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李相哲教授「日本は文在寅政権の失敗から学ぶべきだ」

あと3ヵ月あまりで韓国・文在寅(ぶん・ざいいん)政権が終了しますが、こうしたなか、龍谷大学の李相哲(り・そうてつ)教授が大変に興味深い論考を出しています。文在寅政権の北朝鮮政策などを「失敗」と断じたうえで、「日本や国際社会が学ぶべき教訓は、北朝鮮に対し『力』の行使も辞さないという覚悟を示すことではないか」と問いかけているのです。

文在寅政権下の日韓関係

隣国・韓国では、文在寅(ぶん・ざいいん)政権の任期があと3ヵ月半で終わってしまいます。

私たちの国・日本との関係で見るならば、文在寅政権時代に発生したさまざまな出来事によって、いまや日韓関係は破綻直前の状況に陥っています。

それらのなかでも「一丁目一番地」といえば自称元徴用工問題でしょう。この問題は結局のところ、韓国が1965年の日韓請求権協定に反する状態を創出することを通じ、日本政府や「ニッポン株式会社」から見て、韓国が日韓関係を法的基盤から覆そうとしているのと同じだからです。

ただ、問題は、それだけではありません。

たとえば2018年12月に発生した韓国海軍駆逐艦による自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダーの照射事件のように、韓国が発生させた事件、不祥事は数多くあり、それらを巡って韓国側はいまだに謝罪どころか事実認定すらしていない状態にあります。

正直、日本が外交面でも、防衛協力面でも、あるいは経済・産業面でも、金融面でも、韓国と距離を置きつつある理由は、基本的には韓国の側に問題があるからだと考えて差し支えないでしょう。

日韓関係にほどんど関心がない文在寅氏

ただ、文在寅氏という人物自体、大変興味深いことに、どうも日韓関係にはほとんどといって良いほど、まったく関心を持っていないように見受けられるのもまた事実です。

というよりも、どうも彼のこれまでの4年8ヵ月に及ぶ行動を眺めていると、「大韓民国」という国を北朝鮮に献上することが、彼自身の政策目標だったのではないか、などと思わざるを得ないのです。

しかも、自身の「実績」作りのためでしょうか、文在寅氏は現在、国政上のさまざまな課題をなげうち、北朝鮮との間での「朝鮮戦争終戦宣言」の実現に向けて邁進しているフシがあります。

文在寅政権関係者は昨年、やたらと「東京五輪を南北和解の場にすべき」などと述べていて、五輪直前には文在寅氏が「徴用工問題などの一括妥結のために訪日する」、といった飛ばし報道もあったほどです(『文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか?』等参照)。

昨日の『読売「日韓首脳会談で徴用工など協議へ」をどう見るか』でも取り上げたとおり、読売新聞は昨日早朝に「日韓首脳会談を元赤坂の迎賓館で実施する」、「日本政府は駐韓大使館の相馬公使を更迭する構え」などと報じました。しかし、『日韓メディアが「文在寅韓国大統領が訪日断念」と速報』ですでに結論が出ていますが、この読売報道の内容自体、結果的に「大外れ」でした。一連の騒動に加え、文在寅氏が今後、どう動くかについても、興味は尽きないところです。文在寅氏の訪日スルスル詐欺ここ数週間、当ウェブサイトで「訪日ス...
文在寅氏訪日失敗:なぜ読売新聞は「間違えた」のか? - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、東京五輪への出席に失敗した文在寅氏は、その「次のターゲット」を北京冬季五輪に向けているようであり、昨年はしきりに、「北京五輪の場で米中南北4ヵ国首脳会談を実施し、終戦宣言を行う」、などとする構想が見られました。

これについては『北朝鮮が五輪不参加を公式表明:進退窮まる文在寅政権』でも触れたとおり、米国の「外交ボイコット」に加え、北朝鮮自身が五輪への不参加を表明したことで、事実上、構想としては潰えた格好です。

北朝鮮が公式に北京五輪不参加を表明したようです。もともと北朝鮮の五輪委は国際五輪委(IOC)から2022年末までの会員資格停止処分を喰らっていましたが、IOCに対して喧嘩を売っているかのごとき北朝鮮の声明を読むと、つくづく北朝鮮は外交が下手な国だと思わざるを得ません。その一方、この宣言で、文在寅政権が掲げる「北京五輪での朝鮮戦争終戦宣言」構想は、完全に行き詰まった格好です。北朝鮮の五輪委会員資格停止処分『南北揃ってIOCを怒らせた:東京大会「意外な効果」』でも取り上げたとおり、北朝鮮の国内五輪委...
北朝鮮が五輪不参加を公式表明:進退窮まる文在寅政権 - 新宿会計士の政治経済評論

しかも、文在寅氏の「南北和平」構想を嘲笑するかのように、北朝鮮は年初以来、相次いでミサイルの発射という国際社会への挑発を繰り返している状況です。

文在寅政権の5年間は、おそらく韓国から見て、日韓関係、米韓関係、中韓関係、南北関係といった外交関係に加え、不動産価格抑制の失敗、最低賃金の引上げなどを通じた雇用政策の失敗など、さまざまな「負の遺産」を遺したと評価されるのではないか、という気がしてなりません。

すでに「失敗」と断定している論者もいる

というよりも、気が早いことに、現時点ですでに文在寅政権を「失敗」と断定している人もいらっしゃいます。

龍谷大学の李相哲(り・そうてつ)教授がその典型例でしょう。

産経ニュースに今朝、こんな記事が掲載されていました。

文政権の失敗から学ぶべき教訓 龍谷大学教授・李相哲

―――2022/1/17 08:00付 産経ニュースより

(※会員限定記事ですが、本日時点において「無料会員」であれば読むことができるようですので、もしご興味があれば是非ともご一読ください。)

李相哲氏は冒頭、次のように述べます。

大統領就任の辞で文氏は『一度も経験したことのない国をつくる』と豪語したが、逆の意味で民主主義国家として見たこともない在り方を見せつけてきた」。

なかなか、手厳しい指摘です。

ですが、李相哲氏の言うとおり、就任早々の2017年12月に慰安婦問題を巡り「合意では解決できないことを改めて明確にする」として慰安婦合意をいとも簡単に反故にしたことを筆頭に、「山積する問題を放って、なお北朝鮮の金正恩総書記の機嫌取りに夢中」なのは、事実でしょう。

では、李相哲氏が記事タイトルで述べた「教訓」とは、いったい何でしょうか。

それは、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)に対し、「善意は通用しない」、というものです。

残りわずかの文氏在任中に、金氏が好戦的態度を改め、非核化に踏み切るとは思えない。文氏の対北朝鮮政策は完全に失敗したと言ってよい。ここから、一つの教訓を学ぶべきではないか。金正恩政権に善意は通用しない、ということだ」。

李相哲氏は続けて、北朝鮮との関係における文在寅氏の実際の行動を列挙したうえで、記事の末尾では次のように述べます。

文政権の4年余りの対北朝鮮政策から日本や国際社会が学ぶべき教訓は、むしろ、金正恩政権が最も嫌がる人権問題への責任を追及し、非核化の要求を受け入れるよう迫り、金正恩体制の転換さえも視野に入れ、『力』の行使も辞さないという覚悟を示すことではないか」。

結局はすべて日本の問題

正直、これほど同意してしまう記述は、なかなか見当たりません。

実際、日米両国などは、北朝鮮に対する経済制裁については続けていますが、現在のところ、北朝鮮の「体制転換」については言及してきませんでした。そろそろ、アプローチをさらに強化すべきときが来たのかもしれません。

また、日本にとっての悲願といえば拉致事件の解決ですが、これも正直、アプローチが間違っているのではないか、というのが当ウェブサイトでこれまで述べてきた内容です。

日本人拉致事件については、「どうやったら拉致された日本人を北朝鮮に返してもらえるか」、「どうやったら日本人拉致事件の真相を北朝鮮に教えてもらえるか」を議論しても仕方がありません。

いますぐ議論しなければならないのは、「拉致された日本人を取り返すために、どうやったら北朝鮮に軍事侵攻できるか」、「拉致事件の全容を解明し、主犯を罰するために、どうやったら北朝鮮政府の幹部を拘束し、日本に連行することができるか」、です。

そして、これも当ウェブサイトではかねてより申し上げてきたとおり、非常に残念なことに、日韓関係は北朝鮮を巡る核・拉致・ミサイルなどの問題の解決に、ほとんど何も寄与してこなかったと結論付けて良いでしょう。

拉致問題という意味では、韓国も日本と同様、数多くの市民が北朝鮮当局によって拉致された被害者であるはずですが、その韓国は残念なことに、「国際社会で日本と歩調を合わせて拉致問題の解決を訴える」という点で、ほとんど協力してくれませんでした。

結局のところ、日韓問題、拉致問題など、日本が抱えるさまざまな問題の解決には、日本の「意思」が必要です。

たとえば、拉致事件の解決を阻んでいるのは、じつは日本の一部の特定左派メディア、改憲自体を議論することを許さない現在の国会における特定野党の存在ではないでしょうか。

同様に、日韓関係において、次から次へと問題が生じて来るのも、結局は過去に日本の外務省や一部政治家、一部企業などが、国益よりも自分たちの利益を重視するあまり、韓国に対しやらなくても良い譲歩を続けてきたからではないか、という気がしてなりません。

その意味では、結局すべては「日本の問題」だ、ということに尽きると思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (27)

  • 早い物で、文在寅政権も後3ヶ月強で終わるのですね。
    この残された僅かな期間で何か奇跡的に偉業を成し遂げでもない限り、
    彼は韓国の歴代大統領の中でも最低クラスの評価を下されそうな予感がします。

    果たして彼に、”功績”と言える物は一つでもあるのでしょうか。
    むしろ”プラスではないがマイナスでもない”部分さえ中々思いつきません。
    そうなると、韓国の大統領らしく今後は相当危ない立場……?

    大統領でなくなったその日の内に国外に移住したりは……しないのかな?
    今までのパターンだと。本人は危険を認識していても、周りにガッチリ監視されていて
    そんなのは無理、と言うオチかな……

      • 本当に困りますよね。

        日本は法治国家だから”日韓犯罪人引渡し条約”を厳守すると
        「請求国において、反論の機会が与えられず、欠席裁判により有罪判決が出た場合」
        に引っかかって、文在寅を守らないといけないなんていう最悪の事態が
        発生しかねないのが怖いです。私の解釈が間違っていれば良いのですが。

  • 拉致問題にしても、過去にマスコミの世論誘導の力で国益を優先する議員が生存できなかったのが原因であると思います。
    議員として生き残れない事になるのでは、議員でも人の子です、まず自分を守るために事なかれになるのは当然でしょう。
    しかし、ネットの普及によってマスコミの世論への影響力が激減してきた事によって、やっとまともな事(国益)を言っても生き残れる議員が出てきたことがうれしいです。

    今、マスコミは、必死になって、ネット=フェイク。オールドメディア=真実の報道。と言う世論誘導をしてしますが、これはマスコミの断末魔の叫びですね。

  • お疲れさまです。
    ヤフーの山陰中央新報の記事で、李承晩ラインで拿捕され3年ぐらい拘束された方の記事がのっておりました。
    イチローさんではございませんが、本当に腹が立ちました。
    漁民のかたは、自称ではございません。
    本来ならその問題にこそ、謝罪と賠償が必要とおもいますが、する気はたぶん絶対にございません。
    日本としてはそういった国に対してどういう対応をするか、制裁を希望いたします。

    • 北朝鮮だけでなく、
      韓国も戦後日本に対して犯罪を繰り返して行ってきた国である認識が必要だと思います。

    • 本来北朝鮮の拉致よりも韓国の拉致の方が問題なんでしょうね
      アレを許したから北朝鮮が「民族の事業」として拉致を引き継いだという考え方が出来る

  •  「ここから、一つの教訓を学ぶべきではないか。金正恩政権に善意は通用しない、ということだ。むしろ、金正恩政権が最も嫌がる人権問題への責任を追及し、非核化の要求を受け入れるよう迫り、金正恩体制の転換さえも視野に入れ、『力』の行使も辞さないという覚悟を示すことではないか。」
     この金正恩政権に対する指摘は、文在寅政権についても全く同じです。
     「ここから、一つの教訓を学ぶべきではないか。文在寅政権に善意は通用しない、ということだ。むしろ、文在寅政権が最も嫌がる国際法違反問題の責任を追及し、国と国との約束履行の要求を受け入れるよう迫り、文在寅政権の転覆さえも視野に入れ、『対抗措置』の行使も辞さないという覚悟を示すことではないか。」

  • >その意味では、結局すべては「日本の問題」だ、ということに尽きると思う次第です。
    これを正とした場合、模範というか参考とすべきはどの国になるのだろうか?
    米国とすると、憲法はともかく核軍事力が必要になってくるでしょう。思考や行動的にも肉食系でないと務められないような。それとも仏国?
    ここも似たり寄ったりだし。意外に難しい課題に感じます。
    あと、北の場合、他国が追い詰めると「窮鼠猫を食む、とか死なばもろとも」と他国を巻き込んで集団自決(核攻撃)してきそうなのが気がかりです。

    • 同感でございます。

      脱北者のお話によると、「北朝鮮は地獄。」
      ここまで国家運営が失敗してしまって、改善の見込みもない状態でございます。
      そして、核開発にすべてをかけておりますので。

      唯一の友人の中国共産党も邪心がございますのか、北朝鮮の核については黙認しております。

  • 思いつくのは「大いなる反面教師」としての功績ぐらいでしょうか・・?

  • 記憶が定かではないのですが、徴用工にしろ慰安婦にしろ、もともとは日本の特定左翼がマッチポンプしたのが大きかったのではなかったかと思います。

    それはともかく、”金正恩政権に善意は通用しない”というのは、日本側としても疾うにわかっていることでしょう。
    で、”金正恩体制の転換さえも視野に入れ、『力』の行使も辞さないという覚悟を示すことではないか」”というのは、現実には相当難しいのではないでしょう。

    人権問題の責任を追及していった場合、どう出るでしょうか。
    我が国は、スパイや工作員が野放しのため種々のかく乱・テロ行為を防ぐことは難しく、また専守防衛であるため、最終兵器を使われても反撃できないのが実態です。

    李相哲氏のご指摘はごもっともですが、“覚悟を示す”には、まだ準備が足りない、と言わざるを得ないと思います。まことに残念ですが。

  • 全てを韓国に置き換えても成立する論です。

    太陽政策は全く無意味で無駄。
    今、そんな事に割く余分なリソースなど世界中のどこにも存在しない。

    合意を無意味というなら協議する必要は永遠に無い。
    一度や二度の合意で許されると思うなとか言うが、下より主張の擦り合わせをするための協議であり合意なのであって「赦してもらう」為では無い。
    今現在は隣にある地域の民族集団なだけであり永久に存在し続ける国家ではない。
    全ての文献引用や故事引用等に常に嘘や曲解を混入してくるし、脳内妄想でアメリカ独立戦争やフランス革命の情景や東南アジア・アフリカの植民地が自分たちの記憶だと病的に思い込む異常さには付き合いきれません。
    人類に悪影響を与えるだけの害でしかないと思うに至りました。

    害を放置するか根絶するかの二択なだけで、害を治してまともにすることは不可能であり無駄です。

    北や中共が治らない病なのと同じです。
    患部を切除するしかないのですが、患部が全身に及んでいる時に延命することに意義はあるかないかという議論なだけです。
    国以前に種としていかがなものかと。

  • 李相哲氏は韓国人としてはまともな方だと思いますが、韓国は北の核武装に反対しているというのは間違いです。
    文大統領は、北の非核化は望んでいないどころか核武装を密かに歓迎していると思います。
    保守派も怪しいと思います。
    保守派は、北が崩壊した時に核兵器が自動的に手に入ると思っているのではと推測しています。

    北の核は「民族の核」であり、統一朝鮮が天敵である中国と日本を見返すための必須の手段なのですから。

    • はるちゃん 様
      李相哲氏は朝鮮系中国人ですね。尤も、今は日本に帰化されてます。
      なので半島情勢もあまり色を着けないで見てられるんだろうと思います。

  • 拉致問題に対する言及も散見されますので、私見を一つ。

    拉致問題に限って言えば、日本人に必要な覚悟は(実務上の課題は傍において)北朝鮮人の面倒を見る覚悟ではと思いますねー。

    北朝鮮に自衛隊を叩き込むのは国際社会的にはさほどハードルは高く無いでしょう。
    また、国内法的なハードルも同様かと(日本的にはそもそも北朝鮮は国家では無いので交戦権もへったくれもない)

    北朝鮮が死なば諸共なんてしたところで、それはいつか来る日が今日来たってだけかと。

    この場合は、我が国が上手く動けば北朝鮮人の面倒を見なくて済むだけではなく、長期的には最終兵器取得できる公算が高まるだけですし。

    結局アフガンなりイラクなり(それこそ我が国然り)を見れば分かる通り、叩きのめした国(アメリカ)が叩きのめされた国の面倒を見るのが定例な訳で。

    それこそが、我が国にとって最大のネックかと。

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