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    Categories: 金融

「指タッチ」だけで電車にも乗れる?買い物もできる?

買い物しようと街まで出かけたところ、サイフを忘れたことに気付いたが、それで何も不都合は生じない――。そんな未来が待っているのかもしれません。福島民友に本日掲載された記事によれば、同県で指の静脈を登録しデジタル商品券を購入しておけば、手ぶらで買い物ができるようになるという実証実験が始まったそうです。はて、その結果はどうでるのでしょうか?

サイフを忘れることのなにが愉快なのでしょうか?

以前の『基軸紙幣をつかまえろ!コロナ時代のカジュアル通貨論』では、著者自身の個人的な家計簿をもとに、「買い物しようと街まで出かけたが、サイフを忘れてしまうとどうなるか」、といった議論を展開しました。

「現金なしでどこまで暮らせますか?」――。長いことウェブ評論業を営んでいると、過去に自分自身が執筆した論考を読み返し、定点観測的に現在の社会がどう変わったかを見ることができることもあります。こうしたなか、先日、自分自身のフォルダを整理していると、今から約10年前の年末に執筆した論考を発見しました。テーマとしては、「日常のマネーから見る金銭感覚」、といったところでしょうか。過去論考再発見長いことウェブ評論業を営んでいると、自分自身が過去に執筆した記事を眺め、現在との違いを改めて発見することもありま...
基軸紙幣をつかまえろ!コロナ時代のカジュアル通貨論 - 新宿会計士の政治経済評論

正直、「サイフを忘れること」のなにが愉快なのか、よくわかりません。ご本人にとっては修羅場に他ならないからです。

ただ、「サイフがなくても困らない社会」というものができつつあることもまた事実でしょう。東京などの都市部では最近、電子マネー(とくにSUICAなどの交通系電子マネー)が使える端末が増えており、現金をわざわざ持ち歩かなくても買い物ができるからです。

そして、SUICAを使った買い物の記録を集めていくと、興味深いことがわかります。

タクシーでSUICAには…乗れない!

あらためて個人的な家計簿を振り返っておくと、2007年に京阪神で、2008年に宇都宮、仙台、盛岡、山形で、2009年に新潟、水戸、広島、長野で、2010年に札幌、福岡、佐賀で、それぞれSUICAを使用して買い物をしたという履歴が残っています。

また、2009年にはタクシーにSUICAで乗ったという記録もあり(※これについては以前「SUICAにタクシーで乗った」、などと記載してしまいました)、2013年以降は北海道、東北、近畿、沖縄などのホテルでSUICAを使ったという記録も出てきます。

さらには、iPhoneなどのスマートフォンをお持ちの方であれば、「おサイフケータイ」の機能を使用されているというケースもあるでしょう。このように考えると、いまやポッケやカバンのなかに物理的なサイフを入れておかなくても、あるいはサイフにコインや紙幣を入れておかなくても、かなりの範囲で生活ができてしまうのです。

しかも、SUICAが使用できる場面は、着実に増え続けています。

コロナ禍の最中の2020年3月には、SUICAがついに沖縄のゆいレールにも対応しましたので、これは大変に便利になりました。これまでだと沖縄出張をした際に、飛行機から降りてまずサイフを探さなければならなかったのですが、いまやモバイルスイカを搭載したiPhoneを携帯しておけば、そのままピピっと通れてしまいます。

指でピピっと!手ぶらキャッシュレスの実証実験

こうしたなか、さらに興味深い話題も出てきました。

福島民友の報道によれば、福島県玉川村などを中心に24日、村内で「手ぶらキャッシュレス」の実証実験が始まったのだそうです。

指をかざすだけ!「手ぶらキャッシュレス」玉川で実証開始

―――2022年07月26日 08時55分付 福島民友より

福島民友によると、利用者は事前に指の静脈を登録したうえでデジタル商品券を購入しておくことが必要ですが、こうした事前準備をしておけば、村内の協力店舗で機器に指をかざすだけで買い物ができるようになるのだそうです。

これも非常に興味深い試みでしょう。

このあたり、現時点ではわざわざ事前にデジタル商品券などを購入する必要があるほか、利用できる時間は午前9時から午後7時までに限定され、利用できる店舗も村内のコンビニやスーパー、ドラッグストアなど10店舗に限られています。

しかし、実証実験がうまくいくなどし、たとえばこの技術を応用した「指紋SUICA」のような広がりを見せるようになれば、将来的にはそれこそ指を改札機にピッとタッチすれば電車にも乗れてしまう、買い物もできてしまう、そんな世の中になっていくのかもしれません。

このあたり、米国だと “Amazon Go” のように、完全に無人で商品バーコードスキャンすら不要な「無人決済方式の店舗」も出現しているようですが、将来的には本当に紙や金属のおカネが使われなくなっていくのかもしれませんね。

新宿会計士:

View Comments (7)

  • ユニクロが日本ベンチャーからぶんどった無人レジもまさにシンボルですしね

    • たしかに便利ですね。
      ついでに、ぶんどった方は一から自分の頭で考えて手間暇かけるよりは効率がよく
      特亜と呼ばれているところと親和性が良さそうなのも何となく頷けます。

  • 今でも,首都圏だとスマホさえ忘れなければ。電車に乗れて(要モバイルSUICA),半分くらいの店で買い物や食事はできます(PayPay等が必用)。ATMについては私は口座を持っていないのですが,セブン銀行などだとスマホで現金が引き出せるようですね。でも,財布を忘れた経験はここ何十年かないので,わざわざ口座を作らなくてもいいかな。

  • 個人的にSUICAなどを使う理由は現金を触りたくないからなので、指タッチを要求されるのでしたら現金を使いますね。
    そんな潔癖症な人もいますよ。

  • 更新ありがとうございます。

     サイフを忘れての下りは、「サザ○さん」のことでしたか。
     久しぶりなので、思い当たるまでに少し時間がかかりました。

     本論の方ですが、最近は特に金融系アプリやサイトなどを中心に、生体認証が増えている様ですね。

     それと同時に「一つの端末でしか紐付けられない」銀行用のアプリもあります。
     機種変のときには登録し直す必要があるのですが、その頃にはIDやPWを忘れているかも知れません。(^^;

     生体認証の指紋登録も、ケガをして指紋が読み取れなくなっても大丈夫な様に、右手の3本と左手の2本の指で登録しています。
     なぜか顔認証の確度が悪いので、もし両手が無くなったら諦めます。

  • >将来的には本当に紙や金属のおカネが使われなくなっていくのかもしれませんね。

    それはどうでしょうか.
    日本のように自然災害それも無視できない長期間の停電を引き起こすレベルの災害が無視できない頻度で発生する国では,キャッシュレス化の徹底はいざという時にどうしようもなくなるので話になりません.

    むろん普段の平穏な時にはキャッシュレスを好きに使えば良いのは言うまでもありませんが,キャッシュレスしか扱えないような社会へと誘導することは世界最悪の自然災害のデパートと言うべき災害大国日本の実情には全くそぐわない.

    いざという時にも機能するような仕組みを持たない社会は脆弱で危険極まりない.

    平時の効率だけを追求するのは一言で言って愚か極まりない.具体的な機械装置でも社会でも安全性(様々な意味での)を確保するには冗長性が不可欠で,冗長性の確保には必ず余分なコストを対価として払わねばなりません.

    支払い手段の冗長性としての物理的な通貨(紙幣,硬貨)の通用の確保とそれによって生ずるコスト(物理的通貨を扱う手間暇やそのための装置類…レジスター等のための)は災害大国日本の社会が災害時にも経済活動を維持できるという安全性のために不可欠なコストなのです.

  • てっきり、武漢コロナワクチンの事かと思いました。
    ワクチンを打つと5Gに接続できると言われて、早何年。
    4回目ワクチンを打つとの話もあるのに、まだ5Gに
    接続できません。
    どうすれば、5Gに接続できるのでしょうか?
    接続できれば、サイフ・スマホ等を持つ必要が無くなり
    本当に身軽で便利なのですが?
    荷物無しで飛行機に乗って旅行に行きたいです。
    注:無人駅等では、どうするのかな~?、費用かけたくないだろうし。
    無人駅自体が、その頃迄に無くなるのかな~?