X

ネット化で個人が新聞社を上回る情報伝達力を持つ時代

ツイッターで、新聞社の公式アカウントを超えるフォロワー数を持つ個人がいますが、これも凄い話です。先日否決された武蔵野市の住民条例案を巡り、和田政宗参議院議員と神奈川新聞の間で、ちょっとしたトラブルが生じているようですが、それと同時にもうひとつ痛感するのは、紙媒体の新聞しか読んでいない人とインターネットユーザーとの間で生じ得る、あまりにも大きな格差です。言い換えれば、情報発信力で新聞社が個人に負けている、ということでもあります。

和田政宗参議院議員vs神奈川新聞

少し前に、ツイッターでこんなツイートが話題になっていました。

和田 政宗

神奈川新聞社より差出人や差出部署が記載されていない封筒が届いた。
中には、石橋学編集委員が、私が言っていないことをさも言ったかのように捏造した上、私の発言を「ヘイトスピーチ」とレッテル貼りした紙面が入っていた。
誰が出したのでしょうか?
社会的マナーもわからないのでしょうか?
―――2021年12月20日 12:47付 ツイッターより

ツイートは和田政宗参議院議員が発したもので、和田氏の言い分によれば、神奈川新聞は「私が言ってもいないことをさも言ったかのように捏造し」、「私の発言を『ヘイトスピーチ』とレッテル貼り」した、などとしています。

しかも、和田氏の言い分を信じるならば、神奈川新聞はこの12月11日付の記事を、差出人、差出部署等を記載もなく、和田氏に送りつけた、ということです。

和田氏はまた、この最初のツイートの2日後には、こんなツイートも発しています。

もしこれら一連のツイートが事実ならば、神奈川新聞というのは、何とも社会常識を欠いた組織であるようにも思えます。

肝心の神奈川新聞の記事は「有料読者限定」

ただし、和田氏がいい加減な情報を発する人物ではないという点については個人的に確信しているものの、一方の言い分のみを絶対的な真実として信頼するのはさすがに気がひけます。そこで、神奈川新聞側の情報も確認しようと思い、ツイートに掲載された写真などから判断して、該当する記事を探してみました。

おそらく次のものでしょう。

東京・武蔵野市 ヘイトに屈せず条例を

―――2021年12月11日(土) 09:00付 カナロコより

ところが、リンク先記事を読んでみて、戸惑います。なんと、有料会員登録をしていない限り、全文を読むことができないのです。

このあたり、どの記事を無料版に掲載し、どの記事を有料版に掲載するかは、その新聞社の判断ですので、私たち外部者がそれに異議を唱えることはできません。

しかし、その結果として、肝心の、「神奈川新聞に本当に和田議員の発言を捏造し、『ヘイトスピーチ』とレッテル貼りした記事を掲載したのかどうか」については、検証ができません。

なんともスッキリしない展開です。

和田議員「新聞記者らの暴力的な取材」

仕方がないので和田議員の側の情報発信をもう少し確認していくと、東京都武蔵野市で松下玲子市長が外国人の住民にも投票権を認める「住民投票条例案」(21日に市議会で反対多数で否決)を巡り、どうやら和田議員がその反対集会に出席したことと関係ありそうです。

和田議員は12月17日付の『WiLL増刊号』に出演し、メディアの記者が「取材活動」と称し、街頭演説会の妨害、あるいは暴力的な取材を行ってきた、という実態を述べています。

(なお、和田氏はこの動画でも、神奈川新聞の該当する記事については「捏造」と断定していますが、詳細については動画をご覧ください。)

このあたり、国会議員の側が直接ツイートで情報発信しているのに対し、肝心のメディアの側が、こうした国会議員側の問題提起にダンマリを決め込んでいるといのも不思議な気がする次第です。

個人で新聞社を上回るフォロワー数

ただ、個人的にこの件について興味深いと思ったのは、やはり、インターネットの進化により、国会議員を含めた影響力のある個人が直接、私たち一般人に向けて情報発信をしてくる時代が到来した、ということです。

この点、当ウェブサイトでは武蔵野市の条例案についてはあまり取り上げて来ませんでしたが、やはり、紙媒体の新聞しか読んでいないような人たちと、インターネットを使いこなしている人の間では、深刻な情報の格差が生じているように思えてなりません。

正直、『紙媒体の新聞から10代が離れた』などでも述べたとおり、とくに若年層に関しては、きょうび紙媒体の新聞を読んでいるという人は少数派でしょうし、また、インターネットでも(大変失礼ながら)神奈川新聞にカネを払って有料版を購読している読者が社会の圧倒的多数だとも思えません。

「テレビ利権」はいまだに根強いが、果たしてその将来は?以前の『新聞を「情報源」とする割合は10代以下でヒトケタ台』では、総務省の調査結果を速報的に紹介したものの、記事のなかに盛大な事実誤認が含まれており、その訂正に追われるあまり、続きについて紹介しそびれてしまいました。ただ、ネット上でちょっと興味深い記事を発見したという事情もあるため、あらためて「メディア利権」についての先行きについて、考えてみたいと思います。総務省の調査当ウェブサイトにおける盛大な事実誤認のお詫び以前の『新聞を「情報源」とす...
紙媒体の新聞から10代が離れた - 新宿会計士の政治経済評論

これに対し、ツイッターの場合だと、(デバイスを購入する費用、通信費などを除外すれば)基本的には無料で使用できますし、また、「新聞記者」というバイアスを経由せず、直接、国会議員などから情報を受け取ることもできます。

現時点で判断する限り、和田政宗議員と神奈川新聞の「対立」は、世間一般に言い分が浸透するという意味では和田氏の方が優勢であるように思えてなりません。

ちなみに和田氏のツイッターのフォロワー数は25.6万人だそうであり、神奈川新聞のウェブ版『カナロコ』の公式アカウントのフォロワー数は25.5万人だそうです。なんと、国会議員であるとはいえたんなる個人である和田氏が、新聞社1社の公式アカウントを上回るフォロワー数に達している、というのも驚きです。

ネットに敗北しつつある新聞社

もちろん、インターネットといっても広大ですので、どこまで使いこなすかによってその人がネットから得られる情報というのは変わって来ます。人によってはまったく使いこなしていないというケースもあるでしょうし、人によっては高度な検索でさまざまな情報を得ている、というケースもあるでしょう。

(※ただし、ネットユーザーも限られたサイトしか検索しないようであれば、得られる情報は限られてくるかもしれない、という点には注意は必要ですが…。)

しかし、「紙媒体の新聞しか読んでいない」という人の場合、得られる情報は、基本的にはその限られた紙面に書かれている内容に限られます。すなわち「新聞だけしか読んでいない人」と、「インターネットを使いこなしている人」とでは、情報の格差がそれこそ無限に広がる可能性がある、ということです。

このように考えていくと、神奈川新聞は「自社の紙媒体の新聞しか読んでいない人、自社のウェブサイトに有料契約をしている人」にしか情報を発信していない、ということであり、一般に広く情報を発信している和田議員とは、最初から大きな差がついてしまっている可能性すらあります。

いずれにせよ、少なくとも本件に限定していえば、和田氏のツイートを読んだ人の多くは、神奈川新聞の言い分を知ることができませんので、和田氏の言い分のみを信じるという可能性が高いでしょう。

その意味では、既存メディア(とくに新聞社)が「仲間内」にしか通じない情報発信に汲々としている間に、ネットに敗北しつつあるのだとすれば、これはこれで興味深い話だと思わざるを得ないのです。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 既存の新聞社はこれから、特に政治的偏向傾向が強いトコロ程「身内向けミニコミ誌化」が更に加速していくのですねぇ…

    • 引っ掛かったオタク様

      既にアサヒとかマイニチとか地方新聞は、身内向けのマニアック記事しか
      掲載していませんでしょ? 地方紙では沖縄2誌なんて、アサヒ顔負けです。
      でも、知事からはお褒めになられているようです。

    • >「身内向けミニコミ誌化」

      同人誌とか会員向け雑誌みたいなものですかね?

      • そのようなトコロかと
        バラ蒔かずカネ取ってるところからすると、"アジビラ"とは言えないかなと

  • 今更ですが!
    中共:米ラジオ局約5億円買収工作!
    中国当局ワシントンラジオ局「WCRW」通じ中国中央電視台CCTV国際放送部門・中国国際電視台のプロパガンダ放送毎日12時間流していたこと司法省開示情報でわかった!

  • 最近新聞社や雑誌のWeb記事が有料読者限定記事がやたらと増えましたね
    あれ、国民が記事そのものを読んでくれなくなり自らの情報発信機能を削いでいる様にしか見えないですがどうなんでしょう?
    広告主も有料読者しか見てくれないところに広告費を出してくれるのか?

    • アメリカの報道機関は paywall といってユーザ登録のないアクセスだと記事の一部しか読めないようになってます。壁が浮かび上がってきて読めなくするという仕掛けが普通になっています。
      登録読者限定記事は読者を追跡する目的があります。ですので読ませたくないなら読まないだけと割って自分は読みません。新聞社がどう基準で有料無料を使い分けているのか、有料読者限定記事とはそもそもどういう性質のものか、考えるほどにニヤニヤが止みません。

  • カナロコは、例えて言うなれば「在日外国人である在日コリアンを、日本国民ではなく在日外国人として扱うのは人権侵害である」という政治的立ち位置の似非リベラル紙だと認識してます。

    なので、在日外国人を在日外国人として扱うのは「ヘイトアクション」なんでしょうね、カナロコにとっては。

    私には理解出来ても共感出来ない輩達です。