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寄付金横領事件で判明した、日本テレビ「リスク感覚」

やはり、日本テレビの沈黙ぶり、スルーぶりは、異常です。当ウェブサイトでも最近しばしば取り上げている『24時間テレビ寄付金横領事件』を巡って、どうやら日テレが報道番組や情報番組でも本件をほとんど取り上げておらず、公式声明も出ていないからです。雪印乳業食中毒事件の例に見るまでもなく、企業不祥事で企業が対応を誤れば、信頼は失墜するかもしれません。その危機感が、日テレからは見えてこないのです。

改めて…日本海テレビの「お詫び」

日本テレビ系列のチャリティ番組『24時間テレビ 愛は地球を救う』に関連し、放送していた系列局のひとつで寄付金の着服事件が発生した、とする話題は、当ウェブサイトでもここ数日、何回か取り上げています。

日テレ系列の日本海テレビジョン株式会社が11月28日付で公表した『弊社元幹部社員の不正について(プレスリリース)』と題した画像ファイルによると、事件の概要は、こうです(要約しています)。

  • 日本海テレビジョン放送株式会社の元経営戦路局長が弊社の売上金など総額1118万2575円を着服していた。うち264万6020円はチャリティー番組『24時間テレビ』に寄せられた寄付金から、853万6555円は売上金など弊社の資金から、それぞれ着服していた
  • 寄付金の着服は、一般の皆様から寄せられた善意を踏みにじって私腹を肥やした行為で、到底許せず、弊社は11月27日付で元局長を懲戒雇とし、28日に鳥取県警島取署に被害を届け出た。弊社は責任をもって保管すべき皆様の浄財が着服されるのを10年間、見落としてしまっていた

そのうえで、同社はこう述べます。

ご寄付いただいた皆様をはじめ、ボランティアで活動にご協力くださった皆様、同番組に関わる皆様、ご関係の皆様に深くおわび申し上げます。公共の電波をお預かりする立場として、あってはならない事態を引き起こしました。まことに申し訳ありませんでした」。

…。

お詫びの文書を「画像で」公表する非常識な日本海テレビ

声明文のなかで「まことに申し訳ありませんでした」などとお詫びしているわりに、その声明文をHTML文書でもPDF文書でもなく、よりにもよって画像ファイル(しかも画質も非常に粗いjpg形式で)で公表しているのは、いったいなぜなのでしょうか?文書をコピーされるのを嫌がったからでしょうか?

お詫びの文章を画像ファイルで投稿するという行為自体、あまりにも非常識で、二重に驚きます(※どうでも良い話ですが、最近だとiPhoneなどを使えば、jpg形式でも文字を読み取り、コピーすることが可能です。精度は粗いですが…)。

それはともかくとして、同社声明文によると、この元局長が着服したのは、こんな具合です。

24時間テレビの寄付金からの着服額
  • 2014年…50万2400円
  • 2015年…32万9000円
  • 2016年…34万8800円
  • 2017年…45万円
  • 2018年…30万円
  • 2019年…29万9000円
  • 2020年…23万4100円
  • 2023年…18万2720円
  • 合計…264万6020円

この金額については募金終了後、金融機関に運び込むまでの間、鳥取市内の同社本社内で保管していた紙幣や貨幣から、周囲の目を盗んで一部を持ち出し、自身の銀行口座に入金するという方法で着服していたということですので、同社の内部管理体制は何ともお粗末です。

募金終了後におカネを数えていない

ただ、この記述で気になるのは、募金を受け入れた際、金融機関に持ち込む前に、まずはその総額をなぜカウントしていなかったのか、という点です。募金終了後にただちに第三者の目を入れながら募金を勘定し、記録するのが通常の内部統制でしょう。

しかし、同社の記述が正しければ、募金終了から金融機関に持ち込むまでの間、紙幣や貨幣をカウントしていなかったということです。なぜなら、この元局長がおカネを抜いてもバレなかったということは、同社が募金終了直後の時点でおカネをきちんとカウントしていなかった、ということに他ならないからでです。

そんなことって、通常、あり得るものでしょうか。

いや、現実に不正事件が発覚したわけですから、「あり得るものなのだろうか」もなにも、現実に「あり得る」、というのが答えなのだとは思いますが…。

ちなみに同社によると、この人物が資金を着服するきっかけは、2014年当時、親族のためにカネを用立てる必要があったこと、会社に「着服しても発覚しにくい入金」(?)があったことから思いついた、ということだそうで、後輩らを連れてよく飲み歩き、スロットにも消費した、などと記載されています。

正直、人々の善意の募金を飲み代やギャンブルに浪費したというのは、(金額の多寡もさることながら)通常は「あり得ない行動」そのものでしょう。

本当の問題は日テレの沈黙ぶり

ただ、昨日の『寄付金着服事件に対し「ダンマリ」決め込む日本テレビ』でも触れたとおり、それ以上に不気味なのが、日テレ本体や系列局の、異常なまでの沈黙ぶりです。

なぜ…? 日本テレビ系『ミヤネ屋』、24時間テレビ寄付金の着服問題を扱わず 他局は軒並み報道「まさかのスルー」「ジャニーズ忖度と一緒」非難の声

―――2023/11/30 10:25付 Yahoo!ニュースより【中日スポーツ配信】

『中日スポーツ』の配信記事によると、日テレ系以外のテレビ局の情報番組ではこの問題を大きく取り上げたのだそうですが、日テレ系の情報番組ではこれについて沈黙を守ったというのです。

また、X(旧ツイッター)に一般の視聴者がポストした内容によれば、日本テレビの主要な報道番組・情報番組でも、報じられたとしてもごく簡単に触れられているのみだった、との報告もあります。

現実問題、現時点においても番組公式ホームページ『24時間テレビ 愛は地球を救う』を閲覧しても、少なくともトップページに着服問題はいっさい掲載されていませんし、『日テレトップページ』を見ても同様です。要するに、完全にスルーを決め込んでいることは間違いありません。

企業不祥事でメディアはどう反応して来たか

このあたり、企業不祥事が発生した場合、メディアがどう反応してきたかを振り返っておくと、今回の日テレの対応がいかに異常かわかります。

これには日テレと同一系列である読売新聞が配信した、こんな記事が参考になるかもしれません。

「社員は悪くありませんから」「私は寝てないんですよ」…企業イメージ、トップの謝罪次第で一変

―――2023/01/17 05:00付 読売新聞オンラインより

読売新聞の記事では、不祥事に対する企業トップの謝罪の仕方を特集にしているのですが、トップが謝罪するにせよ、「謝罪次第で企業イメージは一変する」、などと指摘しています。

それを、ご自身のグループ会社である日本テレビに対して教えてさしあげてはいかがでしょうか。

日本のメディアはこれまで、企業不祥事が発覚すれば、その企業に押し掛けてトップに根掘り葉掘り質問を繰り返し、徹底的に謝罪させてきたわけですから、どうして同じことを日テレに対して行わないのかが疑問でなりません。

もちろん、日テレ側としては、「不祥事を起こしたのは当社ではなく、系列局」だから「ウチは関係ない」、という言い訳も成り立つのかもしれませんが、それにしても沈黙は悪手中の悪手です。

ネットがなかった時代なら、「報道しない自由」を駆使し、メディアはメディア自身の不祥事を闇に葬り去ることができていたのかもしれませんが、現代社会にはすでにインターネットが存在し、新聞、テレビが報じなくても、ネット上で勝手に話題が拡散されたりもするのです。

ここから先はあくまでも想像ですが、おそらく日テレはこのまま逃げ切りを図るつもりでしょうし、事件を風化させ、『24時間テレビ』についても今後も続けていくつもりなのでしょう。

ただ、このインターネット社会において、最も肝心な「使途」――、すなわち「私たち支払った募金がテレビ局関係者のギャンブルや飲み代に使われるかもしれない」という点に芽生えた一般人の不信感は、「報道しない自由」でやり過ごすことができるほどに甘いものではありません。

また、万が一、もう1社、この手の不祥事が発覚しようものなら、『24時間テレビ』どころか日テレ自体が終了する可能性すら生じて来るでしょう。

いずれにせよ、日テレが本件で沈黙を守り続ける選択を取るのならば、それについて私たち一般人が外野からどうのこうのいう話ではありませんが、心ある人はますますテレビを見なくなることだけは間違いないといえるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (5)

  • イギリスには第一次世界大戦終結の日11月11日を記念したリメンバランスデイというのがありその前に街頭で寄付を募っている。日本で言えば赤い羽根のようなもので胸にさすポピーの造花をくれる。(BBCのアナウンサーが胸にさしているのをみる機会があるかもしれない)
    その際の募金は大きめのペットボトルぐらいの大きさの筒で集められるがその筒には結束バンド様のもので封緘がしてある。中の現金には開封時以外アクセスできないようになっているのだろう。またその筒にはおそらく連番が記載されていて貸し出された筒と現金入りで返却された筒の数が合致していることを確かめているはずだ。募金と言う性格上領収書を欲しがる人はいないので入金の記録を残すことはできない。したがって現金にアクセスできる機会を極力減らすのが内部統制の肝かもしれない。
    今回の件では、募金は透明の箱に受けて募金活動終了と同時に封緘をする。その箱はテレビ局のロビー、つまり人目につくところに置き、その前にガードマンを立たせる。
    銀行に渡した後のカウントは銀行員に任せるが必ず放送局の人間を立ち合わせる。
    銀行と放送局立ち合いのもと現金のカウントが行われた旨と金額を期した書類を作成して当事者がサインする。

    これでどうですか。

    • >リメンバランスデイというのがありその前に街頭で寄付を募っている。

      こういう意義付けのある募金で、関わる人間もボランティア意識が前提のイベントは、貢献するという精神性がありますね。

      所が、TV局がやるチャリティなるものは、TV局の売名と視聴率稼ぎが目的ではないかと思われるような不純感がある。皆、これは感じているのではないだろうか?
      今回の事件を見ると、コソ泥や隙あらばネコババしたいなんて不純な心を持った人間がウヨウヨ?いる環境の中でやっていようなものではないか?と見えて来てしまう。

      そもそものチャリティ・募金の企画意図が、売名と視聴率稼ぎという不純なものなんだから、こんな輩が裏で蠢動するのではないか?

      そんな不純な動機が恥ずかしくて、とても、コメントなんて出せないのか?
      チャリティ意識が無くてやっているのだから、募金とお金を厳重に管理しなければなんて気持ちなんか元から無かったのか?
      もしかしたら、今でも、何が悪いのか分かっていないのかも。

  • 確かにこの完全スルーっぷりはオールドメディアとしても異常ですね。
    責任のなすりつけ合いでも発生しているんでしょうか?

    それとも

    「どうせこの件でウチを責める奴らは最初からマスゴミ連呼している奴らだ、
    あいつらはウチの番組なんか最初から見ていない。むしろ報道なんかしたら
    せっかくウチの番組を見てくれる有難い”お客様”にウチの本性がバレてしまう」

    と開き直っているんでしょうか?

  • 私見。
    イデオロギー的な要素もありますが、こういう
    「どんぶり勘定」
    がまかり通っていて、居心地よいぬるま湯の業界だから、

    宗教団体
    パチンコ業界
    colaboなどの弱者支援業界

    などのどんぶり勘定に対しては、天に唾する形だから大手メディアは下を向いて黙り込んでいるのだと思います。

    野党や大手メディアは、次はパーティ券のことで大騒ぎしたいようですが、あちらは少なくとも法律で定められた収支報告はきちんとやってますから、領収書で百パー追跡可能。
    それに比べて領収書も無い人たちがなにを偉そうに!ですね。

    官房機密費をくどくどいうなら、取材先秘匿のための領収書無し経費なんかもゼロのはずですが、はて。

  • ネット時代になってスキャンダルが風化しにくくなったのかもしれませんが、風化しなくなったのではないと思います
    以前だったら3ヶ月で忘れられたものが、1年以上かかるようになったという感じでしょうか
    その間、日本テレビの体力が削られるくらいの騒動に発展するかどうか
    テレビ局内のスキャンダルに対する追及は甘いことが多いですから、まんまと逃げ切るのではないでしょうか