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自民党外交部会が政府に「日韓外相会談応じるな」要求

ASEAN関連会合でカンボジアを訪問している林芳正外相が、韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官との日韓外相会談に臨むかどうかが気になります。韓国メディアの報道によれば、韓国政府が「歴史問題など懸案の解決に向けた韓国政府の取り組みを改めて説明する」などの目的で会談開催に向けて調整中だとしているものの、佐藤正久氏ら自民党外交部会側は3日、全会一致で日韓外相会談をしないように政府に求めたからです。

具体案がない「望ましい解決策」

韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官(※外相に相当)が先月、日本を訪れ、自称元徴用工問題を巡っては「現金化の前に望ましい解決策が出るよう努力する」と述べました(『日韓外相会談:両国発表の6箇所の相違が意味するもの』等参照)。

韓国が諸懸案放置なら日本企業の韓国からの撤退加速も昨日は日韓外相会談が行われました。見ていて危なっかしい点もありますが、総じていえば、「宿題を抱えている」のは韓国の側であることが、改めて確認された会合だったといえるでしょう。そして、本稿では現実に日韓双方の外交当局の発表内容を見比べたところ、少なくとも76箇所の相違が存在することが判明しました。このインターネット時代、私たち一般国民もその気になれば両国のウェブサイトを直接見比べることができるというのも興味深い話です。2022/07/19 9:15追記・訂正当...
【記事修正】日韓外相会談:両国発表の6箇所の相違が意味するもの - 新宿会計士の政治経済評論

どうもこの発言自体、韓国国内で嫌気されたのか、朴振長官率いる外交部に対しては自称元徴用工側から激しい反発が生じているようである、とする話題については、『やっぱり生じた徴用工「内紛」、そして謝罪利権の崩壊』などでも紹介したとおりです。

やっぱり内紛が生じたようです。自称元徴用工の支援者団体は、韓国政府・外交部が大法院に意見書を出したことを不満として、例の「官民協議体」から離脱する方針を示したそうです。こうした内紛、自称元慰安婦問題でも生じたものと、構図自体はそっくりです。いや、もう少し踏み込んでいえば、壮大な「歴史謝罪利権」が行き詰まり、崩壊の兆候を見せている、ということでもあるのかもしれません。利権の3つの特徴当ウェブサイトではしばしば説明するとおり、一般に「利権」と呼ばれるものには、「①理不尽なもの」であり、「②外から壊...
やっぱり生じた徴用工「内紛」、そして謝罪利権の崩壊 - 新宿会計士の政治経済評論

ASEAN関連会議に合わせ韓日外相会談=聯合ニュース

こうしたなか、先月の朴振氏の訪日に続き、日韓外相がふたたび会談を行う可能性が出てきているようです。

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の次の記事によれば、カンボジアで4日開催が予定されている東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の「ASEAN+3」会合で、日中韓3ヵ国の外相が約3年ぶりに一堂に会するからです。

韓中日外相が一堂に ASEAN関連会議に合わせ

―――2022.08.04 08:25付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースはこの記事で、韓国政府が日韓外相会談を調整しているとしたうえで、次のように述べています。

両氏は7月18日に東京で会談したばかりだが、関係改善に向けた取り組みを続けるため、会談の開催を進めているという」。

そのうえで聯合ニュースは、もし外相会談が実現した場合には、朴振氏が「歴史問題など懸案の解決に向けた韓国政府の取り組みを改めて説明するとみられる」、と伝えています。

ただ、先月面会したばかりであることに加え、朴振氏が「日本の誠意ある対応」を要求したと伝えられたことに対し、日本側でも強い反発が生じている(『韓国「誠意ある対応」発言に「言語道断」=佐藤正久氏』等参照)という状況を踏まえると、現時点で日韓外相会談が実現することに、なにか意味があるとも思えません。

参議院議員で自民党の外交部会長を務める佐藤正久氏は、韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官(※外相に相当)が日本に対して「誠意あるリアクション」を迫ったことをめぐって「言語道断だ」と語気を荒げたそうです。弱小派閥「宏池会」出身の岸田首相、林外相が安易に韓国に譲歩することができないゆえんでもありますが、ただ、韓国からの「罠」はまだまだ続くでしょう。油断できません。韓国外相「日本は誠意ある対応を」先日日本を訪問した韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官(外相に相当)は、メディアなどに対し、日韓諸懸案の解決...
韓国「誠意ある対応」発言に「言語道断」=佐藤正久氏 - 新宿会計士の政治経済評論

いや、もう少し正確にいえば、朴振氏が述べたとされる「現金化の前に出す望ましい解決策」とやらの発言については、期待することが難しいでしょう。というのも、韓国政府側は日本が受け入れ可能な解決策を、現時点では本当に何ひとつとして出してきていないからです。

報じられている内容だけを見る限りでは、「基金案」だの、「代位弁済案」だの、「強制徴用された」という自称元徴用工の主張を前提にしたものばかりであり、そもそも「自称元徴用工問題自体が虚偽である」という点、「2018年の大法院判決が国際法違反である」という点などには、ほとんど触れられていません。

これに対し、日本政府が要求しているのは、第一義的には「度重なる国際法違反の状態」を「韓国自身が是正すること」です。「基金案」や「代位弁済案」などでは、「韓国による度重なる国際法違反の状態の是正」にはなりません。

こうした点を踏まえるなら、先月会談したばかりのタイミングであるにも関わらず、再び日韓外相が会談したとしても、正直、日本には何らメリットがないどころか、韓国側には「日本が韓国の努力を認めている」などとする誤ったメッセージすら発信してしまうおそれすらあるでしょう。

外交部会「日韓外相会談には応じるな」

ただ、これに関しては昨日、意外な話題がありました。

日韓外相会談「応じるな」 自民部会、竹島問題巡り

―――2022/8/3 12:07付 共同通信より

共同通信などいくつかのメディアの報道によると、自民党外交部会などは3日の合同会議で、韓国が7月下旬に実施した島根県竹島での防衛訓練、韓国調査船による竹島周辺の日本領海航行などの事案を受け、政府に対し日韓外相会談の開催に応じないように要求したのだそうです。

また、これらのメディアの報道を引用するかたちで、佐藤氏も自身のツイッターで、「竹島の上陸訓練も海洋調査も韓国大統領府が許可しないとあり得ないこと」、「甘えを許してはならない」などとして、韓国に強い調子で対応することを政府に求めています。

林外相は自民党・外交部会を向こうに回して会談を強行できるか

結局のところ、岸田文雄首相自身が自民党内では「弱小派閥」である岸田派(宏池会)の出身であるという点を踏まえるなら、政権、あるいは同じく宏池会出身の林芳正外相自身がこうした自民党内の動きに逆らってまで日韓外相会談に応じるものなのかは微妙でしょう。

いや、もちろん、林氏には林氏なりの考えがあるかもしれませんし、これに加えて外務省内にも対韓宥和派がいますので、外交部会が全会一致で会談見送りを求めたにも関わらず、林外相が外相会談に応じるという可能性はあるでしょう。

ただ、組織自体が「ウソツキ」でもある外務省(『ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」』等参照)に対し、どうも自民党外交部会にも、かなりの不信感を抱いている議員が存在することだけは間違いありません。

「佐渡金山の世界遺産登録に動けば韓国や米国との関係が悪化する」。こういうウソを岸田首相に吹き込んでいたのは、やっぱり外務省だったようです。これは韓国観察者の鈴置高史氏が以前から指摘してきた問題点ですが、時事通信に今朝掲載された記事にも同じ趣旨の記載が含まれているのです。2022/07/29 17:46追記記事ジャンルが誤っていましたので修正しています。ウソつき外務省日本政府が佐渡金山の2023年におけるユネスコ世界文化遺産登録を断念したとする話題については、『佐渡金山世界遺産登録断念に「落胆」すべきでない理由』...
ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」 - 新宿会計士の政治経済評論

それに、安倍総理亡きいま、岸田文雄首相が「後見人」を失い「党高政低」に苦しむ(※著者私見)なかで、林外相が自民党を向こうに回して独自の動きることを許すのかどうか、といった点も、気になるところです。

いずれにせよ、「本日日韓外相会談が行われる」とする聯合ニュースの報道が正しいのか、それとも林外相が自民党の勧告に従うのかについては、興味深く見守る価値がある論点といえるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • 伝えた相手って、外務政務官ですよね?この髭議員、林や岸田にちゃんとモノ申せるのか疑問です。夏に発表すると言っていた韓国への制裁案も音沙汰無し。外交部会のヤルヤル詐欺にもうんざりしてます。

  • 国どおしの話し合いは双方にメリットがあれば
    実施する可能性があるが、下朝鮮との話し合いは
    我国にとって何もメリットなし。デメリットだけ。
    また十八番のある事ない事発表され既成事実を
    作ろうと工作される。
    ストーカーに関わってはいけません。

  • ここで、佐藤議員の文句ばかり言ってる奴は石原慎太郎の愛国ポーズにも文句言ってたんか?ww

  • 共同通信によると
    「協議を加速する事で一致」
    だそうです。
    協議する事なんて何もない。
    本当ならガッカリです。

  • > それとも林外相が自民党の勧告に従うのか

    リンさんやらかしたみたいですね~ぇ。

  • 制止も聞かずに結局外相会談したみたいですね。
    今の林外相はさっさと辞めて欲しいものです。
    碌なことをしていない。

  • 佐藤氏「日本の主権は守らないといけない。外相会談に応じれば誤ったメッセージを与え、甘えを認めることになる」

    共同通信がどこまで佐藤氏の発言をそのまま記事にしたのか分かりませんが。
    この記事まま言ったのだとすると、具体的に何がどういう理屈で、どんな誤ったメッセージを伝えることになるのかもさっぱり分かりませんね。

    韓国人という人達は、会ったら「仲間」「話を理解して貰えた」と一方的に思い込む傾向がある人達であり。
    会うことで、言ってもいないことを勝手に約束したと解釈され、それをそのまま既成事実化される恐れがある。という意味なら分かります。

    ただこれ? 密室外交なんですかね?
    密室会議でもなく、さっさと話を発表するのなら、そこまで恐れるリスクも無いように思います。
    実際、春の訪日団に対してはそうやって、言ってもいないことを喧伝されるのを封じた訳ですし。

    どうせ、韓国「困ってます。何とか誠意を」日本「頑張って(知らんがな)」を確認して終了するだけでしょうし。
    韓国内で内紛起こしているような状況で、下級レベルの話すら纏まっているはずも無し。そんな状況で外相が話しあって話がまとまる訳も無し。

    正直、今回の件については、佐藤氏は恐れ過ぎな気がします。
    「また、会うだけ無駄だったね」を定期的に確認する場として、会って悪くもないと思いますけどね。
    会わなかった場合に言ってくるかも知れない「あの時外相会談が出来ていれば」「会ってくれなかった日本が悪い」という言い訳も防げますし。

    会っても会わなくても、割とどちらでもいいかと。

    >組織自体が「ウソツキ」でもある外務省
    外務省のどれだけの割合で嘘吐きがいて、発表のどれだけが嘘なのかということが客観的に検証可能なデータがありません。
    度々提示されている、韓国の不法行為リストのようなものくらいは用意出来てから、そう主張すべきもののように思えます。

  • 安倍さんが亡くなって、最も利益を得たのは、林さんと中国共産党。
    こんな陰謀論を掘り下げてくれる記者は居ないものか。

    林さんは選挙区再編時の強敵を消すことが出来た、消せなくても、安倍派の力を削ぐことが出来る?、併せて中共に売り渡すのに邪魔な存在を消せた。

    中国共産党は、FOIPやクアッド、台湾支援の主柱を取り除き、林さんと協力して日本国を価値観の無い、第二の南朝鮮化に道を開ける。

    • >駐日韓国大使を呼び出して言い渡せば足りると考えますが。
      同感です。これまでの経緯から考えて、大した話が出来ないことは分かりきっているんですから。

      ただ、それ故に「それでも会ってやっている」「無駄である」という事が強調される訳です。
      日本には何ら後ろ指を指される点が無いことを示すパフォーマンスとして、それなりに意味が有ったと思います。

          • やだなぁ日本さん。
            問題解決に向けて協議を加速させるって言ったじゃないですか。それは両国間の問題だって認識してるってことですよね?

      • それぞれの匿名氏が何を言いたいのかさっぱり分からないんですが。

        韓国は徴用工問題については、協議要請(日韓請求権協定3条1項)にも仲裁付託(同2項・3項)にも応じていないです。
        日本はもう、やれることやり終えています。
        つまりは日韓両国の間にある問題ですが、今はもう解決の責任は完全に韓国側にしかありませんという状態です。

        ちなみに、時計の針は戻らないので「協議加速」とは3条1項の話ではなく、韓国に対する「宿題確認の報告を短いスパンで要求します」程度の意味しかありません。

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