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    Categories: 金融

タコが足食うがごとき韓国の経常収支:旅行収支も赤字

韓国が執拗に日韓通貨スワップを要求しているのは、韓国が恒常的に資金不足に陥っているという事情もあるのですが、それだけではなさそうです。韓国銀行が先日公表した同国の経常収支統計によれば、4月の経常収支は赤字に転落したものの「善戦した」といいます。本当でしょうか?これについて、同国の統計をじっくり眺めてみると、同国の経常収支構造からは、タコが足を食うかのごとき「強引な経常黒字」が見えてきます。韓国の旅行収支の悪化も気になるところですが…。

韓国の経常収支は赤字だが「善戦した」=韓国メディア

少し前から気になっている話題のひとつが、私たちの隣国・韓国の経常収支です。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に先週、こんな記事が掲載されていました。

韓国、また経常赤字に転落も善戦

―――2023.06.10 09:09付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

韓国経済新聞(韓経)によると、韓国の今年1-4月の経常収支は53億7000万ドルの赤字となったものの、貿易収支が7ヵ月ぶりに黒字に転換したことに加え、サービス収支の赤字幅が減少するなど「善戦」し、韓国銀行も今年の経常収支は240億ドルの黒字になるとの予測を出している、などとしています。

同国は毎年4月に海外投資家への配当金の支払いなどの影響もあり、第一次所得収支が大幅な赤字に転落することが多いのですが、韓経によると韓国銀行は「4月配当金の峠」を越えただけに、「今後の経常収支の流れは良くなる」とみている、というのです。

さて、これはそのとおりなのでしょうか?

韓国の経常収支構造の「異変」

じつは、韓国銀行が発表した同国の経常収支を詳細に眺めていくと、韓国の経常収支構造に大きな「異変」がみられるのです。

図表1は、同国の経常収支です。

図表1 韓国の経常収支

(【出所】韓国銀行)

韓国の経常収支は昨年8月に29億ドルの赤字となって以降、黒字と赤字の間を行ったり来たりしていて、今年1月には42億ドルと2020年4月以来の大幅な経常赤字に沈んだのですが、それでもその後は何とか持ち直し、4月も8億ドルと小幅な赤字にとどめました。

ただ、韓国の経常収支の内訳をみると、やはり不自然なのです。第一次所得収支が膨張しているからです(図表2)。

図表2 韓国の第一次所得収支

(【出所】韓国銀行)

これによると毎年1月から4月までの第一次所得収支は、2023年が133億ドルであり、これは22年の45億ドル、21年の33億ドル、20年の35億ドル、19年の10億ドルなどと比べ、著しい膨張です。

正体は「海外子会社からの配当」という「タコ足」

なぜ、第一次所得収支がここまで膨れ上がっているのでしょうか。

これについては先月の『税制優遇・子会社配当吸い上げで経常黒字確保した韓国』でも触れたとおり、おそらくその理由は、韓国政府の税制優遇により、タコが自身の足を食うがごとく、韓国企業が海外子会社からの配当金を吸い上げる動きが活発化していることにあります。

韓国の3月の経常収支が小幅な黒字となりました。これに関し、韓国メディアの報道によると、税制優遇で海外子会社からの配当金を吸い上げる動きが所得黒字を押し上げ、貿易赤字を相殺したという側面が強いのだそうです。もっとも、今後の貿易収支動向、あるいは「配当金で巨額の資金流出」が生じる4月のデータ次第では、韓国では経常赤字が常態化する可能性も出ているのだとか。「貿易立国・韓国」私たち日本の隣国・韓国といえば、経済・金融評論的には大変に興味深いモデルの国です。ろくに資源も文化もない小国でありながら、また...
税制優遇・子会社配当吸い上げで経常黒字確保した韓国 - 新宿会計士の政治経済評論

とくに、2023年4月に関しては、それまで毎年4月に必ず生じていたはずの、海外株主に対する配当金送金に伴う巨額の赤字が、ほとんど発生していません。このことは、韓国の国際資本フローに大きな異変が生じていることを示唆しています。

韓国の場合はここ数ヵ月、貿易収支が赤字基調で推移しており、とくに昨年7月以降の10ヵ月間で見ると、貿易黒字になったのは22年9月(8億ドル)と今年4月(6億ドル)の2ヵ月間だけです(図表3)。

図表3 韓国の貿易収支

(【出所】韓国銀行)

1人あたりGDPでは日本とほぼ等しいほどの「経済大国」に成長した韓国ですが、経済規模に比べた貿易額(輸出額、輸入額)の割合(貿易依存度)は日本と比べて数倍という韓国において、貿易黒字額が急減し、赤字に転落することが常態化しているという状況は、危機的でもあります。

こうしたなか、さきほど紹介した韓経の記事では、こんな見通しが示されています。

  • 5月の貿易赤字(※通関基準)は17億1000万ドルと4月の25億1000万ドルより減少した
  • 外国人への配当も減り、本源所得収支(※第一次所得収支のこと)が黒字となる可能性が高い
  • 韓銀の金融統計部長は「下半期には本格的に回復し、年間では240億ドルの黒字が予想される」と述べた

…。

はて、そうでしょうか。

あくまでも一般論ですが、海外子会社からの配当金の吸収は、長続きするものではありません。常識的に考えたら、巨額の配当収入は、たいていの場合、反動減をもたらすからです。

旅行収支の赤字と「円不足」

これに加え、旅行収支の赤字も気になるところです。

4月の訪韓日本人は激減:訪日韓国人の3分の1以下に』でも述べたとおり、コロナ禍以降の緊急事態宣言明けの影響もあってか、日本を訪問する韓国人が急増しているのですが、(なぜか)韓国を訪問する日本人はあまり増えていません。

韓国観光公社の2023年4月における訪韓外国人統計が公表されました。これによると、韓国を訪れた外国人は888,776人で、内訳は日本人が128,309人でトップを占めましたが、ただ、訪韓日本人は前月と比べて33%も落ち込みました。その理由はおそらく、日本人の訪韓需要は3月に集中していて、4月はその反動減となったからでしょう。いずれにせよ、その結果、4月における訪韓日本人は訪日韓国人の3.64倍(!)という差がついた格好です。訪韓外国人は100万人にあと一歩韓国の観光統計が公表されたようです。韓国観光公社の『訪韓外国人旅...
4月の訪韓日本人は激減:訪日韓国人の3分の1以下に - 新宿会計士の政治経済評論

日韓の統計を見比べてみると、2023年4月において、訪韓日本人は128,309人で、これは訪日韓国人467,000人(※速報値)と比べて4分の1近くという水準です。

ちなみにウェブ評論サイト『現代ビジネス』には、「最近では日本が人気過ぎて『ウォンから円に両替できない』『円が足りない』ということが両替所でおきるまでの活況ぶりである」、などと記載されています。

韓国で「ウォンから円が両替できない」「東京、大阪では物足りない」…! 韓国人の「日本旅行ブーム」の“意外すぎる実態”と、いま起きている「異変」の中身

―――2023/06/12 07:33付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】

記事では「このような日韓交流が踏まる(※原文ママ)ことで、さらなる日韓改善につながることを期待するばかりである」、などと記載されていますが、残念ながら現在の韓国における「日本旅行ブーム」の反面、日本で「韓国旅行ブーム」が生じているとは言えないのが実情でしょう。

それどころか、貿易赤字基調のなかでの日本旅行ブームは、経常収支の赤字を拡大させ、長い目で見て韓国が通貨危機に陥るリスクを高めることにもつながりかねません。

いずれにせよ韓国にとって、日韓通貨スワップに対する需要がますます高まっている(『節操なき岸田「対韓譲歩」にも希望を捨てる必要はない』等参照)ことだけは、間違いないといえるでしょう。

FCレーダー照射事件は不問に付し、輸出管理上、韓国を「(旧)ホワイト国」に戻す。そのうえ日韓通貨スワップの再開まで議論する…。日韓関係を巡り、岸田「宏池会」政権が最近、あり得ないほどに愚かな選択肢を次々と繰り出しています。国民を愚弄するにもほどがあります。ただ、現在の選挙情勢で読む限り、仮に今、解散総選挙がなされた場合には、おそらく自民党はそこそこの勝利をおさめます。心ある日本国民は、この状況に絶望するしかないのでしょうか?2023/06/10 07:35追記本文中の誤植を修正しました。解決していない日韓問題...
節操なき岸田「対韓譲歩」にも希望を捨てる必要はない - 新宿会計士の政治経済評論
新宿会計士:

View Comments (18)

  • タコさん、あと何本足有りますか?エ、もうあと1本(笑)!また生えて来ますかね〜。
    目が覚めた日本人は、韓国には行かない(嫌な思いするから)。訪日韓国人が1か月で467,000人て、多すぎでしょ。日本からの4倍。最近、福岡空港の資料を見てて、ビックリしました。国内線は羽田に次いで日本でナンバー2の搭乗客で、賑わっています。

    しかし国際線は韓国線ばかり。如何に来襲しているかが分かりました。もちろんハワイ、グアム、台湾、上海、香港、クアラルンプール、マニラとかも有るんですが、聞いた事無いLCCの多くが韓国線で、あ〜乗るの怖いなと思いました(笑)。

    日本人なら誰も行かないわな、あんなトコ。通貨スワップなんぞ期待するなや!

    • 格安パック作るな!!

      日本を、安売りするな!!

      要は、事業は利益を上げる事が目的なのだから、同じ利益を上げるなら、単価を上げて客数を減らしても、利益は同じ。
      しかし、利益は同じでも、働く人間のストレスは大きく減少しますよ。優良客が相手なら。
      低価格客は、質が悪いから、こんな客の相手はストレスが溜まるし、ゴミは捨てる、騒ぐのでうるさい、地域住民に迷惑を掛ける、という環境被害が増えている。
      そろそろ、観光庁も手を打つべき時に来ているのだが。

  • サムライアベンジャー(「匿名」というHNを使うことは在日の通名を使うのと同じ行為) says:

     岸田政権だと、スワップ再開しそうですよね。危ない政権。

  • 韓国の鉄鋼、自動車、造船、半導体、パネルなどは中国に追い抜かれつつあるようです。
    これを覆すのは大変難しいと思います。
    今後米欧に加えて中国の不況も予想されますので、韓国の立て直しはかなり難しいと思います。
    これからの食い扶持が見通せない反日国家を助ける意味がどこにあるのでしょうか?

    • この見方は、正鵠を射ているようですね。
      結局、他者依存国家なんです。元々、建国も米国によって為されたのですから。
      これ以上は、割愛しますが、こんな国を援助し続ける方が愚かじゃないか?という事に気付くべきだ、という事です。
      何か、戦略があってやっているなら、それはいいとしても、やり方が下手過ぎないか?

  • タコの足って、自喰いをしたときには再生しないんですってね。
    再生の余力があるようなら、自喰いなんてしないからです・・。

    • カズ様

      井原西鶴の『世間胸算用』の中に、「蛸売り八助」というのが出てくる咄があって、こいつは売り物の蛸の足を一本切り取って、七本足の蛸をまるごと一匹と偽って売っていたのが、目ざとい隠居に見つかり、逆ギレして罵った挙げ句に遁走したが、以後「足切り八助」と後ろ指指されて、サッパリ商売にならなくなったというオチ。

      海外進出した自国企業の儲けを、配当金の増額という形で国内に環流させるのは、違法とは言えないでしょうが、進出国から見れば「税逃れ」。七本足の蛸、売りつけられたようなかも知れませんね。

      それよりインチキがバレたときの振る舞いが、なんとなく、とある国を彷彿させるようで草。

      • 伊江太 様
        なまじっか、7本足で気付かれずに売れたもんだから、欲をかいての6本足でバレちゃったお話でしたよね。

        >インチキがバレたときの振る舞い

        「大晦日に碁を打つようなところではタコを売らぬ」でしたっけ?
        「借りてくれと懇願せねば借りてやらぬ」的な負け惜しみでしたね。
        ・・・・・
        自己再生の余力を自喰いした韓国。
        残された金策は、伝家の宝刀「くれ・ずっと!」・・なのでしょうね。

  • >2023年4月において、訪日韓国人467,000人

    これって、何気に凄い数字ですね。

    467,000人って言ったら、韓国人110人にひとり。いくらLCC運賃が安いとしても、それだけのカネ使って来たんですから、平均すれば4~5日は日本に滞在したんでしょう。だとすれば、旅費の支払いは国内消費に当たるしても、3日分、月に消費する1/10相当分くらいは、国家経済的観点からすれば、宙に消えちまったってことになります。

    高々消費者の1,100人にひとりが、国内での消費機会をパスしてるだけなどと、軽く考える事なかれ。旅行者本人が帰国後、盛大に消費して、その分を取り戻してくれるとか、あるいは残りの1,099人が消費を増やして、穴埋めしてくれるとかなら、問題はないんですけどね。

    あの猛烈な勢いで膨張してきた家計債務が、流石にここに来て収縮に転じたそうですが、それは取りも直さず、国民が消費を通じて内需に寄与する額が減少傾向にあることを意味するはず。今のところ、その減少額と言ったら、ひとり頭にすればチョコッとしたものでしょうが、ひとりでもその「チョコッとした」金額の何十、何百人分だかに相当する分を、467,000人もの自国民が、日本で貴重な外貨を浪費してきた上に、内需の収縮という土産にして国に持ち帰ってきたとなったら、これはもう笑い話では済まないですね。

    刑法、民法、経済関係の法律で、取り締まれるような事案じゃないには違いない。国民情緒法に触れるとの理由で吊し上げというのも、現政権の今の状況では無理でしょう。だけど、このまま放っておいて良いという案件でもないような気がするんですけどね。老婆心ながら、出国税の導入でも検討する時期に来ているのではないかと(笑)。

    • >>>家計債務

       の出所は、日本の消費者金融、引いては、日本の銀行なのではないか?日本人がお金を使わないものだから、日本の銀行は、その系列の消費者金融を通じて韓国国民にお金を使わせているという構図があるように思います。日本の消費者金融は韓国に進出しているようです。

    • 「韓国 消費者金融 日系」が頻繁検索の候補になっていることに気が付きました。
      また「korea household debt」も有力検索候補のようです。
      シンガポールの公共放送w CNA (channel news Asia)の動画も掛かりました。
      紳士蟻さんのおかげで我々日本人は隣国の内情を詳しく実時間で学べるようになったことは大いなる福音ですね。

      • ざっと縦覧してみたのですがどれも古くて。通俗教養の範囲を出ていない。
        最新の状況はカジュアルに調べて分かるようなものでないのではないでしょうか。

        • 調べてばかりいないで、自分の頭で考えることが大事。
          調べる前に、考えなさい、これは、教育で教えるべき一番大事なこと。

    • >>>家計債務

      日本の消費者金融から借りて、日本のお金で日本に遊びに来て、日本人からお客様扱いをして貰って、いい気分になって、帰ってもお金を返さない、元から返す気が無い、だって日本のお金だから。
      これ、盗人猛々しいと非難してばかりいるのか?
      元々、盗人に貸さない事にするのか?
      どっちが利口で、どっちが愚かでしょうか?

  • タコが足喰ってるというよりも右のポケットにある金を左のポケットに移しただけではないか。
    ありったけ配当すれば配当原資がなくなり同じ手は使えなくなる。

    外国人投資家に対して配当は払い続けているのだろうが、今年は海外子会社からの配当収入が巨額のため相殺されているのでは?

  •  韓国が「善戦した」「実質的には勝利」と言う時は大抵……ね?
     まぁでも、身近にも「コロナ収まったら韓国行きたぁ~い」なんて娘が実際に居るくらいですから、きっと大丈夫ですよ。そういう層にオールインしてきたんですし、他の層はサッパリとか気にしたらいけない。