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新規陽性者数過去最多:注目したい「ワクチンの効果」

日本の新規陽性者数が昨日、過去最多を更新しました。しかし、重症者数については、まださほど増えていません。これに加え、日本全体でワクチン接種率が8割前後に達していること、東京都のデータで見る限り、新規陽性者に占める20歳代の割合が急増していることなどを踏まえれば、重症者はさほど増えない可能性があるのかもしれません。

新規陽性者数「だけ」で見たら危機的状況だが…

年が明けてから、新規陽性者数が急増しています。

最新のデータに基づけば、昨日の時点で、日本全国における新規陽性者数は41,377人に達しました。この水準はもちろん、昨年8月20日時点の25,975人を大きく超えています。新規陽性者数「だけ」で見れば、まさに危機的状況と言わざるを得ません。

やはり、一部報道によれば、新規陽性者の多くは「感染力が強い」とされるオミクロン株の影響も指摘されています(たとえば次の時事通信の記事では、「オミクロン株疑い例が新規感染者に占める割合は全国で8~9割に達する」とされています)。

強い感染力、未曽有の拡大 軽症傾向より明確に―オミクロン株

―――2022年01月19日07時39分付 時事通信より

ただし、重症者数や新規死亡者数については、そこまで急増しているわけではありません。

新規陽性者数と重症者数を1枚のグラフに示したものが図表1、新規陽性者数と新規死亡者数を1枚のグラフに示したものが図表2です(※グラフの左右で軸の単位が異なりますのでご注意ください)。

図表1 新規陽性者数と重症者数の推移(日本全国)

(【出所】厚生労働省『オープンデータ』より著者作成)

図表2 新規陽性者数と新規死亡者数の推移(日本全国)

(【出所】厚生労働省『オープンデータ』より著者作成)

これを、どう見るべきか。

東京都でも新規陽性者は過去最多

個人的に気になるのは、やはり、重症者数についてはたしかに増加に転じているものの、新規陽性者数の急増と比べると、増え方はゆっくりです。新規陽性者数の増加が急すぎるためなのか、それとも「偽陽性」(つまり感染していないのに「陽性」反応が出てしまう現象)が多発しているためなのかはわかりません。

この点、厚生労働省のデータだと、新規陽性者の年齢別内訳が出ていませんが、東京都のデータだと、年齢階層別の、わりと詳細なデータを入手することができます。

そのまえに、東京都の状況についても簡単に確認しておきましょう。東京都では昨日の時点で新規陽性者が7377人と、過去最多だった昨年8月13日時点の5,908人をあっけなく抜き去りました。もちろん、過去最多水準です(図表3)。

図表3 東京都における新規陽性者数と重症者数の推移

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』、『新型コロナウイルス感染症重症患者数』より著者作成)

ただし、東京都に関しても同様に、重症者数については、現時点において顕著に増えていないのです。

新規陽性者に占める20歳代の割合が急騰

このあたり、「重症者数」の定義が東京都と厚生労働省で異なっていて、東京都のデータが少なく報告される傾向にある、といった事情もあるのかもしれませんが、仮説として思い当たるものはもうひとつあります。

それが、年齢別の新規陽性者数です。

東京都の新規陽性者の生データでは、陽性者の性別、年齢、職業といったデータが格納されているのですが、このうち累計約42.4万件の過去データを分析してみると、新規陽性者全体に占める20歳代の割合が、1月に入って急に上昇していることが確認できます(図表4)。

図表4 東京都新規陽性者数・年代別割合(各月平均)

(【出所】東京都『新型コロナウイルス陽性患者発表詳細』より著者作成)

また、60歳以上のいわゆる「高齢者」の割合が、非常に減っている、という特徴も確認できるでしょう。

東京都の新規陽性者のデータが日本全国のそれを代表しているという保証はありませんが、少なくとも東京都のデータで見る限りにおいては、現在の「感染爆発」局面を主導しているのは、基本的には20歳代から50歳代までの「現役層」ではないか、といった仮説が成り立つゆえんです。

ワクチン接種率は8割に:今後が正念場

もちろん、オミクロン株は感染力が強いわりに重症化するリスクはデルタ株などと比べて低い、などとされている点は、ひとつの安心材料ですが、けっして油断できるものではありません。

ただ、首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』によると、日本のワクチン接種完了率は、1回目で80%を超え、2回目でも78.7%に達しています。

それに、そもそも若年者は高齢者と比べ、また、ワクチン接種者はワクチン未接種者と比べ、感染しても重症化するリスクが高齢者と比べ低いとされていることを踏まえるならば、新規陽性者数が激増しているわりに、重症者がさほど増えないという可能性もあります。

その意味では、まさに今後が正念場であり、ワクチンに重症者数の抑制効果が認められるかどうか、といった視点からは、コロナ禍を克服するヒントが見えてくるかもしれないと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • 新規陽性者の急増のニュースに接しても、今ひとつ緊迫感がないのは、鈍感になっちゃったからなのかな?
    ちょっと自分自身を引き締めなきゃかもですね♪

    重症化が少ないのはいいニュースだと思うけど、ウィルスの性質なのか、ワクチンの効果なのか気になりますね♪

    ワクチンのおかげで重症化しづらいってだけなら、3回目を急がなきゃって思うのです♪

  • そろそろPCR検査が可能な人数の上限に達するので,今後の数字はあまり意味がないでしょう。保健所が対応可能な人数も超越するはず。この先は,誰が陽性だったかより,無作為抽出した人の何%が陽性だったか,のほうが意味のある数字になる気がしますが,そういう方法の採用は無理でしょう。
    3回目の接種が本格化するころには,もうオミクロン株は下火になっていると思います。

  • チラホラ最近出てくるニュースとしては犬ネコ、齧歯類(ネズミ系)、動物園の飼育動物などのコロナ感染。人獣共通の感染症と言う事になると口蹄疫や鳥インフルの時と同じような飼われている畜舎全体の迅速果断な殺処分などの問題も出てくるのでは無いかと思います。ペット動物はどうするのでしょうか?

  • 朝令暮改の岸田さんやから、一旦2類相当から5類に落として、なんかあればまた上げればいいのにね。
    どうせこのまま、2類相当維持しても保健所の接触者追跡機能は働かなくなるから、重症化率が上がった時の対応に役立たないとおもうのですが・・・

    • 価値観が違いすぎる様

      状況に応じて2類相当、5類相当をころころ変えたらそれこそ朝令暮改。維持できないのとしなくていいのは別で、日本全国で考えれば追跡できてる地方自治体までやらなくてもいいことになってしまいますよ。

      また、メルク社の治療薬が特例承認されたとはいえ重症化と死亡リスクを30%減程度という話ですから爆発的な感染力をもつ新型コロナが5類というのはまだ時期尚早かもしれません。あと5類にしたら治療費の全額国庫負担はなくなるでしょう。

      日本ではマスクがかなり役立っているとはいえ新型コロナは爆発的な感染力があるのと、メルクの治療薬が重症と死亡のリスク30%減程度だそうで当分2類継続が妥当なところでしょう。

      5類は感染力が限定的、感染力が高くても致死性が低く対症療法と治療薬が普及しているものばかりです。
      堺市のサイトが分かりやすかったので参考に挙げておきます。
      https://www.city.sakai.lg.jp/smph/kenko/kenko/kansensho/kansensho/chosashiryo/kansenshohassei.html

      • まあ、実際に対応をころころ変えるのはどうかと思いますが、岸田さんのいままでの対応見てるとすぐ対応変えてた人がよくそんなこと言うなとw

        まわりでも、子供の学校の学級閉鎖に伴い休んだり、職場で感染者が出て接触者扱いで休みを取ったりしてますが、このまま感染が広まれば仕事に出てこれる人がいなくなりそうですしね。
        エッセンシャルワーカー、特に医療従事者の方が、感染者となった時に隔離とかしていたら社会がどうにもならなくなりますからね。
        なにか対応を変えないととは思います。

        >あと5類にしたら治療費の全額国庫負担はなくなるでしょう。
        これについては、治療費が自腹になって出費しなくてはならなくなりますが、もっと俯瞰で考えると2類相当を続けていてマンボウや緊急事態宣言となって経済が悪化して仕事を失ってしまう、そういう事例を考えたら自腹とかいってられないと思いますね。

        ウイルスの危険ばかりが言われていますが、経済悪化による苦しみのことも考えたら2類相当から5類へというのも、選択肢のひとつではと思います。

        • でも
          感染した医療従事者が病院で巨大クラスターを作成する例は、それこそ新型コロナ出現前から散々指摘されていたけど

  • 今は塩野義等国内製薬の治療薬や従来型ワクチンに期待してます。
    効果抜群と報道されたファイザー治療薬の評価は北米の惨状で否定されたのでしょうか?
    同時に、イスラエル等からの過重接種による免疫系疲弊という情報に着目してます。国内のがん患者数推移にも。

  • オミクロン株は、今までの感染者数と重症者数の相関は別物と割り切って考えた方がいいのかもしれません。
    自分が参考にしている医療関係者のアカウントでも、自分の勤め先でも重症者が少ないのは間違いない所です。
    そしてヨーロッパの状況みても、少なくとも短期的には感染力が超強力な風邪のようにしか見えません。

    反面デルタの数倍、インフルエンザの約100倍くらいはある感染力と、ワクチン接種済みでも0.1~0.2%の重症化率から考えると、毎日数十万人以上の感染者が出れば日常生活・医療機関に影響が出ましょう。各人出来る対策は続けていく必要があるように考えます。