X

中国が化石賞を受賞しない理由は「弾圧される可能性」

先日の「化石賞」に関する話題に、ちょっとした「続報」がありました。時事通信が土曜日に配信した記事によると、日本に「化石賞」を授与したNGO「CAN」の関係者が中国に「化石賞」を授与しない理由について、「中国国内のNGOが弾圧されるかもしれないから」、などと述べたそうです。まさに「語るに落ちる」、です。ただ、日本は日本で米英仏加などと共同し、2050年に世界の原子力発電設備容量を3倍に増やすとする宣言に署名しています。このNGOとやらに言われなくても、日本としても必要な努力はしているのです。

なぜ中国に授与しない!?

ちょうど1週間前の『世界最大の排出国・中国ではなく、日本が受賞=化石賞』で取り上げたとおり、日本は「世界最大のNGOネットワーク」とされる「CANインターナショナル」とやらから、「不名誉な賞」とされる「化石賞」を授与されました。

日本が「不名誉な賞」である「化石賞」を「世界最大のNGOネットワーク」とされる「CANインターナショナル」とやらから授与されたそうです。世界最大のCO2排出国である中国ではなく、なぜ日本がそのような賞を受賞するのか、いまひとつ意味がよくわかりませんが、ただ、「CO2削減」のために最も手っ取り早いのが原発の再稼働と新増設の積極推進であることは間違いありません。日本が化石賞に輝く非政府組織「WWF」によると、日本が今年の「化石賞」に輝いたのだそうです。COP28現地発信:日本が「化石賞」を受賞しました...
世界最大の排出国・中国ではなく、日本が受賞=化石賞 - 新宿会計士の政治経済評論

なんだか、非常に不思議な現象です。そもそも論として、世界最大のCO2排出国は、日本ではなく、中国だからです。

総務省統計局『世界の統計2023』【※PDF】の第16章『環境』(P281)によると、2020年における「燃料燃焼による二酸化炭素排出量」は、日本が輩出しているのは約10億トンで、これは世界全体のざっと3%少々。これに対し中国はその約10倍です(図表)。

図表 燃料燃焼による二酸化炭素排出量(2020年)
CO2排出量 構成割合
全世界 316.65億トン 100.00%
1位:中国 100.81億トン 31.84%
2位:アメリカ合衆国 42.58億トン 13.45%
3位:インド 20.75億トン 6.55%
4位:ロシア 15.52億トン 4.90%
5位:日本 9.90億トン 3.13%
6位:ドイツ 5.90億トン 1.86%
7位:韓国 5.47億トン 1.73%
8位:カナダ 5.08億トン 1.60%
9位:ブラジル 3.89億トン 1.23%
10位:オーストラリア 3.74億トン 1.18%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2023』の『図表16-4 燃料燃焼による二酸化炭素排出量』を参考に作成)

中国は日米よりも排出量が多い

それだけではありません。

2位の米国は42.58億トンで日本の4.3倍、3位のインドは20.75億トンで日本の2.1倍で、経済規模自体が日本より小さいはずのロシアですら15.52億トンと日本の約1.6のCO2を排出している、という計算です。

人口でも面積でも経済規模でもドイツに及ばないはずの韓国が、CO2排出量ではドイツとほぼ肩を並べているという事実も興味深いところですが、いずれにせよ、CO2排出量「だけ」で見て、どうして日本がこの「不名誉な化石賞」を受賞しているのか、重ねて疑問でなりません。

この点、該当する「賞」とやらは、「国連気候変動枠組み条約」の締約国会議(今年は第28回であるため「COP28」と呼ばれています)に合わせて授賞式が実施されているため、日本では「COP28や国連の関連イベント」と勘違いされているフシがあります。

しかし、実態はべつに国連の公式なイベントでも何でもありません。

「環境団体」を勝手に名乗る組織が勝手に「授賞式」を行っているだけのことです。

ちなみに以前の『悪質な環境活動家こそが市民の敵』などでも指摘してきたとおり、環境保護団体や環境活動家といえば、ときとして違法な活動(道路に座り込んだりして、自動車の運行を妨害する、など)を行ったりすることで話題を集めることでも知られています。

個人的な感想ですが、これらのうち一部の悪質な「環境団体」こそが市民の敵であり、反社会的勢力そのものではないかとも思うのですが、いずれにせよ、環境団体の多くはオールドメディアから注目されているだけの話であって、学術団体などから何らかの権威性が認められている、というものでもないでしょう。

このように考えていけば、今回の日本の「化石賞受賞」も、環境団体が中国という「本当の意味で環境に優しくない国家」ではなく、日本や米国、ニュージーランドといった「絶対に文句を言ってこない相手」を恣意的に選んでスケープゴートにしているだけではないか、といった仮説が浮かびます。

中国の受賞が少ない理由は「NGOが弾圧されるから」

こうしたなかで、この「なぜ日本よりも環境に優しくないはずの中国ではなく、日本が受賞したのか」という疑問点を抱いている人は、インターネット空間でかなり見かけるのですが、これも現代社会がネットの存在により、環境団体の欺瞞に騙されなくなりつつある証拠ではないかと思います。

ただ、ちょっと面白いと思ったのは、時事通信が土曜日に配信した、こんな記事です。

「化石賞」なぜ日本ばかり? 中国、際立つ少なさ―COP28

―――2023年12月09日20時32分付 時事通信より

記事自体は400字詰め原稿用紙2枚分くらいの分量の短いものですが、これがなんとも興味深いのです。

気になった部分だけを抽出すると、こんな具合です。

  • 日本は国際的な環境NGO「CAN」から不名誉な「化石賞」を2度も贈られたが、世界最大の温室ガス排出国である中国は化石賞にほとんど縁がない
  • 中国が化石賞に選ばれない理由について、CAN関係者は「中国国内でのNGO弾圧につながる可能性もあり、あまり刺激したくないのでは」と分析(している)

(※下線部は引用における加工)

…。

これが、すべてでしょう。まさに、「語るに落ちる」です。

ちなみに時事通信が報じた「CAN関係者」とやらは、日本が「化石賞」を受賞した背景には、「批判だけでなく、政策改善への期待も込められている」と述べたのだそうですが、これなどまさに詭弁そのものです。

本気でCO2が地球の気候変動に密接に影響していると考えるならば、そして日本や米国、インドなど頻繁に受賞しているのなら、中国、ロシアも同様に頻繁に受賞していなければならないはずでしょう。

「中国はNGOを弾圧する(かもしれない)から中国を批判しません」、では、筋が通りません。

原発容量を2050年に3倍へ!

ちなみに肝心のCOP28では、なかなかに興味深い「成果」が出ています。

COP28:世界の原子力発電設備容量を3倍に 22か国が宣言に署名

―――2023/12/03付 原子力産業新聞より

原子力産業新聞によると、COP28の3日目にあたる12月2日、日米英仏加など22ヵ国が世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるとする宣言文書に署名したそうです。

署名した22ヵ国はほかに、アラブ首長国連邦(UAE)、ウクライナ、オランダ、ガーナ、韓国、スウェーデン、スロバキア、スロベニア、チェコ、ハンガリー、フィンランド、ブルガリア、ポーランド、モルドバ、モロッコ、モンゴル、ルーマニア――だそうです。

記事によるとこれらの署名国は2050年までに世界の原発設備容量を2020年対比で3倍とする目標を掲げ、あわせて小型モジュール炉(SMR)や先進炉の導入拡大、原子力を利用した水素製造などにも言及するなど、「電力以外の産業分野への応用」を視野に入れているのだそうです。

これは、ある意味で当然の動きでしょう。

原発事故は航空機事故と似ている

ただ、こんな話題が出てくると、必ず出てくるのが、「原発事故は大丈夫なのか」、「原発事故を絶対にゼロにすることはできないじゃないか」、といった主張です。

もちろん、原発事故を再発させてはなりませんし、原発の安全性については細心の注意を払う必要もありますが、「原発は危険だから全廃」、は、科学的な態度ではありません。過去の事故の経験をデータベース化し、安全性能を高めていくべきであって、「原発をやめる」は、筋が良い話とはいえません。

原発の安全性とは、わかりやすくいえば、飛行機の安全性のようなものでしょう。

飛行機は墜落したら搭乗している人の多くはかなりの確率で命を失うことになりますが、それと同時に私たちが飛行機に搭乗して死亡する確率は、一説によると宝くじで一等を引き当てる確率よりも遥かに低い、との研究もあるようです。

原発もこれと同じです。

事故の可能性を完全にゼロにすることはできませんが、その可能性を限りなく低くすべく、努力を重ねることは可能ですし、また、原子力に関する研究も進めていくべきでしょう。

NGOのお遊びに付き合う余裕は日本にはない

ちなみに原子力産業新聞によると、世界の原子力発電設備容量は2020年末時点で4億0788万kWだそうであり(原産協会調べ)、これを3倍にするということは約12億kW強に増強することを意味します。

これに対し国際エネルギー機関(IEA)が10月に発表した「世界エネルギー見通し」では、「最も野心的なネットゼロエミッション(NZE)シナリオ」でも2050年の原子力発電設備容量は9億1600万kWと予測しているそうです。

こうした状況を受け、原子力産業新聞は今回の3倍宣言を「非常に野心的な目標設定」、などとしているのですが、時事通信が報じた「CAN関係者」の「(日本は)世界にもっと貢献してほしい」なる発言は、日本が世界の原子力産業の発展に貢献することを通じて達成されるべき、ということかもしれません。

というよりも、このNGOとやらに言われなくても、日本は日本としてできる努力を重ねているのです。

そして、この「化石賞」に代表される「環境団体」とやらの低レベルかつ稚拙なお遊びにお付き合いしている余裕が、現在の日本には存在しないことだけは間違いないと断言できるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (19)

  • 2000年12月の『女性国際戦犯法廷』みたいなもんですね。

    あれは女性に対する戦時性暴力を隠れ蓑にする詐欺集団の馬鹿騒ぎでしたが、さて化石賞は…?

  • アンモニアを用いる大規模混焼の実証実験は着々と進んでいる。
    https://newswitch.jp/p/37563
    https://www.jera.co.jp/action/discover/004

    一方、英シンクタンクTransitionZeroは、アンモニア混焼型も含め、日本の高効率石炭火力発電は、コストとCO2削減の両面で解決策ににならないと批判している。
    https://sustainablejapan.jp/2022/02/14/japan-coal-power-policy-2/70436

    技術者の皆様は、政治的な駆け引きを気にすることなくがんばっていただきたい。
    日本の技術力をここまで脅威に感じていただけるのなら、むしろ名誉な賞なのかも。

  • 素朴な疑問ですけど、化石賞をもらえないない(?)国は、NGOを弾圧する国ということでしょうか。ということは、化石賞の意味が違ってくるのではないでしょうか。

    • NGOは自己満足のための組織、仲間うちで盛り上げるための組織ということでしょうか。日本の市民団体も同じではないでしょうか。

    • 毎度、ばかばかしいお話しを。
      テレビ局:「NGOもテレビ局も、中国にとって不都合なことを報道すると弾圧される可能性がある」
      時事通信:「「中国が化石賞を受賞しない理由」の記事を取り消す」
      この時事通信の記事を、マスゴミは(ジャニーズ問題と同じく)安全になったら報道するのでしょうか。

    • つまり化石賞受賞国は「言論の自由が保証されている国」ということですね。

      • >つまり化石賞受賞国は「言論の自由が保証されている国」ということですね。
        ということは、化石賞を受賞したくなかったら、(極論ですけど)言論の自由をやめればよい、ということですね。

  • ドイツ「私達には余裕があるので、脱原発決めたよ!」(今年のGDP成長率、−1.0%)

  • >事故の可能性を完全にゼロにすることはできませんが、その可能性を限りなく低くすべく、努力を重ねることは可能ですし、

    完全にゼロにできないのであれば、事故を起こさない努力とともに起きても被害を最小限にとどめる仕組みを作ることが大切。
    NHKの特集でやっていたが今ヨーロッパでメルトダウンしても溶解した核燃料を受け止めて冷やし続ける仕組みの原子炉を考案中らしい。

  • たしか、米国、ロシアはCOP28に不参化、中国、インドは発展途上国扱い。
    COP28の規定が古すぎる。もう一度やり直しをしないといけない時期が来ていると思う。
    日本がリーダーシップを取っていかないと誰もやらない。

  • まぁ、あり得るんでしょうね。殴り返さない日本はちょうどガス抜きにいいんでしょう。
    「期待を込めて」って本当に思うのなら、中国に真っ先に言うべきでしょうし。

    まぁ、中国に言えないであろうことは、下記記事からもお察しです。

    ・ムーディーズ、中国の勤務者に「身辺安全のため在宅勤務を」(中央日報)
    https://news.yahoo.co.jp/articles/5db8f38dc9464fd7d80f207d30467883cb7800be
    元記事は英フィナンシャルタイムズらしいのですが、記事中には
    -----
    「ムーディーズ側は中国の国債格付け見通しを引き下げる場合、当局が中国現地の事務室を襲って自社の職員を拘禁し、強制的に調査をするおそれがあるとして、在宅勤務を指示した。」

    詳しくは記事に書いてありますが、拘禁して調査したり罰金を課したりとやりたい放題です。
    世界は本気で中国との付き合い方を考えなければならないと思います。

  • 日米両国、小型モジュール式原子炉の導入でガーナと提携

    https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/10/4225dfc94d0507f9.html

    昨年のJRTROの記事からです。日米両国はサブサハラで政情が安定しているガーナに対して導入支援を決定しています。この動きに対して、朝日新聞や毎日新聞等からほとんど反対の記事が出ていないところは面白いポイントです。
    アフリカ諸国の中で原発が稼働しているのは、現在のところ南アフリカ共和国のみ。その他にケニア、エジプト、ナイジェリア、そしてガーナにおいて原発導入計画が進んでいるようです。

    また、小型原子炉の導入の計画は韓国に対しても進んでいます。こちらは韓国が保守政権時に連発される覚書(MOU)であるところがミソでしょうね。

  • まあ、言い訳に窮して言っただけのことでしょう。

    当たり前のアタマ持ってる人間なら、なんで中国、米国でなく、日本だってと不思議に思う。
    本当に出したいところは別にあるんだけど、差し障りがあるからなんて言うのなら、
    そんな賞、そもそも出すの止めとけば良いだけのはなし。

    ともかくこういう環境オタクの面々にとって、憎いのは日本なんですよ。
    石炭火力にしろ、EVシフトにしろ、
    彼らの理想が如何に浮世離れしたものであり、より現実的な解決法があることを
    実践で示し続ける目障りな国なんだから。

    •  言い訳に窮して自分たちがシナチスに忖度していることをうっかりカミングアウトした間抜けさには呆れるしかありません。
       殴り返してこない相手に対して文字通りCANCAN吠えているだけの去勢済みの野良公に過ぎません。

  • ソ連崩壊時に、西側の共産主義者が誤りを認めず、そして総括もできずに
    自身のアイデンティティーを闘争のできる「環境団体」に求めたような気がする。

    >CAN関係者は「中国国内でのNGO弾圧につながる可能性もあり、あまり刺激したくないのでは」
    時事通信に朝日新聞みたいに中国に忖度しない記者がいたとは驚きでです。
    文化大革命の時期に、朝日の記者だけが中国に残れたことをホコリにする朝日新聞。
    「環境団体」とみたら共産主義(中国ロシア)関連か背後関係を確認しなければ。

1 2