「佐渡金山の世界遺産登録に動けば韓国や米国との関係が悪化する」。こういうウソを岸田首相に吹き込んでいたのは、やっぱり外務省だったようです。これは韓国観察者の鈴置高史氏が以前から指摘してきた問題点ですが、時事通信に今朝掲載された記事にも同じ趣旨の記載が含まれているのです。
2022/07/29 17:46追記
記事ジャンルが誤っていましたので修正しています。
ウソつき外務省
日本政府が佐渡金山の2023年におけるユネスコ世界文化遺産登録を断念したとする話題については、『佐渡金山世界遺産登録断念に「落胆」すべきでない理由』で取り上げたとおりですが、これに関連して少し気になる報道がありました。
時事通信に今朝掲載された次の記事がそれです。
岸田首相、保守派反発を懸念 佐渡金山、「失地回復」に全力―世界遺産推薦書
―――2022年07月29日07時05分付 時事通信より
全部で1000文字を少し超える分量の記事ですが、注目すべき記述は次の部分でしょう。
「閣議了解が遅れたのは、首相がぎりぎりまで判断を遅らせたからだった。党保守派から推薦を強く求められる一方、外務省は推薦すれば『金山は強制労働の現場』と批判する韓国との関係が一段とこじれかねないと懸念。米国からも不興を買う恐れがあった」。
…。
まさに、「ウソつき外務省」です。
鈴置論考の裏が取れた
この点、岸田首相が佐渡金山の世界遺産推薦の判断をギリギリまで遅らせたことは、事実です。自民党の高市早苗政調会長が今年1月24日に衆院予算委員会で「韓国への配慮なのか」と岸田首相を詰め、それにより岸田首相が一転して世界遺産推薦を決断した、経緯があるからです。
しかし、時事通信の記述は、なぜ岸田首相が決断を遅らせたかをめぐっては、やはり「外務省」の存在があったことを強く示唆するものでもあります。「外務省が韓国との一層の関係悪化を懸念した」という記述は、外務省こそが日韓関係をめぐる日本の原理原則を捻じ曲げてきた張本人であるということを強く示唆しています。
また、「米国からも不興を買う恐れがあった」とありますが、この記述も明らかにウソです。これについては日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が6月23日付でウェブ評論サイト『デイリー新潮』に寄稿した次の記事が参考になるでしょう。
尹錫悦はなぜ「キシダ・フミオ」を舐めるのか 「宏池会なら騙せる」と小躍りする中韓
―――2022/06/23付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
鈴置氏は佐渡金山について、次のように指摘します。
「佐渡金山遺跡の世界文化遺産登録では危うく騙されるところでした。『登録に動けば米国との関係が悪化する』『韓国が拒否権を発動すれば登録できない』を理由に、岸田首相はユネスコへの推薦を見送りかけていました。韓国の威嚇に怯えた日本の外務省から、そう吹き込まれたのです」。
この鈴置論考の正しさが、図らずも時事通信のこの記述でポロっと明らかになった格好です。
岸田首相の決断が遅かったことは事実だが…
それだけではありません。
時事通信の記事にはこんな記述もあります。
「首相の背中を押したのが安倍氏だった。安倍氏は1月20日の安倍派総会で『(韓国と)論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っている』と公言。水面下でも首相に決断を促した。金山登録への動きを緩めれば、保守派から『安倍氏の遺志に反する』と批判されることを、首相は危惧しているとみられる。政府関係者は『韓国に配慮して手を緩めることはない』と語った」。
これに相当するのが、鈴置論考のこんな記述です。
「安倍晋三元首相らが説得することで、騙されかけていた岸田首相は1月28日、ようやく翻意しました。推薦決定により米国との関係が悪化したわけではありません。そもそも投票で3分の2の賛成票を得れば韓国が反対しても登録できるのです」。
まさか、こんなところで鈴置論考の「答え合わせ」が出てくるとは、正直、思っていませんでした。
なお、当ウェブサイトは一部の読者の方から、「岸田首相に対して少々手厳しすぎるのではないか」と批判されることもあるのですが、あくまでも批評は「是々非々」で行っているつもりです。
批評は是々非々で!
この点、世界遺産登録への岸田首相の決断がダラダラ遅かったことは事実ですが、今回の推薦書の不備をめぐっても、その全責任が岸田首相の決断の遅さにある、と決めつけるのは行き過ぎです。
産経ニュースの28日付の『佐渡金山、来年の世界遺産登録断念 推薦書に不備、再提出へ』という記事によれば、推薦書は前年9月末までに暫定版を任意で提出し、ユネスコから不備などの指摘があれば修正したうえで、2月1日までに正式な推薦書を出す、というのが基本的な流れなのだそうです。
この記事の記載を信頼するならば、暫定版を提出できなかった責任は、岸田首相にはありません。2021年9月末時点ではまだ岸田内閣は発足していないからであり、やや強引に決めつけるなら、責任は菅義偉総理にある、という言い方もできるからです。
いずれにせよ、報道については丹念に追いかけていくと、意外なところで意外な情報の裏が取れるものです。改めて、日韓関係がギクシャクした日本側の大きな原因が外務省という組織にあるという点については、私たち日本国民として認識しておいて良い問題点といえるかもしれません。
View Comments (16)
補助線の交点に像が浮かび上がったような気がしました。色の濃くなった補助線もいくつか。
文脈からは「米国からも不興を買う恐れがあった」は外務省情報、と読めます。
ただ、佐渡金山を推薦決定した後の、米国の実際の反応ってよくわからないんですよね。
何も流れてないので、多分、特に何も言われなかったのだろうと思いますけど。
この件で岸田首相は、
・日韓関係に関わる「米国の不興を買う」情報はガセが多い
・日韓問題では筋を曲げるより筋を通した方がよい
を学んだのではないでしょうか。
もう同様の件で逡巡することもないでしょう(フラグ)。
昔から弱腰外交しかできなかった日本は、安倍元総理などの功績のおかげで著しい地位向上を果たしたと思いますが、害務省のスタンスは相変わらずですね。
害務官僚の最終目標は先進国などの大使となることであり、そのためには強国に目を付けられないようご機嫌を取っておく必要があるんでしょうか。
チャイナ・スクール派とか、どうしようもないですね。
外務省ね。「害務省」のが通りが良いか。誰が吹き込んだかはしらないが、かつて田中真紀子が「伏魔殿」と呼んだのもあながち嘘では無いわけか。尤もあの外務大臣は、どうしようもない不良大臣だったが。だけど外務次官以下官僚の人事は、外務大臣の管轄ではなかったか?国益を棄損する官僚はクビないしは降格あるいは配置替えできないものか?それが出来ないのであれば、大臣不適格だろう。国会の質疑応答で官僚の作ったペーパーを読むだけの大臣は不適格だろう。深い見識と広い知識がなければ、官僚には太刀打ちできなかろう。国民にも責任はある。なんの知識もないタレントを国会に送るのは言語道断なのだ。(タレントやスポーツからもキチンと仕事している人はいるけど)外務省、財務省、、、日本には特権意識丸出し、国民を苦しめることを生業にしている、役所はいらんだろう。改善を要求する!
その後が気になります。
米国の不興を買うと総理に入れ知恵した人物の処遇はどうなったのか?
間違った情報をワザと入れたとしても、本当だと思って入れたとしても、そんな使えない人物がなんの責任も取らずのさばるのはどうかと思います。
こちらのブログ主に対しては、岸田総理に手厳しいというよりも、特定の対象に対しては論理展開がおかしいことがままあるというのが個人的な認識ですけどね。
岸田総理(など)を取り上げるときには、その傾向が表面化しやすいというだけで。
1:論点は何か?
2:根拠として取り上げる情報はどこまで確度があるか?
3:根拠は論点に沿っているか?
4:不都合な事実を根拠から除外していないか?
5:事実に事実を積み重ねて結論を導いているか?
人によってやり方や意識的レベルは多少違うかもですが、だいたいの人はこのようにファクトチェックやロジックチェックを行っていると思います。
自分も、簡略化していますがだいたいこのような具合で、どこのマスコミ、ブログも問わず記事をチェックしています。
少なくとも、2に対しては相当に高い意識と精度でソース選別を行われているとは思いますし、その点で優れているブログだと思いますが。
その集めた根拠が論点に沿っていなかったり、個人的な推測をファクトのように扱って、次の推測に使っていたりすることを時折見掛けます。
こちらのブログに限りませんが「〇〇を彷彿とさせます」だとか「おかしな主張です」の一言で終わらせて、それがどうおかしいかを説明されていないときというのは、かなり警戒して読んだ方がいいと思っています。
なので、一応断っておくのなら、岸田総理だろうと誰だろうと、評価が批判だろうと称賛だろうと、情報の確度やロジック的におかしいのなら眉をひそめますね。
情報に接する姿勢として素晴らしいと思います。
>論理展開がおかしいことがままある
この記事中の該当箇所を明示したほうが、仰っている意味もよりわかるし価値も高まると思います。
せっかくそう書かれるのであれば。
そうですね。
あまりにも目に余るような事があれば、書かせて貰おうと思います。
過去記事に対しても、何度か書かせて貰ったのですが。
まあ、そんな必要が無いことが一番ですし、それが希望なのですけどね。
この記事で敢えてツッコミを入れるとすれば「ウソつき外務省」と称していることでしょうか。
この程度であれば重箱を突くような真似なので、基本的に控えています。
論理展開がおかしいというよりは、不明の可能性を潰し切れていないのに、断定しているみたいな話です。
「外務省が韓国との関係がこじれる可能性と、米国からも不興を買う可能性について岸田総理に伝えた」というのは、恐らくファクトです。
では? それを外務省はどのように伝えたのか? それは不明です。
・外務省は上述した可能性を岸田総理に強く訴え、ユネスコ世界文化遺産登録の申請をさせないように働きかけたのか?
・外務省は上述した可能性を岸田総理に説明し、判断材料を与えただけなのか?
後者の場合、それぞれの可能性や影響が低いことを外務省が(嘘を吐かず)説明していたとしても、岸田総理が慎重に検討し、安倍元総理にも相談し決定を下した。という可能性もあるわけです。
それを「ウソつきだ」と断じるのは、考慮する可能性の幅が狭いのではないかと思う訳です。
前者のような「外務省が嘘を吐いた」「岸田総理を騙す気満々だった」という裏付けは取れていないのに、「ウソつき」と断じるのは気が早すぎると思うのです。
なので、あまりこう極端な評価はしない方がいいと、個人的には思いますね。
他にも、外務省の情報分析力には問題は無いのか? という可能性もありますし。
個人的には、対韓外交において「現金化に対する厳しい対抗措置の用意」とか、第三者のいる前で踏み絵を迫るとか。密室外交の停止とか。
韓国が本当に嫌がる真似もやっている訳で。外務省全体で韓国に甘いとか、ウソつきという可能性は低いのではないかと見ています。
「ウソつき外務省」は揶揄なので・・・
主張の根拠は記事に書かれてる通りですし、それ自体に問題はないでしょう。それをどう受け取るかの違いですね。
ご意見の表明は自由だと思います。
あなたのご主張の主旨はだいたいわかりました。
まぁ、嫌なら読むなとしか…
ご高説垂れるならせめて名乗ったほうが説得力あるよね。突然絡んでくるTwitterのクソリプと同レベルの匂いだよ。
>日韓関係がギクシャクした日本側の大きな原因が外務省という組織にあるという点については、私たち日本国民として認識しておいて良い問題点といえるかもしれません。
外務省が、筋を通さず譲歩を重ねて、日本の国益を棄損し続けてきた結果、韓国人を増長させ、もはやまともな話し合いすら不可能な時点まで来てしまいました。
外務省の職員には、過去の失敗を将来に生かすという知恵はないのでしょうか?
でなければ、厚顔無恥か間抜けの集団と言わざるを得ないと思います。
役人の本能ともいえる「事なかれ主義」だと思います。
前回の「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界遺産登録に際して、韓国外交部との間で繰り広げた煩わしくおぞましい交渉がトラウマになっているのだと思います。
それ以前にも、慰安婦問題について、韓国政府から「1回だけ謝罪してくれれば、今後2度と謝罪を求めないことを約束する。」と言われて総理に謝ってもらったところ、韓国政府が約束を反故にして何度も謝罪を要求されたことなどもあり、常識が通用しない国との交渉など誰も好んで担当したくないというのが本音だと思います。
外務大臣や総理大臣に対して「韓国政府が拒否権を行使する」とか「米国の不興を買う」という嘘をついてまで韓国外交部との交渉を回避しようとするのは、「楽をして給料が欲しい」という役人根性だと思います。
これまで何度も世界遺産を申請してきた文科省が不備を起こすとは考えにくい。
外務省と同様に文科省にも申請を拒む勢力がいて意図的に不備を起こしたとしか考えられない。
>文科省がユネスコからの指摘を地元自治体にも伝えていなかった
このことからもそう思う。
読み落としてました。
かなり重要な事実なのに、党内が騒いでいる文脈に混ぜ込むとは。
>外務省と同様に文科省にも申請を拒む勢力がいて意図的に不備を起こしたとしか考えられない。
前川みたいな(風俗店大好きなのは目を瞑っても良いが)筋金入りの反日・卑日な腐った性根の人間を事務次官にしちゃうのが文科省という官庁ですからね.
「ほら、あの人宏池会だから」って中韓を煽ってるのは外務省なのかもね。