に上がります。定時は8時半~17時ですが
      道路が空いるのでやめられません。燃費も良いです。

       ○○って私の事でしょうか。

      • ヒュッゲは、セクシー〇〇さんでしょうね。
        早朝出勤する心がけの良い人には、福来る!

  • 「スローライフ」みたいに、田舎暮らしを推奨する風習もあるみたいですが、若いうちはいいかもしれないですけど、年を取ったらやっぱり、都市部に住むのが便利なように思います。
    病院、スーパーが徒歩圏内。これに尽きるように思います。

    • 老後がテーマのセミナーに参加したことがある。
      「年を取ったら田舎暮らし」
      セミナーの講師が言っていたが「そんな人いませんよ」
      想像の産物かもしれない。

      • 退職したら勤務地の近くに住む必要性は薄れることを持って、田舎に引っ込むという話が出るのでしょうが、生活は退職後も続くわけで、生活のしやすさを考慮すると、都心に住むのと田舎に住むのでメリデメがありますよね。

        何を重視するかによりますよね。

      • とある田舎の別荘地の近くに住んでいます。定年して移住してきた方も(さらに)年老いて車の運転がおぼつかなくなり、便利な都会のマンションへ引っ越したいと言っています。病院も少ないですし田舎は後期高齢者が暮らすには厳しいところですよ。

  • 日本企業と米国企業の両方で働いた経験からすると、
    米国企業ではコミュニケーションは上司と取るもので、同僚とのコミュニケーションも上司経由でやるものでした。このやり方ならリモートワークに大きな支障はないと思いますが、日本では馴染まないと思います。
    日本ではもっと同僚同士のコミュニケーションが重要かつ必要なので、リモートワークだと非効率でしかたないです。流行らないのも当然かと。

    • >米国企業ではコミュニケーションは上司と取るもので、同僚とのコミュニケーションも上司経由でやるものでした。

      これは効率的であると同時に責任の所在が明確になるというメリットがあります。情報共有に齟齬が生じないよう間に入る上司には専門の知識と能力と責任が求めれ、その上司がもっとも高給をもらうという合理性もあります。
      同じプロジェクトでモジュール単位で役割分担している場合など日本でもやっているところはやっています。これをやってみると、関係する者が決められた時間に一同に会する必要がほとんどないことがわかります。

  • 私はメーカーで働く技術者なので必然的に工場へ集まって仕事をします。
    製造現場がリモートで運用できる部分は昔に比べれば増えていますが、それでも人間の手を介して行う作業は多いです。
    都会の通勤ラッシュを称して頭が悪いだの、リモートの在宅ワークが良いだのという話はホワイトカラーから見た狭い視野だと思います。

    • 工場や、設備の設置や修理など現場に張り付く必要がある仕事にまでリモートでやれとは誰も言ってないでしょう。でもそういう現場仕事で、今ではリモートに置き換わっている例はいくらでもあります。今後も現場の仕事のリモート化はいっそう進むでしょう。
      そうそう、新聞記者の仕事も今ではリモートワークなのではないでしょうか??? 机の上だけで記事を書き、紙面が完成する。でもその先でわざわざ印刷をして各戸に配達をしてと、リモート化を拒否しているのが何とも不思議。

  • >首都圏に暮らしていたころは降圧剤を飲んでいた家族も、地方に来てから、自動車通勤で運動量が減ったにも関わらず血圧が下がった。ストレスが原因だろう

    私のいた会社は地方都市に工場、東京に本社があった。
    工場勤務の人はほぼ100%自動車通勤。
    工場勤務の人に心疾患の人が多かった。とにかく歩かない。
    もしも万歩計つけたら1日1000歩~1500歩じゃないかな?

    • 電車通勤の人はやや早歩きの人が多い、まともに歩いてたら弾き飛ばされそう。
      ほぼ毎日(社内歩行も含めれば)2時間以上ウォーキングですね。

      地方都市ではコンビニ行くのも車、映画行くのも車、ショッピングモールも車。
      車で出勤する前に、朝早く起きてマラソンしなければ運動不足になりそうですね。

      年を取ったら憧れの地方移住でのんびりと・・・夢で終わりそう。

      • 場所が違うのですがISS(国際宇宙ステーション)だと
        >> 宇宙飛行士はウエイトトレーニングができる抵抗運動器具、
        >> またトレッドミルやエルゴメーターといった有酸素運動器具を使って、
        >> 毎日2時間程度の運動をします。
        https://humans-in-space.jaxa.jp/life/health-in-space/life/
        だそうです.

        通勤時間が短いというだけで, 判断していいかどうか...

      • 地方都市でも雪国に住めばいいのでは?。
        除雪作業というキツイ運動があります。
        冬以外もトレーニングしてないと、いざ本番で筋肉痛、腰痛になります。
        政府から除雪作業給付金が欲しいです。

1 2 3