気球問題を巡り、「すべての関係者は言い訳をやめるべきだ」という舌鋒鋭い発言が出てきました。発言者はなんと米国政府ではなく、中国政府報道官です。米軍機が中国の気球を撃墜した件を巡って、中国外交部の汪文斌（おう・ぶんひん）報道官は13日、「米国こそ昨年10回以上、中国上空に気球を飛ばした」として逆ギレしたのです。
汪文斌報道官の記者会見
中国が飛ばした気球を米空軍機が撃墜した問題が、なにかと波紋を広げているようです。
米国内の反応を眺めていると、やはり中国に対する批判で一色なのですが、これに対して中国政府からは、興味深い反応が出てきました。
2023年2月13日外交部发言人汪文斌主持例行记者会
―――2023-02-13 23:18付 中国外交部ＨＰより
中国外交部の汪文斌（おう・ぶんひん）報道官は13日の定例会見に応じたのですが、このうちの７社（※ＮＢＣ、ブリティッシュ・スカイニューズ、ロイター、ＡＦＰ、テレビ朝日、ブルームバーグ、ＷＳＪ）から延べ10回にわたり、気球関連の質問が投げかけられました。
たとえば、こんな具合です（翻訳エンジンなどを参考に意訳しているため、ところどころ日本語がこなれていない点についてはご了承ください）。
ＮＢＣ記者
米国は、米国とカナダの空域で４つの飛行物体を撃墜しました。そのうちの１つは中国の飛行船ですが、残りの３つの飛行物体の一部または全部が中国のものであるかどうか、確認できますか？それともこれは単なる偶然ですか？
ブリティッシュ・スカイニューズの記者
最近、米国とカナダの空域で撃墜された３つの未確認物体について.米国とカナダは未知の物体が何であるか、どこから来たのかを公式に発表していませんが、米国上院のシューマー議員は中国が「飛行船艦隊」を保有する可能性が高いと考えていると述べています。この主張に直接答えていただけますか。また、中国は現在、青島港付近で未確認物体を撃墜する準備をしていると報じられています。中国は、同様の状況での米国の行動を「国際慣行に反した過剰反応」と表現していましたが、なぜ今、そのような行動を取ることを検討しているのでしょうか。
ロイターの記者
先週撃墜され、米国近海に着陸した最初の気球は中国の会社のものでしたか？
ＡＦＰの記者
米国が10日前に撃墜した中国の気球について、中国外交部はそれが民間の飛行船であると説明していますが、具体的に中国のどの会社のものか教えてください。
テレビ朝日の記者
気球問題が深刻化していますが、米中は対立を避けるために交渉しているのでしょうか。
ブルームバーグの記者
米国の飛行船が中国の上空を飛んでいるとおっしゃいましたが、具体的な数は10以上ですか。この数字は2023年からの期間、または過去12か月を対象としていますか？
ＷＳＪの記者
米国商務省は、いわゆる気球偵察プロジェクトに関連する中国企業６社をブラックリストに載せることを決定しましたが、本件についてコメントを聞かせてください。この点に関して、中国はどのような措置を講じる見通しでしょうか。
…。
汪文斌氏の発言が凄い
１社だけ間の抜けた質問をしている記者がいるのはご愛敬として、そのほかに関しては、どのメディアの記者も容赦ない指摘ばかりです。
これに対する中国側の回答をまとめると、こんな具合ではないでしょうか。
- 過去に何度も述べてきたとおり、中国の民間無人飛行船が米国の空域に迷い込んだことは完全に偶然であり、不可抗力によって引き起こされた偶発的なものだった
- 米国が高度ミサイルを発射して無人飛行機を撃墜したことは、過剰な力による過剰な反応だ
- 米国自身が世界最大の監視国・偵察国であり、世界最大のスパイ・ネットワークを備えている。米国の高高度気球も昨年だけで10回以上、中国当局の許可なしに中国の領空を飛行した
- 米国が撃墜した３機の飛行物体に関しては、明確な証拠なしに無責任な発言をすべきではない。ゼロからなにかを捏造し、中国の信用を傷つける行動には断固として反対する
- すべての関係者は客観的に見て、言い訳をやめるべきだ
…。
なんだか、よくわかりません。
記者らからの質問にもあるとおり、「米国の空域に迷い込んだのは民間の飛行船だ」というのならば、その「民間の飛行船」とやらはどの社の所属のものなのかを明らかにすべきですが、汪文斌氏はこれについて、会見のなかで最後まで明らかにしていません。
それどころか、「米国だって中国の上空に無人機を飛ばしたじゃないか」、などと「逆ギレ」しているのです。
もし米国が本当にそれを飛ばしたのならば、どうしてそのときに発表しないのか、といった疑問もさることながら、偏西風に逆らって飛ぶ「気球」があるのか、是非ともそのメカニズムを知りたいと思う次第です。
まさに「ゼロ対100」理論そのもの
いずれにせよ、中国政府の言い分は、当ウェブサイトで以前から紹介している「ゼロ対100」理論（『ゼロ対100の総本山・中国が気球撃墜で米国に逆ギレ』等参照）そのものです。
| 100％自国の側に責任があるような事態が発生しても頑なにその責任を認めず、相手国の側に責任をなすりつける姿勢を、当ウェブサイトでは「ゼロ対100理論」と称しています。このような理論を好む国はロシア、北朝鮮、韓国などがその典型例ですが、やはり「総本山」はレベルが違います。世界中の誰がどう見ても自国が悪いといえるような状況で、相手国に責任を押し付けようとしているからです。ゼロ対100理論当ウェブサイトで以前から提示している仮説に、「ゼロ対100理論」というものがあります。これは、完全に自分たちの側に100％の過... ゼロ対100の総本山・中国が気球撃墜で米国に逆ギレ - 新宿会計士の政治経済評論 |
この「ゼロ対100」理論とは、自分たちの側に100％の過失がある場合であっても、ウソ、捏造、屁理屈などを駆使し、何とか相手側に責任をなすりつけようとする態度のことで、中国を筆頭にロシア、北朝鮮など日本の近隣４ヵ国が大変好むものです。
※ゼロ対100理論とは？
自分たちの側に100％の過失がある場合でも、屁理屈を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく態度のこと。『「ゼロ対100」が大手メディアに掲載される時代に！』等参照。
| 自称元慰安婦問題は、日韓歴史問題のなかでも、韓国にとっては「最も成功した謝罪利権」であることは間違いありません。なにせ、もともと存在しなかった問題を捏造し、それにより日本をひれ伏させ、延々謝罪させることに成功したのですから、気持ち良くてたまらなかったのではないでしょうか。こうしたなか、「ゼロ対100」という、どこかの怪しげな自称会計士が唱えている用語が、新聞に掲載されたようです。単なる偶然でしょうか？それとも…。ゼロ対100理論おもに無法国家が好む「ゼロ対100」理論当ウェブサイトではこれまでしばしば... 「ゼロ対100」が大手メディアに掲載される時代に！ - 新宿会計士の政治経済評論 |
とくに最後の「すべての関係者は客観的に見て、言い訳をやめるべき」とする発言は、「鏡を見ているのか」といいたくなるほどの見事なブーメランです。
ある意味では本当に面黒い国だと言わざるを得ないでしょう。
View Comments (29)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1 2 次へ »偉そうな態度での屁理屈や言い訳は日本共産党とそっくりですな。
素朴な感想ですけど、もし中国の主張通りに、アメリカが偏西風に逆らって中国まで気球を飛ばしたのなら、アメリカはすごい技術を持っていることになります。だから、中国は、その技術を盗むために偵察気球をアメリカに飛ばしたのではないでしょうか。
偏西風は約11日で地球を1周しているそうなのでアメリカ西海岸や
ヨーロッパの米軍基地から上げれば、中国に届くと思いますよ。
偵察衛星やネットでの通信傍受を仕込んで有るだろうアメリカが
そんな事をする必要も無いので、する訳はないですが。
テレビで「偵察衛星があるのになぜ気球を飛ばすのか、目的が分からない」と言っていた。
中国の偵察衛星壊れて機能してないんじゃないの？ ハッカーにやられたとか。
中国としては絶対に言わないと思うけど。
sqsqさま
完全に妄想ですが、中国は米本土へのテロ攻撃のために、無人ステレス飛行船を考えているのではないでしょうか。（無人機の場合は、長距離を飛行するためには、そのための燃料が必要になり、重量もかさみます。しかし、飛行船の場合は、燃料が少なく、その分の重量も軽くなります）
衛星より高度が低く電波を拾い易いとかスピードが遅いのでゆっくり観察できるとかあるようです。
衛星だと地球の自転もあるので次の周回で同じ位置を通過しないとかもあります。
気球問題が深刻化していますが、米中は対立を避けるために交渉しているのでしょうか。
してるに決まってるでしょうが！
日本の記者の低レベルぶりよ。
日本の記者：「すべては話し合いで解決できる」
日本の話し合い万能信仰は、国外では通用しないと思いますが。
この気球、かなり大きくて数百キロくらいの積載量があるそうですね。
やろうと思えば大量破壊兵器を上空からばら撒けるわけで、世界中に飛ばしてるということはその予行演習といえるわけで…
それにしても昨今の中国外交はどんどん大朝鮮と化してますね。そうしても世界を捻じ伏せられるという自信の表明なのか、過信なのかは気になるところです。
いずれにしても日本メディアの程度の低さ（わざとでしょうが）には変わりませんが。国内のレポーターに中国人採用も珍しくなくなりましたし。
一応ペラは付いて多少の機動変更能力は有るらしいですが
直径からほぼ無意味で風任せだろうと推定されていて
目標を定めての飛行は出来そうに有りません。
積載重量の推定値も生物化学兵器で攻撃だと、化学兵器は論外の量（例、松本サリン）
生物兵器もCOVIDの教訓で直ぐに防疫されるでしょう。
何より、これでアメリカの防空体制が整えば、撃墜回収された際に"証拠"になってしまう訳で自国へのダメージの覚悟が有るなら、こんな（バカな）兵器は使いません。
偵察で有ればU２撃墜やSR-71での強行偵察など領空侵犯はアメリカも過去に行い
今も防空圏ギリギリで威力偵察を行い、電波データを取りまくっているので
中国からすれば「お前が言うな」案件な部分は有るでしょう。
中国が国際ルールを無視した拡大戦略を続けていて
遠からず"敵"として戦わなければならない可能性が高いのは事実だと思いますが
脅威の程度を現実的に見る努力は怠るべきではないかと思います。
＞直径からほぼ無意味で風任せだろうと推定されていて
高度２万ｍでは偏西風も無く、薄い大気は無風なのだそうですよ。
ちなみに気球は比重差で浮いてるのだから、高度２万ｍは気圧ゼロではないのですが、宇宙空間を爆走したハヤブサ２のイオンエンジンの推力は1000Ｗで３ｇ（！）なんだそうです。
＞目標を定めての飛行は出来そうに有りません。
遠藤誉という教授が似たような記事をUPなさっていました。
ここでコメントなさっているのであれば、遠藤教授と同じくらいには根拠に自信があるということですかね？
＞生物兵器もCOVIDの教訓で直ぐに防疫されるでしょう。
例えば、サリンや炭疽菌が日本に空中散布されたとして、どういう根拠で
「直ぐに防疫される」
のですかね？
＞何より、これでアメリカの防空体制が整えば、撃墜回収された際に”証拠”になってしまう訳で自国へのダメージの覚悟が有るなら、こんな（バカな）兵器は使いません。
共産党中国がバカだという可能性を、どうしてここでは排除なさるのですかね？
＞偵察で有ればU２撃墜やSR-71での強行偵察など領空侵犯はアメリカも過去に
米国はシラを切った事はないかと。
また、偵察してることを隠してもいないかと。
（僕は子供の頃からリベラル？なので、米国は好きじゃないのですが。）
＞中国からすれば「お前が言うな」案件な部分は有るでしょう。
すでに共産党中国の掌の上の孫悟空みたい。
（笑）
偵察すること自体は米国も隠してないでしょ。
「民間の」とか「学術の」とか言ってるのが怪しいネ、と。
＞脅威の程度を現実的に見る努力は怠るべきではない
気が合いますね。
僕もそう思いますわ。
２国間で予算・軍艦の数がこの３０年間でどう推移してきたかを現実的に見るのに、努力なんか不要ですからね。
ごめんなさいね。中国の味方をしたい訳では無いのです。
ただ、現実シリアやイラクなどで反撃されない少数民族相手以外に
化学兵器が使われないのは正規軍のNBC防御だと殆ど有効な攻撃にならず
且つあれは殺虫剤と似たものなので化学反応の都合上
量が必要、なので気球だと難しいだろうと
生物兵器についてもオウムが東京での散布に失敗したように
上空からだと感染を始める程度の臨界量を撒くのが難しく
（COVIDの感染防止などで周知されるように多くの場合、口から数百個取り入れなければならず、乾燥して紫外線が当たる環境だと数日以内に無効化されてしまう）
切り離して小さい地域なども感染が広まり始めれば
思うより早く防疫されてしまうだろうと。
現実、病気の類は人間がやらなくても鳥インフルエンザや口蹄疫など
勝手に広がって、それと人類は戦い続けて
経験値を積み続けている訳ですから
同時にCOVIDのように全世界に広がるリスクも有る訳で
効果とリスクを天秤にかけると魅力的ではないだろうと普通の軍人なら
思うのではないかと。
>共産党中国がバカだという可能性を、どうしてここでは排除なさるのですかね？
これらが偵察で相手が文句を言ってこない
言って来ても「気象用だ」と強弁すれば何とかなると安易に考えていた
可能性は有ると思います。
>米国はシラを切った事はないかと。
言い訳が出来ない状況に陥った際には認めているだけで
証拠が不十分な場合は知らぬ存ぜぬを通しているかと。
西側の価値感の方が中国共産党より遥かにマシだと思っているので
同盟は続けるべきだと思っていますがヨソはヨソです。
そして、同時に日本政府も有る程度
この種の面の皮の厚さを持って貰いたいと思っています。
>２国間で予算・軍艦の数がこの３０年間でどう推移してきたかを現実的に見るのに、努力なんか不要ですからね。
今回の気球は軍事的脅威になりうるか？と言う視点で
それは微妙なのではないかと意見したかっただけなので
こちらについては全く同意です。
プライドが許さないのか、米国に支離滅裂な難癖をつけるとか恥ずかしい。
なんでこうも恥知らずで頭の悪い発言が飛び出すのか、国家としてレベルが低いんでしょうけど、わざわざドつぼにハマっていく様は滑稽以外の何者でもありませんね。
確かに１社だけ、あっち向いてホイの間の抜けた質問をしていますね。少し前に、女性の芸能人の方が『日本人として恥ずかしい』とおっしゃってましたが、私も、各社記者さんの質問内容を拝見して、『日本人としてとてもとても恥ずかしい』と思いました。日本のメディアって、所謂重要な隣国の担当記者がこんなトンマなことをしでかしても務まるのでしょうね。それはさておき、そもそも中国に信用なんかあるのでしょうか？『中国の信用を傷つける行動には断固として反対する』このジョーク、極めて愉快ですね。かの国の報道官、どいつもこいつもコメントが天才的です。
米国も中国もお互いに気球飛ばしたやろがいと言ってますが、そもそも気球って狙った場所に飛ばせるようなものなんです…？
狙う場所のレベルに因りますが、2月4日に米サウスカロライナ沖で撃墜されたものは、太陽光パネルとプロペラを持ち、ジェット気流域よりもさらに上の超高高度の微風に乗ってゆっくり流されながら狙った場所を飛んだようです。数か月の時間と地球を何周しても良ければ地球上どこでも行けそうです。1日以内では無理でしょうが。
この「風船」で、うるさい西側諸国にCOVID−2X 生物兵器をばら撒く予行演習なのでは？と勘ぐってしまう。
<>
たしかに、中国側の回答には、少~し事実が混ざっていますね。
あれ？＜＞の中身が消えてしまった！ピクシス指令の言葉を引用したのですが
やるんだな？今ここで！