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国際的な信頼関係ぶち壊す林外相「G20欠席」の衝撃

せっかく安倍、菅両総理が作り上げてきた「FOIP」という遺産を、岸田文雄・現首相や林芳正外相らは台無しにし、潰してしまうつもりなのでしょうか。林外相は予算審議を名目として、G20外相会合やクアッド外相会合に参加しないつもりだそうですが、時事通信によるとインドのメディアはこれについて「信じられない決定」と総じて批判的に報じているそうです。当たり前でしょう。

故・安倍晋三総理大臣が私たち日本人に遺してくれた最大の遺産のひとつは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」ではないでしょうか。

このFOIP、わかりやすくいえば、「自由、民主主義、法の支配、人権」といった基本的価値を共有する国(やその理念に共感する国)が、ルールに基づく開かれたインド洋・太平洋地域を作って行こうとする考え方であり、現在の自民党副総裁でもある麻生太郎総理の「自由と繁栄の弧」構想もその源流のひとつでしょう。

そのうえ、このFOIPのすごいところは、米国を筆頭に、カナダ、豪州、英国、フランスなど、多くの国が賛意ないし関心を示したことです。

とくに米国はドナルド・J・トランプ前大統領の時代にこの構想に共感し、その後継者であるジョー・バイデン現大統領もこの構想を採用し、米国自身が「インド太平洋戦略」を公表した(『自由で開かれたインド太平洋巡る米国版と日本版の違い』等参照)ほどです。

同じ「自由で開かれたインド太平洋」でも、日米で微妙な違いが出たようです。米国政府が先週公表した『インド太平洋戦略』と題する文書では、「米国が連携を深める5つの同盟国」として、日豪に加え、韓国、フィリピン、タイの3ヵ国を列挙。また、台湾を含めた地域各国との連携にも踏み込みました。これについて、どう考えるべきでしょうか。日本が提唱したFOIP当ウェブサイトでは以前から何度となく報告してきたとおり、「自由で開かれたインド太平洋」、あるいは “a free and open indo-pacific” を略した「FOIP」について...
自由で開かれたインド太平洋巡る米国版と日本版の違い - 新宿会計士の政治経済評論

日本が提唱した国際的な理念・構想が世界各国に支持され、広まるというのは、神武天皇がご即位されて以来初めてのことではないでしょうか。

そして、このFOIP、日本の側でももともとの提唱者である安倍総理が退任したあとも、後継者である菅義偉総理が着々と形に落とし込み、その菅政権下で日米豪印4ヵ国(いわゆる「クアッド」)の首脳会談も開催されました(『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』等参照)。

日本時間の土曜日早朝、菅義偉総理は訪問先の米国で史上初の対面での日米豪印首脳会談に臨みました(厳密には、今年3月のテレビ会議を含めれば、首脳会談としては2回目ですが…)。少しインドのトーンが弱いというのは気になるところではありますが、ただ、今後は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)が日本外交における基軸となることは間違いありません。まさに菅政権の最後の仕上げ、というわけです。クアッドではなくFOIPが重要先日の『日本外交は「クアッド+台湾」>「中露朝韓」の時代へ』では、「最後の最後まで仕...
近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた - 新宿会計士の政治経済評論

現在の日本にとって、最も重視すべきは「日米韓」でも「日中韓」でもなく、「日米豪印」なのです。

ただ、そのクアッドを巡って、信じられないような出来事が発生しつつあります。

林外相、G20欠席 予算審議優先、省内ため息

―――2023年02月28日20時33分付 時事通信より

時事通信などの報道によれば、林芳正外相は予算審議を優先するあまり、インドで開かれるG20外相会合、クアッド外相会合に欠席するというのです。

これについて時事通信は「17年から定例化したG20外相会合を日本の外相が欠席するのは初めて」と述べていますが、中国やロシアからも外相が参加するG20の場に、肝心の日本の外相が参加しないというのは異例どころの騒ぎではありません。

実際、3月1日付の時事通信の記事によれば、インド主要紙は「信じられない決定」として、「総じて批判的に報じている」としていますが、これも当然のことでしょう。

「信じられない決定」 林外相G20欠席に批判的―インド主要紙

―――2023年03月01日14時28分付 時事通信より

もちろん、国会対応で首相や外相を国会に縛り付ける日本の国会運営の非常識さも責められるべきですし、とくに国会運営においては、最大野党・立憲民主党の責任も重大です。

ただ、報道等を眺める限りにおいて、どうも自民党や林外相自身、あるいは岸田文雄・現首相らも、林外相のG20出席に向けて尽力した様子は見当たりません。もし岸田首相、林外相のコンビが安倍、菅両総理の遺産を食い潰し、台無しにするのならば、日本国と日本国民に対する背任です。

いずれにせよ、自民党内で自浄作用が働くのか、あるいは「林外相の外交」に対する危機意識がどこまで広まるかには注目したいと思います。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • まさかとは思うがストーカー(K外相)被害に遭いたくないためでは?
    毅然とした対応ができないみたいだし。

  • 今回、野党の申し入れを断り林氏のG20への出席を強行した方が、恐らく国民の受けは良かったでしょうね。
    誰の意見に聞く耳を持っているのかな。だからいつまでたってもキシダは、駄目だ、馬鹿だ、阿呆だ、検討士だ、優柔不断だ、また騙されている・・・と言われ続けるのです。
    本当に、こいつは首相の器でない、と改めて感じています。

  • 林さんの功績というと選挙で河村さんを潰したくらいかな。いいとこないなぁ。

  • 韓国と野党と財務省にだけ「聞く力」の政権は、ベターですらなく今や有害無益と思います。

  • 時事通信がそう取り上げているのであれば、行かなくて正解だったのではと思ってしまう先入観が生まれてきている。

  • いま連日、予算委員会の審議中ですが、これほど「荒れない」集中審議も珍しい。岸田文雄(キシダフミオ)、林芳正(リンホウセイ)らしい、原稿棒読みで当たり障りのない、つまり面白くもなんともない審議が延々と続くつまらなさ。しかもリンさんのG20欠席、キシダのウクライナ訪問も絶望的で、ウ・露紛争真っただ中なのに、支持率合計1割にも満たない夜盗の攻撃に怖気付く感見え見えの、思う壺。こんな状態でG7会議をやるのかと思うと、恥ずかしささえ覚えます。

  • これは林外相の問題ではないのでは。

    参議院で予算審議が始まるため、参院にお伺い(G20に行ってもよいか)を立てたところ与野党ともダメとのこと。

    行けば国会軽視、行かなければ外交的な失点。マスゴミはどっちもおいしい。

    • 自民党が反対しているんですよね。
      林外相がG20 で発言しないほうが国益にかなう、という判断材料が何かあったのか。

  • >もし岸田首相、林外相のコンビが安倍、菅両総理の遺産を食い潰し、台無しにするのならば、日本国と日本国民に対する背任です。

    これってG20とかFOIPの話に限らず、今の日本の国政・外交全般に関して当てはまる懸念材料ですよね。

    岸田総理や林外相が、安倍元総理や菅前総理の功績を自分らの手柄によって上書きしてやろうといった不純な野心を抱くことなく、功績は功績としてきちんと継承して引き継いでいってほしいなぁと思います。

  • いやー、この内閣
    もうダメダメですね
    いつまでも居座ってないで
    さっさと辞めてもらいたい
    中国に配慮して
    FOIPぶっこわすつもりなんじゃないですかね
    ほったらかしで何もしてないし
    外務官僚ともども交渉能力0なんでしょうよ

    • 少なくとも、立憲民主党はFOIPをつぶしたいのでしょうね。
      人民解放軍の野戦軍司令官と称する人物を党代表や幹事長に据えていた政党の残党ですから。

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