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チップ文化「本場」米国でチップ疲れ=電子決済普及で

外国人から見て日本はチップ不要の国と認識されているようですが、正直、こうしたチップ文化、意外と米国でも嫌われていたようです。AFPの報道によると、電子決済の普及に伴いチップの有無を選択させる画面が表示される機会が増えたことで、これまでチップを支払っていなかったような店でもチップを強要されていると感じる人が米国で増えているのだとか。

「世界で嫌われる日本人」の虚実

以前、東京・山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士が自らのサイトで、こんな趣旨のことを主張していたことがありました。

  • 私は小学生のころから一貫して、学校教育の場で「日本人は外国で嫌われている」と教え込まれてきたし、当時、社会的影響力が大きかったA新聞を含めたメディア報道を読んでも、「日本人がいかに外国から嫌われているか」に関する記事は多かったから、「日本は世界で嫌われている」ことを信じ込んでいた
  • しかし、大学生になってから海外旅行に嵌り、格安航空券を買ってはしょっちゅう外国に出かけるようになったところ、こうした刷り込みが間違っているのではないかと思うようになった。どこの国に行っても日本人は歓迎されたし、出かける国の先々で日本人に対するリスペクトが感じられた

…。

じつは、ここに記載されている内容、実際に海外に出かけていただければよくわかると思います。

個人的な体験で恐縮ですが、これまでに出かけた国では、たいていの場合、1回や2回は「日本」を意識する瞬間が出てきます。

たとえば、マルタ共和国という、地中海に浮かぶ非常に美しい島国があるのですが、この国では現地の人がカスタマイズしたと思しき、日の丸や旭日旗を描いた日本車を発見しましたし、ギリシャの首都・アテネではパルテノン神殿のふもとで、日本風の「アニメカフェ」を目撃したこともあります。

また、北欧の美術館では「日本特集」で大勢の人が押し掛けていましたし、フランスの首都・パリにある大型書店では日本のアニメ作品のDVDが日本語で流れており、また、多くの街では日本のマンガ本を翻訳したものが売られたりしています。

日本は旅行先として魅力

最近でこそ、インターネットの社会的影響力が高まっているからでしょうか、日本国内にいても「ジャパンエキスポが大盛況」、といった話題を目にすることも増えてきましたが、今からほんの10年から20年前であれば、「海外で日本が大人気」といわれてもピンとこない人も多かったでしょう。

そして、個人的にたくさんの国を旅行して得られた最も大きな「成果」とは、「日本の良さを再発見したこと」だと考えています。

じつは、日本は私たち日本人が考えているよりも遥かに広い国です。

そもそも北海道と沖縄県は、同じ国とは思えないほど気候も風土も異なっていますし、大都会からスキーリゾート、南国リゾートまで幅広い観光地が存在している国です。

東京が「世界最大級の大都会」であることに異論はないと思いますが、じつは日本第2の都市である大阪も、周辺の都市圏(京都、神戸など)を包含すれば、欧州最大規模の都市・パリと、規模としてはさして変わりません。

美しい自然に新幹線を含めて高度に発達した最先端の交通施設、目を見張る大都会に風光明媚な地方都市。独自の文明に育まれた伝統的な建築物。

そしてなによりご飯がおいしい。

こんな国、なかなかありません。

【参考】地球の歩き方(日本、東京、ムー)

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日本人が戸惑うチップ文化・あれこれ

さて、日本に住む日本人が外国に旅行したとき、「食事に困る国」というものがあります。

食事そのものがおいしくない国(※あえて実名は出しません)もありますが、日本とさまざまな習慣の違いに戸惑うこともあるのです。

その典型例が、「チップ」という慣習でしょう。

これは、飲食代金として、実際に請求された以上のおカネを店員さんに支払う、というものです。こうしたチップの慣習は、国によって大きく異なります。あくまでも個人的な印象ですが、たとえば欧州の場合、とくに南欧を中心に広く広まっているものの、北欧でチップを請求されることは多くありません。

たとえば英国だと、請求書に「サービス料込み」と書かれている店で請求書以上の金額を支払おうとしたら断られたことがありましたし、北欧でもチップを置いて店を出たところ、店員さんに追いかけられ、硬貨を突っ返されたこともありました。

(※請求書に「110元」と書かれているのに、110元を支払ったら勝手に10元値引してくれるという、台湾のような特殊な事例もありますが、これはさすがに例外でしょう。)

しかし、南欧などの場合、請求書以上の金額を支払って突っ返されることは、ほとんどありません。請求書に「18ユーロ」と書かれていたら、20ユーロ紙幣を置いてそのまま店を出て来る、というパターンです(北欧だと2ユーロコインをもって追いかけられます)。

【参考】地球の歩き方・埼玉2023~24

(【出所】アマゾンアフィリエイトリンク)

日本語でチップを要求する米国レストラン

そして、こうしたチップ文化が非常に広まっている国のひとつが、米国です。

たとえば日本人にも大人気の渡航先のひとつであるニューヨークだと、レストランによっては「米国では飲食代金の20%程度をチップとして支払う慣習があります」、などと日本語で注記がなされているケースもあります。

正直、困惑する限りです。

もちろん、「郷に入れば郷に従え」といわれますし、米国ではチップが必要だというのならば、それに従うのも仕方がない話です。それに、米国ではチップが店員さんの生活の手段となってしまっているようであり、どうしてもチップを支払わざるを得ないのでしょう。

もちろん、店員さんのサービスに納得がいかなければ、チップを支払わないということもできるそうですが、現地の人によれば、チップを払わない客とチップを要求する店員の間でトラブルになることもあるようですので、やはり私たち外国人にとっては「厄介な慣習だなぁ」、と思うケースも多いのではないでしょうか。

そして、このことは、日本を訪れた外国人の方も痛感するそうです。

日本だと一般にチップは必要なく、基本的には請求書通りの金銭を支払えば済みます(※ただし、一部の旅館などでは「心付け」と称したチップの授受が習慣化しているケースもあります)。

つまり、「請求された額を支払えばそれでよい」という「明朗会計」は、旅行者にも優しいのでしょう。

米国の消費者に「チップ疲れ」=AFP

こうしたなかで、AFPに先日、こんな記事が掲載されていました。

米消費者に「チップ疲れ」 代わりに最低賃金導入の動き

―――2023年4月23日 9:00付 AFP BB NEWSより

AFPによると、チップ文化が根付いているはずの米国で、このチップ文化に疑問を抱く米国人が増えてきたというのです。

米国ではレストランでチップを渡すのは当たり前。これまでは話題にさえならなかった。通常、飲食代の15~20%で、これが接客業務担当者(チップ制労働者)の収入の大きな部分を占める。しかし、持ち帰り用にサンドイッチを購入した場合はどうだろう。スコットランドさんは『渡さない』と答えた。ただ、担当者の対応が特別良かったり、自身が太っ腹な気分だったりする時はこの限りでないとも言う」。

記事に出て来る米国人はチップを巡り、「あまりいいシステムではないと思う」と述べるのだそうです。その理由は、最近の電子決済の普及で、「以前ならチップを渡さなかった場面でもチップを渡すようになったこと」で、「チップ疲れ」が出てきている可能性がある、というのです。

米国では最近、店舗で料金を支払う際、表示されるスクリーンにチップの項目が出て来るのだそうであり、チップを渡さないときには「チップなし」ボタンを押す必要があるのだそうです。

『それは多くの人にとって気分の良いものではない』。ビスワス氏は、『店舗側は人々の罪悪感に付け込んでいる』と指摘する」。

これに対し、労働者の権利を求める団体の代表が「チップについて考え続けるのが嫌なら一般労働者の最低賃金を下回るチップ制労働者の報酬体系を変えるための運動に参加して」、などと呼び掛けているのだそうですが、この問題は形を変えた社会問題と化している、ということなのでしょう。

個人的には、米国人自身がじつはチップ文化を嫌気していたというのは意外な気がすると思った次第です。

 

新宿会計士:

View Comments (6)

  • 友人でアメリカに留学していた男が言うには、学生街のレストランでもチップは必要だが最低限でOK。レストラン側も学生からチップもらおうなんて考えていないからサービスもぞんざい。彼はいつも代金に関係なく1-2ドルだったとのこと。
    チップ払うのいやならマックとかのファーストフードに行く。
    アメリカへの出張ではチップのこと考えるのめんどくさくて朝食はルームサービスにしてた。
    アメリカ人に聞いたらルームサービスはサービス料込なのでチップは不要とのこと。

  • 決済手段の多様化で、色々面倒くさくなっているのは、現実なので止めたいのは分かります。
    日本みたいに、大々的にチップ無しで回っているところがあったりすると猶更。

    アメリカも広くて、この問題に対するスタンスも色々あるとも思います。
    ただ、やはり、御捻りは現金の文化なんだよなぁ。

  •  日本人は曖昧で海外ではキッパリしている、日本はダメだ!、日本人は要求があるくせに言えず、海外では言いたいことはちゃんと言う、日本はダメだ!日本人はカネに汚く、海外では大らか、日本はダメだ!日本人は同調圧力が強く海外では個人が尊重される、日本はダメだ!云々

     なんて(やっぱA新聞あたりから)さんざん聞いて育ちましたが、耳に入るチップ文化は「気前が良いことを無言で強制しあう」ようで、上述の逆をいっていて不思議でした。まさか当のチップ文化圏の人間が「これ良くないなぁやめようよ……でも言えない」なんて状態だったとは。
     ま白人文化圏って大概こんなんで、後になって新しい正義(人種差別反対だの持続可能性だの)を後ろめたさで増幅させながらふりかざす印象ですけど。そのうち自分らでチップを法規制するようになって、「日本はチップを規制していないだと!後進国め!!」とかやりだしそう。
     でもきっと大丈夫、手をかざすと所持金データからサクっと譲渡できるような、ゲーム内通貨みたいに電子マネーが進化すれば、チップも気軽に決済できますよ、良かったね!

  • チップはアメリカにもともとあった文化に対して、
    レジ袋不要の問答みたいだなあと思いました。
    こちらでも再検証進んでくれれば良いのですが・・・。

  • 自分にとっての常識は
    チップや投げ銭は感謝や応援の気持ちで渡すモノであって
    労働の対価で渡すものじゃないという認識です。

    労働の対価にチップが必要な社会なんて、あってはならない事だと思います
    アメリカの常識は違うんですね