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学術会議「一斉辞任」危惧し法改正の見送り決断=読売

日本学術会議が機能停止状態に陥ったところで、なにか具体的な不都合でもあるというのでしょうか。いまひとつ理解できない点です。読売新聞オンラインの報道によると、日本学術会議の人選における第三者の関与などを盛り込んだ法改正案の国会提出を政府が見送った理由について、「学術会議の役員が一斉に辞任することもあり得る」ことを政府首脳が懸念したからだ、といった趣旨の記述があります。正直、日本学術会議が機能停止状態に陥ったところで、なにか実害でもあるのでしょうか。

日本学術会議といえば、「何をやっているのかよくわからない組織」の典型例といえるかもしれません。

日本学術会議法第2条には、こんなことが書かれています。

日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする」。

しかし、日本学術会議が「科学の向上発展を図り」、「行政、産業、国民生活に科学を反映浸透させる」ことに貢献しているようには見えません。

たとえば昨年のウクライナ戦争においても、日本学術会議が公表したのは、中身がスッカスカの、A4サイズたった1枚分の声明文でした(『ウクライナ戦争巡る日本学術会議の「ペラいち」声明文』)。これで年間10億円あまりとされる国費を投じる価値が、果たして日本学術会議にあるのでしょうか。

ウクライナ戦争を巡って日本学術会議が2月28日に公表していた「ペラペラの声名文」が、ツイッターなどでちょっとした話題になっています。声明文自体、ロシアに対する非難のトーンが極めて抑制的であることもさることながら、A4サイズの「ペラいち」でスカスカの文章という点にも、さまざまな驚きがあるようです。もちろん、「文章の分量」が重要だ、というわけではありませんが、それにしても日本学術会議は「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意のもとに、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、...
ウクライナ戦争巡る日本学術会議の「ペラいち」声明文 - 新宿会計士の政治経済評論

いや、日本学術会議の提言のなかには、むしろ有害なものも含まれているかもしれません。たとえば例の「レジ袋有料化」も、この日本学術会議が提言を行っていたことが明らかになっているからです(『レジ袋有料化も日本学術会議の提唱がきっかけ=元会長』等参照)。

日本学術会議の会員任命拒否に関する話題が、連日のようにメディアを賑わせています。ただ、個人的な感想を申し上げるならば、大騒ぎしているのは、もともと国民世論からかけ離れた論調を展開することで知られるメディアが中心であり、また、彼らが大騒ぎすればするほど、日本学術会議側の主張に無理があるということが一般国民の目に明らかになってしまう、という効果があるように思えてなりません。キジも鳴かずば撃たれまい日本学術会議が推薦した候補者のうち、6人が会員に任命されなかったという話題が、連日のようにメディアを...
レジ袋有料化も日本学術会議の提唱がきっかけ=元会長 - 新宿会計士の政治経済評論

さらにいえば、日本学術会議の会員の人選も、なんだかよくわかりません。

日本学術会議法に基づけば、日本学術会議の会員は210人で構成され、任期は6年であり、3年ごとに半数が改選され、補欠会員を除いて再任されることがなく、また、年齢70歳に達したときに退職する(同法第7条各項)、などと定められています。

ただ、新しい会員は「優れた研究又は業績がある科学者」のなかから日本学術会議が会員の候補者を選考し、内閣府令に従って内閣総理大臣に推薦(同法第17条)し、それを内閣総理大臣が任命(同法第7条第2項)する、という流れです。

つまり、日本学術会議の会員は、日本学術会議の内部で決められており、その選定基準もよくわかりません。

ちなみに菅義偉総理大臣は2020年10月、日本学術会議の会員候補105人のうち6人の任命を行わなかったときには、日本の新聞、テレビなどのオールドメディア、さらには日本共産党などが強く反発しました。

それだけで、この日本学術会議自体が一種の「公金利権」のようになっているのではないかとの疑いを抱くに十分でしょう。

こうしたなかで、金曜日には、この日本学術会議と政府の対立が深まっているとする趣旨の報道がありました。

学術会議の「一斉辞任」危惧、改革法案の提出見送り…岸田首相が対立回避で決断

―――2023/05/12 08:38付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】

報じたのは読売新聞オンラインです。

これは、日本学術会議の会員選考を巡り、「第三者を関与させ、透明化を図る法案」の提出を政府がいったん見送った背景と今後の見通しを探るとする趣旨の記事ですが、こんな記述が出て来るのです。

梶田氏を含め、学術会議の役員が一斉に辞任することもあり得るのではないか」。

これは、(おそらくは岸田文雄・現首相を含めた)「政府高官の脳裏に浮かんだ最悪のシナリオ」だそうです(ちなみに「梶田氏」とは、日本学術会議の会長でノーベル賞受賞者の梶田隆章氏のことです)。

はて。

学術会議の役員が一斉に辞任したところで、なにか問題があるというのでしょうか。

ほとんど仕事をしていない、あるいはやったとしても日本社会に害をなす提言しかしていない組織が機能不全に陥ったところで、日本にとっての実害はまったくないのではないか、という気がしてなりません。

岸田首相が「一斉辞任」を危惧して法改正を見送ったという報道が事実かどうかはよくわかりませんが、これが菅総理だったならばどういう判断を示したか、ちょっと興味があると思ってしまう次第です。

新宿会計士:

View Comments (30)

  •  岸田首相は、「首相になりたい、出来れば長く(池田政権を超えるまで)やりたい」けれど、「首相になってやりたいこと(思い入れのあること)は格別ない」という典型的な「状況追従主義者」です。
     従って、学術会議法の改正→役員の一斉辞任→大手マスコミの批判というリスクを取る訳がありません。彼にとっては全く見合わないでしょう。
     ただこういう政権は、世論の反発を押し切って何かやることは基本的にありませんので、飽きられるまでは意外としぶとい。政党支持率格差、小選挙区制、野党の共闘見込み薄という状況のなかで、衆院解散・総選挙すれば、議席数の増減はあっても、政権交代はない→信任を得たということで、来年9月の自民党総裁選で再選される可能性は、かなり高いと思われます。
     「待ちの佐藤」「人事の佐藤」と呼ばれた佐藤栄作政権に近い、との声もありますが、1960年代後半の日本の高度成長期ならともかく、現代でこのような政権を持つことは、日本国民にとって不幸と考えます。

    • 学術会議法の改正→役員の一斉辞任→大手マスコミの批判→国民の喝采、大手マスコミへの批判とはならないんですかね。
      政府の干渉を受けず自由に運営したいなら、政府から切り離して民間シンクタンクになればいいだけです。国民や学者から本当に支持されているなら。
      LGBT法や入管難民法でも、利権構造を創出・死守したいごく一部の勢力の無理筋な主張が目立ちますね。

      • マスコミの厭らしいところは、学術会議など全く関係のないところで、根も葉もないうわさや、スキャンダルをでっちあげてでも気に入らない政治家を陥れようとするところです。
        普通の政治家ならそんな面倒はまっぴらごめんだと思います。
        (その点でも安倍総理は稀有な政治家でした)

  • >「梶田氏を含め、学術会議の役員が一斉に辞任することもあり得るのではないか」後藤氏や政府高官の脳裏には「最悪のシナリオ」もよぎった。

    「辞めてやる!」-「どうぞどうぞ」
    普通にダチョウ倶楽部ネタにしか見えません。
    現状変更がよくないことで、予め敷かれたレールの上しか進めない人々にとっては「最悪のシナリオ」かもしれませんね。

    取り上げる例え話一つみてもセンスが悪いと言わざるを得ないです。
    学術会議の問題は菅政権で発現しましたが、岸田政権では起こりえなかったのではないでしょうか。

    • 上手いなぁ。
      たしかにダチョウ倶楽部。

      「リスカブス」
      くらいを類例で連想しましたが、ダチョウ倶楽部がピッタリですね。

      全員が辞職するというなら、辞職させてあげればよいだけですわ。

      成田空港三里塚に立て籠る過激派が、
      「政府が横暴だから、抗議として俺たちは出ていくぞ!」
      とか言い出したようなものですよね。

      追い出すのは大変なのに自分から出ていってくれるというのだから、笑っちゃいます。

      岸田は、マゾなのか??(笑)

      • ありがとうございます。
        今は学術会議の設置目的に対してアウトプットがほとんど無いそうですから、なり手がいなけりゃ法改正して解散って流れもあり得ますわね。

        ところで「リスカブス」については過去に、リスペクトするコメンターさんによるこんな指摘があり、
        https://shinjukuacc.com/20210728-02/#comment-177584

        多少調べてみたんですが、自傷行為の動機は必ずしも人の気を惹くというものではないんだそうです。一般的に「リスカブス」は人の気を惹くという意味で使われますが、当事者への配慮としてそれ以来使わないようにしています。

  • これまで学術会議という利権に寄ってたかってタダで旨い飯を食い散らかしてきた連中が、今更本当に辞任なんかできるんですかね?やれるもんならやってみろ、と言いたい。
    売り言葉に買い言葉で引っ込みがつかなくなって本当に辞めてくれたらそれはそれでいいことなのでw

    • 久し振りにコメントさせていただきます。

      かの会議は学術予算の配分を差配する利権団体として、残念ながら今でも文科省や大学組織・学会運営団体に大きな影響力を持っています。文科省、大学、学会、奨学金団体、その他研究運営にかかるもろもろの組織に根を張っていますので・・・。
      だいぶ前の話ですが、北海道大学の総長の研究プロジェクトが学術会議のやり玉にあがり、大学の運営や予算交付だけでなく、参加学会の運営までを人質にされて膝を屈したとのこと。私学ではもっと露骨な干渉があると聞き及んでいます。
      今でも文科省は予算交付に干渉されるのを嫌い学術会議の干渉にタッチしませんし、学会(それも日本**学会など論文審査のグレードが高いところ)職員なんて学術会議の縁故や口利きの有無で採用や昇進に影響がある話は耳にします。

      当時のリークネタですが、政府が学術会議に干渉するなら、大学・学会・育英会などの全面的なストライキ(orサボタージュ)があるとの恫喝があり、当時の文科省の小役人が心底震え上がったと聞きます。だからこそ、菅元首相の果断な采配には心からの称賛を送ったものです。
      今回も同じことが繰り返され岸田政権はその圧に耐えられなかった、少なくとも文科省と関連議員が学術会議の側に立って色々と画策したのだと愚考する次第です。

      駄文失礼

  • 御用紙読売が言うなら岸田氏は妥協して泥棒に追銭するんでしょうね。とりあえず岸田政権の間は比例で自民党は入れないことにします。

  •  政治家に学者の智慧(理論や計算)は無いかもしれませんが、同時に学者にも政治の智慧(実務や調整)があるとは言い難い。国民のために自身の力を発揮しようという姿勢が求められているだけであり、へへー学者サマーと席を設けてご優待して差し上げる意味などありません。この件に関してはどちらも勘違いしているっぽい。そして国民の目は冷ややか。

  • 岸田文雄は意気地なし、ヘタレの極みですねぇ。

    安倍晋三氏が亡くなって以降始まった岸田文雄の“政治的決断”なる独断専行は、事勿れというか無理筋をゴリ押しする方向ばかりに見えるのですが。

    • IT会社で、営業担当(岸田文雄)がお得意先(米国韓国学術会議)に良い顔をしようと無理難題を“出来ます!やります!”と呑んで、SE(日本国民)がブラック過ぎるクソな状況に追い込まれる、って感じ?

      で、SEからすると「お前、何勝手に筋を曲げてきてんだよ!出来ない事は出来ないってきっぱり断るのがお前の仕事だろ!ふざけんな!」って感じ?

      早く岸田文雄を総理の座から追い払わないと、更なる独断専行で国益を損ねまくると考えますが。

  • いいから、さっさと議席減らしてしまえ、自民党!
    維新、国民が伸びるのは分かりきってるんだから、解散いつでもwelcome.

  • 自然科学分野でノーベル賞を受賞しても、多数の文系学者で構成されたこの国の学会で「民主的に」物事を決めるのには逆らえませんね。
    もう学術会議の10億円はドブに捨てたつもりでこのまま存続させ、新たに自然科学分野の学者だけの学術会議を創設したらよろしいかと。
    成果を出して、金を稼いできた理科系学者が、その研究を妨害するだけの文系学者の言いなりになり、権威付けに利用されるだけなのは忍びない。

    • いつも朝日新聞縮小団さんのコメントには膝を打ち、おっしゃる通りと思っています。科学的論考のできない文系さんがあちら系の活動に邁進することが、悪のトライアングルの根本原因の一つではないかと思っています。

      • 補足です。私が思う科学的論考とは、論文の最後に来る「考察結果と今後の予定」につきると思います。「AはBです」で終わって「だからなんやねん?」「オチは?」と関西人につっこまれるような考えは科学的論考ではなく、単なるスローガンです。

  • 岸田さん、ことごとく安倍菅政治の否定に走っていますね。
    安倍菅政治の基本は、戦後レジームからの脱却、自主独立の当たり前の国になること。

    岸田さんは、GHQが作り上げた「自主独立判断できない日本」に回帰したがっているとしか思えません。
    日本の反省と謝罪に基づく日韓連携の復活、独自の武力をもたせない装置である学術会議への忖度、古来から続く家族制度の否定(LGBT法案等)、日米地位協定改定の拒否、核保有の絶対否定、国産ジェット開発の中止、H3Aロケットの失敗、福島処理水の韓国調査団の受入、国産兵器開発の停滞&米国兵器の大購入、全てが自主独立路線の否定です。

    日本にとってアメリカは重要な同盟国ですが、同様にアメリカにとっても日本は重要な同盟国です、地政学的に中国ロシアに対峙する日本は、アメリカの太平洋の覇権のためには絶対欠かせない国です。
    岸田さんはその重要性&希少性を認識し、安倍さんのようにもっとしたたかな多極外交を行うべきでしょう、せめてトイレでの用便中にでもエマニュエルドット氏の著書を読むべきですね。

  • 微温的なくーきが日本に蔓延し始めていると当方は懸念を深めています。
     「これくらいのぬるさがちょうどいい」「おれたちもおこぼれに与れそうだ」
    安倍政権時代にヒステリックだった諸勢力が声を潜めているのは、そんな思念がそこかしこに伝染しているからではありませんか。

    • 全く思わないが
      普通に自民党だけが没落して、維新や国民、参政党などの新しい党がギラギラしてきたように見える

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