本稿は、ちょっとした「感想」です。もしもあなたが韓国観光公社の担当者で、「訪韓外国人を増やす」ことだけを目的とするならば、自国を「日本の一地方である」と誤認させることで、米国や欧州などの旅行会社に「コリア・イン・ジャパン」(おっと…)といったツアーを売り込む戦略は、決して間違っていません。一種の「コバンザメ戦略」、というわけです。韓国政府が現実にそれをやっているフシがあるのは気になるところですが…。
訪韓外国人は月間100万人直前
先日の『ノージャパン忘却の韓国…「殴られた日本」は忘れない』でも指摘したとおり、日本を訪れる韓国人が急増しています。
これに関連し、韓国観光公社も31日までに2023年6月における入国者数を公表したのですが、これによると韓国を訪問した外国人は960,638人で、そのうち日本人が196,512人でだいたい20%を占め、これに中国(168,035人)、米国(121,378人)、台湾(97,365人)などが続きます(図表1)。
図表1 韓国に入国した外国人(2023年6月)
国 | 人数 | 構成比 |
1位:日本 | 196,512 | 20.46% |
2位:中国 | 168,035 | 17.49% |
3位:アメリカ | 121,378 | 12.64% |
4位:台湾 | 97,365 | 10.14% |
5位:ベトナム | 35,848 | 3.73% |
6位:シンガポール | 35,377 | 3.68% |
7位:香港 | 31,874 | 3.32% |
8位:フィリピン | 29,393 | 3.06% |
9位:タイ | 25,023 | 2.60% |
10位:インドネシア | 21,914 | 2.28% |
その他 | 197,919 | 20.60% |
合計 | 960,638 | 100.00% |
(【出所】韓国観光公社『訪韓外来観光客』データをもとに著者作成)
すでに200万人を超えた訪日外国人
日本政府観光局(JNTO)データによれば、同じ時期に日本を訪れた外国人は200万人超でしたので(『月間訪日外国人200万人突破も…観光振興の落とし穴』等参照)、訪韓外国人の人数は、訪日外国人と比べ、ざっと半分弱、といったところでしょう(図表2)。
図表2 日本に入国した外国人
国 | 人数 | 割合 |
1位:韓国 | 515,700 | 27.16% |
2位:台湾 | 303,300 | 15.97% |
3位:米国 | 183,400 | 9.66% |
4位:香港 | 154,400 | 8.13% |
5位:中国 | 134,400 | 7.08% |
6位:タイ | 80,700 | 4.25% |
7位:フィリピン | 49,900 | 2.63% |
8位:シンガポール | 49,700 | 2.62% |
9位:ベトナム | 45,800 | 2.41% |
10位:カナダ | 42,300 | 2.23% |
その他 | 339,300 | 17.87% |
総数 | 1,898,900 | 100.00% |
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
さて、こうしたなかで、2023年1月から6月までの累計で見ると、訪日外国人は10,711,979人、訪韓外国人は4,430,796人となっていることがわかります。
これを国別に確認してみると、日本を訪れた韓国人は3,128,470人に達しているのに対し、韓国を訪れた日本人は、たったの862,123人です。その倍率は、じつに3.6倍(!)です。日韓の人口比がおよそ2.4倍であることを踏まえると、人口1人あたりの訪問者数は9倍弱、といったところでしょうか。
国別に比較してみると…!?
ただ、興味深いのはそれだけではありません。
中国に関しては日韓を訪れた人数がほぼ等しくなっているのですが、台湾、香港に関しては訪日者数が訪韓者数の4~5倍(!)にも達しており、中国を例外として、韓国は「近場」からはあまり人気がないことがわかります。
ただ、距離が離れて来ると、たとえばタイで2.4倍、シンガポールで1.6倍、フィリピンで1.9倍、インドネシアで1.8倍と、両者の違いが徐々に薄まってきます。また、米国で1.9倍、カナダも2.0倍で、どちらも意外と差は縮まっています(図表3)。
図表3 訪問客・国籍別日韓比較
国 | 日本 | 韓国 | 倍率 |
合計 | 10,711,979 | 4,430,796 | 2.418 |
日本 | ― | 862,123 | ― |
韓国 | 3,128,470 | ― | ― |
中国 | 594,585 | 546,393 | 1.088 |
米国 | 972,194 | 513,865 | 1.892 |
カナダ | 183,265 | 91,699 | 1.999 |
台湾 | 1,770,599 | 402,157 | 4.403 |
香港 | 909,744 | 168,798 | 5.390 |
タイ | 497,720 | 208,100 | 2.392 |
シンガポール | 252,689 | 156,904 | 1.610 |
フィリピン | 277,076 | 147,607 | 1.877 |
インドネシア | 201,660 | 113,240 | 1.781 |
(【出所】JNTO、韓国観光公社データをもとに著者作成)
これは、ちょっと意外です。
日韓双方から近い香港や台湾から見ると、日本の方が韓国よりも圧倒的に人気ですが、米国やカナダなどからすれば、そこまで大きな違いはない、ということかもしれません。
トランジットツアー、そして「ついで需要」
その理由については、よくわかりません。
ただ、仮説を示すならば、ひとつは「乗り継ぎ需要」、もうひとつは「ついで需要」です。
以前の『韓国人も日本を目指す:韓国は魅力ある観光地なのか?』でも指摘したとおり、韓国ではトランジット・ツアーなるものが盛んに開催されていますが、これは仁川(じんせん)国際空港などに乗り継ぎで訪れた外国人を対象とした無料または安価なツアーのことです。
昨今の航空運賃の上昇に伴い、少しでも安い航空券を取得しようとすれば、米国人や欧州人などは、仁川経由便を使用することがあります。つまり、本来の目的地が日本であっても、乗り継ぎの都合で韓国を訪れる、ということは、十分に考えられるのです。
こうした乗継目的の外国人が韓国への入国者数を押し上げている、というのがひとつの仮説ですが、それだけではありません。
外国のツアーページなどを見ていると、最近目に付くのが、「ジャパン・アンド・コリア」というツアーです。これは、日本の各地を訪れるついでに韓国(※英語では “South Korea” と称されることもありますが、本稿では「韓国」と呼称します)をも訪れる、というものです。
たとえば “Highlights of Korea and Japan” というページを見ると、ソウルから旅がスタートし、途中で大阪に移動し、そこからさらに京都、新幹線で東京を経由して米国に戻る、というものですが、日本についてよく知らない人は、この手のツアーに申し込んでしまう可能性はあるでしょう。
ただ、逆にいえば、もしあなたが韓国観光公社の担当者で、「訪韓外国人を増やす」ことだけを目的とするならば、自国を「日本の一地方である」と誤認させることで、米国や欧州などの旅行会社に「コリア・イン・ジャパン」(おっと…)といったツアーを売り込む戦略は、決して間違っていません。
一種の「コバンザメ戦略」、というやつです。
もっとも、韓国政府が現実にそれをやっているフシがあるのは気になるところですが…。
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>日本についてよく知らない人は、この手のツアーに申し込んでしまう可能性はあるでしょう
いくら何でも、これは余りに無慈悲なコメントでは? www
東アジアから遠く離れた国の観光客「先月、安く日本に行けるツアーがあって出国してたんだ。途中よくわからない空港を通ったけど快適だったよ。やたらと「kimuchi」ってピクルスを推されて、まぁちょっとクセはあるけど好きになれたよ。また日本に行って日本のkimuchiってのを食べても良いな。でもなんかkimuchiじゃないkimchiだ!!ってキレてる人が居たけど、日本人は変わってるね。」
……なんてことになっても韓国人が怒らないなら、良いのではないですかね。
最初はコバンザメでも、直ぐに庇と母屋の関係さらには起源を主張するのが目に見えていますので、当該国と日本は全く違うことを明確に示して、早い段階で芽を摘む方が望ましいですね。
最初に韓国へ行くとトイレにトイレットペーパーを流せないと勘違いした旅行者が日本に来て紙を流さずゴミ箱から悪臭が漏れる懸念があります。
もっとも最近では韓国のトイレでも紙を流せるところが増えているようですが。
まあしかし、これは考えようによれば、あちら様が涙ぐましい営業努力をして、客を集めてくれている訳だから、こちらも、取り敢えずは乗っかって、帰る時に次回からは、直接申し込んで頂くこともできますよ、と言っておけばいいかな。
こうなると、こっちが小判鮫ならぬ、小判鮫を使って稼ぐヒラメかも。
鵜飼い商法ですね。製造業についても 「韓国の半導体が売れれば売れるほど、日本から購入する製造装置の支払いが増える」 と、韓国紙が嘆いていました。
>もっとも、韓国政府が現実にそれをやっているフシがあるのは気になるところですが…。
フランスでのJapan Expoとかを考えれば、韓国は官民一体となって「アイアムザパニーズ」詐欺してるんじゃないですかね?
ドイツの Japan Tag (Japan Day) でもやってます。
ヨーロッパで日本関係のイベントをやると、いつの間にか韓国人が屋台出してるって、聞いた事が有る。真偽は不明。
かつてフランスでのJAPANエクスポに韓国系企業が出展し、大量の韓国人漫画家をゲストとして呼んだり、会場に主催者に無許可で太極旗を掲げたり、「日本の漫画の起源は韓国のマンファ(manwha)であると主張したことがありましたね。これも小判鮫戦略のようなものですが、本家のイメージや市場を侵食するので迷惑なだけではないでしょうか。日本車に似たデザインとホンダに似たHのエンブレムでヨーロッパや北米で販売を拡大したヒュンダイとか、日本にとっては迷惑極まりないし、そもそもこういうパクリ根性が嫌いです。
訪韓中国人と訪日中国人の数が同じくらいですが、韓国に行く中国人が多いのはチェジュ島はVISAなしで中国人も行けるのが理由と考えられます。さらに韓国の方が中国から距離的にも近いので少し航空券も安いです。でなければ中国人は韓国にはそれほど行かないでしょう。
香港と台湾の人の訪日が多いのは、どちらも面積がかなり小さいので旅行は必然的に海外となり、韓国はリピートするほど面白い観光地が少ないないのでリピートがなく、日本は韓国より面積も大きく魅力的な観光地が多く何度もリピートするから訪日が圧倒的に多いのだと思います。
カナダ人やアメリカ人にとってはアジアは遠いのであまり行かないから韓国のことをよく知らずに行くのでしょう。
Japan Expo
ただし、Wikiの内容を保証するものではない。
あくまで参考。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Japan_Expo
Japan Expo
ただし、Wikiの内容を保証するものではない。
あくまで参考。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Japan_Expo