X
    Categories: 金融

日露貿易の急減に「追い打ち」をかける新たな輸出規制

日露貿易に「急ブレーキ」がかかっています。4月の対露輸出は前年同月比で226%も落ち込み、300億円の大台を割り込みました。こうした状況に追い打ちをかけるかのように、経産省は本日、ロシアに対するトラックなどの禁輸措置を追加で発表しました。その一方でロシアでは「例のバーガー店」を巡って、続報もあったようです。

ロシアのメディアから垣間見える「ロシアの苦境」

ロシアのメディアを眺めていると、ときどき、「国際社会の行動に対するロシアの反応」を見ることができます。ロシアのメディアが「そんな措置にはまったく困っていないよ」、などと報じるときは、たいていの場合、それがロシアにとって「図星」だったりするのではないかと思えてならないのです。

こうした文脈に合致するのでしょうか、ロシアのメディア『タス通信』(英語版)に昨日、こんな記事が掲載されていました。

Kremlin dismisses isolation of Russia as impossible

―――2022/06/09 23:11付 タス通信英語版より

タス通信によると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は木曜日、記者団に対し、「ロシアを孤立させることは不可能である」と述べたのだとか。

ペスコフ氏は「私たちに友好的でない、あるいはむしろ敵対的な国々が、経済的、政治的、そして貿易の分野で私たちを孤立させようとしている」と指摘。その一方で、「彼らは成功できないし、成功しないだろう」、「なぜなら今日の世界では、とくにロシアのような巨大な国を隔離することは不可能だからだ」と述べたのだそうです。

このあたり、ペスコフ氏の述べる内容には一理あります。

ロシアは国連常任理事国であるとともに核保有国ですし、軍事産業が盛んです。また、北朝鮮などと異なり資源国でもあります。そのロシアを、西側諸国「だけ」の努力で孤立させることは不可能です(現に中国、インドなどは対ロシア制裁には参加していません)。

ただ、それと同時に、産業面で最先端の技術を持っているのは西側諸国ですし、金融面で世界の資本市場に圧倒的に大きな影響力を持っているのもまた西側諸国です。

しかも、かつての東西冷戦時代などと異なり、現在の世界は基本的に一体化が進んでいます。西側諸国が一致団結して対ロシア制裁に参加していることは、ロシア経済に対し、決して少なくない打撃を与えることは間違いありません。

ペスコフ氏の発言自体も、しょせんは「強がり」に過ぎないのでしょう。

ロシアが報じた日本の経済制裁

こうしたなか、ロシアのメディアの報道を眺めていて気付くのは、最近、やたらと「日本」が出て来ることです。

先日の『日本の対露制裁措置に敏感に反応するロシアのメディア』では、日本政府が6月7日の閣議でロシアに対する追加制裁措置を講じ、それをタス通信が大きく取り上げた、とする話題を紹介しました。

日本ではほとんど報じられていませんが、日本政府は昨日、ロシアやベラルーシに対する追加制裁措置を講じました。正直、日露間では貿易も金融取引もあまり活発ではないため、日本政府が追加制裁措置を講じたところで、ロシア経済にこれ以上の打撃が生じるのかは疑問ではあります。ただ、ロシアのメディア『タス通信』がこれを大々的に取り上げていたところを見ると、ロシアは苛立ちを感じているのかもしれません。ロシアに損害を負担させるべきロシアによる違法なウクライナ侵略が始まってからすでに100日以上が過ぎました。大変残念な...
日本の対露制裁措置に敏感に反応するロシアのメディア - 新宿会計士の政治経済評論

ここで日本政府(外務省、財務省、経産省の3省)が発表した具体的な措置は、次のとおりです。

具体的な措置
  • 資産凍結等の措置として、ロシアの2つの銀行(モスクワ・クレジット・バンクとロシア農業銀行)とベラルーシのベラルーシ開発復興銀行に対し、7月7日以降、支払規制や資本取引規制を実施する
  • ロシア連邦の産業基盤強化に資する物品の輸出の禁止措置を導入する

経産省が具体的な後続措置を発表

このうち「ロシアの産業基盤強化に資する物品の輸出禁止措置」については、6月7日段階では明らかにされていませんでしたが、その「続報」が出てきました。経済産業省が本日、ロシアに対するさらなる輸出規制措置を発表したのです。これについて日本側の発表で事実関係を確認しておきましょう。

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します(輸出貿易管理令の一部を改正)

ウクライナをめぐる現下の国際情勢に鑑み、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、今般、主要国が講ずることとした措置の内容等を踏まえ、ロシアへの輸出禁止措置を実施するために令和4年6月10日(金曜日)に閣議決定された輸出貿易管理令の一部を改正する政令を公布・施行します。<<…続きを読む>>
―――2022/06/10付 経産省HPより

(※ちなみに今回の措置は、外為法第48条第3項の措置(いわゆる輸出規制)です。日本政府が2019年7月に講じた韓国に対する輸出管理の厳格化措置(いわゆる対韓輸出管理適正化措置)は外為法第48条第1項の措置であり、根拠条文自体がまったく異なっていますのでご注意ください。)

今回、経産省が発表した措置は、貨物自動車などを含めた幅広い品目(たとえば次のような品目)について、6月17日以降、ロシアへの輸出禁止措置を講じるというものです。

  • 木材及びその製品の一部
  • 鉄鋼製の貯蔵タンクその他これに類する容器
  • 手工具用又は加工機械用の互換性工具、機械用又は器具用のナイフ及び刃
  • 機械類並びにこれらの部分品及び附属品の一部
  • 電気機器及びその部分品の一部
  • 鉄道用機関車、鉄道の保守用の車両等
  • 輸送用の機械及びその部分品の一部
  • 測定機器及び検査機器並びにこれらの部分品等

やはりタス通信が速報

現実にロシアに対し、これらの品目がどれだけ輸出されているのでしょうか。

財務省の『普通貿易統計』によれば、日本のロシアに対する2021年の輸出額は8624億円でしたが、そのうち「輸送用機器」(自動車、船舶、鉄道車両など)が4000億円を超え、「一般機械」が1590億円を占めています。

また、「輸送用機器」の主な内訳は乗用車が2738億円、バス・トラックが403億円などとなっており、「一般機械」についてはブルドーザー214億円などが含まれています。このため、ただでさえ少ない日露貿易額が、今回の措置によってさらに落ち込むことが予想されます。

そして、実際にこれについてはやはりタス通信が本日、(論評抜きではありますが)速報しています。

Japan bans exports of trucks, dump trucks, bulldozers to Russia – minister

―――2022/06/10 10:01付 タス通信英語版より

タス通信は「萩生田光一経産相が金曜日の記者会見でロシアに対するトラック、ダンプトラック、ブルドーザーなどの輸出を禁止する措置を17日から適用すると述べた」、などと短く報じました。

ちなみにタス通信によると萩生田氏は、今回の措置が6月7日の閣議決定に基づき、ロシアの産業基盤強化に資する品目として、「大型車、ダンプトラック、ブルドーザーその他の重機」を対ロシア禁輸品目として選定した、と説明したのだそうです。

4月の対露輸出は前年同月比▲225.88%(!)

さて、こうした報道を眺めるついでに、『普通貿易統計』を確認してみたところ、興味深いことがわかります。

ロシアとの貿易額については、とくに3月以降、輸出に急ブレーキがかかっているのです(図表)。

図表 対露貿易

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

鉱物性燃料(石油、ガス、石炭など)価格の世界的な高騰の影響もあり、ロシアからの輸入に関しては急増していますが、輸出に関しては急減し、結果的に貿易収支の赤字幅が拡大しています。

ちなみにロシア向けの輸出は、2022年1月は687億円、2月は817億円でしたが、これが3月には502億円(前年同月比マイナス241億円)、そして4月には前年同月比マイナス536億円となる237億円にまで落ち込んでいるのです。減少率でいえば225.88%(!)にも達しています。

すなわち、すでに日本の対露輸出額は急減しているわけですが、これに今回の経産省の禁輸措置が加わることで、ロシア向け輸出については相当に減少するでしょう。一連の経済制裁措置によって、ただでさえ希薄な日露関係がさらに希薄になることは間違いありません。

あとは、ロシア産の鉱物性燃料の輸入をどこまで抑え込むことができるかがポイントですが、これも結局のところは「岸田文雄政権の原発再稼働に向けた覚悟次第」、といったところでしょうか。

🍔 🍟 🍔 🍟 🍔 🍟 🍔 🍟 🍔 🍟

さて、ロシアといえば最近、マクドナルド社が全面撤退を表明したことでも知られます(『ついにマクドがロシアから撤退へ』等参照)。

本日の緊急速報です。ついに西側諸国による「あの最終兵器」が発動されることになりました。ロシアの一般市民にとっては非常に残念な結果となりそうです。マクドの「ゴールデン・アーチ」が90度傾いて「イワンおじさん」に取って変わるとでも言うのでしょうか?いずれにせよ、ロシアにはまたひとつの「マイナスの戦果」が生じた格好です。ロシアにマイナスの戦果が続々!2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻開始から3ヵ月近くの時間が経過しているにも関わらず、ウクライナ全土の制圧はおろか、非常に限られた地域を占領し...
ついにマクドがロシアから撤退へ - 新宿会計士の政治経済評論

これについても「続報」がありました。ロシアから撤退したマクドの店舗を引き継ぐ業者が、新たなロゴマークを発表したというのです。

Post-McDonald’s era: Russian successor picks new logo

―――2022/06/09 21:30付 タス通信英語版より

具体的なロゴマークはリンク先記事で確認していただきたいのですが、個人的に「なんだか緑色で陰気で薄汚い」、という印象を持つのはここだけの話です。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 「M」にしなきゃよかったのに。
    Mを残そうとしてイマイチになった感。

  • 確かにモスのロゴを流用してるようにも見えますね。
    マクドが撤退したことが露助にとっては、国民の不満の捌け口を危惧するほど大きなことだったんだろうかw

    もはや著作権等も完全無視の無法国家になりつつあるだろうし、どんなメニューが投入されるのか少々興味はありますねw

  • ロシアは4月に決まった漁業協定を一方的に破棄してきましたよね。
    マクドの話なんかより道民としてはこっちの話の方が知りたいです。

    新宿会計士さんが岸田さんに対しての評価がきびしめなのは原発再稼働の事があるように感じますが、これって自民っていうより公明の意向が強いのではないですか?特に今は選挙前ですし。
    選挙に行かない人が多いから弱小政党に頼らなくてはいけないのが腹立たしいです。

    • 新宿会計士氏はそのニュースが報じられた翌日8日朝一に記事にしておられますよ。

      「日本の対露制裁措置に敏感に反応するロシアのメディア」
      https://shinjukuacc.com/20220608-02/

      の4番目と最後の項目「ロシア外務省は日露協定の実施を一時停止する」~「ロシアに対するあらゆる支払いを見直すべき」でまとめられています。

      • あと原発の再稼働については、公明の意向が強いというのもさることながら東日本大震災以降の国内風評や、先日のロシアによるウクライナ侵攻でチェルノブイリを一時的に盾に取ると言う蛮行もあって、自分の政権ではなるべく大きなことについては手を付けず、八方美人をな態度に終始して決定を先送りし続けたい岸田政権の不甲斐なさが一番の障壁だと思います。
        再稼働の議論をすることすら特定悪質野党は確実に猛反発するでしょうし。
        できれば各原発所在地の首長と司法判断に丸投げし、政府や内閣として敢えて火中の栗を拾うような真似をしたくない、というのが本音でしょうね。

    • ちょっと待って さま
      私は本州なのですが、道民の方だと
      今回のプーチンの狂気は、
      脅威だけでなく損害に直結するだろうと
      お察しします。

      そこを姑息に突こうとする
      プーチンロシアなのでしょうが
      これから先はこれまでの
      戦勝国騙りの横暴な振る舞いも
      のしを付けて返して上げましょう。
      工業力もないのに殺傷武器作りだけに
      頑張るプーチンロシアなんかと違って
      日本は技術工業力はあっても
      殺傷武器でなく、経済と技術力で
      跳ね返しましょう。

      漁業協定破棄してきたので、
      これ幸いとその分さらに
      経済制裁輸出規制を強化して
      ロシアのズタボロ敗戦後に
      制裁規制緩和と引き換えに
      これまでの不当な漁業協定より
      正しく公正で有利な協定受諾を
      ロシアに突きつけてやりましょう。
      そのときになってロシアが、
      『いや、あの漁業協定が・・』
      と泣きついてきても
      『あれ?モスクワ市民の日々のパンと暮らしと
       どっちをお選びになりますか?』と
      優しく尋ねて上げましょう。

      そんなときになるとおそらく
      またぞろしゃしゃりでてくる
      ならず者国家とは友愛結ぶ
      ミスター民主党ハトポッポさん
      たちのようなものは
      その支持者のリアル社会の生きザマ含め
      これまでのような横着ができないように
      今のこの国際情勢下でしっかり
      相応の位置づけ評価を下しておく
      必要があると考えます。

  • 独裁者の胸の内を想像することは出来ませんが、ヒットラーは死の間際に最後に全てを破壊するよう支持を出した。と聞きました。
    日本の様な国土の狭い国は水素爆弾数発程度で消えます。
    ・関東圏、関西圏:政治経済の中心地で全ての行政機構と主な企業が消える
    つまりロシアにしてみれば簡単に政治経済の大方の責任者を消すことが出来る。
    その時、誰がこの災難のリーダーとなるのか?
    順位は決まっているのだろうか。
    これについて政治家は国民は本当の意味で理解しているのだろうか。
    アメリカは絶対守る。と言っているが現実はどうだろう
    ICBMを打ち合う覚悟は出来ているのだろうか?

  • 興味深いテーマを有難うございます.
    ところで,当エントリの主題からは外れますが,気になった点があるので一言.

    >ロシアは・・・北朝鮮などと異なり資源国でもあります。

    この文章からは「北朝鮮は資源国でない」と読めてしまいますが,それは事実に反しているのでロシアとの対比の相手として北朝鮮を使うのは適切ではありません.

    北朝鮮は確かに石油産出国でこそありませんが,良質な無煙炭を始めとして様々なレアメタルなど豊かな埋蔵量を有し,地下資源にはとても恵まれた国です.

    だから日本による朝鮮併合時代には,半島北部ではこれらの地下にある様々な鉱物資源を有効に活用するために工業化を進め,地下資源に乏しい半島南部では農業化を進めた結果,日本の敗戦と朝鮮戦争の結果として南北に分割された半島の2国では,最初は工業化が進んでいた北朝鮮のほうが農業しかなかった(当時は世界で最貧国レベルにあった)韓国よりもずっと経済力があった訳です.

    上の文章の中の「北朝鮮」の代わりに,例えば「韓国」や「日本」であるならば適切な対比ですが.

    (日本は算出する鉱物の種類は国土面積の割に多いそうで「鉱物の博物館」などと呼ばれたりもするようですが,残念ながら商業ベースに乗るほど埋蔵量の多い鉱物資源は非常に少ないので,ほとんどの地下資源あるいは精錬された形のレアメタルを輸入に頼らねばならず,前大戦でのABCD包囲網でも分かる通り,経済制裁されると簡単に白旗を上げるか破れかぶれで負けるのを承知で戦争するかの二択しか存在しないという意味で,外交の手段としての戦争という選択肢が実質的に選択不能という非常に厳しい制約=弱点を抱え続けねばならない国です)