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米大統領が電撃的にキーウ訪問=G7首脳のうち6人目

ジョー・バイデン米大統領が現地時間の20日、電撃的にウクライナの首都・キーウを訪れました。G7諸国のうち、6ヵ国の首脳がキーウを訪れた格好です。そして、G7を中心とした西側諸国がウクライナの側に立つことを示すことは、ウクライナ戦争をロシアの敗北に終わらせるうえで重要でしょう。

ウクライナ戦争からそろそろ1年

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻から、そろそろちょうど1年が経過します。

この軍事侵攻が始まった当初、わが国でも「ウクライナは短期間に陥落する」との見方をする人は多かったようです。実際、ロシアもウォロディミル・ゼレンスキー政権を短期間で排除できると思っていたフシがあり、同26日には国営メディア(電子版)が誤って「勝利宣言」のような記事も配信してしまったほどです。

しかし、こうした一部の予想に反し、ウクライナは頑強に抵抗。

結局ロシア側はキーウの制圧を諦め、3月末から4月初めにかけてキーウ近郊から撤退し、その後はドンバス地域やウクライナ南東部などの戦線に集中するのですが、その後は黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の「沈没」、東部ハルキウ州や南部ヘルソンの奪還、クリミア大橋爆発など、ロシアにとってはいくつもの打撃が生じました。

さらには、西側諸国の厳格な経済・金融制裁の影響により、ロシアの主力銀行は国際的な決済網から排除され、ロシアの中央銀行が主要西側諸国に預けていた外貨準備も凍結・没収され、マクド社を含めたさまざまな西側企業がロシアでのサービス提供を中止するなどし、ロシアの経済は大きく混乱しています。

もっとも、欧州などではロシア産の天然ガスなどに依存しているという経済構造もあるためでしょうか、ロシアに対する全面的な輸出入禁止措置を講じるのは難しく、また、コロナ禍直後の経済回復局面にウクライナ戦争の混乱が拍車をかけるかたちで、世界的な物価上昇に見舞われていることも事実でしょう。

このため、この1年を総括するならば、西側諸国の支援を受けたウクライナの反抗、西側諸国の対ロシア経済制裁などのため、ロシア側に少なからぬ人的・物的・金銭的打撃が生じていることは間違いないにせよ、西側諸国経済も決して無傷ではありません。

しかし、この無法なウクライナ戦争の結果、万が一、ロシアに利益が生じるようなことがあれば、それが悪しき前例となり、世界中の無法国家――とくに中国――が同じような軍事侵略行動に出ることもまた間違いありません。

したがって、ウクライナ戦争をロシアの全面敗北で終わらせることは、日本にとっても非常に重要なのです。

バイデン大統領がキーウを電撃訪問

こうしたなかで日本時間の20日、米国のジョー・バイデン大統領が電撃的にウクライナの首都・キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談を実施。ウクライナの主権などに対する「揺るぎないコミットメント」を表明しました。

Statement from President Joe Biden on Travel to Kyiv, Ukraine

―――2023/02/20付 ホワイトハウスHPより

【参考】キーウを散策するバイデン、ゼレンスキー両大統領

(【出所】ホワイトハウスHPより)

また、ロイターの報道によると、今回の訪問は事前に公表されておらず、移動も空路ではなく、ポーランドからの夜行列車で10時間かけて移動し、朝8時にキーウに到着。現地時間午後1時過ぎまで滞在した、などとしています。

Biden walks through Kyiv to show resolve ahead of war’s anniversary

―――2023/02/21 8:43 GMT+9付 ロイターより

ロイターはまた、バイデン大統領のキーウ滞在中に、米国がウクライナに対して大砲弾薬、対装甲システム、防空レーダーなど4.5億ドル相当に加え、エネルギーインフラに対する1000万ドル助など、総額で4.6億ドルの援助を行うと発表した、などともしています。

また、いくつかの報道を眺めると、米国は今回のキーウ訪問に先立ち、どうやらロシア側に事前通告していたようです。

バイデン氏、17日にキーウ訪問決断 ロシアへ事前通告

―――2023年2月21日 9:27付 日本経済新聞電子版より

日経電子版によると、ジェイク・サリバン米大統領補佐官は「衝突を回避するため」にウクライナ訪問をロシアに事前通告していたと明らかにしたと記載されています。ただ、それでもバイデン大統領の訪問中、キーウでは防空サイレンが鳴り響いていたのだとか。

G7首脳のうち、すでに6人がキーウ訪問

さて、今回のバイデン氏の訪問により、G7首脳のうち6人がキーウを訪問しました。

4月10日に電撃的にキーウを訪問したボリス・ジョンソン英首相(当時)を皮切りに、5月8日にはカナダのジャスティン・トルドー首相がやはり予告なしにキーウを訪問。6月16日にはエマニュエル・マクロン仏大統領、オーラフ・ショルツ独首相、マリオ・ドラギ伊首相(当時)の3人がキーウを訪れています。

キーウを訪問したG7首脳(当時)
  • 4月10日…ボリス・ジョンソン英首相
  • 5月8日…ジャスティン・トルドー加首相
  • 6月16日…エマニュエル・マクロン仏大統領、オーラフ・ショルツ独首相、マリオ・ドラギ伊首相
  • 2月20日…ジョー・バイデン米大統領

G7諸国の首脳が相次いでキーウを訪れて存在感を示すこと自体、G7諸国が結束してウクライナを支援していることを見せつけるという意味があるでしょう。

こうしたなか、いまだにキーウを訪問していない首脳が1人いるようですが、これに関しては一部メディアに「岸田文雄首相自身はキーウ訪問に前向きだった」ものの、とある理由でそれが頓挫した、などと報じられています(『首相長男「秘書官」は適材適所だったのか?それとも…』等参照)。

例の岸田首相の長男が、「基本的に忙しいけれど、空き時間は観光できるし、普通の人が入れないところに入れるから嬉しい」と話したらしい――。これは、週刊誌が2日報じた内容です。さすがにこの発言自体は信憑性が皆無ですが、それでもこんな記事が出てくること自体、「首相長男叩き」が世間的に注目を浴びている証拠でしょう。首相長男が心機一転、緊張感をもって職務に取り組むのが先でしょうか、それとも岸田政権自体が崩壊するのが先でしょうか?2023/02/03 15:00追記記事URLに誤りがありましたので訂正しています。 (誤)htt...
首相長男「秘書官」は適材適所だったのか?それとも… - 新宿会計士の政治経済評論

こうした「岸田首相がキーウを訪れようとしていたのに『とある人物』がそれを邪魔した」というメディア報道が事実なのかどうかは存じ上げませんが、もしもそれが事実ならば、なんとも脇の甘いことだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • >「岸田首相がキーウを訪れようとしていたのに『とある人物』がそれを邪魔した」~ もしもそれが事実ならば、なんとも脇の甘いことだと思う

    脇が甘い、なんて生ぬるいですよ。
    秘密裏に確実・安全に遂行しなければならない首脳のキーウ訪問計画をリークするなど、あってはなりません。

    キシダ坊ちゃんのお坊ちゃん…いや、岸田首相のご子息が関係しているか、あるいは他の側近がしでかしたにせよ、言語道断、懲戒ものの愚行でしょう。

  • 1月中旬に岸田首相が欧州歴訪したときにキーウにも行くのではという情報が流れましたね。
    期待を持って見守ってましたが結局行かずに終わりました。
    あのときキーウに行って支援の約束でもしてくれば日本の左派メディアからは盛大に叩かれたかもしれませんが、右派の国民、そして世界中の民主主義者から称賛されたことでしょう。
    それがなされなかったのは岸田氏の中で身内である財務省やその子飼いの左派メディアが意思決定に大きな存在になっているからでしょう。
    自らの考えでの日本の未来に対するグランドデザインを持ち合わせていない、ただ総理大臣に上り詰めるほどの強大な力だけを持った危険な存在。
    それが私の岸田文雄評です。

  • キシダ氏を擁護するつもりは「全く」ありませんが、日本の首相は、朝から晩まで掟すら守れないマスコミに監視されているという不利な点はあるのだろうと思います。
    事前に極秘だよ、オフレコだよ、と言っても情報を洩らす奴が出るだろうし、一切情報を出さずに外遊の予定も無いのに首相を含めた数人が羽田から飛行機に乗った時点で騒ぎになるだろうし。
    G7の他の国より、マスコミの質が悪すぎるという面もあるのかな、と。

  • 行くか行かないかは国益で考える。みんなが行くから行くでは首脳とは言えない。
    個人的には行ってもそれほどのプラスはないと思う。

    もしかしたら行く気満々に水差すためにリークしたのかもしれない。

  • ATM等工作員としか見えないブン屋、自民党を含め与野党信用できない政治屋が蠢く中では、キーウに行く前に、セキュリティークリアランス制度とスパイ防止法を立法する方が先では?

    • 同意します。
      ついでに非常時には国民は自国政府に最大限協力するという「主権国家における民主主義の大原則」を国民が理解して自主的に行動するということを日本共産党だろうがオウム真理教等のカルト団体だろうが日本国籍を持つ日本人全てが出来る必要がありますね。

  • 岸田首相のウクライナ訪問は、何事もことなかれ主義の外務省が「今はまだ早い」とか言って止めたのではと思いますが、案外首相本人が乗り気じゃなかったのかもしれませんね。

  • G7、日本以外の6か国はNATO加盟国。
    ウクライナ戦争の原因の一つはウクライナがNATO加盟の動きを見せたからとも言われている。
    NATOの仮想敵はロシア。
    他の6か国が行くから俺もというのはどうなんだろう。

  • とある人物が邪魔しなかったとしても、情報や安全対策が甘いのでやめて良かったでしょう。相手にも迷惑でしょうし、武器供与もできないのでしょうから。

  • 岸田総理は軍事支援を約束できないのだから、行っても大して意味はないでしょう。
    この辺、日本は敗戦の足枷から抜け出せてない。湾岸戦争から成長できてない。
    戦争の準備ができてない。法整備も足りない。

  • ウクライナに行ってハニトラにかかってみる…
    それはどうだろう?

    近年ウクライナに行ったことがあり、老若男女が全員ミラ・ヨボヴィッチだと思っていた自分の甘さに気づいた。

    あら、かなり皆さん毒リンゴ配り担当の人ばかりだわ!
    こりゃリンゴ輸出で儲けるチャンスと思いきや
    「毒があるから腐らない!あそこで手渡しているリンゴなんか18世紀から出回っている通貨みたいなもんよ。」
    と現地の人に言われる…
    なんだかなぁ…

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