速報性はなくても専門性が高ければ生き延びていけるはず
今日から5月です。本日以降、大手全国紙の朝日新聞、有力ブロック紙の西日本新聞が購読料を500円値上げします。用紙代の高騰を受けた措置とのことですが、おそらく他紙も遅かれ早かれ追随する可能性が高そうです。その一方で、株式会社産経新聞社が再び割増退職金で希望退職を募る、とする話題も聞こえてきました。こうした話題を目にすると、「いっそのこと、新聞業界は高コストな紙媒体の発行を止めたら良いのに」、などと思わざるを得ません。ただ、だからといって簡単に新聞を廃刊することができない事情もあります。悩ましいところです。
相次ぐ値上げにリストラ…新聞業界の苦境
本日から朝日新聞などが500円値上げ
早いもので、本日から5月です。
そして、5月といえば、こんな話題を思い出します。
値上げが背中押す?「ついに新聞の購読を止めました」
とあるツイッター・ユーザーの方が、「5月から500円値上げされるのを機に、新聞の定期購読を止めることにした」とツイートしました。いままで新聞の定期購読を続けてきた理由は、奥様がチラシを必要とされていたからだそうですが、500円の値上げが奥様の「逆鱗に触れた」、というのです。長年の習慣を止めるきっかけは、案外、こうした「ちょっとしたきっかけ」だったりするのかもしれません。<<…続きを読む>>
―――2023/04/27 08:00付 新宿会計士の政治経済評論より
とあるツイッター・ユーザーの方が、「5月から500円値上げされるのを機に、新聞の定期購読を止めることにした」とツイートしました。いままで新聞の定期購読を続けてきた理由は、奥様がチラシを必要とされていたからだそうですが、500円の値上げが奥様の「逆鱗に触れた」、というのです。長年の習慣を止めるきっかけは、案外、こうした「ちょっとしたきっかけ」だったりするのかもしれません。ネットの恩恵を受ける自称会計士のサイトツイッター・ユーザーのひとりに、東京・山手線の駅名を冠する怪しい自称会計士がいるようです。こ... 値上げが背中押す?「ついに新聞の購読を止めました」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これは、全国紙である朝日新聞と有力ブロック紙である西日本新聞が本日以降、朝夕刊セットの月ぎめの購読料を500円引き上げ、税込みで4,900円に設定する、というものです。おそらく遅かれ早かれ、他紙も追随することでしょう。
ちなみに図表1は首都圏におけるおもな新聞の月ぎめこうどくりょうをしめしたものですが、「月額4,900円」は日経新聞と同じ価格設定です。
図表1 首都圏における主な新聞の月ぎめ購読料(税込み)
新聞 | 朝夕刊セット | 統合版 |
日経新聞 | 4,900円 | 4,000円 |
朝日新聞 | 4,400円→4,900円 | 3,500円→4,000円 |
読売新聞 | 4,400円 | 3,400円 |
毎日新聞 | 4,300円 | 3,400円 |
産経新聞 | (夕刊なし) | 3,400円 |
東京新聞 | 3,700円 | 2,950円 |
(【出所】著者調べ。なお、「統合版」は夕刊が発行されていない地域で発行されているものであり、「夕刊が発行されている地域における朝刊のみの契約」ではない点に注意)
これまで新聞を取り続けていた人も、さすがにこの値段設定になると再考するかもしれません。
産経はリストラ実施か?
ところで、最大手である朝日新聞社でさえこういう状況ですが、こうしたなかで少し気になる点があるとしたら、「それ以外のメディアはどういう状況なのか」、です。
これに関連し、他メディアがあまり取り上げない論調の記事が多いなど、保守系の多くの論客に支持されているであろう産経新聞社に関しても、こんな記事がありました。
産経新聞社「120人リストラ」割増退職金は最大2000万円で「応募が殺到する」現役社員が語る社内の“ざわつき”
―――2023/04/18 19:10付 Yahoo!ニュースより【FLASH配信】
これは写真週刊誌『FLASH』のウェブ版が先月18日に配信したものですが、これによると株式会社産経新聞社では4月4日、会社が労組に対し、120人の希望退職を募集することを通知したのだそうです。
希望退職の実施対象は23年10月31日時点で48歳以上・60歳未満の従業員で、通常の退職金に加え、年齢に応じ最大2000万円の加算金も支給されるのだとか。
このあたり、個人的には「産経新聞社はデジタル転換戦略に成功しつつあるのではないか」、などと単純に想像していたのですが(※なにせウェブ契約の場合、月額550円で事実上、記事が読み放題になるなど「お得」だからです)、記事を信頼するならば、そこまで事情は単純ではないようです。
FLASHによると、このリストラの理由としては「コロナ禍での収入急減と紙代の高騰で余力がなくなったこと」なのだそうですが、それと同時に、同社は2019年にもリストラを行ったばかりでもあります。
コロナ禍と紙代高騰という一過性の要因もあるとはいえ、「値上げ」で対応するにせよ、「リストラ」で対応するにせよ、こうした動きが続くことは、新聞業界が苦境にある証拠でしょう。
新聞は「割に合っている」のか?
なぜ新聞を購読するのか――考えられる「3つの理由」
こうしたなかで、少し立ち止まって考えておきたいのが、「そもそも新聞は購読に値するものなのか」、という論点です。
当ウェブサイトの仮説ですが、このインターネット時代になってもなお、新聞の購読を続ける理由として考えられるのは、「長年の習慣となっているから」というものに加え、「チラシが欲しい」、「訃報欄やテレビ欄が欲しい」、といったものではないでしょうか。
新聞購読を続ける理由の事例として考えられるもの
- 新聞の訃報欄(いわゆる「おくやみ」)に対する需要があるから
- 近所のスーパーなどの折込チラシが欲しいから
- 新聞を読むのが長年の習慣となっており、やめられないから
(【出所】著者作成)
このうち「訃報欄(おくやみ)」については、非常に需要が強いという話も聞きます。
地域金融機関(地銀、信金など)の支店では、口座名義人が亡くなったときに銀行口座を迅速に凍結する必要があるため、訃報欄(おくやみ)はマメにチェックしているという話をよく聞きますし、とある葬儀社のブログサイトによると、60代以上の読者には「新聞はおくやみ欄から最初に見るという人もいる」ほどだとされます。
なるほど、たしかにこの「訃報欄」は、新聞が続く理由としては大きいでしょう。とくに個人情報にうるさい昨今、故人名や喪主名、故人と喪主の続柄、葬儀会場が自宅である場合はその住所などといった個人情報を不特定多数に向けて堂々と報じてくれる手段は、新聞くらいしかありません。
割に合わない「チラシ需要」
ただ、正直申し上げるなら、「訃報欄」に対する需要が強い層は、あと何年か経過すれば少なくなるかもしれません(理由は敢えて申し上げません)し、また、「訃報欄」需要以外に、「何があっても絶対に新聞の購読を続ける」という強い理由は、あまり見当たりません。
敢えていえばチラシ需要くらいでしょうか。
というのも、「新聞本体は読まないけれど、折込チラシが欲しいから新聞購読を続けている」、「近所のスーパーのチラシを見比べ、他店より1円でも安い品を探し、スーパーをハシゴするのが趣味だ」、といった方は、間違いなくいらっしゃるからです。
そのような人にとっては、たとえ新聞本体を読まなくても、チラシさえあれば満足かもしれません。彼らはまさに、新聞に書かれている内容とは無関係に、新聞を購読してくれる貴重な層なのです。
※なお、「他店よりも1円でも安い品を探す時間と労力をほかのことに振り向けるべきじゃないか」、「スーパーをハシゴするためのガソリン代の方が高くつくじゃないか」、といったツッコミは、あえてしないことにします。
しかし、「他店より1円でも安い品物」を探している主婦は、「月額500円」という中途半端に現実的な数値を突き付けられると、ふと正気に返るのかもしれません。
というよりも、こう言ってはなんですが、そもそもチラシだけのために、月額5,000円近くの新聞代を負担している効果がどの程度あるのかは疑問です。経済効果的に見て、チラシを見比べることによって毎月の新聞代以上の節約効果が得られるものなのでしょうか(少なくとも著者自身の家計簿的には明確に「否」ですが…)。
それに、チラシはスマートフォンなどでも閲覧できるようになりつつあります(もちろん、GUIなどの面ではまだまだ使い勝手には改良の余地がありそうですが)し、なかにはアプリでポイントを貯めたり、その日のお買い得品情報が配信されたりするケースもあります。
冷静に考えよう:千葉県の遊園地に年2回行ける(かも)
いずれにせよ、「月額500円の値上げ」は、「チラシ需要」を間違いなく減らす効果をもたらすでしょう。
そして、「月額500円の値上げ」は、先ほどの仮説の3番目にある、「今まで取っていたから、惰性で読み続けている」という層に対しても、間違いなくネガティブに働くはずです。「おカネがあってあって仕方がない」という幸福な方を別とすれば、私たち庶民の多くは、値上げには非常に敏感でしょう。
ただ、「そもそも論」ですが、毎月5,000円近くのおカネを払っていれば、年間で6万円近く、2年で12万円近くのカネが飛びます。ちょっとした家族旅行ができてしまう金額ですね。
ちなみに千葉県にある某「夢の国の遊園地」だと、最近は日付により入場料が変動するそうですが、ワンデー・パスポートは大人(18歳以上)で1人8,400円~9,400円、12~17歳だと1人6,600円~7,400円、4~11歳だと4,700円~5,600円です。
首都圏に暮らしている4人暮らしの家庭(夫婦+小学生低学年の子供+幼稚園児)が一番高い日にこの遊園地に出掛けると、入場料がちょうど3万円ですが、新聞の購読をやめたら年2回、この遊園地に行ける計算です(もっとも、交通費、食事代、ポップコーン代、いわゆるファストパス代などは含みませんが…)。
結局のところ、「高すぎる」
このように考えると、新聞は「高すぎる」のです。
スマートフォンだと多様なニューズ・ソースから多様な記事を見ることができるうえ、リアルタイムにさまざまな情報を知ることができ、しかも端末代と通信費を除けば、ほとんどの記事が無料です。
これに対し、新聞(とくに紙媒体の場合)だと、そもそも毎月4,000円から5,000円近くの購読料を負担し、送られてくるのは単独の新聞で、しかも紙媒体で送られてくるため、保存も検索も難しく、それでいていくつかの新聞に関しては、クオリティが決して高いとはいえないわけです。
すでにビジネスモデルとして破綻していると言わざるを得ません。
そして、朝日新聞や西日本新聞の値上げ、産経のリストラといった報道を目にしていて痛感するのは、やはり「紙媒体の高コスト体質」です。
ここで参考になるのが、株式会社朝日新聞社の有価証券報告書です。同社の2022年3月期の有報(P74)によると、同社連結決算における「メディア・コンテンツ事業」は外部顧客向けの売上高が2392億円ですが、セグメント利益は45億円に過ぎません。利益率はわずか2%弱です。
また、株式会社朝日新聞社の単体財務諸表(有報P83~)によれば、売上高は1882億円、売上原価は1358億円、販管費が445億円で営業利益は79億円であり、営業利益率は4%と連結ベースと比べて少し改善しますが、それでも利益率は低いと言わざるを得ません。。
いずれにせよ新聞事業というものは、利益率が低いビジネスであることは間違いないでしょう(図表2)。
図表2 株式会社朝日新聞社の収益構造(2022年3月期決算)
項目 | 金額 | 情報源 |
『メディア・コンテンツ事業』における外部顧客への売上高(A) | 239,237百万円 | 連結セグメント情報 |
『メディア・コンテンツ事業』におけるセグメント利益(B) | 4,466百万円 | 連結セグメント情報 |
利益率 | 1.87% | (B)÷(A) |
(株)朝日新聞社の単体売上高(C) | 188,198百万円 | 単体損益計算書 |
(株)朝日新聞社の単体売上総利益(D) | 52,396百万円 | 単体損益計算書 |
(株)朝日新聞社の単体営業利益(E) | 7,940百万円 | 単体損益計算書 |
粗利益率 | 27.84% | (D)÷(C) |
営業利益率 | 4.22% | (E)÷(C) |
(【出所】株式会社朝日新聞社・2022年3月期有価証券報告書をもとに著者作成)
朝日新聞の場合、紙媒体だけで821億円が必要?
では、いったい何にそんなコストがかかっているのでしょうか。
これについて、株式会社朝日新聞社の損益計算書と売上原価明細書から、同社の単体決算における売上高と主要な売上原価の費目を並べてみると、興味深い事実が浮かび上がります(図表3)。
図表3 株式会社朝日新聞社の単体売上高と売上原価明細(2022年3月期決算)
項目 | 金額 | 売上高に対する割合 |
売上高 | 1882億円 | 100% |
材料費 | 210億円 | 11.15% |
労務費 | 367億円 | 19.52% |
編集費 | 105億円 | 5.60% |
製作費 | 29億円 | 1.53% |
印刷費 | 244億円 | 12.96% |
広告費 | 39億円 | 2.05% |
その他 | 364億円 | 19.35% |
売上総利益 | 524億円 | 27.84% |
(【出所】株式会社朝日新聞社・有報P83~84を参考に著者作成)
単体決算と連結決算を単純に比較することはできませんが、株式会社朝日新聞社の単体決算は新聞事業が中心であろうと想像できることから、この1882億円という売上高は、ほぼ新聞事業から生じているものとの仮定を置いても、さほど不自然ではないでしょう。
注目すべきは、おそらくは紙媒体の新聞を製造するためのコスト、すなわち材料費、労務費、印刷費の3費目でしょう。これだけで821億円、売上高に対する割合は43.7%にも達しています。
また、これら以外に、新聞販売店に対する販売奨励金(項目では「その他」に含まれているのでしょうか?)もかなりの額に達している可能性がありますが、これについては正直、よくわかりません。いずれにせよ、「紙を印刷する」ために必要なコストが、少なくとも821億円に達しているのです。
逆にいえば、株式会社朝日新聞社が紙媒体の朝日新聞を刷ることを止め、現在の購読契約のすべてがウェブ版に切り替われば、今すぐ821億円、利益が増えます。
紙媒体とネット媒体の未来
紙媒体を止めると優遇措置が受けられなくなる(かも)
ではどうして、新聞社は紙媒体の新聞の発行を止められないのでしょうか。
真っ先に思いつくのは、いくつかの優遇措置の適用が受けられなくなる可能性があることです。その典型例として、消費税と公職選挙法を挙げておきましょう。
まずは、日刊新聞に対しては、消費税等の軽減税率が適用されています。
消費税法に基づく消費税率は7.8%ですが(※これに地方消費税2.2%を足した合計税率は10%です)、一定要件を満たした新聞は、特別に、6.24%の軽減税率が適用されます(※これに地方消費税1.76%を足した合計税率は8%です)。
6.24%の消費税の軽減税率が適用される新聞の定義
消費税の軽減税率が適用される新聞とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくものをいう。
(【出所】国税庁『消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド』等を参考に著者作成)
したがって、紙媒体の発行を止めてしまえば、この消費税の6.24%という特別な軽減税率のてきようたいしょうから外れてしまう可能性があるのです。
公選法の要件は「第三種郵便物認可」
続いて公職選挙法です。
「新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由」を定めた公選法第148条によると、新聞には選挙運動の制限に関する規定の多くは適用されませんが(同第1項)、ここでいう新聞の要件としては、「第三種郵便物の認可があること」が求められるのです(同第3項第1号ロ)。
公職選挙法第148条第3項
前二項の規定の適用について新聞紙又は雑誌とは、選挙運動の期間中及び選挙の当日に限り、次に掲げるものをいう。ただし、点字新聞紙については、第一号ロの規定(同号ハ及び第二号中第一号ロに係る部分を含む。)は、適用しない。
一 次の条件を具備する新聞紙又は雑誌
イ 新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであること。
ロ 第三種郵便物の承認のあるものであること。
ハ 当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にあつては、六月)以来、イ及びロに該当し、引き続き発行するものであること。
二 前号に該当する新聞紙又は雑誌を発行する者が発行する新聞紙又は雑誌で同号イ及びロの条件を具備するもの
したがって、もしも紙媒体の新聞発行を止めてしまうと、消費税・地方消費税の税制優遇や公選法上の占拠規制の例外規定などの適用を受けることができなくなってしまう可能性が濃厚、というわけです。
ほかにも、日刊新聞法の適用対象外となることで株式譲渡制限を設けることが難しくなる、全国津々浦々の新聞販売店に対する補償の問題が出て来るなど、さまざまなしがらみで、紙媒体を止めることが難しいのかもしれません。
いずれにせよ、現代の新聞が配信する情報は、ネットを使えば限りなく安いコストで全国津々浦々(いや、全世界)に配信することが可能ですが、それをわざわざ高いコストをかけて輪転機などの設備を整え、高い人件費を支払いながら人力でそれを配達するというモデル自体が破綻していることは明らかです。
したがって、新聞社が生き延びていく方法としては、結局のところ、①新聞事業以外の「儲かる副業」を見つけて紙媒体の新聞発行コストを賄うか、②いっそのこと思い切って神の新聞発行を止め、ウェブ戦略に特化していくくらいしかないはずでしょう。
電子媒体が激増している兆候は見られないが
ただ、紙媒体の新聞の部数が減っているわりに、新聞社がその落ち込みをカバーし得るほどに電子版の契約を増やしているという兆候は、あまり見られません。
むしろ目立つのは、新聞社の「苦戦」ではないでしょうか。
たとえば『朝日朝刊3ヵ月で7万部減なのに「有料会員数」横ばい』でも報告したとおり、朝日新聞の事例でいえば、2022年12月と23年3月に関しては紙媒体の発行部数は減少し続けていますが、だからといって電子版の契約が増加しているわけではありません。
株式会社朝日新聞社が公表している「朝日新聞メディア指数」を巡り、昨年12月末と今年3月末の数値を比べると、新聞朝刊部数が7.7万部落ち込んでいるのに対し、朝日新聞デジタルの有料会員数がまったく増えていないこととが判明しました。最大手の一角を占める株式会社朝日新聞社ですらこうなのですから、他社の状況も「推して知るべし」、といったところです。その一方、暇空茜氏は毎日新聞社からの質問状とそれに対する回答のやり取りを、毎日新聞が報じる前に公表してしまったようです。新聞の影響力は20年で3分の1に!暇空茜氏、... 朝日朝刊3ヵ月で7万部減なのに「有料会員数」横ばい - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、著者自身の心情としては、株式会社産経新聞社にはウェブ戦略に成功してほしいものだという気持ちもある反面、先ほど取り上げた記事の記載内容が事実だとすれば、やはり同社ですら、ウェブ戦略で大成功しているとまでは言い難いのが実情なのかもしれません。
記者の専門性を育てるチャンス
もっとも、株式会社産経新聞社のリストラは、見方を変えてみれば、会社自体が一種の「筋肉質」になるためのステップという言い方もできます。
先ほどのFLASHの記事には、こんな続きもあるからです。
「2018年度まで、従業員数2000人近くで推移してきた産経新聞社だが、会社概要によると、2023年3月31日時点では1557人まで減少している。今回の希望退職に、経営陣の思惑どおり120人の応募があれば“従業員数3ケタ”にさらに近づくことになる」。
正直、全国紙がウェブ戦略に特化するのであれば、地方紙局で警察回りをする記者を含め、地域版などのエディションを設ける必要性は徐々に下がってきます。それよりも、国際情勢の分析、金融政策や財政政策などの解説ができるほど専門性が高い記者を育てた方が、新聞社にとっては「カネになる」はずです。
実際、公益財団法人新聞通信調査会が昨年11月13日に公表した『第15回メディアに関する世論調査』というレポートの34ページ目にも、こんな記述がありました。
「『社説・解説欄』の満足層は約30%、『文化に関する記事』『国際情勢に関する記事』『生活・健康に関する記事』『経済に関する記事』『スポーツ・芸能に関する記事』『政治に関する記事』の満足層は30%台となったが、不満層も10%を下回っており、『どちらとも言えない』や『ほとんど読まない』が多く、閲読度が低いことがうかがえる」。
つまり、何でもかんでも取り上げるのではなく、ある意味で「専門性」を追求すれば、既存の新聞の在り方に不満を持つ人たちが熱心な読者になってくれる可能性がある、ということです。
そのモデルでしょうか。米『ウォール・ストリート・ジャーナル』や英『フィナンシャル・タイムズ』などのように、金融・市場関係者らから高い評価を得ているメディアも、結局は「専門性」を売りにしているはずです(個人的に両紙がそこまでハイレベルだとは思いませんが、この点は脇に置きます)。
実際、両紙は紙媒体だけでなく、ネットを使った記事の配信に定評がありますし、市場参加者の多くから読まれているメディアでもあります。なにより政治やスポーツなどの話題もないではないのですが、基本的には金融に特化しています。
消費税の税制優遇などの特典をかなぐり捨てて紙媒体の新聞を廃止し、取り上げる話題もビジネスマン受けの良い政治・経済ジャンルに特化すれば、それなりに読者がついてきそうなものです。
新聞社は強みを発揮できるか
正直、あえて株式会社産経新聞社の意向に忖度(そんたく)して申し上げるならば、今回のリストラも「全面ウェブ移管」の布石という見方もできなくはありません。著者自身の私見に基づけば、同社は株式会社日本経済新聞社と並び、最もウェブ戦略に可能性があるメディアのひとつだからです。
あらためて、新聞社に人々が最も期待するものはいったい何なのか、新聞各社の皆さんはじっくり考えてみる良い機会かもしれません。
もちろん、「スピード重視」も大事なのですが、人々の目が肥えてくると、「スピード」だけでなく、「深度」も付加価値を持ってきます。政治も経済もますます複雑化している昨今の情勢に照らし、たとえばある話題に関して、意外な視点を提供する記事に対しては、社会的なニーズは間違いなくあるはずです。
たとえばある事件について、その背景を丁寧に取材し、時間がかかっても事実関係を調査したうえで、何らかの「新たな発見」を世の中に伝えることができれば、そのことを読者はしっかり評価してくれるかもしれません。
また、何か事件が発生したときに、即座に短絡的な論評を出すのではなく、過去からの経緯をしっかりと踏まえたうえで、専門的な観点から解説をしてくれるメディアがあれば、人々はそのようなメディアにこそカネを払おうとするはずです。
果たして新聞社、あるいは新聞業界に、にそれができるのか――。
興味深く見守る価値がありそうです。
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世の中には「月刊○○」という業界専門誌が数多ある。こんなニッチな分野、一体何冊売れてるんだ?というようなものも多く、タイトルを見るだけでなかなか興味をそそられる。
新聞各紙も(今でも若干疑わしい)報道の公平性をなんとなく担保する欄をアリバイ作り程度に一部残してあとは各社の特色を全面に押し出し、連載追跡記事などを載せればコアなファンがついて売れるかもしれないですね。
アリバイ作りの部分は自動生成AIにでも書かせれば人件費も浮きます。
社説なんてChatGPTで作れますね。
あんな中身がスッカスカな内容を引き延ばしてもっともらしく仕立てた文章なんて。
ほかの記事も似たようなものか。
あんな紙に年間5~6万円も払い続けるなんてアホみたい。
N〇Kと違って義務でもなんでもないし。
ChatGPT4 は月額20ドルだそうですね。
論説委員どのに会社が支払っている報酬(健保社保を含む)に照らして月20ドルの経費なんて昼飯二回分くらいの出費じゃないんですか。コストパフォーマンスってこうゆうものです。
そう遠くない将来に Chat AI (GPTに限らず)で日本語を勉強しましたという外国人がどんどん文章を書きどしどし発言するようになるんでしょうね。
今の所、chatGPTの文章は、味気ないですね。
「天声人語」のように、中身の無いことをさも、深遠な意味が含まれている、と錯覚させる文章は書けないようです。
但し、天声人語の過去の記事を全部読み込ませれば、そのような文章を書くことを学習するでしょう。
天声人語風メーカーなる有名なプログラムがあって、あれはきっと Perl などで書かれた簡単な文字置き換えをやるコードだと予想します。新聞記者の文章なんて AI いらずだと思います。
個人的には、「天声人語」など読もうとも思いませんが、朝日新聞さんには、そんな方法もあるかな、ということで。
>>>新聞記者の文章なんて AI いらずだと思います。
この意味は、新聞記者の文章は、AI以下ということであれば、確かに、毎日、ひどい文章を読まされていますね。記者になったら、きちんと文章を書く訓練をすればいいのにと思います。
ただ、TV局には、漢字もろくに読めないアナウンサーもいるので、これは一体、会社はきちんと教育していないのか、と疑問に思いますね。
ChatGPT は意見を言わないように振舞っています。そのように作られているからです。意見を述べるプログラムを作ることは可能でしょう。ですが、考えてもみてください。今は控えめに丁寧な言葉を返してよこす生成 AI が、海原雄山ではなくって論説委員のような文体でべらべらしゃべり出したら? まず暑苦しいし、頼りになる論客どころかただの迷惑でしょう。
残念ながら朝日新聞(毎日・東京)は現地取材ではなく、アタマの中で捏造・変更記事のイメージがあるから
進化したChatGPTが新聞記事作成すれば、朝日新聞への信頼を少しは取り戻せるのではないでしょうか?
記事作成にChatGPTを効果的に使いこなせれば、記者削減になり人件費も削減でメデタシ。
https://www.j-cast.com/2023/03/04457214.html?p=all
>専門的な観点から解説をしてくれるメディアがあれば、人々はそのようなメディアにこそカネを払おうとするはずです。
産経は「産業経済新聞」で経済紙なんだから、紙から身軽になって経済分野に人を投資したらいい。日経に対抗できるかも、ですね。
でも新聞業界の苦境は人事ではありませんね。昔から機械が人間の仕事を奪うと脅かされてきています。
「2015年に発表したオックスフォード大学などの調査結果では、今後10〜20年の間で約半数の仕事が消える可能性がある」
https://tech-camp.in/note/technology/82291/
進化したChatGPTが補助・参考だけでなく、人の仕事に置き換わる可能性もある・
新聞業界の苦境を、自分の仕事に置き換えて、将来を考えてスキルアップしなければ・・・・・。
新聞を取らなくなってから久しく、今は、新聞の存在すら忘れている。
この記事を読んで、過去何故取っていたのかなと考えてみると、やはり、情報媒体では新聞が一番身近であったから。
では、何を読んでいたかと言えば、ニュースと定番コラム、等と考えを辿っていくと、やはり、新聞は、いろんな情報が得られる媒体であった。
新聞社もそのような方針で新聞の制作を行っていたのだろう。
では、何故購読しなくなったか?
すると、ネットでの得られる情報が多様化してきた時期と重なることに気が付いた。
つまり、ネットで得られる情報で大丈夫、情報取得は、新聞に頼らなくても大丈夫と確信できたときに、購読を止めている。
ところで、ここで気が付くのは、ネットで得られる情報は、新聞社が取材してきたニュースや雑誌出版社が制作編集した記事である。
新聞や雑誌とは、紙媒体のように考えているが、実は、情報が商品である。
新聞社とは、大きく分けて、取材と印刷の2つの機能に分けられる。
要は、取材部門は必要だが、印刷部門は必要ではなくなって来ている、ということ。
考えてみると、難しいことは無い、必要なものは残し、必要でないものは廃止する。
そして、必要なものは充実させる。
次に、
朝日の電子版の購読者が増えないということだが、これは、ネットでは当然のこと。
紙媒体であれば、紙を買わなければ、情報が手に入らなかったから、必要のない情報まで印刷されているものを買っていたが、ネットであれば、必要な情報だけが買えればいいということになる。
ニュース纏めサイトが、多々ある中、一つの情報提供会社(例えば朝日)に、月額5千円も払う必要は感じないだろう。
但し、一つの情報提供会社でも、ダイヤモンドオンラインや東洋経済オンライン、などのように専門性の高いものは、定期契約する価値があると感じられる。
こうやって見てくると、専門特化することが一つの方向であることがはっきりしてくる。
兎に角、今のようなフェイクまがいの記事や、「うな丼食べた」などのどうでもいい記事を書いているようでは、完全に読者を失うことは確か。
つまり、今後は、専門性と質の高い記事、真面目な記事を書くことが必要になる。
そのように、体質を変えて行ける新聞社はどれだけあるだろうか?
年6万円払うのだからそれに見合ったものがほしい。これ当たり前。
新聞にある情報の大半はネットやテレビで無料で手に入る。
無料のモノにわざわざ金払う人はいない。
無駄なものを切っていったら、1-2ページのペラペラの新聞になってしまう。これが新聞社の最大の悩みだろう。
>無駄なものを切っていったら
残ったものが新聞社の値打ちということなのだと思います。それが宝石なのか残渣残滓なのかは読む人が判断するでしょう。
第三種郵便物の承認条件の一つは「1回の発行部数が500部以上であること。」ですので、大型の輪転機を維持しなくても紙さえ発行していれば何とかなりそうです。
「1回の発行部数に占める発売部数の割合が8割以上であること。」→いかに落ちぶれても日本全国一億人+外国人ウン百万人中400人くらいなら有料読者も確保できるのでは。
「全体の印刷部分に占める広告(中略)の割合が5割以下であること。」→これが一番難関だったりして(・_・;)
記者や論説委員に、森羅万象の十分量の専門知識を持ってもらう事など不可能なのは明白で、彼らを見くびるでわけでもなく無理もないことです。そのために「この件について専門家に意見を伺った」「スタジオに専門家に来ていただきました」などとやっていたはずです。これを怠ったり、解りもしないくせに勝手に切り貼りしたり、都合の良いメディア御用学者を使ったりが横行したのでこのザマですが。対してネットは「信用の薄い匿名による集合知」です。信用部分で勝負していれば良かったものを、わざわざ勝っているはずの「信用」を投げ捨てて勝負に出たようなものなのだから、ごくろーさまとしか。
さて、TVが無いので動向は伝聞だけでしたが、なんかいつのまにか謹慎していつのまにか復帰した玉川徹氏が早速炎上したそうで。曰く
「米は食べないのに作ってもしょうがない、小麦とか作れ」
https://smart-flash.jp/sociopolitics/233592/
https://news.yahoo.co.jp/articles/9c13b57e2b6f2cc03fa1bc8381727eae2ac3af67
現場も農政も経済も知らぬ者の言です。専門性どころか少しの調査取材もせずに本当に思いつきで喋っている、前の電通騒動の時と全く同じ形であり、やはり謹慎中に反省や研鑽などはしていなかった模様。また、取り上げたSmartFLASHもどうかという感じです。タイトルは実発言よりも煽ったものになっているし、発言に対する反応の代表として拾ったものが専門家などではなくほんこん氏。感情的には気持ちの良い発言をされ読者は喜ぶかもしれませんが、必要な情報をくれる人選ではない。
対してネット記事となってからは情報が正常化するという感じです。ヤフー転載後にこの手の記事のコメントトップには専門家などのコメントが提示されますが、フォロー気味になりがちなのに珍しく「全て間違っている」と断じられる始末。最初からこの人に聞いとけレベル。続くコメントも真っ当で玉川氏の無知と姿勢に対する批判ばかり。
新聞、TV報道が生き残りたければ、むしろ専門性を持とうなどとは思わず偉そうな解説やありがてぇご意見などを一切やめ、超無機質な事実情報「のみ」を「大量」に発信し、深掘りや議論はネットに委ねる、という方がカタいのではないでしょうか。今の企業体力があるうちなら、情報源の収集力そのものは大したものでしょうし。
新聞 TV で見聞きしたことは、まずネットで裏取りする。
これは当世における基本生活術だと思います。
農民様
無機質な事実のみの情報を大量に載せた新聞又はラジオニュースやTVニュースは、日本語&英語で出したものがあると良いなと、小生も思います。
大昔に、アメリカに研修で滞在した際に、耳の訓練に、CNNヘッドラインニュースやWCBSニュースレィディオを、住まいで流しっぱなしにしてました(当時の先輩のアドバイスは、更に追いかけて口に出すと良いというものでした)。
ネットでも存在するのかもしれませんが、毎日やってくるという点では、新聞、ラジオ、TVが優位だと思うのです。
T氏は、確か某超優秀大学の農学部卒。農学の学士様なら、専門的な知見をベースに見解を述べて欲しいもの。
米作から、小麦作に転換する為には、どうしたら良いかとか、国産小麦と輸入小麦の価格差をどうするか、とか。
しかしながら、将来、小麦が輸入出来なくなるなら、国産小麦価格が高くてもいいということもあるかもしれないとか。
学士様なら、色んな角度からの見解や提言をして欲しい。ただ、その為には、学士様でも、普段から色んな勉強や調査している必要があるのだが。
一部の読者だけかもしれませんが、連載小説、生活マメ知識など目当ての購読もあるのかも知れませんね。なにかと朝ドラや大河ドラマが話題になる様なものですかね。
たった一度の値上げで「軽減税率で生じた値ごろ感(適用の効果)」が無くなりましたね。
確かに軽減税率の効果で新聞販売店の納付額は少ない(10%で仕入・8%で販売)かもしれない。
けれども、お客様から預かった税を納めてるだけだから販売店の収支には無関係なんですよね。
*販売店、厳しくなりそうです・・。
新聞社のビジネスモデルはここ50年変わらないのではないか。
それでも紙の新聞が生き残っているというのは「幸せな業界」と言えるかもしれない。
毎日顔を合わせている人が徐々に瘦せていくのは気が付かないもので、1年ぶりに会った人に指摘され病院に連れて行ったら「末期がん」だったなどということもある。
今紙の新聞は徐々に痩せている時期。もうすぐ手の施しようがなくなる。