複雑骨折した韓日関係は、補償と謝罪を分離させて解決しよう――。こんな主張が韓国の「韓日議連」の事務総長から提起されました。当ウェブサイトで常日頃から申し上げている、「国際法に照らして妥当な形での日韓関係の『改善』があり得ない」理由の一端を説明するちょうど良い事例でもあります。本稿ではこの論考をベースに、日韓問題がじつは「韓国問題」であるという点を確認してみたいと思います。
目次
国民日報に韓日議連事務総長の論考
日韓関係を巡っては、今月発足する尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権下で関係「改善」に向けた期待が、おもに韓国側で、ややもすれば一方的に強まっているように見受けられます。
こうしたなか、昨日は韓国メディア『国民日報』に、こんな記事が掲載されていたようです。
韓日関係、補償と謝罪を分離させて解こう【※韓国語】
―――2022-05-03 04:05付 国民日報より
執筆したのは趙龍来(ちょう・りゅうらい)韓日議連事務総長(※国民日報の元編集人)ですが、これがまた大変に面黒い主張です。
趙龍来氏の記事、冒頭は日韓関係が「重症的な複雑骨折状態にある」、「解放から77年、国交回復から57年が経過するが、両国関係は安定するどころか振り回されている」、などとする記述で始まります。
この時点で正直、韓国側のいつもの「韓日どっちもどっち」論のにおいがプンプンするのですが、いちおう頑張って読んでみましょう。趙龍来氏によると、こうした「重症的な複雑骨折状態」をもたらす根本原因は、日韓の認識格差にあるのだそうです。
「両国関係について韓国は過去にのみ焦点を合わせて批判的立場を強調する。一方、日本は過去は不明で未来が重要だという立場が強い」。
どんなに長文の記事であっても、出発点が誤っていれば、結論も誤っているものですが、まさにこの記事もその典型例でしょう。日本が論点としているのは、「過去」だ、「未来」だ、といった視点ではなく、「国と国との約束を守るか、守らないか」、だからです。
「両国ともに努力が不足している」という「どっちもどっち」論
趙龍来氏の論考は、こう続きます。
「より重要な原因は、両国ともお互いの認識の違いに対する深い洞察が欠けているうえ、これを克服しようとする努力が不足していることだ」。
「両国とも」、と出てくるのは、当ウェブサイトで常日頃から指摘する「ゼロ対100理論」そのものでしょう。要するに、韓国の側に100%の過失があるにも関わらず、韓国側が屁理屈を駆使し、日本にも過失があるかのごとく言い募るというものです。
※ゼロ対100理論とは?
自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく屁理屈のこと。これを仕掛けられた側としては、最大限勝っても得るものはゼロであり、最大限負けると100%を失うおそれもあるので、絶対に相手の土俵に乗ってはならない。
(【出所】著者作成)
このあたり、「韓日お互いに反省すべきところがある」という主張が提起されるときは、たいていの場合、反省点は韓国の側にしかないときでもあるのです。
何度も何度も蒸し返した事実を無視
それはさておき、趙龍来氏は日韓両国において、こうした「相互認識格差」を克服しようとする努力もなされてきた、などと述べます。
「始まりは韓国だった。1993年3月13日、金泳三大統領は大統領府首席秘書官会議で慰安婦問題と関連して『日本政府に物質的賠償を要請しない』と宣言した。代わりに日本は真相を究明して謝罪し、後代にその事実を知らせるよう要請したのだ。いわゆる『3・13宣言』だ」。
「以後3・13宣言’は日帝強占期被害者問題に対する韓国政府の基本原則となった」。
…。
はて?
韓国が歴史問題を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も蒸し返してきているという事実を無視して、いったいなにが「賠償を要請しない」、ですか?
自称元慰安婦問題ではアジア女性基金や「和解・癒やし財団」などの形で日本が事実上の賠償を行っていますし、ときの首相らも何度も何度も謝罪しています。その都度蒸し返してきたのは韓国の側でしょう(蒸し返しに「安易に応じた」という意味では、日本政府の過失もゼロではありませんが…)。
しかも、日本が真相を究明しようにも、自称元慰安婦問題――「戦時中、日本軍が組織的に朝鮮人女性20万人を拉致し、戦場に強制連行して性的奴隷にした」とする問題――自体、朝日新聞や韓国の官民が作り上げてきたウソの塊です。
当然、真相を究明していけば、「そんな問題など存在しなかった」となるのは当然の話であり、この点について政治的に慰安婦問題を認めた『河野談話』自体に問題があった、という話でもあります。
結局、どれも韓国の側の問題ばかりじゃないですか?
こうしたなか、趙龍来氏の議論は、日本政府がこの金泳三(きん・えいさん)の「3・13宣言」とやらに答えるかたちで、河野談話に加え、1998年の小渕恵三・金大中(きん・だいちゅう)両名による「日韓共同宣言」だといった成果に至った、などと指摘します。
ただ、そのわりに2001年7月18日、韓国国会が日韓共同宣言の破棄を求める全会一致の議決を行ったことには言及がありません。
また、21世紀に入ってから、「日本の右傾化」により日韓関係が悪化し、2012年の李明博(り・めいはく)大統領の竹島訪問で領土問題が浮上し、2015年の慰安婦合意への反発、2018年の自称元徴用工判決への日本の反発が続いた、などと述べている部分については、正直、意味不明です。
「日本の右傾化」の部分については具体的な指摘がなにひとつ存在しておらず、それどころか、李明博元大統領の竹島不法上陸、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領による慰安婦合意の破棄、韓国大法院による自称元徴用工判決は、いずれも「韓国の」問題だからです。
危機意識がない趙龍来氏の記事
こうした誤りに満ちた認識のもとで、趙龍来氏の主張は、さらにぶっ飛んでいます。
「解法の糸口は、両国が前向きな関係を追求して実践した90年代の経験で求めなければならない。被害者補償は韓国がして日本は謝罪する、つまり『補償と謝罪の分離原則』に立脚し、難魔のように絡み合った両国の懸案をじっくり解いていく努力が切実だ」。
このあたり、少なくとも現在の日韓関係が「歴史問題」にあるわけではない、という点を認識していない時点で、正直、お話になりません。結局のところ、趙龍来氏のこの論考にも、日韓請求権協定、主権免除原則、慰安婦合意といった国際法、条約、国際約束を韓国が破っているという事実にまったく言及がないからです。
なにより、現在の韓国が置かれている状況は、極めて深刻でもあります。単なる日韓関係の問題には留まらず、韓国が「国として」、国際法や条約、約束を守るのか、破るのかという瀬戸際に立たされているからです。
日本は外交青書などの文書を通じ、あるいはG7会合などの場を通じ、世界に対して常々、「法の支配」などの基本的価値の重要性に言及し続けています。要するに、「ウソをつくな」、「約束を守れ」と述べているわけですが、その発言は中国、ロシアに対してだけでなく、じつは韓国に対しても向けられているのです。
世界がロシアの不法行為に注目するなか、日本が「ウソをつくな」、「約束を守れ」と声高に主張し続ければ、そのこと自体が韓国の行為をさらに際立たせることになりますし、韓国がそれでも国際法をないがしろにし続けるならば、日韓関係は「落ち着くべきところ」に落ち着かざるを得ません。
非常に残念な話ですが、韓日議連の事務総長という立場の人物がこの程度の認識であるという時点で、日韓関係は「落ち着くべきところ」に向かっていると思わざるを得ない、というわけです。
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悪い意味で安定しているというか、妄想に基づく結論ありきで話を作るから、結果として都合の悪い事はスルーするので、毎度毎度スカスカな話が出来上がってくる、という感じがします。
今後の日韓関係を考える上で、絶対にやってはいけないことのひとつが、「韓国に謝罪すること」です。従って、1998年の小渕金大中宣言には、決して戻ってはいけないのです。それは「謝罪」の持つ意味が、日韓では異なり、かのくにでは「上位下位の立場の相互確認」の意味を持つからです。従って、韓国の政策協議団が来日した際に、岸防衛大臣が「2018年の韓国海軍による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題」に言及したことはクリーンヒットと言えるでしょう(明確に謝罪と再発防止を要求すればもっと良かった)。今後も日本は「韓国は国際法、国家間の条約・合意を守れ」の一貫した立場を堅持すべきです。日米韓・安保・対中国は推進しますが、それを除く日韓関係はテーパリング(段階的縮小)で良いのです。あとは何とか日韓関係を良くしたいと考えていると見られる米国が、どこでそれを見切るかですが、尹錫悦政権時代に、日本を満足させられる解決策を提示できなければ、そうなるのではないか、と期待しています。
takuさま
おっしゃるように、「韓国に謝罪すること」は、絶対にやってはいけないですね。
間違ったメッセージを韓国民に与えることになり、今後、付け込まれることになります。
また、竹島が不法占拠されていることに対して、謝罪と賠償を求めるべきです。
多くの日本国民が、韓国軍に拉致され殺されました。韓国の謝罪と賠償を要求する
べきです。
ある短い物語。
極貧のKさん一家が、Jさん一家に苦情を申し立てた。
ある問題が起こって、その時にJさんがいたから、犯人はJさんに間違いはない、謝罪しろ、ということであった。
Jさんは、その問題が本当に起こったことなのかどうかさえ知らなかったが、その場を鎮めようと思って、Kさんに謝罪した。
それがすべての間違いの始まりであった。
Kさん一家には、「謝罪をした人は、謝罪を受け入れた人に一生、頭が上がらない。生涯、相手の下になる」 という不文律があった。
Kさん一家はそういうルールが、世間一般の常識であると今でも思っている。
そして、Kさん一家は、その後、その時の問題の解決金という理由を付けては、Jさん一家に無心を続けるけることになった。
Kさん一家から見れば、Jさん一家が未来永劫、Kさん一家に尽くすというのが世間の常識と思っているのだから。
何回謝罪を繰り返してもKさんの態度が何も変わらないことに気が付いたJさんは、自分が謝罪してしまったことの誤りに気が付いた。そして、Kさんが主人、Jさんが使用人であるようなKさん一家の横柄な態度を変えることはできないことにも気が付いた。
そして、Jさんは努力してきっぱりとKさんとの関係を断ち切ることが出来ました。そして、その後平安で裕福に暮らすことができるようになったのでした。
どっとはらい。
韓国という国家の最も大きな課題(問題)は「国際法や条約を守らない」、「国と国との約束を守らない」ことですが、その根本に「問題解決に責任を負う人物がいない」ことがあると思います。
例えば、「自称元徴用工判決」について言えば、判決を下した司法府自身も、日本政府から問題解決を求められた行政府(大統領府)も、日韓基本条約(日韓請求権協定)を批准した立法府(議会)も、問題解決を自身の責任と考えず、まるで他人事のような態度に終始しているようにしか見えません。
アメリカ政府との関係でも、例えばTHAADの中途半端な配備の問題について、誰も責任を持って解決しようとしません。
その結果、こうした問題に加えて、慰安婦問題やレーダー照射問題など、国家間の重要な問題がいつまでも解決せずにダラダラと時間だけが経過していくことが、結果的に国家の大きな損失になっていることに韓国の国民は気付くべきだと思います(こんなことを言っても無駄かも知れませんが)。
個人的な意見です。
それぞれの合意や協定、宣言が不満だというのなら(やるとは到底思えませんが)それぞれの合意などによって得た金銭を全て返還して、できれば日本が掛けた時間、労力なども金銭化して支払い、その上で破棄すると宣言して再交渉する、ここまでやれば多少は筋が通っているのではないかと思います。
解決案を相手に考えさせるスタイルを現在政府は使っていますが最低ラインはこれだと突きつけてみるのはどうでしょうか?もちろん破棄した場合再度の歴史検証を厳格に行った上で交渉は行われるものとします。
穴があり、面倒なことになるかもしれませんが思いつきです。
危ない気がする。
これが尹政権の観測気球で、日本の外務省あたりは具体的に検討している案なのかもしれない。
「謝罪は日本の歴代首相や閣僚もしてきたし、もう一回位しても減るもんじゃないし」みたいな安易な考えで、「韓国が補償・日本が謝罪ならば、日韓請求権協定に触れないから受け入れられる」という人が日本にまだいる。
謝罪と賠償、両方を要求することしない謝罪だけでいい、これが韓国の云う譲歩らしいようですが、片方どちらかでも日本側が認めてしまえば、自称従軍慰安婦も自称強制徴用工も日本のせいだった、と言い出すことは目に見えています。
韓国側の虚偽や捏造を1ミリでも受容した瞬間、それはただの蟻の一穴ではなく象の一穴となりうるのは目に見えています。
よもや日本政府がこのような欺瞞に満ちた要請に従うとは思いたくもありません。
けれども、もし少しでも譲歩するような姿勢を見せたら、今夏の参議委員選挙で国民から大きなしっぺ返しを食らうであろう事を、岸田政権の面々には肝に銘じてもらいたいところです。
つけそこねたインネンにしがみつく
町の下っ端チンピラさんのような
たわけたことをまだ言ってますなあ。
そんなことではますます、
およそモロモロ韓流というものの
お姿があらわに広く知れ渡り、
世界で日本でそれなりの扱いを
されていくだけなのにと
心配して差し上げます。
それにしても、韓日関係?で
補償と謝罪の分離??
をするんですか(笑)
日本がすべき補償など残っていませんし、
謝罪のほうで残っているのは、
多くのうそや捏造で
日本の名誉を棄損したことへの
韓国さんがなすべき謝罪でしょうなあ。
謝罪だけでいい。金はこちらで出すから。
90年代の日本ならこれで騙されたのでしょう。
韓国の日本観は90年代でストップしてるみたいです。さすが、見たくないものは無かった事にする国です。
そこから、何度も何度も何度も同じ様に騙してきて、日本が相手にしなくなってどれくらい経つのでしょうか。
多分、韓国は騙されなくなった日本を見ずに、騙されてた日本を相手にしてるのでしょう。
そして、韓国が気づいて無いことが一つ。
「日本は、もう韓国を諦めてしまった」事です。
例えば、使えない部下がいて 一生懸命教えたり怒ったりしてる内が花で、もうコイツは無理だなと思えば、部下の言葉に耳を傾けず 出来るだけ 自分に迷惑のかからない所に 逃がすでしょう。
また、今までは部下の失敗もかばってた所を見捨てて自分でなんとかしろとなるでしょう。
もう、日本は韓国がマトモになるまで、見捨てたんだと思います。
今迄の失敗を取り返すくらいマトモになって、初めて日本は韓国を相手にすると思います。
ただ、ここまでの失敗をしたら会社を辞めるレベルです。
韓国もいっぺん国をやめて、リセットするくらいじゃないと信用はされないですよね。
韓日議連事務総長程度の小物が何言おうとごまめの歯ぎしりほども効かない。まあ韓国の反日は国是のようだし、決して心を入れ替えて懸案の約束を守り日本と友好的になろうなんて機運は未来永劫1ミリも生じることはないだろう。その意味で趙龍来氏とやらの駄文は韓国ならではの平常運転。
翻って日本の新大統領との付き合い方ですがFNN報道では5/10の大統領就任式には首相は出席せず林外相が出席する方向とのこと。先日の韓国の政策協議代表団来日時に岸田首相が面会し「日韓関係を健全な姿に戻すきっかけを韓国が作らなければならない」を表明せずがっかりしましたが、今回の岸田さん訪韓せずで一安心です。
尹氏の親書とやらは大統領就任式への出席のお誘いだったろうから出席、首脳会談「グランドスラムで懸案一括解決」とやらに乗らないで正解。
政府自民党の大多数の議員さんの認識は韓国は約束を守れ、嘘をつくな、不当な言いがかりをつけるなでしょうから、尹政権になっても「韓国は変わらない」で岸田さんも迂闊な妥協はできず行き着くところは日韓テーパリングですね。