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韓国紙「日本も軍艦島などで約束を守っていない国だ」

韓国メディアに「日本も約束を守っていないではないか」とする記事が掲載されたようです。2015年、軍艦島などのユネスコ世界遺産登録に際し、「非常に多くの朝鮮人を含めた労働者がいくつかの場所で、意思に反して連れて来られ、働かされた」ことを「説明していないじゃないか」、という指摘です。

「ウソをつかない」、「約束を守る」日本

「ウソをつかないこと」、「約束を守ること」は、日本社会において極めて重視される価値観のひとつである、というのが、当ウェブサイトでこれまで何度となく提示してきた命題です。

ただ、この「ウソをつかないこと」、「約束を守ること」は、全世界で等しく尊重されている価値観なのかといえば、そこは微妙でしょう。国によっては、「状況が変われば平気で約束を反故にする」、「息を吐くようにウソをつく」、といった事例もあるからです。

これは、「良い」「悪い」の問題ではありません。大変残念なことですが、私たち日本人の価値観は「絶対」のものではなく、世界全体で見たら、むしろ私たち日本人の価値観が少数派かもしれない、と考えておくことが必要なのかもしれません。

もっとも、少しだけ余談を述べておくと、先進国と呼ばれる国では、たいていの場合、「ウソをつかないこと」、「約束を守ること」が重視されますし、また、逆に「先進国になることができる国」は、社会全体で「ウソをつかないこと」、「約束を守ること」が尊重されているのではないか、というのが個人的な仮説でもあります。

このあたりについては、きちんと各国の事例を集めて検証したわけではないため、あくまでも「仮説」、というレベルに過ぎませんが、あながちピント外れでもないのではないか、などと思う次第です。

すべての国が日本と価値を共有しているわけではない

こうしたなか、私たち日本人の多くにとって、「いったん約束したことを簡単に反故にする」、「都合が悪くなったときに、明らかなウソをついてその場を言い逃れようとする」といった人たちを見ると、どうもフラストレーションを感じ、あるいは嫌悪感を抱くというのは、ある意味では当然のことでもあります。

たとえば、2018年12月には、わが国の排他的経済水域(EEZ)内で韓国海軍駆逐艦「広開土大王」から自衛隊P1哨戒機に対し、火器管制レーダーが照射されるという事件が発生しましたが、この事件に対する韓国政府の対応は、なかなかに強烈でした。

「低空威嚇飛行」の捏造が3年で事実になってしまう?』などでも取り上げましたが、韓国側では、「韓国海軍駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを当てた」という事実が、「日本の哨戒機が韓国海軍駆逐艦に対し低空威嚇飛行をした」という具合に、事実関係が完全に入れ替わっているのです。

今から3年前の「日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」とする捏造が、いつのまにか完全に事実として定着しているのかもしれません。2018年12月に発生した火器管制レーダー照射事件、もちろん、事実関係は「韓国が加害者、日本が被害者」ですが、どうもこれが完全に逆転しているのではないかと思しき記事を発見してしまったのです。たった3年で捏造が事実になってしまうとは、おそろしい話です。火器管制レーダー照射事件何かと不自然な「火器管制レーダー照射」少し、古い話をします。今から3年前少々の2018年12月20日、石川県能登半...
「低空威嚇飛行」の捏造が3年で事実になってしまう? - 新宿会計士の政治経済評論

また、日韓両国政府は2015年12月に、いわゆる慰安婦問題を巡り、「最終的かつ不可逆的に」解決したことを確認しましたが(いわゆる「日韓慰安婦合意」)、この約束は文在寅(ぶん・ざいいん)政権発足直後に、じつにあっけなく破られてしまいました。

この自称元慰安婦問題を巡り、文在寅氏自身、「合意では解決できない」などと述べ、就任直後に発足させた「慰安婦合意検証タスクフォース」が2017年12月に日韓の外交機密文書を勝手に公表し、さらに2019年夏ごろまでには、合意に基づいて設立された財団が韓国政府の手によって解散させられています。

やってはならないのは「その場しのぎで相手に譲歩すること」

ちなみに韓国が約束を破っている側であるという事実は、韓国メディア自身も認識しているようであり、「約束の概念が異なることは日本も理解しなければならない」などとする論説が韓国メディアに掲載されたこともあります(『韓国メディア「約束破りは韓国の文化。日本は理解を」』等参照)。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、ある意味で凄い記事が掲載されました。やや乱暴に要約すれば、「約束を破るのは韓国の文化みたいなものだから、日本はそれを容認しろ」、という議論です。正直、呆れて物も言えない低レベルな主張ですが、ただ、私たち日本人が対応せねばならないのは、「相手に約束を守らせること」ではありません。「相手が約束を破る国である」ことを前提としたうえで、関係を薄めて距離を置くことと、可能であれば適切な罰を与えることです。韓国はインチキ外交の国韓国と北朝鮮、5つのインチキ外交...
韓国メディア「約束破りは韓国の文化。日本は理解を」 - 新宿会計士の政治経済評論

もちろん、「約束」の概念や「約束の重み」が国によって異なることはあり得るでしょうし、このあたりについてはある意味では仕方がない話でもあります。ただし、もしも相手国の約束の概念が日本と異なるということであるならば、日本もそれに応じた自衛策を講じなければなりません。

日本が気を付けなければならないことは、相手がウソをついてきたときにはそれを毅然と否定することであり、いちばんやってはならないことは、その場を「丸く収める」ために相手のウソを認める、ということです。

その意味で、日本外交に非常に大きな失策があったとすれば、2015年7月の、明治期の産業革命関連施設を世界遺産登録する際の、韓国のロビー工作に対する対応です。

韓国側は該当する施設で「朝鮮人の強制労働が行われていた」とするウソを国際社会で喧伝したのですが、日本の外務省はこれについて、 “forced to work” という表現を使い、事実上、強制労働が行われていたと認めているのです。

そして、こうした日本政府の誤解を招くような説明が、自称元徴用工問題の背景にも存在している、という点も見過ごせません。

いずれにせよ、本件については『ユネスコ軍艦島遺憾決議、日本は「根元を断つ」努力を』あたりでもまとめていますが、外務省の言い分が、相当にマヌケであり、正直、日本国民としては外務省(や当時の岸田文雄外相)に対し、怒りを感じざるを得ないものでもあります。

不法行為の全コストを、利息付きで韓国にお返ししよう個人的におそれていた事態が実現しました。明治期の産業革命施設の世界遺産登録を巡り、2015年7月に日本の外務省が切った「空手形」が、ブーメランの形で返ってきたからです。複数メディアの報道によれば、ユネスコ世界遺産委員会は22日、「軍艦島の朝鮮人強制連行・強制労働に関する展示方法や展示内容が不十分」とする趣旨で、日本を非難する声明を全会一致で採択したのだそうです。結論からいえば、これについては「放置」せざるを得ず、かわりに「根元を断つ努力」をしなけれ...
ユネスコ軍艦島遺憾決議、日本は「根元を断つ」努力を - 新宿会計士の政治経済評論

外務省の失態のコスト

こうしたなか、やっぱりこんな論説が、韓国側から出て来ました。

【グローバルアイ】日本は約束を守る国なのか

―――2022.01.18 06:34付 中央日報日本語版より

記事タイトルでもだいたいわかりますが、「日本が韓国を『約束を守らない国だ』と攻撃するが、日本だって約束を守っていないじゃないか」、「『軍艦島』などで朝鮮人の強制労働が行われていたという内容を説明していないじゃないか」、などと批判する記事です。

正直、日本が約束を守っていないからといって、韓国が約束を守っていないことが正当化される、というものではありません。また、韓国の約束破り、国際法破り、条約破りは、日韓関係を破綻に追いやりかねないレベルのものであり、とうてい是認できるものでもありません。

しかし、日本の外務省が2015年7月に「やってはならない譲歩」をやったがために、こうやって相手国から攻撃される口実を与えているということもまた事実でしょう。

いずれにせよ、韓国では自分たちの側に100%の過失があったとしても、なんだかんだで理屈をつけ、「お互いが悪い」などと言い募るという癖があるようですが、これを当ウェブサイトでは「ゼロ対100理論」と称しています。

※ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく、韓国や北朝鮮が好んで使う屁理屈のこと。

この「約束破り」の件については、まさに「ゼロ対100」理論そのものです。

2015年7月の外務省の失敗は大罪ですが、この際、韓国側が難癖をつけてきている長崎県端島などの世界遺産登録を、いっそのこと、いったん撤回してしまうべきではないでしょうか。

また、現在、日本が佐渡金山の世界遺産登録を目指していることについて、やはり韓国側から「朝鮮人の強制労働が行われた」という難癖が出てきていますが、これは明らかに、「二匹目のどじょう」を狙った動きでしょう。

くれぐれも、佐渡金山の世界遺産登録に際し、「朝鮮人強制労働」という与太話を認めないようにしなければなりませんが、果たして現在の岸田文雄首相、林芳正外相に、それができるのでしょうか。

このあたりは、個人的にはどうしても懸念を払拭することができないと感じてしまう次第でもあります。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • >果たして現在の岸田文雄首相、林芳正外相に、それができるのでしょうか。
    会計士様、更新ありがとうございます。この朝令暮改の岸田だけに不安で仕方ありません。私は、鳩山。菅直人、隣国の文に匹敵するリーダーの資格のない人物だと思ってます。テレ朝の玉川徹氏がようやくこんな政治家が現れた!ってほめるくらいです。かなり、世間の感覚とずれた首相だと思います。思い付きで朝礼暮改なんてされたら、役人も疲弊するでしょう。そんなこともわからない奴が首相だなんて、悲劇です。

  • >2015年7月の外務省の失敗は大罪ですが、この際、韓国側が難癖をつけてきている長崎県端島などの世界遺産登録を、いっそのこと、いったん撤回してしまうべきではないでしょうか。

    撤回すれば韓国側が増長するので、無視するのが良いと考えます。
    『旭日旗は戦犯旗である』という韓国側の主張を受け入れるようなものです。

    『日本政府にて事実を確認したところ、韓国側が主張するような強制労働は無かった』との説明をすれば十分ではないかと。

    日本軍慰安婦問題も、本来の日本軍慰安婦問題といわゆる日本軍慰安婦問題のふたつがあり、韓国側が主張するいわゆる日本軍慰安婦問題は無かったと説明するようなものです。

    • みずきさんが書いてたかと思いますが、韓国の価値観では「相手が反論しないで無視する」は「自分の主張が正しい」と受け止める事になるとの事。

      韓国の価値観での「無視」は「相手に反論して却下する」なので、日本政府も端島問題について「韓国の主張を否定して相手にしない」姿勢を取れば苛立ち、そのうち火病ってナナメウエな事をしまくって自滅するのではないかと。

  • 韓国側は相変わらず政府もメディアも「約束を守れとしか言わない日本が悪い!」と
    叫び続ける様ですね。つまりまだ日本との関係が改善できなくても一応生きていく事くらいは
    出来る余裕があると言う事。

    韓国の”スタミナ”が尽きるのはいつの日でしょうかね?
    コロナ以前も決して余裕はなかったのに、いまやコロナの影響で自営業がバタバタ
    倒れているそうだから、その内目に見えて基本的生活も困難になるはずですが……

  • 軍艦島の世界遺産登録を取り消せば、韓国内はホルホルでしょうね。
    日本は日本でスジを通すべしという文脈かと思いますが、韓国へのカウンター的行動は採らないほうがいいと思いますが。

    岸田氏はみんなの話をよく聞いて、優先順位がよくわからない総花看板を掲げるので心配です。会社の幹部で時々こういう人がいたのでピピっときます。
    林氏はまだよくわからないです。

  • 端島で、朝鮮人が強制労働させられた、給料を払ってもらっていない、というならその無い証拠を出して争うようにして欲しいものです。そんな大嘘があったと言っているのは、朝日新聞の左翼記者だけですから、証拠主義で進めてもらえば良いのです。嘘つき国家(多数)、泥棒国家(仏像、農産物品種、李ライン時代の水産資産)、略奪国家(竹島、中国地方の漁船漁民の拿捕破壊虐殺、北鮮による日本人誘拐監禁)であることを、日本政府外務省はもっとまじめに国連で訴えないと駄目ですね。必要ならユネスコ解体活動を展開し、いい加減な世界遺産制度自体を廃止し、FOIPや台湾、タイなどの近隣諸国と新たなアジア世界遺産認定機関を作ればよろしいのでは。

  • 「意思に反して連れてこられた人」がいないのだから、約束通りですね。
    それとも「意思に反して連れてこられた人」というのは密航者だから
    それを「意思に反して連れてこられた」というのはオカシイですよね。

    JBPressで「優秀な人材が欲しい日本企業と韓国脱出を望む若者のウィンウィン」という
    記事がありましたが、日本企業はいい加減目を覚まさないのでしょうか?
    日本企業に就職した南国の若者が何十年したら、日本企業で「意思に反して連れて
    こられ奴隷労働をさせられた」と裁判されるのが、解らないとしたら残念な事です。
    自称徴用工と現在日本企業で社員となっている南国の若者と何らの地位の変化は
    ありません。 南国人を日本企業で働かせるのが悪いという意味で裁判を起こされるのです。
    いわゆる自称徴用工は「集団就職者」を意味している事を忘れてはいけません。

  • https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/pp/page3_003189.html

    まずは、日米同盟の強化です。日米同盟はインド太平洋地域の平和と繁栄の礎であり、日本の外交・安全保障の基軸です。岸田内閣においても、先般の日米「2+2」においてブリンケン国務長官、オースティン国防長官と確認したように、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化していきます。そのためには、日本自身の防衛力の抜本的な強化も必要です。日本の平和と安全の確保、「自由で開かれたインド太平洋」の実現、新型コロナや気候変動への対応などの課題に対し、日米両国の強固な信頼関係の下、緊密に連携・協力していきます。

    林外相は外交演説の中でこう述べておられますが、我々は彼に疑念の目を向けて、監視しておかなければならないと思います。

  • 「ウソをつかない」、「約束を守る」日本

    に関してこんな調査がありました。
    各国の期日までの支払いぶり一覧です。
    残念ながら彼の国のデータがありませんが、個人的経験で、彼の国で業務報酬が焦げ付いて結局ごねられて貸し倒れたことが数回あります。
    https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220109_01.html

  • 文在寅大統領の退任後逮捕有罪を恐れての現在の韓国政権の各種悪足掻きと読む鈴置先生の見立てでは説明出来ない事が多々起こっています。

    李在明大統領候補等をみても、根本的に罪悪というものを解さない人々なのだとしか思えません。
    法曹界にいた者ですらあの有り様です。

    善悪・倫理・起承転結等のあらゆる合理性・論理性の概念が存在しないだけなんだとしか思えません。

    相手するの絶対無理です。

    • > 善悪・倫理・起承転結等のあらゆる合理性・論理性の概念が存在しないだけ

      より正確に言えば、それらの概念が意味するところが、こちら側のそれとあまりにかけ離れているために理解不能なのだということです。何度かコメントしていますが、日本人から見て不可解としか思えない韓国人の言動は、「朝鮮式朱子学」「ウリとナム」「恨」の3つの補助線を引けば、ほとんどの場合説明可能です。この3つは、日本はもちろんのこと、中国にすら存在しませんので(正確に言えば、前二つについては、多少近いものは存在します)、なおさら理解しがたく思われるでしょう。

      > 相手するの絶対無理

      精神衛生的にもそれを推奨します。韓国人の戯言の背景が理解できたとしても、何もいいことはないからです。

      • 龍様

        「朝鮮式朱子学」「ウリナム」「恨」を踏まえてさえ、あの人たちの善悪・加害被害・正しいと誤・正義と悪等々の概念は

        「それで金がとれるか」
        「いくらになるか」
        「その結果、自分の位相(地位)がどれくらい相対的に優位になるか」

        だけで、悲しみやら苦しみやらさえ金とマウントとれるかに全自動で変換されている気がします。

        そこに至るまでの屁理屈に正義がなかろうと整合性がなかろうと辻褄が合わなかろうと押し通した場合にかえって自身が他の第三者たちから軽蔑され二度と信用されなかろうとお構い無し。

        正気の沙汰とは思えません。
        結局それで疎んじられ軽蔑され対等に扱われない歴史しかないのがかの地なのではないでしょうか。

        今現在ですら、周辺や関わりのある全ての国に見限られて存在しないかのように扱われている事を自分たち自身が理解していないのは、気の毒ではありますが永遠に変われないのではと思います。

        • > 疎んじられ軽蔑され対等に扱われない歴史しかない

          だったからこそこうなったとも言えると思います。
          そんな歴史しか持たない国だったのに、現在の韓国が半島史上空前の繁栄を遂げている(客観的にみればその通りでしょう)、その事実が彼らを舞い上がらせ、ますますおかしな方向に走らせています。
          その姿は、食うや食わずの極貧生活を送っていた人が、突然10億円を持たされたようなものです。やたらと金遣いは荒くなり、銀座か北新地のクラブで豪遊して美女たちを侍らせ(譬えが古臭くて申し訳ない)、天下を取ったように妄想するけれども、根性は貧乏人のままです。その裏返しでやたらとふんぞり返って見せますけれども、誰からの敬意も受けることはできません。
          韓国人が「○○は韓国の性向と躍進に嫉妬しているのだ」と言いがちなのは、過去に韓国人がただひたすらに他国に嫉妬してきたことの裏返しです。彼らは嫉妬されたくて仕方がないのです。嫉妬されて、初めて彼らは自分たちが偉くなったと感じられるからです。
          半万年属国であり、誰にも顧みられることのなかった辺境の小国だった朝鮮は、「朝鮮式朱子学」などによってかろうじて精神のバランスを保つということを長く続けてきましたが、空前の経済的繁栄を手にしてもなお、精神的には奴隷根性とその裏返ししか得られてはいないのです。

          結局のところ、「韓国の特殊性」は長い歴史の中で彼らが自ら紡ぎだしてきたものであり、たかだか3,40年の経済的繁栄くらいで修正されるものではありません。永遠かどうかはともかく、現在程度の繁栄が200年くらい続いたら、もしかしたら変わるかもしれませんね。

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