今度は「賢人会議」だそうです。韓国政府・外交部によると、朴振(ぼく・しん)外交部長官は6日、4人の「賢人」を招き、昼食会を兼ねて「韓日関係関連賢人会議」を開いたのだとか。これについて韓国メディアの報道を眺めていると、自称元徴用工問題の「解決策」について「意見交換したものとみられる」としつつも、その具体的な内容には触れられていません。
「早ければ来春にも解決」、本当?
先日の『日韓「3つの懸案が早ければ来春にも解決」=メディア』などでも取り上げたとおり、一部メディアは日韓両政府が現在、自称元徴用工を巡って「解決策」をかなり絞り込んでおり、合意まであと間近だ、などとしきりに報じています。
朝日新聞の外交専門記者の牧野愛博氏が執筆した記事によれば、日韓両政府の間で、「徴用工、輸出管理措置、GSOMIA」の「3つの課題すべて」が「早ければ来春にも解決する可能性が出てきた」というのです。この記載が事実なら、由々しき話です。日本国民のために働くべき外務省が、日本のためではなく、韓国のために働いているのと同じだからです。「早ければ来春にも3つのすべて解決する可能性」まさに、「カネボウと中央青山の関係」そのものでしょうか。『現代ビジネス』が配信した次の記事によると、日韓諸懸案のうち、「徴... 日韓「3つの懸案が早ければ来春にも解決」=メディア - 新宿会計士の政治経済評論 |
といっても、これらの情報について精査していくと、やはり情報の出所自体、日本政府というよりも、どちらかというと韓国政府の側が中心ではないか、という気がしてなりません。とくに「3つの懸案すべてが早ければ来春にも解決する」といった報道自体、どうにも初歩的な事実誤認が多すぎるのです。
あらためて先日紹介した情報のエッセンスを再掲しておくと、こんな具合です。
- 徴用工問題の解決は、日本が2019年夏に実施した韓国向け半導体素材などの輸出管理措置と、韓国が19年秋から続けている「日韓GSOMIA破棄通告の効力停止」という中ぶらりんの状態の解消につながる可能性を秘めている
- 3つの問題を解決していくうえで、日韓両政府は相手と呼吸を合わせる作業を続けている。徴用工問題を巡っては、韓国政府はすでに、韓国の財団が日本企業による賠償を肩代わりする「代位弁済」を行う方針を固めている。現在はその法的根拠や原告団に対する説明などの作業を行っている
- 韓国が心配しているのは、「徴用工を解決したら、日本は輸出管理措置を撤廃してくれるのか?」という点だ。日韓は当局者協議を続け、韓国側が法改正や体制強化を実施したことで、輸出管理措置を続ける根拠はほぼなくなっている
…。
事実誤認も多々ある:日韓諸懸案は3つ「ではない」!
ここでやはり重要な誤りを指摘しておくならば、その最たるものは、日韓諸懸案は自称元徴用工問題、対韓輸出管理適正化措置、日韓GSOMIA破棄通告の3つではありません。
そもそも対韓輸出管理適正化措置やGSOMIA安定運用の件については、日本政府としては公式な見解をほとんど出していません。すなわち、この2つを巡って、日本政府が「解決すべき日韓間の懸案である」と認識している可能性はあまり高くないのです。
そして、ここに挙げられた3つのうち、外務省が管轄しているのは自称元徴用工問題くらいなものであり、輸出管理を管轄しているのは経済産業省ですし、GSOMIAを管轄しているのは防衛省です。どれも外務省が表に立つようなものではありません。
いや、もちろん、外務省がこれらの件で韓国側と「グランド・バーゲン」とやらをやりたがっている可能性は十分にあるのですが、冷静に考えてみたら、この3つを並べてこれらを一括解決などと述べている時点で、やはり情報源は日本政府ではない可能性が出て来る、ということです。
しかも、少なくとも表に出て来ている情報だけで判断する限り、対韓輸出管理適正化措置を巡っても、「日韓が当局者協議を続け」ている、という記述は間違いです。
経産省が韓国側に対し、輸出管理を巡る政策対話(「行方不明のフッ化水素等の行方を説明せよ」、でしょうか?)の実施を粘り強く求めてきたにも関わらず、韓国側は2020年に、日本を世界貿易機関(WTO)に提訴してしまったことで、この政策対話が中断しているからです。
それに、輸出管理を巡って「韓国側が法改正や体制強化を実施したことで、輸出管理措置を続ける根拠はほぼなくなっている」、などとする記述も確認できるのですが、輸出管理体制は法改正やちょっとした人員の増員だけで強化できるものではありません。
迂回貿易や目的外使用の防止のために、実効性ある措置を講じるには、それなりにノウハウも必要ですし、輸出管理体制をしっかりと運用した実績がなければ日本政府としても「韓国の体制強化が完了した」と判断することは難しいでしょう。
こうした点を踏まえるなら、該当する記事の執筆者の方は、それなりに取材を重ねたのだとは思う反面、「キーパーソン」(たとえば輸出管理であれば経産省関係者)にはリーチできていなかった可能性は十分にあるのです。
韓日関係「賢人」会議を韓国外交部が(勝手に)開催
ただ、こうした点を踏まえたうえで、改めてこの「3点セットの解決」という構想を眺めていると、韓国側が自称元徴用工問題を「解決」し、そこを突破口として対韓輸出管理適正化措置の撤回をもくろんでいる、という流れが見えてくることもまた事実でしょう。
そして、その流れが韓国政府の思惑通りには進んでいない可能性も出て来ています。
こうしたなかで、韓国政府外交部は朴振(ぼく・しん)外交部長官が6日、「韓日関係関連の賢人会議」を開催したと発表しました。これについては韓国語ですが、韓国外交部ウェブサイト『日韓関係関連「賢人会議」開催』も参考になるかもしれません。
ちなみに出席したのは文喜相(ぶん・きそう)元国会議長や洪錫炫(こう・しゃくげん)中央ホールディング会長、崔相龍(さい・そうりゅう)元駐日大使、柳興洙(りゅう・こうしゅ)韓日親善協会中央会長の4名だったそうです(すなわち、彼らが「賢人」なのだそうです)。
【参考】「賢人会議」
(【出所】韓国外交部)
「韓日」などというわりに、日本人の識者は参加していないようです。
しかも、参加者のうち文喜相氏といえば、上皇陛下に対する侮辱発言問題だけでなく、2019年に国会議長として日本を訪れた際、「両国の企業と国民の自発的な参加で基金を作って賠償金を支払う」という「1+1+α」案を示し、日本ではまったく相手にされなかったという人物でもあります。
そのような人物を招いて何か有意義な検討ができるというものなのかはよくわかりません。
ただ、ここで確認しておきたいのが、韓国メディア『聯合ニュース』に昨日掲載されていた次の記事です。
韓国外相 徴用問題など巡り「賢人会議」
―――2022.12.06 17:47付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースはこの会合について、「日本による植民地時代に徴用された韓国人被害者への賠償問題の解決策などについて意見交換したとみられる」としたうえで、外交部当局者が記者団に「小規模で各界の意見を聞く場を設けている」と明らかにした、とも報じています。
もっとも、記事ではその具体的な内容については触れられていないため、この「賢人」会議で何が議論されたのかについてはわかりません。
このタイミングの「意味」
ただ、その内容を推し量るうえで手掛かりとなるのが、「なぜ、このタイミングでこんな会合が実施されたのか」という疑問です。
まずは、韓国政府では7月から9月にかけ、自称元徴用工問題での官民協議会を合計4回開催したものの、この会合自体は途中から自称元徴用工側が参加しなくなるなどして、事実上、空中分解しているという点を思い出しておきましょう(『官民協議会の次は公開討論会?韓国政府が徴用工で迷走』等参照)。
韓国政府の迷走ぶりが目立ってきました。自称元徴用工問題で韓国政府が設置した「官民協議会」が、たった4回の会合で事実上空中分解してしまったこともそのひとつですが、ここに来て韓国政府は、自称元徴用工問題を巡る「公開討論会」の開催を予定しているというのです。なんだか意味がわかりません。ただ、そもそも論として、韓国政府・尹錫悦政権と交渉したところで、その尹錫悦政権自体がいつまでもつのかという問題もあることを忘れてはなりません。「日本が韓国に譲歩せよ」論インチキ論説シリーズ日韓関係を巡っては、「日本が... 官民協議会の次は公開討論会?韓国政府が徴用工で迷走 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これに関連し、聯合ニュースは、次のように述べています。
「局長級や次官級協議、外相会談、首脳会談と外交協議が活発に行われた。徴用問題の解決策が絞られ、賢人会議などを通じ国内での意見集約にも再び乗り出したものとみられる」。
「同当局者は『4回にわたる官民協議会を通じ、考慮できるほぼ全ての意見が出たと考えている。ただ、各界の意見をより幅広く集めるプロセスが必要だ』と述べた」。
これについてどう考えるべきか――。
個人的にはむしろ、自称元徴用工問題を巡って、日韓での外交協議が難航している証拠、という線についても考えておく価値はあると思います。つまり、日本側から突き付けられた条件を巡って、この4人の「賢人」に、朴振氏が話を聞く、という流れです。
結局、日本からの譲歩は現時点で引き出せていない、ということなのかもしれません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
もちろん、岸田政権下において、自称元徴用工問題で日本政府が妙な譲歩を決断するという可能性については予断を許すものではありません。
とくに、韓国側が「岸田政権のうちに日本から譲歩を引き出そう」という動きに出てくる可能性についても、十分な警戒は必要です。
しかし、いつのまにか「早ければ年内にも解決」が「早ければ来春にも解決」に変化していることなどを踏まえるならば、物事が韓国側の思惑通りに進んでいるとは限りません。
いずれにせよ、もう少し事態の推移を見守る価値はありそうです。
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ダメな組織ほど、意味のない会議を開きますよね。それで仕事した気になってる。ヒゲの佐藤がやっていた外交部会も同じ。外交部会で議論するってドヤるだけで、何も結果出さない。こんなのに騙されてはいけませんね。
ジロウ様
会議をする事が重要なんです。
会議さえ開けば、もう事態は決着したようなものです。
と、何回聞かされた事か。
ちょろんぱ様
ありがとうございます。もう一つ、ダメな組織ほど、PTやワーキングチームを乱発して仕事しているフリしますよね。
ぽっぽが入っていないのに賢人会議とはこれ如何に?w
>考慮できるほぼ全ての意見が出たと考えている。ただ、各界の意見をより幅広く集めるプロセスが必要だ
いや、意見が出揃ったのならやらなきゃいけないのは絞り込みでしょ?増やしてどうするんだよ?数を自慢するの?
ぽっぽパイセンは殿堂入りしたのでランキング外ですw
匿名様
やっぱり、ぽっぽ氏の参加は必要ですよね?
ぽっぽ氏のいない賢人会議は、クリープの入れない
コーヒーみたいですよね。
ちょろんぼ様
>やっぱり、ぽっぽ氏の参加は必要ですよね?
ぽっぽ氏を入れて、笑いコントですか。
賢人会議?チャーハン会議と呼んだ方が適切なのでは……
この面々の場合、いかにして「出来るだけ金を持って韓国以外の国に移住する」かを
話し合った方がまだ建設的に見えますね。
ほんと好きですよねぇ、チャーハン。○○が終われば日韓首脳会議が開かれるだの、○○が終われば岸田首相の態度が軟化するだの。
こういうところだけ「未来思考」なのまじウケるんですけどー。
「今回も何の成果も出せませんでした」「良いアイディアなんてありません」
「日本が譲歩する気配は皆無です」「日本は政府よりも世論の方が嫌韓です」
要はこれらを言いたくないから必死に「もうちょっと待って!」と
言い続けているだけですからね。これの何が”未来”なのやら。
自分を賢いと自負する人は詐欺に掛かりやすい、
なるほど、
こうゆうからくりですか。
こういうのは「未来志向」じゃなくて「鬼が笑う」っていう奴では?
毎度、ばかばかしいお話しを。
韓国:「賢人会議に出席できる日本側の賢人は、韓国がテストをして選定する。今回は、そのテストに合格できる日本の賢人がいなかったのだ。なお、鳩山由紀夫(元)総理は、テスト以前の問題で、会話自体が成立しなかった」
これって、笑い話ですよね。
蛇足ですが、日本マスゴミ村でも(別の問題で)賢人会議を開催するのではないでしょうか。
どうしても、いつもの、やってます詐欺に見えてしまいます。しかし賢人って。プライドだけは底無しなんですかね。有識者位にしておけないところが韓国らしい。
前にズルつけてズル賢人会議。
「賢人会議」よりはむしろ「喧人会議」、或いは「群盲象を評す」の方が妥当な線でしょう。 極め付きは、この象サンは幼児がいたずらででっち上げたシロモノである事です。
私の見立ては、日韓首脳会談までの一連の交渉で、徴用工につき現段階で日韓双方が納得できる案はない、ということで、日韓両政府とも暗黙裡に合意済だ、と思います。
ただそれだと、旭日旗たなびく観艦式に出席しただけになる韓国が都合が悪いので、韓国案での合意間近とかの嘘を、韓国側が垂れ流し、日本は放置プレイをしたのだと思います(韓国も最近は当該立場を修正中)。
今度は「賢人会議」ですか。”官民協議会”だの”被害者の声を聴く機会”だの何でも良いですが、問題を一方的に起こした韓国が、日本が検討可能な対案を提示しない限り、先には進みません。”国と国との約束は守る”と”事実は事実として認める”ことに、自国に都合が悪くても、韓国民が習熟しない限り、日韓関係は元には戻りません。
そしておそらくそういう変化を韓国民に期待しても無理でしょうから、対韓方針は、①日米韓②安保③対中国を除いては、段階的縮小で臨むべき、と考えます。
対中国なんてスタンスが異なる最たるものでは?
安保に関してもTHAADなど渋ってるし信用が置けない事実。
日米韓での対北朝鮮、これ以外に協力できることはないし近年のアメリカもそのような認識になっていると感じます
匿名さま
ご返信ありがとうございます。
米国を中心とする民主主義勢力は、中国をこれ以上放置・発展させるリスクに気付き、中国を除いたサプライチェーンの構築に舵を切ろうとしています。そのはじめが半導体でのチップ4かと思います。
韓国は、ご存じの通り、コウモリ外交をこれまで展開してきたわけですが、もはやそれが通らないことも、薄々感じ始めていると思われます。
こんな国を仲間に引き入れることはかえって危険だという意見もあるとは思いますが、このような日和見勢力の動向が大勢を決めてきたというのも厳然たる歴史の事実だと思います。
半導体のような先端戦略アイテムにつき、日米台韓VS中国という構図に持ち込み、中国の影響力を排除することは、日本の国益にかなうと考えます。
(賢人?会議)
彼らのやってるのは、両国での序列を確定させる為の作戦会議。
頭を下げずに、日本に救けさせれば上位ってことなんですよね。
交渉事の原則は、”より困る方が折れる”としたものなのに・・。
こういった会議などが開かれるのは良い事です。
何故なら、韓国側で何も対応が進んでいないことが浮き彫りになるから……
何を言ったかではなく何を実行したか、これだけで評価していれば「韓国は汗をかこうとしない」というのがすぐにわかるというものです。
結論は「丁寧な無視でOK」