このタイミングで韓国を「(旧)ホワイト国」に戻す必要はない
対中半導体包囲網で、やはり韓国が「穴」となる可能性が高そうです。中国商務部は日本に対し、新たな半導体輸出管理が「国際的な貿易ルールに著しく違反している」などと批判し、撤回を要求したそうですが、G7でも合意されたサプライチェーン強化とも整合する動きである半導体輸出管理強化を日本が撤回することはないでしょう。ただ、せっかくの輸出管理強化も、韓国という「穴」があいた状態だと、不安です。果たして本当に日本は韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」に戻す必要があるのでしょうか?
目次
半導体輸出管理強化を中国が批判
日米の「半導体同盟」に、中国が噛みついたようです。
China urges Japan to halt export restrictions on chips
―――2023/05/29 13:14 GMT+9付 ロイターより
ロイターによると、中国商務部の王文濤(おう・ぶんとう)部長は月曜日、日本に対して半導体に関する輸出管理を巡って「国際的な経済貿易ルールに著しく違反する行動」だと批判したうえで、それを取りやめるように要求したそうです。
王文濤氏はデトロイトで5月26日に開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)の会合で、日本の西村康稔経済産業相に対しても同様に日本の「輸出規制」を批判していたそうです。
これについては当ウェブサイトでも『【韓国にも流れ弾?】半導体製造装置の輸出管理厳格化』などで取り上げたとおり、日本政府が中国を念頭に、半導体製造装置等のうち23品目に関する輸出管理を強化する動きに出ていることとかかわっています。
経産省は31日、「極めて先端的な半導体製造装置」のうちの23品目を、新たに輸出管理の対象とすべく、省令・通達などの改正案を発表し、パブリック・コメントの募集を開始しました。さりげなく「り地域」に対し、「一般包括許可」の適用が認められていないというのも気になるところですが、それ以上に興味深いのは、「と地域③」の具体的な国名が明らかにされていないことでしょう。極端な話、この「と地域③」に思わぬ国が入る可能性もあるかもしれません。経産省がパブコメ募集を開始経済産業省は31日、「極めて先端的な半導体製造装置... 【韓国にも流れ弾?】半導体製造装置の輸出管理厳格化 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ロイターによると、日本と同様に対中輸出管理の強化を打ち出しているのがオランダだそうですが、こうした動きは米国が昨年、中国における核兵器システムやAIなどの開発に使用されるスーパーコンピューターに関する研究を阻害することを目的として課した制限に整合するものだとしています。
やはり、こうした高圧的な声明が出て来ること自体、中国が本気で輸出管理強化に困っているという証拠でしょうか。
日本が対中輸出管理強化を撤回することは考え辛い
ちなみにロイターの記事では、中国商務部の声明文では、中国が「主要な経済・貿易分野での実務的な協力を促進するために日本と協力する意思がある」、とも述べたそうですが、おそらくこのような揺さぶりは、日本に対して通じることはないでしょう。
じっさい、G7広島サミットのコミュニケ(同第51項、P34~)でも、こんなことが謳われています。
「我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する」。
要するに、現状、中国が国際的なルールに従ってふるまっているとは言い難いため、G7としては「重要なサプライチェーンにおける中国への過度な依存を低減する」と宣言したわけです。もちろん、「中国と敵対するつもりはない」などと言いつつも、本当に敵対するかどうかは今後の中国の動向次第、ということです。
中国、「中韓が半導体協力強化で合意」と一方的発表
もっとも、日米など西側諸国が中国に対し、一致団結して重要品目のサプライチェーン強化に動くなか、その輪を乱す国も出ているようです。
同じくロイターが日本時間の先週金曜日に配信したのが、こんな記事です。
China, South Korea agree to strengthen talks on chip industry, Chinese commerce ministry says
2023/05/27 16:41付 ロイターより
記事タイトルにある “South Korea” (直訳すると「南朝鮮」ないし「南韓」)は、英語圏などのメディアでは普通に出て来る表現ですが、本稿では敢えて「南朝鮮」ではなく「韓国」と訳すようにしたいと思います。
それはともかくとして、ロイターによると、中国商務部は王文濤氏が韓国の安徳根(あん・とくこん)通商交渉本部長との間で27日、デトロイトで会談し、「半導体産業のサプライチェーンに関する対話と協力を強化することで合意した」と発表したのだそうです。
ただし、興味深いことに、韓国側の声明文では半導体に関するくだりは含まれておらず、安徳根氏が王文濤氏に対し、中国が主要原材料の供給を安定させるとともに、在中韓国企業の「予測可能なビジネス環境」を求めた、などとされているだけなのだそうです。
中韓の報道発表内容に齟齬が生じるのは今に始まったことではありませんが、「最も弱い輪」を攻めるのは、今も昔も中国の常套手段であることだけは間違いないでしょう。
矢面に立たされる韓国:中国は世論戦を展開へ
ちなみにロイターの記事では「韓国は半導体を巡り米中対立の矢面に立たされている」( South Korea is in the crosshairs of a tit-for-tat row between the United States and China over semiconductors )、などと指摘されていますが、その「続報」も出てきました。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)に30日付で掲載された記事によれば、中国は官営メディアを通じ、半導体供給に関連する西側の「集団的対応」を阻止するために、「韓国を狙った世論戦」に乗り出した、としています。
半導体「集団対応」阻止に向けて総力戦に出た中国…「韓国、米国の要求を拒否すべき」
―――2023.05.30 09:25付 中央日報日本語版より
これによると中国は制裁を科した米半導体メーカーのマイクロンを巡って、韓国に対し、「マイクロンの空席を埋めないように」という米国の要求を「拒否しなければならない」とするコラム記事を、『環球時報』の英語版(Global Times)に掲載したそうです。
中央日報からの孫引きですが、グローバルタイムズは、次のように述べたのだとか。
「半導体ジレンマに韓国が実用的にアプローチしない場合、韓国経済が深刻なリスクに直面するだろう」。
いつもの「脅し」でしょう。
ちなみにこの中央日報の記事では、先ほどのロイターの記事にもあった、王文濤氏と安徳根氏の会談についても触れられており、「両国は半導体協力を強化していくためには韓国半導体メーカーが中国市場での穴を埋めるのは当然だ」とする合意文を中国側が一方的に公表したことが記載されています。
このタイミングでのホワイト国復帰の是非を問う
こうした状況を踏まえるに、やはり、韓国が日米陣営の「同盟国」となる資格があるのかどうか、岸田文雄首相を筆頭とする「宏池会政権」の面々には、改めてじっくりと考えていただきたいところです。
こうしたなかで、韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」に戻す政令改悪案に関連し、パブリック・コメントの期日が明日到来します(パブコメの締め切りは明日の17時)。
入力方法については、詳しくは『パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します!』でも説明したとおりですが、当ウェブサイトに複数の方が報告してくださった内容に基づけば、現時点ですでにコメントは7500件を超えているものと考えられます。
このタイミングで韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」に戻せば、韓国に対し、キャッチオール規制も適用されなくなりますし、リスト規制も非常に緩くなることが懸念されます。対中半導体包囲網にわざわざ「韓国」という「穴」を開ける必要があるのかどうか、私たち国民は政府に対し、冷静な判断を要求しなければなりません。
もしコメントにご協力いただける方がいらっしゃるなら、入力した内容と「595123034」で始まる「受付番号」を、当ウェブサイトの読者コメント欄にフィードバックしてくださると幸いです。
本記事は2023年5月31日まで当ウェブサイトトップページに掲載し続けます電子政府の総合窓口(e-gov)トップからパブリック・コメントを入力する方法についてまとめました。手順が大変わかり辛いのですが、本ページを参考にしながら、是非ともパブコメに積極的に応じていただきたいと思います。また、実際に入力したコメントにつきましては、本記事の読者コメント欄にて入力していただいて構いません(※その際、個人情報などについては消してください)。2023/04/29 20:00追記本記事に関するバックグラウンド等について追記しています... パブリック・コメント大募集!入力方法を解説します! - 新宿会計士の政治経済評論 |
私たち日本国民にとっては、まだまだ油断できない日々が続くでしょう。
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(別に韓国だけとは限りませんが)韓国に「私が韓国大統領になれば、米中の間でバランス外交をしてみせる」と言い出す人が出てくるのではないでしょうか。(実際に出来るかは別の話です)
まあ日本も、「予算を仕分けして、必要な財源を確保して見せる」と言って政権をとった党もありますから、他国のことは言えないかもしれません。
遅くなりましたが韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」に戻す政令に反対をしてきました。
受付番号:595123034000007592
それにしても中国人は正直ですねえ。
・欲しいものは全て欲しい。
・自分が困ることは止めて欲しい。
・ただし君が困る事は知らないしどうでも良い。
これを嘘と言い訳で誤魔化しながら脅しで圧力を掛けてくる。
でもお隣さんですからねえ。
なんとか上手く付き合うしか有りません。
大勢の日本人が中国で働いています。
これ以上スパイで捕まることはしたくないですねえ。
中国の規制がどの程度実効性があるか(実効性を持たせるか)は曖昧なんですよね。
情報インフラ企業に対する購入制限なのだそうですが、対象と程度がはっきりしないそうです。
韓国と韓国半導体メーカーには晴れて米中からフラグが立ってしまいましたが・・・
「穴埋めします」と言わされた後、規制は大して実施されず、結局SKの出荷は増えない未来がなんとなく見えます。
それでも今は、「ウリはモテモテニダ」と幸せ回路が発動してるんでしょうかね。
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規制発表の記事
http://www.cac.gov.cn/2023-05/21/c_1686348043518073.htm
環球時報のオリジナルはこれだと思います。
GT Voice: US labeling of China to force SK economy to a dead-end
https://www.globaltimes.cn/page/202305/1291529.shtml
とりあえず、提出しました。
595123034000007615
パブコメ案まだ見てないけど、意見出ししてみようかな?
・韓国側での管理方策を具体的に明らかにすべき
・また以前みたいな横流しが行ったときに備えて、時限措置にするとか、なんらかの安全弁が必要じゃないか
って感じかな?
何かやらかしたらまた輸出規制を元に戻せばいいだけ。政令改正なので今回の緩和のスケジュール感で元に戻せる。
韓国が矢面に立つなどと、他人事のように言っているが、半導体の基幹的な原材料や製造装置を供給しているのは日本なのだが。むしろ、矢面に立っているのは日本なのだが、その事を認識も出来ずに、ホワイト国指定を再開するのほ、どんな戦略を考えてのことなのか?
国家の全体的な戦略を考えず、行き当たりばったり雰囲気で政治をやるのは、止めて欲しい。
息子の任命も更迭も雰囲気でやる。息子の将来を本気で考えていたら、任命はしなかったし、更に、観光疑惑が出て来た時に、任命は時期尚早だったと「悟り」辞めさせていれば、今回のような世界中にバカさ加減を明らかにすることも無かった。息子の将来を潰したのは自分だと気付かないのか?
更迭されるべきは、自分自身だと今の内に悟って菅義偉氏に禅譲するのが、一番国益に叶う。
自国が半導体防衛の要である事を「悟らず」、他人事の如く呑気に、ホワイト国指定を再開する。
この方の防衛意識の無さは、本当に危なかっしい!
韓国を輸出管理上フリーにすることには反対を表明しておきました。
そもそも、戦後70年、何も解決していないどころか、ROK起因の問題が増え続けているのはどういうことなのかと思いますね、
受付番号:595123034000007634
伊大統領は、米中対立の中でも漁夫の利を狙っているのでしょう。
親米派と思われていますが、親米を装っているだけで、法治や民主主義の価値観を自由主義諸国と共有しているとはとても思えません。
中国からの威嚇も米国からの譲歩を引き出す手段にしようと目論んでいると思います。
ホワイト国への復帰も食い逃げされることは明らかです。
岸田首相の運も尽きつつあるようですが、最悪の判断をしないよう願うばかりです。
こんな発言が海を越えて波動として心のうちに伝わって来たような気がします。
「我が国格はこれまでにないほど上昇した。それが証拠に、見よ、米中それぞれが我が国に秋波送って来るではないか。憎き日本ですら我らにこうべを垂れる。ウリは大切にされるべき偉大な存在なのだ。よもよも粗末に扱われまいぞ」