立憲民主党の小西洋之・参議院議員による「サル」「蛮族」発言から1週間が経とうとしていますが、その間、小西氏が報道機関を批判しまくることで二次損害、三次損害が立憲民主党に発生し始めているようです。にも関わらず、立憲民主党は現時点までに、小西氏を参院憲法審筆頭幹事から更迭した以外には、これといって処分を下している様子はありません。これについて読売新聞は昨日、立憲民主党が政府を追及するうえでの「正当性が失われる」との声が漏れている、などと報じました。
小西氏の問題発言、日刊ゲンダイも批判
立憲民主党は、いったいどこに行くのか――。
立憲民主党の小西洋之参議院議員が公表した総務省の行政文書(いわゆる「小西文書」)の問題に加え、衆院憲法審査会を巡る「サル・蛮族」発言問題については、当ウェブサイトでもここ最近、連日のように話題として取り上げています。
普段の立憲民主党議員の言動に照らすなら、衆院憲法審査会のメンバーを「サル」だ、「蛮族」だと侮辱するのは明らかな問題発言であることは間違いなく、さすがに普段は野党に対して比較的「寛容な」(?)メディアも、小西氏の発言を報じざるを得ない状況に追い込まれているようです。
例えば『日刊ゲンダイ』の電子版に昨日掲載された次の記事でも、小西氏のことを批判的に報じざるを得なかったようです。
小西洋之議員「サル」発言は袋叩き、高市早苗大臣には迫らず…大手メディアの弱腰と矛盾
―――2023/04/03 06:15付 日刊ゲンダイDIGITALより
同記事では小西氏自身が「放送法の解釈を巡る行政文書」をもとに、国会で「言論の自由を守れ」と訴えてきたという点を指摘したうえで、片やその小西氏が産経新聞とフジテレビを名指しして批判したことを、「とても正気とは思えない」とし、次のように述べています。
「『言論の自由を守れ』と叫んでいた政治家が、メディアに対して『けんかを売るとはいい度胸だ』とSNSに投稿する。小西氏の発言が『言語道断』なのは論を俟たない」
…。
明確な懲罰を下さない立憲民主党
日刊ゲンダイからもここまで批判されるというのは、やはり小西氏の一連の言動は、とうてい擁護し切れないという判断でもあったのかもしれません。
なお、日刊ゲンダイの記事では「今回の放送法をめぐる問題で、真相を問うために礒崎氏に執拗に迫った報道記者の姿はない」、「発言内容が二転三転する高市早苗・経済安全保障担当大臣を追い回すテレビカメラもない」として、メディアの姿勢をも批判しています。
高市早苗氏の発言内容が「二転三転」した事実はなく、それどころか高市氏の発言は終始一貫しているのですが(『勝負あり:高市氏が小西文書「捏造」を説明してしまう』等参照)、同メディアの「高市批判」はいつものことなので、個人的にはあまり気にしないで良いと思う次第です。
これで、「勝負あり」でしょう。高市早苗氏が昨日公表した資料によれば、総務省が「あった」と言い張っている2015年2月13日の「大臣レク」についても、捏造という可能性が非常に濃厚になったのです。高市氏の説明は大変に歯切れがよく、かつ、説得力もあります。高市氏は「小西文書」を逆手に取り、その論駁力の高さを示してしまったのかもしれません。すでに結論がついている『小西文書』本稿では「どうせオールドメディアは取り上げないであろう話題」を、じっくりと取り上げておきたいと思います。昨日の『小西文書は国家公務員法... 勝負あり:高市氏が小西文書「捏造」を説明してしまう - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、それ以上に理解に苦しむのは、立憲民主党が小西氏に対し、明確は懲罰を下していないことでしょう。
とりあえず現時点までに立憲民主党が講じた措置は、小西氏を参院憲法審の野党筆頭幹事から更迭したくらいです(『「サル・蛮族」発言で波紋の小西氏、筆頭幹事から更迭』等参照)が、たとえば「離党勧告」、「議員辞職勧告」などの措置は講じられていません。
立憲民主党の小西洋之・参議院議員が衆院憲法審査会を念頭に「サル」、「蛮族」などと発言した問題を巡って、小西氏と立憲民主党に対する批判が他党にも広まっています。ただ、小西氏自身は発言を撤回したものの、産経、フジなどに対する「法的措置」をチラつかせており、こうした姿勢を朝日新聞も批判したようです。こうしたなか、立憲民主党は小西氏を参院憲法審筆頭幹事から更迭したそうですが、もしかして党として何らかの追加処分があるのでしょうか?それとも処分はこれで「おしまい」なのでしょうか?山口氏の苦言に同意せざる... 「サル・蛮族」発言で波紋の小西氏、筆頭幹事から更迭 - 新宿会計士の政治経済評論 |
とくに、昨日の『「サル・蛮族」騒動を「分からず」=立憲民主・幹事長』でも紹介しましたが、立憲民主党の岡田克也幹事長は小西氏のこの発言を巡り、「事実をしっかり確認しなければならない」、「言動を精査中」などと述べるにとどめるなど、立憲民主党の態度は明らかではありません。
立憲民主党の岡田克也幹事長は2日、小西洋之参議院議員の「サル」、「蛮族」などの発言が選挙に与える影響を記者団に尋ねられ、「分からない」と述べたそうです。そのうえで小西氏に対する追加処分の有無を巡っても、「まず事実をしっかり確認しなければならない」、「言動を精査中だ」と述べるにとどめたのだとか。発言からもうすぐ1週間が経過し、しかももう選挙戦が始まっているのに、まだ「分からない」のでしょうか?リスク感覚のなさには驚くばかりです。岡田幹事長、「小西発言」の選挙への影響「分からない」これは、ちょっ... 「サル・蛮族」騒動を「分からず」=立憲民主・幹事長 - 新宿会計士の政治経済評論 |
政府追及の正当性失われ、無党派層も離れて行く
もちろん、小西氏は国会議員ですから、誰か「上司」がいて、その「上司」が小西氏を懲戒免職処分にする、といったことはできません。強いて言えば、次回選挙で小西氏を落選させるかどうかを決定する有権者が「上司」のようなものかもしれませんが、それでも小西氏の議員としての任期は5年以上残っています。
しかし、それと同時に小西氏も立憲民主党という立派な「最大野党」に所属しているわけですから、小西氏の言動は、立憲民主党にとっては本来、頭の痛い問題であるはずです。統一地方選の時期に突入してしまった以上、無党派層が離れてしまうかもしれないからです。
こうしたなか、読売新聞オンラインに昨日の夜、こんな記事が配信されていました。
小西議員の報道批判に立民苦慮「正当性失われる」…ツイッターに「産経は名誉棄損」「朝日は劣化」
―――2023/04/03 21:58付 読売新聞オンラインより
読売によると、立憲民主党は小西氏による度重なるメディア批判に「頭を痛めている」ものの、ツイッターに「小西を守れ!」などと書き込んだ原口一博・元総務相のように、「党内には小西氏を擁護する向きもある」のだそうです。
先ほどの日刊ゲンダイと同様、この読売の記事でもやはり、小西氏の矛盾する言動が指摘されています。こんな趣旨の記述がそれです。
- 今国会で立民は、安倍政権時代に政府が放送法の解釈を変更して報道の自由に介入しようとしたと批判してきた
- ところが、小西氏は自身の発言が報じられると、『NHKとフジテレビに対し、あらゆる手段を講じて、報道姿勢の改善を求めたい』などと報道機関を牽制した
- 参院憲法審野党筆頭幹事からの更迭後も、小西氏は『産経記事は名誉毀損」『朝日の政治部はここまで劣化しているのか』などとツイッターに投稿した
そのうえで、日本維新の会幹部の「自分たちが批判していた『報道への圧力』を自分が加えている」とする発言を紹介し、立憲民主党の「党内からも『政府追及の正当性が失われる』との声が漏れている」、などとしています。
すでに手遅れでは?
この点、企業経営であろうが政党運営であろうが、本来、不祥事に対しては「初動」がなにより重要ですし、今回のケースでも問題発言が報じられた直後に、本来であれば岡田氏を含めた立憲民主党幹部が小西氏に事実関係を聴取し、適切な対応を講じるべきでした。
とくに統一地方選に突入してしまう直前のタイミングでしたので、「精査」をするよりも前に、まずは小西氏をすべての党役職から外したうえで謹慎を命じ、「ツイッター禁止令」でも出すべきだったのではないでしょうか?
ただ、正直、問題発言が報じられてからすでに1週間近くが経過します。
これだけ時間が経過しているにも関わらず、立憲民主党から憲法審筆頭幹事更迭以外にこれといった処分がなされておらず、しかも、その間に小西氏自身が現職国会議員として、「産経は名誉棄損」だ、「朝日はここまで劣化」だといった具合に、報道機関に強い圧力をかけ続けているのです。
立憲民主党の「徹底した無対応ぶり」は際立っていますが、それによる「二次損害」、「三次損害」も生じ始めています。
実際、先ほどの読売の記事でも、小西氏の一連の言動が選挙戦にも波及し始めていると指摘したうえで、「街頭で『早く辞めさせろ』と言われた」、「無党派層の離反が怖い」などとする「統一地方選の応援に入った立民若手」の反応が取り上げられています。
このまま自浄作用が働かなければ、無党派層などは順調に離れていくだけでなく、むしろ立憲民主党の支持層も、小西氏に処分を下さないことを問題視しないような人たちにますます先鋭化されていくという未来しか見えません。
その意味で、「泉健太体制」が小西氏に毅然と処分を下せるのかどうかが立憲民主党の未来を占う試金石のようなものなのかもしれません。
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高市氏を報道の自由を守れと議員辞職を要求しながら、記者に対して検閲、編集の強要、告訴の圧力により報道の自由を侵害した小西議員に議員辞職を求めないのは 恥知らずとしか言いようがありません。
しかし、立憲民主党の議員など 普通恥かしくて出来ないのにやってる彼らが 恥を知ってるはずはないので仕方のない事かも知れません。
左派にあるあるの内ゲバ的要素からの妄想的分析。
自称「創業者」の枝野前代表を筆頭に、やや中道より姿勢の泉体制を快く思っていない左派系議員(蓮舫さんや辻元さんなどはその代表格)は、お仲間小西さんの問題を放置=こじらせ続けることで、泉代表退任を目論んでいる、のかもしれませんね。
内ゲバって怖いですね。「総括」
あの山岳ベース事件に比べれば、
だいぶソフトな内ゲバですけどね。
立憲民主党は、「苦慮?」など
する必要はありません!
むしろその苦慮する姿勢は
これまで党の実態と主張を告げずシて
中身のないマニュフェストで煙に巻いて
無党派層狙いの従来の姿勢ですが
それはもう通用せず限界にきています。
その点、
THE小西議員(以下、略称ザコニシ)さんは
立憲民主党の党風と支持者の生きザマを
究極に体現しての、今回の
令和の石川五右衛門と呼ばれる
大立ち回りを見事演じてお見えです。
韓流政党立憲民主党にふさわしい
ザコニシ党首の実現を大いに期待します!
#ザコニシ立民党首実現を応援します!
そ、そんな……「このお詫びで十分だ」と発信された、小西も尊敬するという前川大先生がハシゴを外されたみたいじゃないですか。ゲンダイも立憲も酷い。
小西議員を切り捨てる事で「失わずに済む」支持者、そして「失ってしまう支持者」。
どっちた大きいか、立憲民主党の面々には判断がつかないのかもしれませんね。
いっそ立憲民主党と「小西正義党」にでも分かれれば良いのに。
もしまた分裂したら、元民主党ってどんどん分裂して小さくなっていく運命なのかな?いつまでもまともな野党が育たなそうなのが悲しいところ。