例の「報告書」が、東京都監査事務局のウェブサイトにアップロードされたようです。これによると都の監査委員は暇空氏の請求の多くを「妥当ではない」として否定しつつも、架空経費の計上などを事実上認めたほか、委託事業における会計処理にいくつかの問題があったとしています。ただ、やはりこの報告書自体、どうも全体的に「奥歯にモノが挟まったような言い方」に終始しているのは気になるところです。
先ほど、東京都監査事務局のウェブサイト『住民監査請求結果(令和4年受付分)』のページに、「暇空」氏が昨年末からツイートしていた内容が公表されました。
文書の名称は『東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果』で、PDFファイルで全27ページというものです。
暇空氏の請求内容についてはとりあえず割愛するとして、ここでは東京都から正式に公表された内容を確認しておきましょう。まずは、『事実関係の確認』(同P7)です。
監査対象事項
令和3年度東京都若年被害女性等支援事業委託における履行の完了検査及び委託経費の精算等は、法令、当該委託契約書及び当該委託仕様書等に基づき適正に行われているかについて監査対象とした。
監査対象局等
福祉保健局を監査対象とした。
また、法人Aに対して法第199条第8項の規定に基づく関係人調査を行った。
次に、監査委員としての「判断」が、同P14以降に示されています。
宿泊支援費、車両関係費、旅費交通費、会議費などの費目の支出に関する「請求人(=暇空氏)の主張」は「妥当ではない」と判断されていますが、その一方で報告書の21ページ目以降には、「本件経費の検証について」とする記述があります。
これによると、「委託事業の経費として計上するにあたり不適切な点があるもの」「委託事業の経費として計上するにあたり妥当性が疑われるもの」が認められたとして、それぞれ次のように記載されています。
委託事業の経費として計上するにあたり不適切な点があるもの
- (人件費、法定福利費について)法人Aは、本件活動報告書によると、相談事業、アウトリーチ事業、食事・物品提供、緊急時の保護・宿泊支援、生活支援等の活動をしていることがうかがわれ、本件経費のうち本事業の実施に必要な経費を特定するには、本事業以外の事業の実施に要した経費(自主事業や他の補助金等を受けて実施している事業に要した経費)とを区分する必要がある。具体的には、給与について、事業への従事割合によって委託事業の経費として按分をしたという説明がされたが、按分の根拠となる考え方が不明瞭で、その実態が不統一であり不適切である。また、按分の考え方に基づき按分すべき法定福利費、税理士報酬等については按分せず全額計上しており不適切である。一方で給与については総支給額を計上せず、所得税等の税額を控除した後の金額を計上しており、過少計上となっている。
- (領収書について)本事業の特性上やむを得ない事由があることは理解できるものの、証ひょう書類としての性質上、領収書として認められるか否か疑義が生じるような領収書が含められていることは不適切である。また、領収書が示されていない事項が本件経費に計上されていることは不適切である。
- (事業実績額の内訳の記載について)本件事業実績額の内訳には実際とは異なる備品や購入していない備品が記されており、実態を正確に反映せずに本件事業計画書の事業所要額の内訳をそのまま転記したものと思われるものが見受けられることは不適切である。
- (履行確認について)本件契約の履行確認において、本件契約の仕様書に記載のアウトリーチ支援のうち、「①夜間見回り等」では、「声掛けや相談支援を原則として週1回程度実施する。または、都内繁華街などに常設の相談場所を設置し、原則週1回以上若年被害女性等の相談に応じる」とされているところ、本件実施状況報告書では、特定の事業によるアウトリーチ実施回数と声掛けをした人数や参加者数の記載にとどまることは、その実態が把握できず不適切である。
端的にいえば、架空の経費などが計上されている可能性がある、ということであり、これは事実とすれば、「不適切」などという次元のものではありません。また、事業の履行の確認が不十分なところがあるという点についても問題でしょう。
次に、「委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの」の記述です。
委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの
対象人数が不明であるものの、一回当たりの支出が比較的高額なレストランでの食事代やホテルの宿泊代、また食事代とは理解し難い物品の購入代が計上されている。さらに、宿泊支援費について都外遠隔地での宿泊代が計上されていることなど、本件契約の仕様書に記載される文言そのものからは委託事業の経費として計上することに妥当性が疑われるものが見受けられる。
これも、典型的な経費の不正流用の疑いです。
報告書は23ページ目の「小括」のなかで、「請求人(=暇空氏)の主張には理由がない」部分もあるとしつつも、「本件精算は、上記エⅰ)及びⅱ)の点が認められ、妥当性を欠くものと言わざるを得ない」、と結論付けています。
そのうえで報告書は、「令和5年2月28日までに」、次の2点を求めています(同P24)。
- 監査対象局は、本件契約に係る本事業の実施に必要な経費の実績額を再調査及び特定し、客観的に検証可能なものとすること
- 調査の結果、本事業として不適切と認められるものがある場合や委託料の過払いが認められる場合には、過去の事業年度についても精査を行うとともに、返還請求等の適切な措置を講じること
これ自体、監査委員が団体の不正を認めたというわけではなく、なんだか奥歯にモノが挟まっているかのようなスッキリしない表現ではあります。これに加えて監査委員は報告書の末尾(P24)で、こんな「意見」を述べています。
- 監査対象局は、公金の使われ方について都民に疑念等を生じさせないよう、事業実績額については、本事業の実施に必要な経費を正確に報告させ、これを精査したうえで精算を行うとともに、事業実績額の対象経費の支出内訳について受託事業者ごとに任意とするのではなく、仕様書に定める支出対象費目(報酬、給料、職員手当等、賃金、報償費、謝金、旅費、需用費(消耗品費、印刷製本費、会議費、光熱水費、食糧費)、役務費(通信運搬費等)、委託料、使用料及手数料、備品購入費、共済費、扶助費 その他緊急に必要とする経費)の区分に準じること。
- アウトリーチ支援など本件事業の履行の完了については、具体的に事業の実施状況を確認できるよう受託者に対し報告を求めること。
- 人件費や報償費等の本事業の実施に必要な経費とそれ以外の経費について、明確に区分することが困難な経費については、事前に按分の考え方や算定方法を局が受託者に対して示すなど合理的な説明ができるようにすること。
- 概算払による資金の交付について契約書に通常記載されるべきである「本件事業に係る委託に要する経費以外に流用しない」旨を契約書において明らかにしておくこと。
- 宿泊費や給食費等について、一人一回あたりの上限金額を設けるなど、委託料の使途について合理的な基準を設けること。また、宿泊についてはその人数や目的、泊数などを報告させること。
- 受託者に対し、本事業が補助事業ではなく委託事業であること、また、本事業が公金を使用する事業であることをあらためて指導徹底すること。
正直、極めて甘い報告書と考えざるを得ない部分もあります。これらの措置を「監査対象部局」に要求したとしても、それらの是正措置に実効性がない可能性があるからです。
ただ、この監査報告はあくまでも「きっかけ」に過ぎず、私たち国民の税金が日本共産党系の団体などに不正に流れているのではないか、といった大きな動きの解明につながるのならば、非常に有意義な話といえるかもしれません。
とりあえずは東京都の問題に関しては東京都議会において議員が小池百合子東京都知事を筆頭とする行政側にきちんとした質問を行っていただく必要がありますが、それだけではありません。やはり「本丸」は国政ではないでしょうか。
今後に期待したいと思います。
View Comments (30)
マスメディアで報道されないのは問題ですよね
たしかにスッキリしないですね。
colaboは四天王の中では最弱らしく
暇空氏はすでにほかの3法人の方に着手している
そうですね。
これからを見守りつつ、何かしらできることが
あれば微力ながら実行できればとおもいます。
Colabo側は「一部を除いて問題がない
こととされました。」と勝利宣言らしき
ものをしたようです。
たしか「一切問題はない」という姿勢
だったかと。「一部を除いて問題がない」=「問題があった」ということでは。
精神勝利で自滅していくのはデジャブ
でしょうか。
まずは端緒、といったところですが、コラボ側はきちんと領収書等を提出できないと終わる話ですので、まあ様子を生温かく見守りたいですね。
暇空氏一人にお任せしてしまっている現状が歯がゆいですが、官僚主導と思われる巨悪が暴かれることを祈るばかりです。
カンパはしましたが、何か出来ないものかなあ…。
17:51にググったら
>東京都
>若年被害女性等支援事業住民監査請求監査結果|東京都
>48分前
終業時かよ。
本文は完成してるのに1分でも1秒でも先延ばししたいのかよ。
監査局からしてソンタクがひどいなー
(いやもちろんこの時刻はグーグルがクロールした時刻だけどさー)。
請求人の訴えを退けた上で、
「理由あり」「やり直し」ってのは、
ある意味、凄い結果ですね。
さて、明日の朝刊と、
明後日の東京都知事の定例会見は、
どないなもんになるのでしょうか?
こういう時にこそ内部通報者が出てくると(Colabo側、都の監査チームから)面白いんだけど。
colabo側は、暇空氏の「主張は妥当でない」というほとんどの監査結果、また、不当とされた事項については、「違法ではなく不当」に留まるとして勝利宣言していますが、脳天気すぎると思いますね。
【弁護団声明】
https://colabo-official.net/20230104/
監査は、colabo側の活動報告書が真実だと仮定した場合、暇空氏の主張は妥当でないと言っているに過ぎず、結局は領収書などで事実確認ができないために不適切、妥当性が疑われると結論付けた訳ですので、勝利宣言などする状況にないはずですが…。
今後の展開、どうなりますかね。
自分は、7名の弁護士を伴って行ったcolabo側の記者会見に違和感を感じ、このcolabo問題を追うようになった口です。
あちら側であるはずの室井佑月氏がまともなことを発言しだしたり
制度アナリストの宇佐美典也氏が徹底的にAV新法を反対していたり
TwitterのTLに流れてくる、それぞれ気になる点を辿っていくと、colabo問題という線になりました。
何方かが仰っていた「これはネオ同和」だというフレーズ
とても腑に落ちます。
なるほど、そりゃアンタッチャブルになりますね。
転勤族さまがお感じの、
日頃あちら側の室井佑月氏が
まともなことを発言したのには
私も奇妙に感じた口です。
私が想像するに、
ネットで指摘されてるように本件は
赤いお旗の錬金呪術なので
ハッピーさんの奥方室井さんが
攻め手に加わるのかと。
なんせ、
熾烈な鬱憤層獲得競争を繰り広げる中で
SEALs以来の赤いお旗とコラボだった
CLP問題を、赤いお旗系の人の裏切りで
自党だけに擦り付けられた忸怩たる恨みが
おありなのだと思います。
世相マンボウ* さま
極左の許容範囲はとてつもなく狭く発火しやすいですね。
すぐに火が付いて内ゲバに走る。
この界隈の方々は本当に面白いです。
ただし公金横領スキームは許せません。
証憑が揃ってないから不正かどうかまでは言えないってところでしょう。区分の指導から始めないといけないわけですし。
グループが支出している謝礼金とか弁護士相談料とかが巨額でそこに切り込めるかですね。都には無理でしょうから会計検査院が切り込めるかどうか。
あと、Colaboの渋谷活動報告書ワロタw タダメシが手に入らなかったから声掛けしないってw
https://youtu.be/2GD5S472ttk?t=390
監査結果より
>また、按分の考え方に基づき按分すべき法定福利費、税理士報酬等については按分せず全額計上しており不適切である。
NPO法人は収益事業無しなら税務申告等は必要ないそうなので税理士の関与具合は年末調整関連だけですかね。
>一方で給与については総支給額を計上せず、所得税等の税額を控除した後の金額を計上しており、過少計上となっている。
関与していれば上記処理はちょっと考えづらく、申告不要だからNPO職員が通帳の出金額を転記しているだけと思われます。
しかし源泉徴収処理はしているので控除前の給与総額を把握していないわけはないはず。なのに控除後の給与を計上しているならこのまま源泉所得税を納付すると預り金等をどこから持ってきたんだとなって貸借対照表が合わなくなります。
(給与賃金)1000/(預り金)100
/(現預金等)900
(預り金)100/(現預金等)100
預かって、払うのだから預り金残は必ず0
colaboのやってるだろう処理
(給与賃金)900/(現預金等)900
(預り金)100/(現預金等)100
預かってもいないのに払うのだから預り金残▲100
貸借対照表の当期損益と損益計算書の純利益は必ず一致しなくてはならないので、どうせ預り金期末残0にするために他の経費に付け替えてるんでしょう。
一昔前ならほぼ税金とか関係ないNPO法人なんて大体はこんなものと眉を顰める程度だったのが、今時はNPO法人を隠れ蓑にした組織的な補助金詐取と政党までかかわる利権構築が見え隠れしているのが笑えない。
この人達はNPO法人じゃなくて一般社団法人なので、そもそもそういう帳簿が無いんじゃないかと言われてますね。自分たちでも謝礼と「本来の活動」以外に何に使ったのか把握してないんじゃないかと。
総勘定元帳は無しですが・・・、お腹痛い。
あのザル会計でちゃんとした元帳がある方がびっくりですよ。
一般社団法人には、過去五年間の貸借対照表を公告する義務があるので、
Corabo は、すでに、この点で法律違反してます。
税金の申告は不可避なので、どのみち経理はそれなりにしないと駄目なのですが。
最後の政党までかかわるというのは言い過ぎたか。
ただ強い言葉で他人を批判するわりに、自分への批判は絶対悪とばかりに訴訟や公的権力をもって個人を抹殺しようとする姿勢は承服しかねる。
今、県単位で反ヘイト条例が成立していますがこれこそ小説1984のごときディストピアへの道なんじゃなかろうか。