韓国保守論客の認識は5年前で止まっているのでしょうか。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、例の『リセットコリア』シリーズの最新版として、『韓日関係、歴史と安保・経済を分離対応すべき』などと主張するコラムが掲載されていました。内容自体、事実誤認だらけですが、それだけではありません。地政学的な認識が、5年前からアップデートされていないように見受けられるのです。
「韓日関係・連続診断」を26回もやって成果は何もなし
昨日の『「韓日葛藤解消案は出ている。あとは実行だ」=韓国紙』では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、『危機の韓日関係・連続診断』とする記事についての話題を取り上げました。
<危機の韓日関係、連続診断26>韓日和解はアジア恒久的秩序をつくる出発点(1)
―――2022.06.20 08:52付 中央日報日本語版より
<危機の韓日関係、連続診断26>韓日和解はアジア恒久的秩序をつくる出発点(2)
―――2022.06.20 08:53付 中央日報日本語版より
これは「各界の専門家が集まる韓日ビジョンフォーラム」なる会合の様子を取り上げたものですが、内容については昨日も取り上げたとおりなので、本稿では繰り返しません。
ただ、改めてタイトルを眺めてみると、「26」とあります。この「韓日ビジョンフォーラム」シリーズ、もう26回も開催されていて、日韓諸懸案をめぐり、いまだにこれといった解決策が出てきていない時点で、すでに答えは見えているように思えてなりません。
だいいち、「専門家」というわりには、日本側の専門家が参加している様子はありません。「専門家を集めている」と自称するなら、最新刊『韓国民主政治の自壊』などの優れた論考でも知られる、日本を代表する韓国観察者・鈴置高史氏くらいは招いてほしいものだと思う次第です。
リセットコリアの最新版は「ツートラック」主張だが…
こうしたなか、中央日報に不定期に掲載されるこの『危機の韓日関係~』シリーズの「スピンオフ」作品に、『リセット・コリア』というシリーズもあります。昨日はその「最新版」も掲載されていました。
【リセットコリア】韓日関係、歴史と安保・経済を分離対応すべき
―――2022.06.20 09:48付 中央日報日本語版より
「歴史問題と経済・安保問題を分離せよ」とは、要するに韓国お得意の「ツートラック」、というやつでしょう。コラムを執筆したのは元駐米大使で北韓大学院大学総長の安豪栄(あん・ごうえい)氏です。タイトルだけで何となく主張がわかってしまいますが、冒頭の記述からして事実誤認が含まれており、なんとも頭が痛い限りです。
というのも、韓国政府が2019年8月に『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(俗に「日韓GSOMIA」)の破棄を決めたことの原因について、こんなことを述べているからです。
「その発端は日本が強制徴用者問題に対する韓国大法院(最高裁)の判決を理由に、同年7月に半導体部品に対する輸出制限をしたことだが、これこそレッドラインを越える措置だったため撤回されなければならない」。
なんだかいろいろと考えさせられます。
日本が2019年7月に発表した措置が「輸出『規制』」あるいは「輸出制限」ではなく、輸出管理の厳格化措置(ないし適正化措置)だと何度言ったところで、韓国にはまったく伝わらないのです。
もちろん、この安豪栄氏のいう「輸出規制はレッドラインを越える措置であり、撤回されなければならない」という表現自体、事実誤認の塊なので、本来、日本政府としては相手にする価値はありません。
ただ、それだけではありません。同コラムの記事の続きには、いろいろと韓国的な思考パターンがぎっしり詰まっています。たとえば、韓国政府が2019年11月22日にGSOMIA破棄を事実上撤回した際の決断について、安豪栄氏は次のように述べます。
「『そちらが下に進んでも私は高い道を固守する』という道徳的優位の姿勢を見せていたならばという遺憾を禁じえなかった。韓日歴史問題は『目には目を』では解決できない」。
GSOMIA破棄の撤回を「道徳的優位」で議論するというのも不思議な記述ですが、それだけではありません。次のような記述にも、正直、ウンザリします。
「韓日歴史問題の根源には傷ついた民族感情が位置しており、理性的解決策が立つ場所が大きくなく、政治的爆発力も非常に大きい。だからといって感情的・政治的安全地帯にばかり留まるならば日々厳しくなる韓国の安保・経済環境において解決すべき課題の韓日関係の未来指向的発展は不可能だ」。
そもそも論として、韓国が述べる「歴史問題」の多くは韓国側のウソや捏造であり、また、韓国が要求する「日本の反省と謝罪、賠償」も、法的な根拠のない不当な要求です。まさに、「権利もないのに債権者としてふるまおう」というようなものでしょう。
知識のアップデートができていませんよ~
こうしたなか、安豪栄氏は「米国の役割」を持ち出します。
「米国の政策決定者が韓日の歴史問題が国民の感情的・政治的にどれほど爆発力が大きい問題なのか、歴史問題解決の後に安保・経済協力が可能だという立場がどれほど非現実的なのか、このような背景において分離対応がなぜ必要なのかをよく認識させることが重要だ」。
わかりやすくいえば、「米国の圧力を使い、日本に反省させるべき」とする主張です。ただ、この議論も安倍晋三、菅義偉量総理が日本の外交を大きく変える以前であれば、まだそれなりの合理性を持っていたかもしれません。なんとも周回遅れの議論です。
昨年の『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』などでも報告したとおり、すでに日本の外交は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」などの「基本的価値」を重視するというものに切り替わっています。
日本時間の土曜日早朝、菅義偉総理は訪問先の米国で史上初の対面での日米豪印首脳会談に臨みました(厳密には、今年3月のテレビ会議を含めれば、首脳会談としては2回目ですが…)。少しインドのトーンが弱いというのは気になるところではありますが、ただ、今後は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)が日本外交における基軸となることは間違いありません。まさに菅政権の最後の仕上げ、というわけです。クアッドではなくFOIPが重要先日の『日本外交は「クアッド+台湾」>「中露朝韓」の時代へ』では、「最後の最後まで仕... 近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた - 新宿会計士の政治経済評論 |
そして、日本が提唱した日米豪印「クアッド」などの枠組みはすでに2回目の首脳会合を終えましたし、それと並行し、英国を筆頭に、インド太平洋域外でありながらFOIPに関心を示す国も存在します。
さらには米英豪3ヵ国の「AUKUS」と呼ばれる枠組みにも、もしかしたら将来、日本が参加することもあるかもしれません(その場合の呼び方は「JAUKUS」でしょうか)。
つまり、米国から見れば、「日米韓3ヵ国連携」、あるいは韓国そのものの戦略的な価値は、少なくともオバマ政権時代と比べて大きく低下してしまっているのです。
文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に米韓関係がずいぶんと悪化したことも影響しているのですが、安倍、菅両総理が米国にとっての日本の価値を大きく引き上げるのに貢献したこともあり、事実上、「米国の圧力で日本に歴史問題で譲歩させる」というシナリオは、現時点でほとんど実効性を持ちません。
いずれにせよ、「保守系の大手メディア」であるはずの中央日報に掲載されるコラム記事の内容自体、知識がほとんどアップデートされておらず、5年前の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代末期のままで時間が止まっているというのも、興味深いと思う次第です。
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>米国の政策決定者が韓日の歴史問題が国民の感情的・政治的にどれほど爆発力が大きい問題なのか、歴史問題解決の後に安保・経済協力が可能だという立場がどれほど非現実的なのか、このような背景において分離対応がなぜ必要なのかをよく認識させることが重要だ。
此処に関しては、バイデン政権の大元に当たるオバマ政権時の2015年にこう認識している事を韓国側が理解出来ていないと考えます。
シャーマン米国務次官、日本の反省は促さず韓中に無条件協力を要求
http://japan.hani.co.kr/arti/international/19809.html
「韓国の政治家は日本との歴史問題を利用して民族主義を煽ってる」とバイデン政権でも判断されている、と気付けないところ、やはり韓国はいつまでも韓国ですね。
現時点では韓国が国際法と条約を守れる国家に変われる兆しは全く見えませんね。
それでもあえて変われる可能性があるとすれば、彼らの”根負け”でしょうかね?
いくら時間をかけても日本が現在の”冷たい”態度を変えなければ、そして
アメリカが”お前らは役に立つ気があるのか?ないのか?”と厳しく迫り続ければ、
時間と共に彼らの認識が変わるかも知れません。
「ダメだ……もう日本国内の親韓派は全滅したも同然だ……残党は力もやる気もない!」
「アメリカが全然味方してくれなくなった!アメリカは法治主義を捨ててくれない!」
「中国はこっちを脅したり殴ったりしてくるだけで、対日関係で共闘なんかしてくれない!」
こういう”辛すぎる現実”を飲み込める様になれば、彼らは
「歴代大統領が対処を誤ったせいだ、韓国人が負けたのではない、韓国政府が負けたのだ!」
とでも適当なロジックを作って、嫌々ながら法治主義を受け入れるかも知れません。
まあ、”辛すぎる現実”を受け入れられずに何らかの”暴発”を起こしてしまい
(例えばレーダー事件が今度は発砲事件になるかも?)、日韓関係の完全な崩壊を
招いてしまう確率の方が高いとは思いますが。
> あえて変われる可能性があるとすれば、彼らの”根負け”でしょうかね?
ないない、絶対に無い(笑)
彼らは寄生しないと生きていけない民族なので、自身が滅亡の危機に瀕していようが、絶対にどこかに寄生しようとします。
彼らが変わる可能性があるとすれば、それは『棒で躾ける』ことだけです。
どちらの序列が上か、棒で躾け痛みを伴いながらわからせないと、彼らは変わりません。
21世紀にもなって、なかなか、そんなことも難しい事だと思うので、あとは無視するだけです。
>彼らは寄生しないと生きていけない民族なので、自身が滅亡の危機に
>瀕していようが、絶対にどこかに寄生しようとします。
実の所、私も彼らはこの寄生の本能を捨てられないとは思います。
ただ、寄生のやり方を変える事はあり得るかも?とも思います。
今までの様にお人好し(かなりマイルドな表現)をしてくれなくても、
日本はそれでも韓国に世界一優しい国です。
「約束を守る」、たったこれだけで付き合いを切らずに居てくれるのですから。
悔しさに身悶えしながら、鬱で無気力になりながらも、
「嫌々約束を守る」形で日本に”寄生”し続ける事はあり得る、と思うのですよ。
もちろん、吸える血の量はガクンと落ちてしまうでしょうが。
転生ツートラックが突然向かってきて異世界で日本を相手にチートするとかw
転生にトラックを二台も使うとは贅沢な!
でも実際に韓国が日本や世界に対してやりたいのってなろう物ですよね。
「ざまぁ」とか「俺の価値を思い知れ」とか「ハーレムうはうは」とか……
異世界転生は豚箱行きの隠語として使っている人がいる
転生ネタ以外でも
西側世界から追放された韓国が実は偉大な民族で無双!
とか
お前は要らないとG20から追放された韓国だけど、東側でスロートカットライフを始めました
とかネタはいくらでも思いつくんですけどねえ。
李氏朝鮮もこんな感じの現実認識の欠如、思考停止で滅びていったのですね。
>これこそレッドラインを越える措置だったため撤回されなければならない」
赤い線は誰が引いたの?全然見えなかったゎ
ところでデッドラインはどこだろうなぁ
この元駐米韓国大使の主張するツートラックは、「歴史問題については永遠に韓国が日本を弾劾し道徳的優位に立つが、安保・経済問題については互いに協力しよう」という韓国にとって都合の良い論理ですよね。もはや日本では受け入れられません。
日本としては、「過去の経緯をいろいろ言い合っても何も生まれない、それより一旦約束したことは互いにきちんと守ろう」に尽きます。
その観点から①徴用工問題②慰安婦問題③レーダー照射問題に、解決を図って欲しい。
徴用工問題につき、韓国政府と専門家らによる協議体が近く発足するとのことで、「代位弁済」案が有力とささやかれていますが、日本としてはその権利(不法な植民地支配による損害賠償請求権)は認められず、韓国政府が”被害者”に支払うのはご自由にどうぞであっても、韓国政府による日本政府への代位請求に応ずる考えはない、ことを明示するべき、と考えます。
そして日本のマスコミの一部には本件を、”歴史問題”と表現するところがありますが、”韓国の協定破り問題”と、正しく呼んでもらいたいと思います。
韓国の言う Two Track に照らし合わせても、
それぞれ、日本に利がないんだよなぁ。
尹政権は、この状況を改善できるでしょうか?
>輸出規制はレッドラインを越える措置であり、撤回されなければならない
新宿会計士さんは「事実誤認の塊」の一例としておられますが、アチラとすればまさに死命を制せられるに近い急迫の問題に見えるんでしょう。輸出管理3品目なんて、あくまでも例示。日本からすれば、韓国の半導体産業の首を今すぐ絞めてしまおうなんて考えてるわけではないが、そちらの出方次第で本気になれば、戦略物資のどれでも選り取り見取りで、いつだって輸出止めてしまえるんだぞ、と脅したようなもの。これで、自称徴用工の問題も、偽慰安婦の問題も、言いがかりを付ける道が封じられてしまったわけです。そりゃまあ、アチラから見たらレッドライン超えなんでしょうが、対抗措置も何も講じられないのでは、日本にとっては一時停止の標識にすらも見えない。
それにしても、またぞろ「韓日ツートラック論」。自分の尾を追って、同じ場所をぐるぐる回ってるワンちゃんみたいで、カワイイ?ですね(笑)。
「共通の利益は享受しよう」は外交の基本。日韓関係においても現在進行形でそうなのかと。
彼らの主張が ”痛トラック” なのは、片務的な恵受案件の再開だけを率先するからなんですよね。
韓国商店って、入金は現金で、支払いは期限欄のない約束手形なんですものね。
ツートラック
オールイン
グランドバーゲン
葛藤
言葉だけは沢山作り出しオールドメディアの見出しにはなるけれど、
それに伴っているはずの分析と内容と実行と相手への配慮がないから
メッキが剥げていく
20年30年前ならば、ATMNが記事として取り上げれば多くの人達が「そうなのか」とか
「そんなもんなのか」と思い込まされていた。でも今は、会計士さんや多くの人が矛盾点を
事実とともに掘り下げて下さるおかげで「また、おかしな事くり返している」ことが
理解出来るようになっている。webの力は大きいですね。
世界情勢は待ってはくれません。
韓国に時間を取られるわけには行かないのです。
駐日韓国外相が離任時に初めてリン外相が合ったようですがちょうど良い塩梅です。
彼等が真の意味で変わるまでの付き合い方だと思います。