「強制徴用賠償判決とこれに対する報復措置である日本政府の輸出規制発動」。「慰安婦合意はが結局全て実行できずに事実上白紙化した」。どれも噴飯物の記述ばかりですが、もっと驚くのは、これらの記述が韓国を代表する「保守系メディア」とされる『中央日報』(日本語版)に掲載されたものである、という事実です。そして、彼らが最も言いたいことは、おそらく「日本も誠意を示せ」という決め言葉です。
今朝の記事の補足「タイトル改題」
最初に補足です。
日本を訪問中の朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官(※外相に相当)が18日、林芳正外相との会談とワーキングディナーを行ったとする話題については、今朝の『日韓外相会談:両国発表の6箇所の相違が意味するもの』でも詳しく取り上げました。
韓国が諸懸案放置なら日本企業の韓国からの撤退加速も昨日は日韓外相会談が行われました。見ていて危なっかしい点もありますが、総じていえば、「宿題を抱えている」のは韓国の側であることが、改めて確認された会合だったといえるでしょう。そして、本稿では現実に日韓双方の外交当局の発表内容を見比べたところ、少なくとも76箇所の相違が存在することが判明しました。このインターネット時代、私たち一般国民もその気になれば両国のウェブサイトを直接見比べることができるというのも興味深い話です。2022/07/19 9:15追記・訂正当... 【記事修正】日韓外相会談:両国発表の6箇所の相違が意味するもの - 新宿会計士の政治経済評論 |
結論的にいえば、日韓双方で報道発表内容に明らかな相違が6箇所あり、このうち相違が生じていても不自然ではない記述(たとえば自国外相の一方的発言など)を除いても、3箇所については看過できない違いが生じていた、というものです。
なお、ここで1点、補足させていただきたいと思います。
現時点において韓国外交部のウェブサイトを確認すると、こんな趣旨の記述が含まれていました。
「朴長官は、強制徴用判決関連の現金化が行われる前に望ましい解決策が出るように努力すると述べ、両側は同問題の早期解決が必要であるという認識を共にした」。
これについては今朝の時点で見落としがあったのか、それとも昨日から本日にかけて記述が追加されたのかについてはよくわかりません。しかし、今朝の議論ではこの記述が存在しないことを前提としている部分がありましたので、該当する部分については修正履歴付きで削除しています。
山積する日韓諸懸案
それはともかくとして、ここで重要なことは、依然として日韓双方の報道発表内容にいくつかの相違が存在しているという事実に加え、日韓諸懸案をめぐり、それらが「解決」される見通しがまったく立っていないという点でしょう。
著者自身が列挙しただけでも、日韓諸懸案としては自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題のような「積年の韓国側による対日不法行為」に加え、文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に発生したもの、それ以前に発生したものなどを含め、未解決のものが山積しています(図表)。
図表 韓国の対日不法行為の一覧表(※引用・転載自由)
(【出所】著者作成)
そして、冷静かつ客観的に見て、これらの対日不法行為のなかに、「日本が本質的な原因を作った」というものは、ただのひとつもありません。韓国が大好きな表現を敢えて使うならば、「加害者」は韓国であり、「被害者」は日本なのです。
ただ、これらの諸懸案をめぐっては、正直、日本にとっての国際法に照らして妥当な解決が図られる可能性は極めて低いというのが実情です。
だからこそ、外務省の一部の役人、経団連に参加する一部の企業、日韓議連関係者などの一部の政治家、某経済新聞の編集委員らを中心に、「日本も原理原則にこだわるのではなく、少しくらい韓国に譲歩して、日韓関係の破綻を回避すべきだ」、などとする主張や動きが出てくるのでしょう。
中央日報社説「55ヵ月ぶりの韓日外交会談」
また、韓国側にも、そうした動きを積極的に騎亜ちしているフシがあります。
韓国を代表する「保守系メディア(?)」とされる『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された、こんな「社説」などは、その典型的なものです。
【社説】55カ月ぶりの韓日外交会談…急がば回れ
―――2022.07.19 06:37付 中央日報日本語版より
中央日報は朴振氏の訪日が2017年12月の康京和(こう・きょうわ)元長官以来、55ヵ月ぶりであることを指摘したうえで、こんなふうに主張します。
「韓国大法院(最高裁)の強制徴用賠償判決とこれに対する報復措置である日本政府の輸出規制発動、後に続いた韓国政府の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄方針発表などで、韓日関係悪化の谷がそれだけ深かったことを意味する」。
ちょっと待ってください。
「強制徴用賠償判決」(自称元徴用工判決のこと)に対する「報復措置」としての「輸出規制」とは、いったい何のことでしょうか?
日本は韓国に対して輸出「規制」を発動した事実はありませんし、もしこれが2019年7月の対韓輸出管理適正化措置のことを指しているのだとすれば、そのそもそもの原因を作ったのも韓国の側です(『もう3年:輸出管理適正化措置の原因は韓国側が作った』等参照)。
日本政府が韓国に対する輸出管理を適正化する措置を講じてから、もうすぐ3年です。ただ、韓国側がこれを「輸出規制」だと騒ぐわりには、日本の素材・部品・装備の対韓輸出高はまったく減っておらず、むしろ増えている状況にあります。事実関係をちゃんと調べていけば、日本政府の措置は輸出「規制」でも対韓報復でも何でもなく、自称元徴用工問題と無関係であり、そして、この措置を発動する原因を作ったのが韓国側であるという事実を、改めて認識することができるでしょう。鈴置論考の集大成(勝手宣伝)ここ数日、執筆者の許可なく... もう3年:輸出管理適正化措置の原因は韓国側が作った - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかも、その原因は文在寅政権時代ではなく、さらにそれ以前の政権の時代から存在していたと考えられるため、「文在寅政権が終わったことでその原因が除去される」というものでもないでしょう。
合意を破ったのは韓国なのだが…
さて、自称元徴用工問題に関して、社説は次のように主張します。
「両長官は会談で最大の懸案である強制徴用問題に関連して日本の被告企業資産に対する韓国裁判所の現金化が実行される前に早急な問題解決に向けて努力することで意見を一致させた。両国の外交責任者が実に久しぶりに膝を交えて関係改善の必要性と緊急性に共感したことは意味が小さくない」。
ここも、主語がおかしい記述です。
日韓双方の発表に基づけば、「現金化が実行される前に望ましい解決策が出るように努力する」と述べたのは朴振氏であり、林外相ではありません。努力しなければならないのは日本ではなく韓国です。
こうしたなか、中央日報の記述で最も強烈なのが、おそらくは次のくだりでしょう。
「最大のカギといえる強制徴用の解決は日本との外交交渉も重要だが、国内的にも超党派的な合意に至ってこそ実行力を持つ。これは、2015年慰安婦合意が結局全て実行できずに事実上白紙化した過程からも教訓を探すことができる」。
勝手に「白紙化」されたことにしないでいただきたいと思います。自称元慰安婦問題に関する2015年の合意を破ったのは韓国側ですが、韓国が合意を破ったからといって、日本が再交渉に応じる義務はありませんし、むしろ日本としては合意を破られたことに関する「被害者」です。
(※余談ですが、少なくとも自称元慰安婦問題をめぐっては、韓国側がこの合意を修復し、約束を守る以外に日韓関係破綻を回避する方策はありません。)
ただ、国際合意に対する中央日報としての認識の甘さは、こんな記述にも出ています。
「政府は強制動員被害者はもちろん、協議案に反対する団体や、必要な場合は野党まで説得して、政権が変わっても簡単に覆らないような解決法を用意しなければならない」。
「合意」が「覆る」という表現を使っていますが、これもおかしな表現です。
正確に表現するなら、「韓国が合意を覆した」、でしょう。
決め言葉は「日本も誠意を示せ」
こうしたなか、肝心の自称元徴用工問題をめぐっては、韓国国内で自称元徴用工側が韓国国内における話し合いに参加しない方針を示すなど、議論が順調に迷走していることもまた事実でしょう。これについて社説はこう述べます。
「そのためには日本側も強制徴用に対する謝罪や財源拠出など誠意を示すべきだ。『大法院の判決によって韓国が国際法違反状況を作ったので韓国側が国内的に自分で解決しろ』という姿勢だけでは問題解決が難しい。これは韓国政府の意欲だけでは解決できない問題だ」。
この「日本も誠意を示すべき」こそ、まさに「決め言葉」でしょう。
そもそも論として、自称元徴用工問題自体、「虚偽の問題を捏造して日本の名誉と尊厳を貶めている」というものであり、日本が韓国に対する「制裁」を加える原因にはなったとしても、「謝罪」「賠償」に応じるような性質のものではありません。
また、判決自体が1965年の日韓請求権協定に完全に反している以上、日本政府や日本企業がその判決に従うかのような行動を取れば、そのこと自体、日韓関係を不健全なものにするだけでなく、日本自身が国際法をないがしろにしていることにもつながりかねません。
そして、韓国側が日本に擦り寄ってくるときには、背景には必ず、こうした「謝罪や財源拠出」云々の主張が含まれていることを理解していなければならないのです。
厄除け諸懸案
もっとも、冷静に考えてみれば、自称元徴用工問題などの日韓諸懸案を韓国が解決しないままで放っておくと、最終的には韓国自身を傷つける刃となりかねません。韓国が国際法、人権、法の支配、ひいては自由・民主主義を軽んじる国であるという事実は、長い目で見て韓国のためにならないでしょう。
また、少なくとも諸懸案が存在する状態で日本が韓国に対し通貨スワップなどの金融支援を与えることはあり得ませんし、1997年のアジア通貨危機や2008年の金融危機に相当するような危機が生じたとしても、今度は日本政府も日銀も邦銀も、韓国を支えようとはしないでしょう。
その意味では、日韓諸懸案が存在していること自体、日本が韓国の通貨・金融危機という厄介ごとに巻き込まれないで済むという、一種の「厄除け」のようなものなのかもしれませんね。
View Comments (18)
厄除けとして機能しうるかは、宏池会のムナサキサンズンでありませう
日本も誠意をしめせ、、、。←これ、ヤーさんが、カタギの衆をオドす時に使うことば。ヤーさんは怖いけど、韓国って国は別に怖くないけど、、。
たろうちゃん
そのやーさんの国籍のほとんどは ???
アッ、書いてしもた
今般のロシアによる侵略攻撃を目の当たりにして、非難指弾を通り越して薄気味悪さを感じているむきは世界に多いと思います。正義やイデオロギーに凝り固まるとああなってしまうのでしょう。気に入らない相手をナチスや右翼と唾棄するタイプと韓国の主張はいくらも違わないですね。
韓国側は身内で理屈をこねくり回して何か良いような事を言ったっぽい段階だけで誠意を示したことになり、日本側は完全に後始末を実行してやってやっと誠意が示された、と認識されるということですね。(後に覆されてまた文句を言われるのは既定路線)
日本側はとにかく条約を守れ、正規の手続きを踏め、と訴え続けているのだから、完璧な”誠意”を示していると思います。ルール無視して温情対応するなんて、不誠実ですものね。
まず岸田はここをはっきりさせないといけない。
「徴用工」なる者たちの問題は存在しない。あるのは日本企業の募集に自ら応募してきた「募集工」という事実と、戦中決済の遅れていた残りの賃金は戦後韓国政府にまとめて支払い済み、ということのみ。
韓国政府が代理で受け取った金をちゃんと該当者に給付したのかどうかは、日本の与り知ることではない。
日本共産党の再建資金に流用されたという話も濃厚だが、日本政府にとっては知ったことではない。
通りすがり さん
さらにまた、「被害者」という言葉が定着してますが、これもまた違うので相手がそのように発言するたびに日本側は抗議、訂正を要求してほしいです。
日本の誠意は、「国家問の合意を履行する、国際法を守る」ってことで十分でしょうね
>これは韓国政府の意欲だけでは解決できない問題だ
じゃあ無理に解決しなくても良いんじゃないかな?
現金化自体実現性が低いようだし、仮に現金化からの報復合戦がはじまるにしても、戦争にはならないだろうし、民間でも交流したいと思うとこはするだろうと思うのです♪
>「日本も誠意を示すべき」
==>マスコミがよく使う手ですが、ここで騙されがちなのは、「日本は」でなく「日本も」と、「も」が使われることが多いことです。 「も」を使うということは韓国は誠意を示していることを言外に意味します。自信のない日本人(誰とは言いませんが)は「も」の同調圧力に負けてしまい、「ちょっとくらいなら譲歩してもいいか」と考え始めます。
そもそも、単に日本に妥協せよと繰り返し押し掛けるだけの韓国のどこが「誠意を示している」と言えるのでしょう。「そういう韓国に誠意はあるのか? まずは自ら実行して見せよ」でお終いになる議論ばかり。
世界各地の慰安婦像と 韓国の仏像が厄除けになってくれるといいですね
慰安婦や徴用工問題は高齢で賞味期限が近いと思ったら
今度は関東大震災を言い出したので 反日のネタは永遠に続くと思います
要は、他国に寄生して生きる事が恥ずかしくない生き物(人間?)
の国という事でしょう。
施しを受けて感謝する乞食より始末が悪い。
おっと! 乞食さんに謝らねば。
林さん、押されていますかね、弱そうだ、不安ですな。
従来からの韓国人の主張と全く同じでコメントも出てきませんな。
要は「日本から変われ。韓国人が納得する行動を日本人がしろ」という、従来からの身勝手な主張ですね。
日本人もさんざん韓国人に振り回されてきてるので、いい加減韓国の主張をそのまま聞いてはいけない・無視する・相手にしないを徹底できるように変わらないとだめですね。
あ、国民は変わっているんですね、メディアや弱い政治家が変われないから問題がいつまでも続くと。
この調子だと、100年200年経っても韓国のワガママを聞かなければならなくなります。