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金の切れ目は縁の切れ目?一帯一路融資が5年で激減か

当ウェブサイトの仮説では、中華金融の最大の特徴は、「西側諸国が手を出さないプロジェクトにもカネを突っ込む」という、「与信審査能力の欠如」にあります。台湾メディアが引用した米ニューヨークタイムズの報道によると、中国が主導する「一帯一路」に基づく新規融資実行額は、2016年の900億ドルから、2021年には一気に50億ドルにまで減少したそうです。カネの切れ目は縁の切れ目、でしょうか。

AIIBと一帯一路の現状

AIIBの惨状

中国が推し進める「一帯一路」構想とは、わかりやすくいえば、中国の資金やイニシアティブで欧州から中國までを結ぶ、一種の「共栄圏」のようなものを作る、といった発想でしょう。

これらのなかでも重要なものは、交通を中心とするインフラを整えることにあるのでしょう。

そして、中国政府が設立した「シルクロード基金」、あるいは今から8年前の2015年12月に発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)などは、こうしたインフラ金融を資金面で支えることを目的としたものと考えられます。

こうしたイニシアティブに対し、当初、非常に順調に進むかにも見えました。

とくにAIIBに対しては、英国やフランス、ドイツなどG7諸国を含めた多くの国々続々と参加の意思を表明し、その結果、現時点において出資国は既存の国際開発銀行であるアジア開発銀行(ADB)を大きく超える92ヵ国、出資約束額も合計で1000億ドル近くにも達している状況です。

一部のジャーナリストらは「日本もバスに乗り遅れるべきではない」、「もしAIIBに参加しなければ、日本はアジアのインフラ金融から除け者になってしまう」、などと強く主張するなどし、AIIBに出資しようとしなかった日本政府の姿勢を厳しく責めたてたほどです。

ただし、AIIBについては『コロナ特需も落ち着く=AIIB』などでも指摘したとおり、コロナ禍以前は融資が伸び悩み、「鳴かず飛ばず」の状況が続いていましたし、また、コロナ禍の発生後に融資が急伸したものの、それらの多くはインフラ金融とはあまり関係のない、コロナ関連融資が多かったことも事実です。

なにより、AIIBの融資の伸びもほぼ一巡してしまいましたし、現時点において融資実行額もたかだか300億ドル前後に過ぎず、ADBや世銀との協調融資案件も多いAIIBが、「アジアのインフラ金融を席捲している」とは、とうてい言い難いというのが実情に近いでしょう。

いまひとつ見えない「一帯一路」

一帯一路を担う金融機能のひとつとされてきたAIIBがこのようなていたらくですから、一帯一路構想自体も、推して知るべし、といったところでしょう。

というよりも、この一帯一路自体、当初から「なにやら漠然としていて、曖昧である」といった問題を抱えていることもまた間違いありません。

実際、中国政府の公式ポータルサイト『中国一带一路网』などを見ても、「一帯一路とはなにか」に関し、わかりやすくて簡潔な定義というものは見当たりません。ただひたすら、習近平(しゅう・きんぺい)主席の写真だの、鉄道の写真だの、プロジェクトの一覧だのといった「成果」らしきものが掲載されているのみです(ちなみに画像ファイルは無駄に重いので注意してください)。

【参考】一帯一路ポータルに掲載されていた習近平主席の誇らしげな写真(クリックで拡大)

(【出所】『中国一带一路网』トップページ)

正直、独裁国家である中国国内では、この手のサイトでも十分かもしれませんが、一帯一路に参加している国には民主主義国家もありますし、そうした民主主義国家にとっては、有権者は自分たちの国の政府が参加しているプロジェクトが、いったいなにを目的としたものであるか、きちんと知る権利があります。

一帯一路に懸念があることを中国自身も認めている!

ちなみに『中国一带一路网』の英語版 “BELT AND ROAD PORTAL” を閲覧すると、このポータルサイトが開設された目的が記載されているページがありました。ここにはこうあります。

The Belt and Road Portal responds to major concerns at home and abroad in a timely manner, interprets key concepts about the Belt and Road Initiative (BRI), releases latest BRI-related information, presents latest achievements of Belt and Road cooperation, and provides information services and communication channels for enterprises, social organizations and citizens to actively participate in Belt and Road cooperation.

(【出所】 BELT AND ROAD PORTAL, 2023/06/21付 “About Us” より。下線部は引用者による加工)

下線で示した箇所にあるとおり、このウェブサイトの目的は “major concerns at home and abroad” 、つまり「国内外の懸念」に対して説明するためだ、とあります(ちなみに “the Belt and Road” は一帯一路の英語表現であり、「BRI」と略されることもあります)。

このあたり、中国共産党がざっくばらんに、「一帯一路を巡っては国内外で懸念が強まっている」と認めてしまっている、ということですが、いずれにせよ、この『中国一带一路网』のようなサイトが立ち上がっていること自体、もはや一帯一路が怪しいものであるということを隠し立てもできなくなっている証拠なのかもしれません。

一帯一路金融の正体は与信審査能力の欠如

さて、先日の『岐路に立つ一帯一路:リスクの取り方を間違う中華金融』などでも取り上げたとおり、当ウェブサイトとしては、この「一帯一路」を含めた「中華金融」の正体については「リスク・リターンの測定を壮大に誤っているものである」、という仮説を提示しています。

ものごとの本質は、中国の与信審査能力の低さにあるのかもしれません。ウェブ評論サイト『フォーブスジャパン』には、中国が進める一帯一路金融に関する論考が掲載されているのですが、同論考にこんな節が出てきます。「中国はアジアやアフリカ、中南米、中東、欧州周縁部などの経済的に困窮した国に接近し、港湾や鉄道、ダム、道路といった重要なインフラ事業への融資をもちかける」。じつは、これこそが中華金融の本質であり、言い換えれば、中国が「踏み倒されるリスク」を積極的に取りに行っているようなものです。「日本はAII...
岐路に立つ一帯一路:リスクの取り方を間違う中華金融 - 新宿会計士の政治経済評論

本来ならば西側諸国などがおカネを貸さない不採算プロジェクトなどに、中国が積極的かつやや強引に投融資を行っているのではないか、という疑惑です。もう少し正確な言い方をすれば、「与信審査能力の欠如」でしょう。

おそらくこの見方については、さほど的外れではないはずです。

もちろん、いくつかのプロジェクトで中国が整備したインフラを相手国から取り上げている、という事例が発生していることについては、決して甘く見て良い話ではありません。たとえばインド洋に浮かぶスリランカのハンバントタ港に中国が核兵器などを持ち込めば、中印関係が一気に緊張するかもしれません。

ただ、「相手国にインフラを作り、相手国が債務弁済できなくなったときにそれを取り上げる」という手法は、考えようによっては「最初から採算性がないプロジェクトを中国が主導して遂行した」、という意味にも受け取れなくはありません。

そして、中国がファイナンスを付け、建設を請け負ったプロジェクトについては、長期的なインフラとしては使い物にならないか、あっても非常に利便性が低いものとならざるを得ないのかもしれません。

相手国を考えない中華金融

利便性が低いインドネシア高速鉄道

その典型例が、インドネシア高速鉄道ではないでしょうか。

先日の『案外便利でない?インドネシア高速鉄道と続く中国依存』でも指摘したとおり、中国の支援で建設され、最近になって開業したインドネシア高速鉄道に関しては、現在のところ、ジャカルタ・バンドン間の142㎞を結んでいます。

もちろん、在来線だと3時間以上かかった区間が最短35分で結ばれるようになったという意味においては、大変画期的な鉄道であることは間違いありません。

ただ、それと同時にこの鉄道、ジャカルタ側のターミナル駅が、都心のガンビル駅ではなく、ガンビルから南東に約11㎞離れた東ジャカルタ市にあるハリム駅に変更されています。

東京の例でいえば、東海道新幹線のターミナル駅が東京駅ではなく、東京駅から直線距離で約10㎞離れた地点(たとえば横須賀線の西大井駅あたり)に設けられるようなものといえるかもしれません。

【参考】東京-西大井の地理的関係

しかも、バンドン側のターミナルも、バンドン駅ではなく、バンドン中心部から南東に20㎞ほど離れたから見て南東にあるテガルアールにターミナルが置かれているそうです。

また、テガルアールの手前のパダラランにも駅が設けられ、そこからバンドン駅まで18分の在来線のリレー快速列車(フィーダー列車)が運行されるそうですので、現実にはジャカルタ・バンドン間で高速鉄道を使用する人は、パダラランで下車するケースが多いのではないでしょうか。

日本案と見比べてみると…!?

この点、日本側でJICAが2015年5月に取りまとめていた『インドネシア国・ジャワ高速鉄道開発事業準備調査 ファイナルレポート』(PDF)の14ページ目を読むと、採用すべき「A案」では、ジャカルタ側、バンドン側ともに都心を直結するというものでした(図表)。

図表 日本案のファイナル(※赤字がA案)

(【出所】2015年5月付・JICA『インドネシア国・ジャワ高速鉄道開発事業準備調査 ファイナルレポート』P14)

具体的には、ジャカルタ側はジャカルタ市内のドゥクアタス駅で、ジャカルタ東方にあるベッドタウンのブカシにも駅を設置し、さらにバンドン側はバンドン中心部にターミナルを設けるとともに、過密状態にあるバンドン市内の都市機能の移転候補地とされているグデバゲまで延伸する、というものでした。

このルート案からは、日本の東海道新幹線が東京駅だけでなく、苦心して後から建設した品川駅にも停車させることで利便性を飛躍的に高めている、という知見が見えてきますし、将来的にバンドンからスラバヤに向けて延伸しやすい設計としている様子もうかがえます。

インドネシア高速鉄道自体、インドネシア側が日本案を蹴り飛ばし、中国に建設を委ねたわけですから、インドネシアが日本案を採用していたとしたときに、この図表のA案が実現していたのか、という「IF」の議論をしてもあまり意味はないかもしれません。

結果的に、中国が作った高速鉄道は、ジャカルタ、バンドン双方の都心から離れているわけですし、高速鉄道の乗車時間が最短35分だからといって、ジャカルタの都心からバンドンの都心まで35分で到達できるわけではないのです。下手をすると1時間以上の時間がかかるため、あまり利便性は高くなさそうです。

また、インドネシア側は高速鉄道のバンドン以東の延伸プロジェクトについて、日本にも参加してほしいと要望していたようですが、これについては日本の四方敬之・内閣広報官が「高速鉄道に異なる国の技術を混在させるのは難しい」と一蹴しています(『日本はインドネシア高速鉄道延伸の入札に「関心なし」』等参照)。

結局、インドネシア側の「安物買いの銭失い」、という構図ですが、これも一帯一路プロジェクトの発想が、「都市設計そのものの観点から利便性を高める」のではなく、「とにかくできるだけ安く仕上げること」を優先しているという証拠でしょう。

インドネシアと同じ地震国であるとともに、高速鉄道や在来線などを複雑に組み合わせて効率的な輸送システムを作り上げてきた日本の立場から見れば、インドネシアが目先の利益につられて中華鉄道に手を出したこと自体、ちょっと残念ではあります。

台湾メディアが一帯一路を批判的に紹介

さて、『一帯一路会議に「日本として出席予定なし」=官房長官』でも取り上げたとおり、中国・北京では一帯一路10周年を記念し、17日と18日の両日、一帯一路に関する国際会議が催されたようです。

その会議を巡り、台湾メディア『The News Lens』(TNL)の日本語版ウェブサイトが18日付でこんな記事を配信しています。

中国が「一帯一路」10周年会議で成果強調 現実は習主席提唱の構想、すでに曲がり角

―――2023/10/18付 The News Lens Japanより

報じたのが台湾メディアであるという時点で、その記事内容の中立性について、若干の留保は必要かもしれませんが、ただ、内容としてはなかなかに興味深いところです。記事冒頭には「注目ポイント」として、こんな趣旨のサマリーが掲載されています。

中国の巨大経済圏構想『一帯一路』の国際会議が北京で17日から2日間の日程で行われている。習近平国家主席が提唱してから10年を迎え、世界各地のインフラ開発を支援した成果をアピールした。中国は一帯一路を通じて国際的な存在感を高めてきたが、過剰融資で低所得国が債務危機に陥る『債務のわな』などへの批判も増え、曲がり角を迎えている」。

こうしたリード文を置いた記事は、それだけで大変に読みやすく、好感が持てます。

TNLによると、この会議では中国側は欧州と中国を結ぶ貨物列車、インドネシア高速鉄道などの実績を強調したうえで、これまで総額1兆ドルを多くの国のインフラ建設に投じてきた具体例を紹介するなどしたそうですが、おそらくこれが先ほど指摘した「ポータルサイトの鉄道の写真」の正体なのでしょう。

5年間で900億ドルから50億ドルに激減

それはともかく、この記事では習近平主席がなぜ「一帯一路」を提唱するようになったのか、また、一帯一路がどのような課題を抱えているのか、米紙・ニューヨークタイムズの報道なども交えながら、その経緯などを簡潔に説明しており、大変有意義でもあります。

なかでも面白いのは、こんな記述です。

入手可能な最新データによると、ボストン大学の世界開発政策センターは、中国の海外融資やその他の開発金融の発行額が、16年に約900億ドル(約13兆4784億円)でピークに達し、その後21年までに50億ドル(約7488億円)未満にまで減少したと試算している」。

2016年といえば、インドネシア高速鉄道案件の発注が2015年9月に中国にかっさらわれた直後のことで、このときはたしかに世界中で中国のインフラ金融に対する期待が高まっていました。また、2015年末に発足したAIIBが事実上、事業を開始したのも、この年です。

しかし、たった5年で900億ドルから50億ドルに激減したというのも興味深い話です。

「カネの切れ目は縁の切れ目」、といったところでしょうか。

2021年といえばコロナ禍の影響もあったのかもしれませんが、それでもアジアなどでのインフラ投資需要が低下したとする兆候はありませんから、やはり中国特有の問題で壁にぶち当たった可能性は濃厚でしょう。

無理な与信は続くのか

ところで、TNLは、記事をこう続けます。

融資の一部は既に焦げ付いているが、スリランカ、スリナム、ザンビアなどとの債務軽減交渉で中国は一部支払いの遅延は認めるが、債務免除は断固拒否するなど強硬姿勢をとっている。これも中国の〝余力〟の無さを示したものとの見方もある」。

この指摘については、当ウェブサイトとしてもほぼ同意します。

ただ、「余力」という意味では、じつは最初からなかったのかもしれません。

中華金融の多くは、最初からプロジェクトの採算見通しが甘く、西側諸国の主要な民間・公的金融機関や国際開発銀行が手を出さないような案件に、かなり無理をして資金を突っ込んでいる、というのが実情に近いでしょう。

このことは、中国が「債務の罠」で途上国を自陣営に引きずり込もうとする試みも、中国よりも狡猾な債務国の前では無力だ、ということでもあります。

実際、中国から通貨スワップを積極的に引き出して使っているとされるのは、トルコやアルゼンチンなど、「債務国」ばかりですし、とりわけアルゼンチンは通貨・ペソが現在もドルに対して暴落中であり(※公式レートの話)、外貨準備も枯渇気味です。

2001年にアルゼンチンが世界各国の債権者に対してやったこと――すなわち、「対外債務のデフォルト宣言」――を、来年か再来年あたりに中国に対してもやらないという保証はありません。そのとき、中国は「貸したカネ返せ」と空母(?)を地球の裏側の南米まで派遣するつもりでしょうか?

それどころか、中国は対外債務だけでなく、相次ぐ不動産会社の経営危機に代表されるように、国内債務の問題も噴出している状況です。

いずれにせよ、中華金融を甘く見るべきではありませんが、それと同時に一帯一路に代表される無理な与信が続くのかどうかについても、じっくりとその実態を見極める姿勢は重要ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (20)

  •  アメリカは古くは黒船、現代では原子力艦船による実質的な砲艦外交をしてきました。「空母ならまだアピール、潜水艦なら割とヤバイ」なんて評価を外野からされるくらいお馴染みです。
     これを、やっとこさ外洋にヨチヨチ出始め、艦載機も本格的な能力獲得に至らない段階の中華空母で、安心して遂行できるのか。自画自賛に邁進する習近平も、これには自信が持てないところではなかろうかと思います。大層な脅しでチラつかせる刀が竹光だったり、用心棒先生がただのチンピラだったりバレたら、先が無くなりますし。
     ココ最近の脱ドル報道とそのツッコみでもそうですし、経済・金融・軍事の実力、またそれらの余裕分というものが、まだまだ米中では少なくない差がありそうです。アメリカからしても日本からしても、だからこそ彼らの暴走暴発が怖いという側面もありますが。

  • もし、中国が「無担保、返済の催促なし、返済期限無限、貸し出し金額無制限」と言えば、一帯一路に参加する国は、更に増えるのではないでしょうか。一帯一路に参加する国が更に増えれば、習近平国家主席の面子も高まるでしょう。

  • そもそも共産主義者に「採算性」などという発想あるのか。
    今の中国は清朝の次に出てきた「共産王朝」で習近平は6代目の皇帝。皇帝がやれと言ったことはやらないと左遷される。
    空母や人工島を作ってせっかく稼いだカネを浪費しているところを見ると、この王朝もあと2~3代で滅亡か。

    • sqsq 様
      >そもそも共産主義者に「採算性」などという発想あるのか。
      中国には、中国皇帝に貢物をもっていくと、その何倍ものお土産がもらえる朝貢貿易というものがあります。プーチン大統領や他の国も、一帯一路フォーラムに、お土産目当てで集まったのではないでしょうか。

  • 元々中国は海外や海洋にあまり興味を示さない大陸国家でしたが、習近平総書記がトップに就任して以来急に海洋を重視するようになりました。好調な経済に支えられて毎年日本の十倍以上の防衛予算を注ぎ込みアメリカに迫る海軍力を持つまでになり、軍事力を背景に国際的な存在感を増して、海の一帯一路も経済力と共に強力な海軍力があってこそのものです。

    国際司法裁判所の判決をも無視して南シナ海のほとんどの領域をオレのものだと強弁するのも、習近平総書記の頭の中では一帯一路とそれこそ一体となっているからでしょう。中国の強気を可能にしているのは膨らみ過ぎた海軍力であり、台湾侵攻も現実的に起こり得る状況となっています。今のところ偉大なる習近平総書記にあっても、台湾侵攻は中国自身が負う損害を考えると損得勘定が合わず、微妙なバランスを保ってはいますが。

    では、中国経済がピークを打って下り坂になると、これらの膨大な維持費がかかる軍備はどうなるのだろうと心配になってきます。予算の滞りと共に人民解放軍も縮小・消滅するなどということはないと思います。中国歴代王朝の末期を振り返ると、中央の支配力が弱まると、それぞれ組織の生き残りを掛けて台頭して来るのが地方の軍閥というパターンが結構あります。
    今でこそ習近平王朝は盤石に見えますが(それでも見えないところで熾烈な内部粛清はやっているみたい)、一旦経済力が弱まり中央の統制力のたがが外れて、人民解放軍が分裂し群雄割拠の状態になった時が本当の危機となるかもしれません。

    えーと、一帯一路がテーマでしたね。だいぶ、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な事をつらつら書いてすみませんでした。でも、中国人がこぞって日本をはじめ海外に逃げているのを見ると、沈没する船からネズミが逃げるのを連想してしまい、なにか嵐が来そうな。。。

  • 話を敢えて単純化すれば、そもそも一帯一路構想なるものは中国がユーラシアで経済的覇権を握ることが最終目的なのであり、AIIBはその覇権構想を実現するために、金融面から支援することを目的としている設立されたものだと考えています。しかも、AIIBの場合、他国のお財布まで使えるのですから、中国から見れば、100以上もの国々が中国の覇権確立に協力しているかのように見えたはずです。言い換えれば、中国は実際の国力以上の投資を実行するための機関としてAIIBを設立したのであり、言わば人のフンドシで相撲を取って横綱にまで成り上がろうとするものでした。上手くいけばね。
    そのような政治的思惑が先行して設立されたAIIBが、西側金融機関的厳格さでもって与信審査など行うはずがありません。よほどデタラメな案件でなければ、中国の覇権確立にとって有益であると見做されれば、事業の採算性や償還可能性など二の次になるというのは、十分に予測された事態でしかありません。与信審査能力の欠如という観点から見ると、設立当初から、与信審査よりも政治的思惑が優先するという原則の下に事業が開始されたのだとすれば、あたかも与信審査をロクにしてないように見えるというのは、予定通りだったとも言えます。

    でも、中国が高度経済成長を続け、経済的余力を増大させまくっていた頃ならばともかく、もはや中国が再び高度成長の波に乗れることはないでしょうし、中国の覇権確立に協賛してくれていたはずの各国はちっとも出資金を振り込んでくれないし、さらには、人民元建てでの融資がほとんど実行できず、米ドル建て融資となったために、国際金融の常識の枠外で行動することができなくなりました(余談ですが、人民元建てではなく米ドル建て融資となっているのは、融資を受ける側が米ドル建てを望んだせいではないかといます。つまり、人民元にはまだそれだけの信用がないのです)。中国の当初の目論見からは大幅にずれていると言えます。

    AIIBが鳴かず飛ばずなのは、簡単に言えば、一帯一路構想が目論見通りに進展していないからです。構想が進展しないのは、中国の「野望」が見透かされているためなのか、あるいは思っていたほどの経済的利益を中国が供給できていないためなのかはよくわかりません。
    でも、個人的には、そもそも一帯一路構想なるもの自体が国力を顧みない大風呂敷であり、構想やAIIB参加国が覇権確立の協賛国であるという見立てそのものが、決定的な錯覚でしかなかったのではないかと思っています。

  • 賛同している国は:
    「一帯一路?よくわかんないけど金くれると言うから来てみた」

    そんなとこじゃないの?

    • >>賛同している国は:
      「一帯一路?よくわかんないけど金くれると言うから来てみた」

      核心を突いてると思います。
      イタリアの離脱のニュースで、その理由が「期待してたほど投資が無かったから」というのを聞いて、「あんたも投資してもらう側のつもりだったんかい!」と思わず心の中でツッコミを入れてしまいました。
      いつもできるだけ先入観を持たないように気をつけてるんですが、「先進国は投資する側だ」という勝手な思い込みがあったようです。
      チェンマイイニシアチブで韓国が東南アジア諸国からドルを供出してもらおうと考えてるのを彷彿とさせられました。

  • AIIB、やってることはかつてのア○フルとか、武富○のそれと同じにしか見えません。

    AA諸国の港湾やら鉱山を借金のカタに巻き上げてるようですが、それらを運営していく中国の経済がこれからどうなるのか・・・。

    相変わらず、GDPはまだまだプラスだと喚いているようですが、それを裏づけるデータはどこにも見当たりません。そもそも中国のGDPの25%から30%を占めると云われた不動産業界があのていたらくなのに、GDPがプラスというのは説得力がなさ過ぎです。

    かつて世を席巻した高利貸し業界がその後どうなったか、私たちは冷静に且つ生温く見守るべきかとかと思っています。

    • 今となっては「バスに乗り遅れるな」というワードは、後進国・中進国の経済成長率(10%内外)を毟り取るチャンスを逃すな程度の意味にしか聞こえませんね。
      で、実際のところ経済成長を促すのではなく借金漬けにしてインフラを奪う(主権を奪う)ことに費やされている。
      思考実験として「大東亜共栄圏基金なんてものが作れていれば」と思いますが、当時の欧米は植民地利権を持っていたから対立関係にある。
      あるいは満州利権を独占しようとしなければ(米欧にも開放すれば)、、というifもありますが、これまた後知恵ですね。主導権を持つものが総取りするという時代でもあり、主導権そのものを争っていた時代ですから。
      視点としては、みんなで力を合わせて栄えよう(共栄圏)という国連的な(地球市民的な)建前の陰に覇権主義的な本音を隠した企てをどうやって頓挫させるかという局面だと思うのですが、目先の利率に喰らい付いた欧州勢の武○士アイ○ル的な振る舞いが裏目に出ましたねぇ。

  • 一帯一路」の意味が、この言葉が出始めた時から分からない。これが、シルクロードの現代版だとすれば、シルクロードとは、中国とヨーロッパを結び、その沿線地域もその商業活動によって恩恵を受ける、という事を想定しているものなのか?多分、そんな構想だと聞いた気もする。
    しかしながら、この構想については、そんなに上手く行くものかな?という感想があった。
    1.基本、中国起点で、中国が大きな経済容量があることを前提に、片方の大きな経済容量があるヨーロッパと交易する、という構図が骨格である。そして、その沿線地域は、その流れのお溢れに預れるだろうという仕組み。
    しかし、これは主に、中央アジアを通る鉄道をヨーロッパまで繋げることで実現したが、中国からヨーロッパまで、弾丸列車を走らせるだけになっているので、途中の地域の経済には何のメリットも無い。鉄道の通過料が入るくらいでは無いか?これが、中世のシルクロードとは違う所で、弾丸列車は全く途中停車しないのだから、途中の地域には経済活動の発生のしようが無い。
    2.海のシルクロードと言っても、中国が海に出たいだけで、海の道の先には、経済力の乏しい東南アジアと中東とアフリカがあるだけなので、まともな交易が期待出来るのか?が疑問。結局、アフリカ諸国やスリランカなど経済力がない国に債務の罠を仕掛けて不良債権を増やしただけ。
    結局、陸海のロードとも元から、沿線の地域はこのロードのお陰で経済が活発になることが無い仕組みなのだから、これらの地域に融資需要が発生する訳が無い。
    わざわざ、AIIBなど作る必要は無かった。せいぜい、ADBの融資額が少し増えるかな?という程度の経済効果しか、中央アジアや東南アジアや中東地域に齎さない構想なのだから。
    今迄の融資実績が、それを証明している。やはり、経済は正直、利の無い所にはお金の需要は生まれない。
    中国が自分だけ儲かればいいと考えている内は、資金需要が生まれることは無い。
    G7の時に、それに対抗して中央アジア5か国を集めて会議をやって見たが、参加国のトップ達の白けた顔が、この事を物語っていた。俺達には何の利益もないよ、と。
    所で、シルクロードから外れている日本が、一帯一路に,参加する意味は全く無い。中世では、シルクロードでヨーロッパから伝わったものの一部が日本にも入って来たが、今は、世界中どこにでもアクセス出来るのだから、一帯一路など経由する必要性は全く無い。これ程、明白な事は無いのに、何に乗り遅れるというのだろう?

  • 今朝のTBS系では「一帯一路」を今後「いったいいちろ」ではなく「いちたいいちろ」と呼称します、なんてやってましたがそれなんか意味あるんですかね?
    おそらく反日マスゴミは全てそういう方針に変わるんでしょう。
    いちいち中共のやることに共鳴するような連中に公共の電波使わせといていいんですかね?

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