あれ?「米韓通貨スワップ」の発表はまだですか?
FRBが0.75%ポイントの利上げを決定しました。そのうえで、年内にもう1回、0.75%ポイントの利上げが行われるとの観測も生じてきたようです。こうしたなか、隣国の通貨・ウォンは本日、あっけなく1ドル=1400ウォンの大台を突破しました。ただ、こうした状況ですが、訪米中の尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領はジョー・バイデン大統領との間で「米韓通貨スワップ」について合意できたのでしょうか?
FRB、ジャイアント・ステップ+マネー回収
米国時間の21日午後2時、すなわち日本時間の本日未明に公表されたFOMCの結果は、FF金利を0.75%ポイント引き上げて3%から3.25%のレンジに設定する、というものでした。インフレ抑制のため、前々回、前回に続き、3回連続での0.75%ポイントの利上げ(いわゆるジャイアント・ステップ)です。
Federal Reserve issues FOMC statement
―――米国時間2022/09/21 14:00付 FRBウェブサイトより
これに加えてFRBは米国債やエージェンシー債、MBSの保有量の圧縮を継続するとしており、その分、引き続き市場からマネーが回収されることになります。
この点、一部では「今回のFOMCでは100ベーシス・ポイント(つまり1%ポイント)の利上げに踏み切るのではないか」との観測もあったものの、とりあえずは0.75%ポイントに留まった、という言い方はできるかもしれません。
ウォンはあっけなく1ドル=1400ウォンの大台を突破
しかし、年内の会合でもう1回、0.75%規模の利上げの可能性も排除できません。この場合、FF金利は年内に3.75%から4%のレンジにまで上昇することになります。そうなると、一部の新興市場諸国を中心に、猛烈な勢いで資金流出が生じるかもしれません。
その兆候が、さっそく生じてきたようです。
その典型例が、私たちの隣国の通貨です。
すでに米韓金利差の再逆転が生じてしまっているため、韓国の企業や金融機関にとっては、ドル資金を調達するための環境がさらに悪化してしまいました。その証拠でしょうか、韓国の通貨・ウォンの下落が続いているようです。
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると寄り付きは1ドル=1398.0ウォンだったのですが、日本時間午前9時45分時点でWSJのマーケット欄を確認すると、1ドル=1406.28ウォンと、あっけなく1400ウォンの水準を突破してしまいました。
ちなみに韓国銀行のデータベースによると、前回、1ドル=1400ウォンの水準を超えていたのは、2009年3月31日(1ドル=1422.0ウォン)であり、また、終値ベースで1400ウォンを超えていたのは2009年3月20日(1ドル=1412.5ウォン)でした。
もちろん、もしかすると本日あたり、韓国銀行が例の「スムージング・オペ」と称する為替介入を行い、1ドル=1400ウォンの大台を割り込むのかもしれませんが、その場合、韓国銀行はさらに貴重な外貨準備を溶かすことになるのでしょう。
米韓首脳立ち話:通貨スワップはどうなった!?
こうしたなかで、韓国側ではここ数日、「韓米通貨スワップ」という話題が頻繁に出てきます。「ニューヨークの米韓首脳会談で米韓通貨スワップについて議論されるだろう」、といった文脈です(『「韓米通貨スワップ協定を今週発表」報道を韓銀が否定』等参照)。
またもや「通貨スワップ」です。ロイターによると、「今週中に600億ドルを超える規模の韓米通貨スワップ協定が発表される見通し」とする韓国国内のネットメディアの報道を巡り、韓国中銀は21日、「事実ではない」とする声明で否定したのだそうです。ただ、FOMC直前でもあり、また、ロシアのプーチン大統領が「国家存立危機において予備役の召集等の部分動員を行う」などと述べたとする報道もあるため、市場のリスク選好次第では外為市場にも混乱が生じるかもしれません。「韓国が米韓通貨スワップの締結を希望しているが、現時点に... 「韓米通貨スワップ協定を今週発表」報道を韓銀が否定 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、その答えは、すぐに出てきました。韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の記事によると、米韓首脳がニューヨークでの正式の会談ではなく、立ち話を行ったのだそうです。
尹大統領 バイデン氏と立ち話=正式会談は見送りへ
―――2022.09.22 08:46付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領は「感染症対策のための資金調達を協議するジョー・バイデン米大統領主催の会合」に出席。韓国大統領室関係者は記者団に「尹大統領は出席対象者ではなかったが、会合に招待された」と述べたそうです(招待されてもいないのに押しかけたのでしょうか?)。
ただ、この短い時間だと、おそらく韓国メディアがしきりに煽っていた「米韓通貨スワップ」について議論する時間はなかったのでしょう。
というよりも、当ウェブサイトにおいて何度となく説明しているとおり、そもそも米国が韓国と「『為替』スワップ」を締結する状況にはありません。FRBが金融引締めに動いているなか、米ドルのニューマネーを提供するインセンティブは、FRBには存在しないからです。
いずれにせよ、韓国ウォンを含めた新興市場諸国の通貨の状況、キャピタル・フライトの状況などについては、引き続き、注目に値する論点のひとつといえるのではないかと思う次第です。
View Comments (6)
>バイデン大統領と約50秒間立ち話をした。会話の内容は明らかになっていない。
たぶん、
米=よくツラを出せたな!(韓=よく来たね)
米=出直してこい!(韓=またおいで)
・・的な伝わり方をしてると思う。
立ち話 あゝ断ち話 立場なし・・。(日本もこれで十分だったのに。)
”条約・合意を守らない、嘘つき、コソ泥推奨” 国 が どうとるかは、この際二の次、
米国に粗相(ペロシ・スルー))したらどうなるか観衆(国)に見せることが、最も重要(=再発防止)。
”条約・合意を守らない、嘘つき、コソ泥推奨” 国 には、少しづつ分からせるのだと思います
そうですね。
朝鮮日報のサイトを見ると 1ドル = 1414.00ウォン まで進んだようですね。
なんか面白い事になってるみたいだねw
https://sincereleeblog.com/2022/09/22/nokottamonoha/
http://blog.livedoor.jp/sekaiminzoku/archives/56984859.html
それにしても、韓国の政界は本当に多士済々だと言わざるを得ない。
盧武鉉の時は、幾ら韓国でもここまで無能な大統領はそうそう出て
来ないだろうと思っていたが、同等以上の逸材がゴロゴロ湧いてくる。
バスケのアメリカ代表みたいに、一軍の層の厚さが尋常じゃない。
「FRBは、米国債を転売条件つきで買いとりドルを供給するFIMAレポファシリティを、2020年から運用している。海外の中央銀行が保有する米国債を担保として提供しドルを借りる方式であるため、米国債の値下がり圧力を減らすことができる。中央銀行が国債を市場で売ることなくドルを調達可能だからだ。韓国銀行も昨年、上限600億ドル(調達金利年0.25%)で契約を締結した。」
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/44610.html
しっかり利用済だった模様。