ロシアのメディアなどによると、クリミア半島とロシア本土をつなぐケルチ海峡に架かる全長19㎞のクリミア大橋が爆発し、炎上したのだそうです。しかもウクライナ側はマリリン・モンローの「ハッピーバースデー、ミスタープレジデント」と歌う動画とともに、燃えている橋の動画をソーシャルメディアに投稿した、とも記載があります。これに対してロシア当局は「交通は再開した」と述べたのだそうですが、ウソが多いロシア当局のこと、逆にクリミア半島自体が陸路で孤立したという可能性はないのでしょうか。
目次
昨日のお詫び:ルカシェンコ氏と水野氏にお詫び申し上げます
はじめに、お詫びがあります。
『「価格上げるな!」ベラルーシの斬新なインフレ抑制策』ではベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と日本の元老中でもある故・水野忠邦氏のイメージ画像が入れ替わってしまっていました(決してわざとではありません、たぶん)。
「物価上昇禁止!あすからではなく今日からだ!」。そんな命令だけで物価上昇が止まるなら、世の中の当局者は、さほど苦労しません。物価とは純然たる経済事象であり、命令で動くものではありませんし、岸田文雄首相あたりが「自然災害禁止!あすからではなく今日からだ!」と「命令」すれば自然災害がなくなるものでもありません。それを真顔でやろうとしている国が、ベラルーシだそうです。トルコのエルドアン氏、日本の水野氏と並び、なかなかに強烈で斬新なやり方です。インフレとデフレインフレは体力が弱い国に容赦なく襲い掛か... 「価格上げるな!」ベラルーシの斬新なインフレ抑制策 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ルカシェンコ、水野の両氏に対してはとりあえず謝罪申し上げたいと思います。大変申し訳ございませんでした。
ただ、水野氏は物価の抑制を図ったものの、おそらくは大学などでマクロ経済学を履修していなかったためでしょうか、不適切な対策のすえに却って物流を混乱させたという点において、やはり看過できない過失があったことは間違いありません(というよりも水野氏の出身大学を調べたのですが、ちょっとよくわかりませんでした)。
しかも、水野氏の言動に照らし、どうもこの人物が物価どころか、法による支配を含めた近現代の重要な概念をまったく理解していなかったのではないかとの疑念は払拭できません。どうも「身分制」を含めた封建的な発想を持っていた疑いすら濃厚です。
その一方で、「物価に命令する」というルカシェンコ氏の言動もなかなかに斬新であり、正直、マクロ経済に対する理解水準では、わが国の故・水野老中とあまり変わらないのかもしれません。
ロイター「クリミア大橋が爆発」
なお、そんな話題はわりとどうでも良いとして、本稿ではもうひとつ、非常に重要な話題を取り上げておきたいと思います。
Blast damages Crimea bridge central to Russia war effort
―――2022/10/08 23:13 GMT+9付 ロイターより
ロイターを含めた複数のメディアの報道によれば、現地時間の土曜日、(ロシアが不法占拠中の)クリミア半島とロシア本土を結ぶ、ケルチ海峡に架かるクリミア大橋(道路・鉄道橋)が爆発して炎上し、おそらくは何らかのダメージを受けたのだそうです。
ロイターによるとこの橋は全長約19㎞で、2014年のロシアによる「クリミア半島併合」から4年後に、ロシア本土の交通網と結節するために華々しく開業したものだそうです。
【参考】クリミア大橋
(【出所】クレムリン “Crimean Bridge opened to railway traffic”)
これについては現時点において、ウクライナ側による攻撃なのかどうかはまだよくわかりません。
ただ、仮にそうだとしたら、これはウクライナ側にとっては大きな「戦果」であるとともに、最近、失地が相次ぐロシア側(『ウクライナ軍、今度は南部でも攻勢:ロシアのジレンマ』等参照)にとっては大きな後退のひとつともなりかねません。
今度は南部です。いくつかの報道などによると、ウクライナは東部だけでなく、同国南部でもロシアに奪われた領土を取り返しつつあるようであり、とくに南部・ヘルソン州ではドニプロ川を渡り、対岸の拠点を奪回したとの情報もあります。ただ、政治的にドニプロ川北部に取り残されているであろうロシア軍が撤退するのは難しいのが実情です。なぜならロシア自身が先週金曜日、ウクライナの4州の併合を高らかに宣言してしまったからです。これがロシアのジレンマです。ウクライナが南部・ヘルソンでも攻勢強めるウクライナ軍がロシアによ... ウクライナ軍、今度は南部でも攻勢:ロシアのジレンマ - 新宿会計士の政治経済評論 |
ちなみにロイターの記事では、ウクライナの「国家安全保障・防衛評議会」のオレクシー・ダニロフ議長はマリリン・モンローの「ハッピーバースデー、ミスタープレジデント」と歌う動画とともに、燃えている橋の動画をソーシャルメディアに投稿した、とも記載があります。
意味深ですね。
この点、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は、たしかに誕生日が10月7日ですので、ウクライナ政府がプーチン大統領に対し「誕生日プレゼント」としてこれを「贈った」のだとしたら、なかなかに皮肉が効いていると言わざるを得ません。
ロシア当局は「10時間後に交通復活」
ただし、ロシアの交通省側は、今回の橋の爆発自体は交通にさほどの影響を与えておらず、爆発から10時間後には交通が再開した、などと発表しているのだそうですが、逆に言えば、ロシア側も爆発があったという事実は認めている格好です。
実際、ロシアのメディア『タス通信』(英語版)も、次の短い記事で、爆発の事実があったことを報じています。
Explosion on Crimean Bridge kills three, Russian Investigative Committee says
―――2022/10/08 21:11付 タス通信英語版より
タス通信の報じ方だと、「(現地時間の)土曜日朝にクリミア大橋上でトラックが爆発・炎上し、複数の鉄道タンク車両に炎が燃え移った」とするものです。今年4月に黒海艦隊の旗艦・モスクワが「自然発火し沈没した」と発表したようなものでしょうか。
ただ、ここで注目しておきたいのは、ロシア政府側発表に含まれる、「クリミアからクラスノダール地方に通じる車線は無事だった」とする、こんな記述です。
“Two spans of the road bridge collapsed but a lane leading from Crimea to the Krasnodar Region reportedly remained intact”.
これについてどう考えれば良いのか――。
「通行に支障なし」「食料・燃料も十分」「クリミアは孤立していない」
先ほどのロイターの記事によれば、この橋は道路の半分が吹き飛ばされ、橋の一部からは濃い煙も立ち上っているのだそうです。これまでのロシア側の発表実績を見る限り、「通行に支障はない」などと発表するときは、たいていの場合、その逆の事態が発生しているように思えてなりません。
また、ロイターによれば、そもそも現在、ロシア軍が占領しているクリミア半島からヘルソン州に至る一帯の交通網自体が貧弱なのだそうですが、今回の橋梁の爆発が、これらの地域に至る主要補給路に、さらに影響を与える可能性はないのかについては、気になるところでもあります。
そのうえで、ロイターの記事で目に付くのは、こんな記述です。
“In a video message, Sergei Aksyonov, the Russian governor of Crimea, said he wanted to ‘assure Crimeans that the Republic of Crimea is fully provided with fuel and food. We have more than a month’s worth of fuel, and more than two months’ worth of food’.”
“We are not cut off from the mainland!” Mikhail Razvozzhayev posted on Telegram. “Keep calm. Don’t panic.”
クリミア州知事が住民に向け「燃料は1ヵ月分以上あるし、食料は2ヵ月分以上ある」と述べたほか、セバストポリ市長も「我々は(ロシア)本土から切り離されたわけではない」、「冷静に、パニックにならないで」と呼び掛けた、などとする記述です。
ということは、クリミア半島がロシア本土から切り離され、食料・燃料などの不足が生じ始める可能性がある、という「フラグ」かなにかでしょうか。
このあたり、多くの人にとり、続報が気になるところであることは、間違いないといえるでしょう。
View Comments (8)
2022年…
ウクライナをナチから解放しているのだ→ありがと誕プレで橋爆破しますねー
1939年…
フィンランドにパン籠を投下しているのだ→ありがとモロトフカクテル投げ返すねー
(焼夷弾) (火炎瓶)
人は過ちを繰り返す。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(というより、希望的観測そのものなので)
問題は、ロシア国内でクリミア大橋の爆発が、単なる大規模事故になるのか、(ウクライナ軍か、米軍か、ロシア国内の反プーチン大統領かは分かりませんが)破壊工作となるのか、ではないでしょうか。(この際、事実は、どうでもよい(?)のです)
更には、ロシア国営メディアでどうなるのか、(旧ソ連時代から実績のある)噂話でどうなるかも重要です。
もし破壊工作なら、「お粗末な破壊工作」と嘲笑になるかもしれません。
蛇足ですが、ウクライナのメディアでは、ウクライナによる破壊工作ということになっていますが、これはウクライナ当局への取材の結果なのか、希望的観測なのか、または、それが混ざり合ったものなのかは分かりません。
駄文にて失礼しました。
クリミア大橋(Kerch bridge)の現状ですが,何個かの英文サイトの画像によると,以下のような状況だと思います。
道路は上り・下り別々にそれぞれ2車線の橋がかかっていますが,鉄道橋から遠いほうの橋桁は,3つの橋脚に支えられた2区間が崩落していますが,鉄道橋に近いほうは崩落していません。恐らく,きちんと点検すれば,対面通行で車は通行可能のように見えます。鉄道橋のほうは,まだ燃えた貨物列車が鉄橋されていないようです。ただ,崩落はしていないので,貨物列車を撤去し,補強工事をして線路を敷設しなおせば,また使えるようになる気がします。
そのうち,日本語サイトでも参照した画像が閲覧可能になると思います。
P.S. 昨日,間違えてクリミア大橋の建設を2014年と書いてしまいましたが,2018年の誤りです,すいません。
動画によると燃料を満載したタンク車両が数両鉄道橋梁上で燃え上がっていますが、鉄鋼製の橋桁構造物は火災によってある程度以上の温度(大体780℃)に加熱されると変節し、消防活動によって急激に冷却されると「焼き入れ」、空気冷却されると「焼きならし」状態になって、設計強度や設計対候性から乖離してしまいます。 出来れば火災に晒された鉄鋼製構造物は取り換えた方が、将来に禍根を残さないと思います。
ウクライナ領外に所在する施設への大規模な攻撃は、(小規模な燃料補給施設等への攻撃はあったと思います)どのような影響をおよばすんでしょうね?
プレジデントへのプレゼントに、プーチン氏がプッチンした・・。
・・のは想像に難くないですけど。
散々ヒトの家に勝手に入り、水道、ガス、電気、道路、橋等のインフラを壊し回り果ては洗濯機すら盗んでいくロシアですから、少しはメンテナンスの大変さをウクライナから学んだ方がいい、時にゼロから作る時より面倒になるケースも多いでしょうし。
変な所にクラックでも出来たら耐用年数が数十年は年はマイナスになるのではないだでしょうか。
本来、雄大な建造物を傷物にすることは建造物に対する冒涜であるので好みませんが、ロシアの場合は身から出た錆であるので、そんな橋を直す暇があるなら彼等が壊していったウクライナのインフラにこそ、お金と人材を先に充てるべきではないでしょうか。
現時点で得られた映像からの考察スレッドが面白かったので。
結論だけを知りたい人にはお勧めしません。
https://twitter.com/OAlexanderDK/status/1578658502356373504
https://twitter.com/N_Waters89/status/1578676557518098438
あと、落下した橋桁の下側から撮影したと思われる写真もありました。
爆発による損傷の形跡がみられないので、路上での爆発を示唆するものと思います。
https://twitter.com/RALee85/status/1578843111178264578
鉄道は昨夜遅く、試験車両を通す映像が流れていました。周囲が暗いのでよくわかりません。鉄道の運行が再開したと言われていますが、映像ではまだ見ていません。
アレだけの火災に見舞われていて、強度試験しなくて大丈夫なんでしょうかね。
道路は対面通行で通行再開していましたね。
橋梁の裏側からの撮影で海面側には爆発痕がないことがはっきり分かります。
新たに浮上している話題とは、なんだか鉄骨ケチって華奢じゃないのか、というものです。地震国である我が国の構造設計水準と直接に比較していいわけではありませんが、写真を見てどう感じますか。
・爆心位置スパンはぽっきりと
・少し離れた箇所で海中崩落しているスパンのまだ繋がっている屈折点はくにゃっとめげている。精密爆撃ミサイルで狙われたらハチの巣でないでしょうか。