たかだか1人の無免許運転県議の「遅すぎる辞職願」は、「未来ある(?)若者」の身の振り方という、比較的くだらない論点だけでなく、じつはリニア新幹線の建設を妨害しているとされる川勝平太・静岡県知事の失職にも関わってくる可能性があります。無免県議に関し、ただちに補選が行われるというものではないにせよ、結果的に県議会の動向は注目に値するといえるかもしれません。
無免県議の違法行為振り返り
今年4月の静岡県議選で「最年少」当選した中山真珠氏(28)が8月、無免許運転を行ったとされる問題を巡る騒動は、以前の『静岡県「無免許県議」に「新たな無免許疑惑」が浮上か』や『無免県議に静岡県議会の3つの「全会派」が辞職勧告へ』でも紹介したところです。
本人の説明や一部報道等によるこれまでの流れを振り返っておくと、こんな具合です。
- 中山氏は自身のX(旧・ツイッター)に、8月4日午後3時ごろ、運転免許が失効しているにも関わらず、自家用車を運転したことを明らかにしていた
- 本人はまた、当時の所属会派「ふじのくに県民クラブ」に対し、8月2日に免許センターに赴いた際にも無免許を行っていたが、帰りは別の人に運転を依頼した、などと説明していた
- しかし、一部報道によると、防犯カメラの映像から、この本人の説明は虚偽であり、免許センターからの帰りも免許が失効した状態で運転して帰っていた疑惑も浮上している
- 無免許運転は道路交通法第64条第1項に違反する行為であり、また、同法第117条の2の2第1項第1号の規定により、3年以下の懲役か50万円以下の罰金に処されることがある
- なお、もしも懲役刑に処せられた場合は、執行猶予が付かない限り、公選法の規定に基づき失職するが、罰金刑または刑罰なしの場合、公選法上は辞職する必要はない
…。
当初は居座ろうとした中山氏
つまり、中山氏は単に無免許運転という違法行為を行っただけでなく、ウソにウソを重ねているという格好ですが、それと同時に今回の件で中山氏も懲役刑(実刑判決)を喰らわない限りは、県議として居座ることができてしまう、というわけです。
これが、話をややこしくしているのかもしれません。
すなわち、法的に辞職する義務はないにせよ、やはり無免許運転という非常識な行動をする人物が県議として居座ることに関し、多くの有権者が疑問を抱いている状態にあるのです。
しかも、8月下旬の一部報道によれば、中山氏は「精神面で不調を抱えていて」、「9月末までの休養を要するという趣旨の医師の診断書を県議会事務局に提出している」、などとされています。常識的に考えたら、県議としての職務執行が難しい状態で県議として居座ることが適切なのか、議論を招く状況でしょう。
いずれにせよ、もしも本人が深く反省し、政治家として再起を志すのであれば、今回の「居座り」は、いかにも不適切な選択だったのではないでしょうか。
それだけではありません。以前の『無免運転県議「どんな指摘も受け止める」→リプ欄閉鎖』でも取り上げたとおり、中山氏自身がXに投稿した内容が、またしても強烈なものでした。
まったくふざけた話です。「どのような指摘であっても真に受け止めながら」、などと言いながら、ツイッターのリプライ欄を閉ざし、しかも肝心の謝罪文自体をテキストデータではなく画像データで公表しているからです。問題のツイートは無免許運転が発覚した中山真珠・静岡県議が投稿したものですが、極めて不誠実であると言わざるを得ません。なお、この中山氏は、先月1票差で否決された川勝平太・静岡県知事の不信任案に関し、反対した人物のひとりであることもわかっています。無免許運転の静岡県議が謝罪文らしきものを投稿今年4... 無免運転県議「どんな指摘も受け止める」→リプ欄閉鎖 - 新宿会計士の政治経済評論 |
中山氏は自身の今後の身の振り方について、「まずは有権者のみなさまへのお詫びと説明をさせていただいたうえで、どのようなご指摘であっても真に受け止めながら、慎重に考えたい」などと述べたのですが、「どんな指摘でも受け止める」と言いながらリプライ欄を閉鎖しているのは、冗談にしては笑えません。
辞職勧告決議案の「続報」:メールで辞職願を送付
結局のところ、中山氏が所属していた会派自身も含め、静岡県議会の全会派が中山氏に対し、「虚偽説明は重い」として、辞職勧告決議案を提出する方針で一致した、などとも報じられています。
「虚偽説明は重い」無免許運転の中山県議 全会派が辞職勧告決議案提出へ 所属会派に警察と違う説明 静岡
―――2023/08/25 18:49付 Yahoo!ニュースより【テレビ静岡NEWS配信】
その「続報」です。
複数のメディアの報道によると、中山氏は6日、県議会事務局に対して辞職願を提出したそうです。
【速報】無免許運転の中山真珠県議が議員辞職へ 議会事務局に辞職願を添付したメール届く
―――2023/09/06 18:03付 Yahoo!ニュースより【テレビ静岡配信】
失効を気づきながら無免許運転、中山真珠・静岡県議が辞職願…4月の県議選で初当選
―――2023/09/06 18:48付 読売新聞オンラインより
無免許運転問題の中山県議 辞職の意向伝える
―――2023/09/06付 あなたの静岡新聞より
ちなみにテレビ静岡の報道によると、辞職願はメールにて添付したのだとか。
このあたり、中山氏自身が県議に「最年少で当選」したとされるわけですし、まだ20代ですから、本来ならば十分にやり直すことができる年齢です。しかし、正直、無免許運転が発覚してから「辞職願」に至るまで、1ヵ月が経過してしまっています。少々遅すぎたかもしれません。
失敗が許される(かもしれない)のは若いころの特権のひとつではありますが、さすがに県議という要職に就いてしまったなかで、ここまで酷い不祥事が大々的に取り上げられてしまった以上、そのハードルは極めて高いものとなっている可能性があることは間違いありません。
川勝氏の失職を防いだ中山氏が辞めると…?
さて、中山氏自身が今後、人生のキャリアをどう設計し、どう「立ち直っていく」のかについては存じ上げませんが、これに関してはご本人の問題ですし、正直「そもそも興味もない」という人も多いでしょう。
しかし、地方議会の話題でも、ケースによっては私たち日本国民全体の利益に関わることがありえます。というのも、静岡県といえば今年6月、川勝平太知事に対する不信任案が1票差で否決された(静岡県ウェブサイト『県議会令和5年6月定例会における審議結果』参照)からです。
これが地方自治法第178条に定める「不信任決議案」と「議会の解散」という論点を振り返っておくと、こんな具合です。
- 議会側が県知事に対する不信任を議決する(3分の2以上の議員が出席し、出席議員の4分の3以上の賛成が必要。地方自治法第178条第1項・第3項)
- 知事側は10日以内に議会を解散することができる(同第1項後段)が、解散後初めて召集された議会が再び不信任を議決した場合、県知事は失職する。この場合は同第2項・第3項の規定に基づき、3分の2以上の議員が出席し、出席議員の過半数の賛成でOK
- 知事側が議会を解散しなかった場合も、県知事は失職する(同第2項)
つまり、もしも6月の不信任案が可決されていたならば、川勝氏としては議会を解散するか、自身が失職するかの二択を迫られます。議会を解散したとしても、選挙後の最初の議会で再び不信任案が可決されれば、川勝氏はどのみち失職します(この場合は過半数でOKです)。
この最初の「4分の3」という要件が厳しいことは事実ですが、もしも中山氏が辞職し、その代わりに川勝氏の不信任案に賛成する人物が県議に就任すれば、川勝氏の不信任案は可決されるギリギリで可能性が出てきます。
その可能性がどれだけあるのか――。
すぐに補選が行われる可能性は高くない
この点、公選法第113条第1項第5号の規定によると、県議が辞職した場合には、その選挙区で欠員が2人以上になった場合等には補選が行われます。
公職選挙法第113条第1項
衆議院議員、参議院議員<中略>又は地方公共団体の議会の議員の欠員につき<中略>その議員の欠員の数が次の各号に該当するに至つたときは、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会<中略>は、選挙の期日を告示し、補欠選挙を行わせなければならない<中略>。
五 都道府県の議会の議員の場合には、同一選挙区において第百十条第一項にいうその当選人の不足数と通じて二人以上に達したとき。ただし、議員の定数が一人である選挙区においては一人に達したとき。
この点、中山氏の選挙区・静岡市清水区は定数が4名であり、同選挙区で現時点において中山氏以外に欠員は出ておらず、したがって補選がただちに行われるわけではありません。
したがって、川勝氏の不信任案が再び県議会に上程されたとしても、各議員が前回(賛成50対反対18)とまったく同じ投票行動を取った場合、賛成が50票のまま反対が17票に減ったとしても、全体の4分の3には届きません。
よって、この場合も知事に対する不信任案は可決されないか可能性が高いです。
ただ、川勝知事がリニア新幹線の工事を妨害しているなかで、たかだか1人の無免許運転県議の騒動は、「静岡県の行政や議会の動向が日本全体の国益にも直結するものである可能性がある」という意味において、注目に値する論点にも発展し得るものなのです。
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中山氏の選挙区は静岡市清水区で定数4、前回の選挙では5人が立候補し中山氏は3位で当選しました。このたび中山氏の辞職を受けて「すみやかに定数を充足するために補選を行うべく」他の3人の当選者のだれかが辞職すれば、最速で知事の不信任決議案可決の可能性が高まるわけですね。
これから市長擁護の17名の議員は、議会開催中は一人たりとも病欠も出張で欠席もできない状態が続くわけですね。
>3人の当選者のだれかが辞職すれば
リスクはあるが、国益に直結することなので、反知事派の本気を見せてほしい。
どんどん不寛容になってくるね。
無免許で当て逃げ事故やった都議会議員は懲役くらいにしないとバランスがとれないね。
中山真珠氏について
無免許運転の中山真珠 県議が辞職の意向固める 雲隠れ続き説明責任果たさぬまま…問題発覚から1カ月【静岡発】(FNNプライムオンライン)
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/b38e99606e731f26557aee4574634d2af9f8a3b3&preview=auto
>県民を代表する公人として“説明責任”という最低限の務めを果たさずに静岡県政を離れることに
最低限やるべき務めは果たすべきかと思う
退職金4060万円を2回も受け取りながら副知事3人は辞退…自分にはとことん甘い川勝知事の「職権乱用」(プレジデントオンライン)
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/22b8891aad550677c408c41dc750493a55e987af&preview=auto
静岡住居でないのでいいづらいが「最低レベル」の首長かと思う
リニアのためにもはやくいなくなってと思う方も多いのではないかな?
なんか不祥事議員はいうに及ばすみんな同じ表情をする。唇をぎゅっとかんで、目を真っ直ぐに、宙に浮かせる。べつにゲラゲラ笑えとは言わないが無表情だ。不倫しようが、慰安旅行してエッフェルポーズとろうが、今回の無免許もそうだし、東京都の女性議員も往生際はわるかった。言葉は踊るが反省してのさばさば感がない。そりゃそうだ。「センセイ」の呼称をなくし、各種特典をなくし、高額な賞与をなくすのだ。未練たらたら往生際は悪くなる。28歳なら実社会であるなら「若気の至り」で「やり直し」が効くんだろうが、こんだけ嘘を並べた挙げ句の辞任なら国民、県民、市民の支持はうけられまい。みんな大変な思いで生活しているのだ。今はコンプライアンスが厳しい時代。再起の道は茨の道だ。
コメント失礼します。
木下元都議、東谷元議員、そして中山元静岡県議か。皆税金泥棒好きですね。
税金泥棒を何十年と続けている共産、社民、立憲民手当は、税金泥棒のノウハウをもっとバラまけば、屑候補と信者でもっと私腹を肥やせるのでは?
木下富美子はわかる。中山真珠もわかる。で東谷はしらんかった。比例区代表はいらない。しかし、全員「悪」にみえる。ガソリン代の過剰使用だのまあ、、色々だな。自分等に厳しい罰則を作れないものかね?離党禁止で一発で辞職とか入院するほど体調不良ならその間は歳費支給なしとか辞職して体調回復をしなければならないとか、、国会中の不逮捕特権なくすとか、検察、警察は議員の影響を排除するとか、だけど裏金をつくるといけないから監査をうけるとか。不祥事議員は復活禁止法案はいいな。税金の投入には厳しく公開を迫るのもいいな。最後にもう一度。比例区代表はいらない。選挙区のみ。すくなくとも兼業立候補は禁止。民意を受けない当選者は失格とする。