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自称元徴用工が韓国政府を提訴したのは「焦り」の証拠

日本政府も日本企業も交渉の場に出てこないことに業を煮やしたのか、自称元徴用工側が今度は韓国政府を訴えたようです。しかも、訴えた名目もよくわかりませんが、それ以上に理解に苦しむのは、裁判所が次回弁論期日を(おそらくは政権が交代する)2022年5月に指定したことです。韓国で三権分立がまともに機能していないのではないかという仮説の説得力が増すゆえん、というわけです。

自称元徴用工問題は国際条約破り

韓国の最高裁に相当する「大法院」が2018年10月30日と11月29日に日本企業に対し、損害賠償命令を下したこと(いわゆる自称元徴用工判決)は、現在の日韓関係において法的基盤を覆しかねない状況をもたらしています。

1965年の日韓請求権協定により、1945年8月15日以前に生じた日韓間の債権債務関係に関しては、お互い、いかなる請求もできないことが規定されているからであり、自称元徴用工判決自体がこの請求権協定の規定に反する状態を作り出しているからです。

したがって、日本政府、日本企業、日本国民としては、この判決を是認するわけにはいきません。

もしも日本企業がこの判決に基づいて自称元徴用工に1円でも支払ってしまえば、そのことによって日本企業がみずから日韓請求権協定を破棄したことになってしまいかねませんし、また、自称元徴用工やその遺族らが、その後も次々と日本企業を訴えることにつながりかねないからです。

(※もっとも、韓国メディアの一部の報道によれば、2018年10月30日から3年を経過すれば、時効の関係で新たな訴訟を起こすことはできなくなる、といった情報もあるようですが、このあたりの情報についてはそもそも法治が機能しない韓国のことですので、あまり信頼に値しない気がします。)

その意味において、この問題は本来、「日本企業と自称元徴用工の関係」ではなく、「日本政府と韓国政府の関係」で処理しなければならない筋合いのものなのです。

といっても、2019年に日本政府が日韓請求権協定に基づいて韓国に問題の是正を申し入れた際に、韓国が協議、仲裁などの手続をすべて無視したことで、韓国による「二重の国際法違反」が確定してしまっているため、日本政府には正直、これ以上できる努力はない、というのが現状に近いのかもしれません。

韓国自身にとっても困ったことになりませんかね?

ただ、世の中で案外意識されていない話ですが、じつは、この自称元徴用工判決自体、韓国にとっても非常に困った状況をもたらしています。

もしも韓国が日韓請求権協定違反をに基づく「1945年8月15日以前の債権債務関係をお互いに請求することができない」という状態を否定するのであれば、韓国自身が日本から日本統治時代のインフラ等の整備費用を請求されても文句は言えない、ということです。

このあたり、残念ながら、日本では『財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律』において、韓国への請求をすることはできないとされています(同第2項)。

ただ、韓国が法を守らないのであれば、仮に日本が国会で同法を廃止するなどすれば、日本も韓国に対して莫大な請求権を行使することができるのかもしれません(※もちろん、日本が外国に対し、そんなことはしないとは思いますが…)。

自称元徴用工が韓国政府を訴えた?

その一方で、自称元徴用工問題を巡り、ちょっとした「変わり種」の話題も出て来ました。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の次の記事によると、自称元徴用工側は、今度は韓国政府をも訴えることにしたのだそうです。

徴用被害者「損害賠償裁判を遅延・取引」…韓国政府相手の訴訟が開始

―――2021.11.17 14:25付 中央日報日本語版より

中央日報によると、自称元徴用工やその遺族らは、「強制徴用損害賠償裁判遅延・取引」疑惑を根拠に、国に損害賠償を求める訴訟を始めたのだそうです。

そもそも論として、日韓請求権協定は「日本に対して」請求することができないとする協定であり、韓国国内で「強制徴用された」と自称する者たちが韓国政府を相手取っていかなる訴訟を起こすのも自由でしょう。

ただし、この中央日報の記事を読むうえで注意しなければならないのは、今回の自称元徴用工側は、「強制徴用」そのものに対する損害賠償を求めているのではなく、韓国国内の訴訟手続の遅延によって損害が生じたと主張している点でしょう。

その意味では、アプローチが誤っていると言わざるを得ません。

三権分立は韓国では機能しない

しかも、今回の訴訟については、第2回目の弁論期日が2022年5月に決まったそうですが、奇しくも2022年5月といえば、文在寅(ぶん・ざいいん)現大統領が青瓦台を去る時期でもあります。

しかも中央日報によれば、現在、「裁判遅延疑惑」を含む「司法行政権乱用容疑」で梁承泰(りょう・しょうたい)元大法院長や林鍾憲(りん・しょうけん)元法院行政処次長らが起訴された関連刑事訴訟が数年前から進行中とのことです。

そして、中央日報はこう述べます。

裁判所は梁元大法院長と林元次長の1審裁判が終わるまでこの事件の訴訟を中止した状態で置くのは難しいという。今後も相当な時間がかかると予想されるからだ。ひとまず裁判所は6ヵ月後の2022年5月に2回目の弁論期日を開くことにし、その時まで関連刑事事件の推移を見守ることにした」。

どうしてハッキリ、「梁承泰氏、林鍾憲氏に対する訴訟が政治的なものだ」と書くことができないのかがよくわかりませんが、韓国で三権分立がまともに機能していないことを認めたくないからでしょうか。

いずれにせよ、今回の訴訟も、韓国の裁判所が政治から独立していない証拠でしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、今回、自称元徴用工側が韓国政府を訴えたことは、自称元徴用工側が「徴用工利権」の確立に失敗し、焦りを感じているという証拠でもあるのかもしれません。

当ウェブサイトでは当初から一貫して申し上げてきたとおり、自称元徴用工側の訴訟や資産差押などを含めた一連の行動は、日本企業と交渉して何らかの「財団」などを作らせ、日本政府からの謝罪を引き出すことを目的としている、という意味で、まさに自称元慰安婦問題の「二番煎じ」を狙ったものでしょう。

しかし、売れない資産をわざと差し押さえて「売却スルスル詐欺」を繰り返すなどしているにも関わらず、日本政府も日本企業も、自称元徴用工側が求める「謝罪」「賠償」に応じず、それどころか交渉の場にすら出てこないという状況が続いています。

この状況を放置して困るのはむしろ韓国の側ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (19)

    • りょうちん様

      または「三権文律」かも知れませんね。

      三権を超越し、絶大なる権力を有する大統領に
      後先も考えずに突っ走る上、
      結果責任も取らないおバカを選んだとしたら,
      こうなるだけよという、後世に残すべき金言?(笑)

    • 政権に忖度してるわけですから、分裂ではなく与党独裁では?
      立法と行政が捻じれていれば歯止めもかかりますが、今は法律も左派に都合の良いように作られてますからね。

    • りょうちんさま
      文在寅の文を取って「三権文立」が、トレンドニダ。

  • 韓国の今の政権にとっては困ったことにならないでしょう。
    次の政権がこまったことになるのですから、次の大統領が保守になりそうだからじゃないですかね。
    慰安婦合意にしても、前政権の約束だから守る必要は無いと反故にするチンピラ国ですから、次の政権が保守系になりそうなら、いきなりダメージをあげるためにそれくらいはするでしょう。
    結局は国の信用を無くすことになるのだけれで、そんなことは今の政権も全く考慮してませんから。

  • 韓国の裁判のいい加減な所は、嘘で訴えて嘘の証言をする、裁判所はそれを証拠とする、その上裁判官の買収、社会的地位の濫用、政治家による介入など(他に有る方どぞ)、日本の裁判とは異質で先進国のそれとは思えません。
    古いけど、カイカイさんから
    韓国人「韓国の虚偽告訴罪は日本の542倍」→「デタラメ言うな!1250倍である」
    http://blog.livedoor.jp/kaikaihanno/archives/45807038.html
    誣告罪、偽証罪については、日本の数百倍で大勢は、当時から変わっていません。
    どんな判決が出ても、嘘混じりの裁判で、相手にする必要は有りません。

    韓国人の言い訳は
    韓国人と嘘のDNA…詐欺犯罪率は先進国トップ、教科書で「嘘はNG」と教えず
    https://www.dailyshincho.jp/article/2020/08251700/?all=1&page=1
    まともな話を書いてますが、信用してはいけません。

  • 文在寅政権高官が「司法判断に行政が介入することはできない。だから、政府にできることは何もない」と言い放った時、そしてその発言に対して異を唱える声が全く聞こえてこなかった時、韓国人が三権分立の意味と目的を全く理解していないことを確信しました。

    なぜ三権はそれぞれ独立していなければならないのか? 言うまでもなく、相互に監視し、暴走を抑制するためです。従って、「司法の暴走」に対し、行政と立法はその是正を行う義務があります。その義務を果たせないのであれば、三権を分立させる意味などありません。
    「司法判断に行政が介入すべきではない」というのは、そこだけ見ればけして間違いではありませんが(韓国人の判断はそこで止まっている)、その司法判断が、例えば国際法などに反している場合、韓国の国益にとってマイナスである場合、行政府または立法府がその是正を行おうとして、はじめて三権分立が機能していると言えるのです。「是正」を行わないのであれば、行政府も立法府もその司法判断を支持していると見做されます。それに伴う「結果」については、韓国という国家が背負うよりありません。是非とも、韓国という国家に責任を取ってもらいましょう。

    • 龍様、

      全く仰る通りなのですが、「三権分立とは、互いに干渉しないことだ」というロジックはシンプル故に主張しやすく、また一般人は信じやすいのです。

      韓国はこういう間違ってるけどシンプルなロジックを多用してきますよね。言い合いになった場合、その方が宣伝効果があるとわかってるからかもしれません。

      • 件の判決を主導した大法院長は、文在寅政権の大抜擢によりその椅子に座った人です。従って、件の判決も青瓦台の意を大いに汲んだものと考えても、それほど外れてはいないでしょう。さらに遡ると、件の案件を高裁に差し戻した何代か前の大法院長は、「法理はともかくとして、歴史を書き換えるために差し戻した」と明言しています。そういった背景を踏まえ、さらに文在寅大統領が弁護士上がりであることを考えると、専門職たる法曹がそのレベルであるならば、韓国社会に近代法の精神が全く根付いていないことは明白です。

        文在寅大統領が「三権分立だから司法判断に干渉できない」と言い放った時、文大統領が本気でそのように考えていたのか、それとも、そう言っておけば愚民どもを騙すには十分だと思っていたのかはわかりません。
        文大統領が本当に三権分立の意義を理解していなかった場合、「司法判断は絶対的なのだから、日本政府も従って当然だ」と考えていた可能性がありますし、愚民どもへの目晦ましだと思っていたのであれば、「そういっておけば、日本政府や日本人も騙せるに違いない」と考えていたのかもしれません。しかし、少なくとも日本政府は「三権分立だから行政は何もできない」という韓国政府の戯言を一切取り合いませんでした。結果的に自縄自縛となった韓国政府は、「つーとらっく」など話を逸らすのに懸命になっています。わざわざ自分たちの意を汲んでくれる(はずの)大法院長を起用した甲斐もなかったわけです。
        韓国政府は、というか文在寅政権は、もはや全く身動きが取れない状態となりました。おそらくこのまま何もできずに次期政権に丸投げすることになるでしょう。今頃になって慌てて日本との対話をいろいろと試みようとしていますが、日本側からは一切取り合ってもらえず、「対話」すら拒絶されています。皮算用がすっかり外れてしまったツケは、けして安くはないのかもしれません(そうであってほしい)。

        しかし、「三権分立だから行政は何もできない」という韓国側の戯言に乗っかる「良心的日本人」はほとんどいませんでしたね(*)。日頃政府を罵ることに血道をあげてるマスメディアですら、「対話」を訴えるのがせいぜいで、それ以上の主張はできませんでした。良い傾向だと思います。

         (*) 名古屋あたりで騒いでた人たちがいたようですが......

    •  少なくとも、日本を巻き込んでしまった時点で、この問題は外交問題と化しています。外交問題を解決するのは、外交権を持つ政府の役割で、「司法の判断に、政府は介入できない」という韓国政府の態度は、確実に外交権の放棄であり、政府であることを辞めてしまったことを意味します。韓国政府には、外交権の当事者としてこの問題を解決する責任があったのですが、責任を放棄した時点で主権国家であることを、辞めてしまいました。
       まぁ、韓国政府に当事者能力を期待する方が無理と言えば、その通りなのかも知れませんが。

  •  これは、いよいよ「自称元徴用工利権」の崩壊(即ち『仲間割れ』)が始まったのでしょう。
     「自称元徴用工」の原告達は、3年前に韓国大法院で勝訴の確定判決を勝ち取り、勝利の雄叫びを上げたものの、敗訴した被告の日本企業から賠償金を未だに受け取れていません。恐らく、韓国大統領府から、差押財産の現金化にストップを掛けられているのだと思います。
     一方で、原告達は原告代理人弁護士や裁判所に対して、相当額の弁護士費用や訴訟費用を支払っているはずで、このままでは何のために裁判をしたのか分かりません。
     そこで、「日本企業から金を受け取れないのであれば、韓国政府から取ってやれ」という考えだと思います。その証拠に、韓国政府に対する請求額が1億100ウォン(約970万円)と、日本企業から勝ち取った賠償金1億ウォン(約1000万円)とほぼ同額です。
     一方で、来年2月の大統領選挙で野党(国民の力)の尹錫悦候補が勝利すれば、文在寅大統領に任命された現在の金命洙大法院長が罷免されることは確実で、担当する裁判官も保身のために、次回弁論期日を次期大統領が就任する来年5月に設定せざるを得ないということでしょう。
     日本政府は「高みの見物」で良いと思います。

  • 出典があまりに前だったので記事引用できかねますが、日韓合意から大統領弾劾を経て文政権になる過程あたりで、日韓基本条約をきちんと理解する戦時徴用の際の未払い賃金とその謝罪を求める韓国人の古老数1000人が正しく韓国政府を相手どって起こした裁判ってどうなったのか、全く続報がありません

    敗訴でも無さそうでしたし、却下されたのかな…わからん。

    でも、戦時中イカゲー奴隷幸福会年齢平均七十代の北のパ乞食訴訟で日本企業資産差押え判決が出た頃を記事に「別に韓国政府に対し訴訟を起こしていた徴用工も2000人は合流するとみられている」とか韓国の記事にあった!

    活動家・運動圏の裁判が韓国政府を訴える裁判より最優先なのはなぜなんだ?
    全部韓国国内で完結する裁判は放置しているとしたら、正しいおじいさんたちかわいそうじゃないか?

  • 法治をするには資格があります。
    法律があっても、誰も守らず、守らなくても誰もオカシイと思わなければ 法による統治が出来るわけないのです。

    例えば、偉い人が法を侵して 裁判官が その地位を考慮して無実としたとしましょう。
    その時に 民衆が納得する。
    つまり民衆は法より上の何かがあるのです。

    その国民にとって、法とは その身分により守っても守らなくても関係なく、大事なのは人間関係なのです。

    法律は、国民全てに平等に使われて初めて法治が実行されるのです。
    つまり平等がない国に、法治は根付かないのです。
    そして平等が理解出来るのは、人の上に上位存在がある文化に属する人にしか無理です。

    今韓国では、被害者は上位存在なので、法律を使って自らの欲望を満たそうとしているのでしゃう。

  • 原告らを日本側から煽ってあげてさっさと現金化に誘導するのが吉です.

    日韓関係が修復不可能な形で完全に破綻することこそが,長期的に見れば日本にとっては限りなく大きなプラスになるのですから.

    言い換えれば日韓関係が続いている限り,用日によって際限なく韓国にたかられ続けるリスクを日本は一方的に負っているというのが現実なのです.

    この際限ないリスクを無くするには,韓国を永久に日本から切り離さねばならず,それは韓国側から日韓関係を破綻させてしまうことでしか実現出来ません.

    • 1940年頃の韓国の地図というので、日本や台湾、中国東北部が赤く塗られた地図があります。
      コメントをみると、どうも『日本が負けずに同じ国でいた方が、俺達幸せだった』と、反日よりも恐ろしい同(化)日(本)連中が一定数存在するみたいです。
      この同日が、多数派になる前にキッパリさっぱり縁を切れるようにすべきです。

    • バシラス・アンシラシスは土壌常在菌様

      未払い賃金を日本に請求しているのではありません。
      既に日本と南国との条約で決済済みであり、南国が個人に必ず支払いする
      からと、日本が南国に一括で支払いしております。
      今南国で行っている「いわゆる徴用工」裁判の問題は、「集団就職」で就職できた
      人達が、何故両班たる私を働かせたな!!という事を今になって怒っているのです。
      働かせる事は拷問だと言っているのです。強制でも徴用でもありません。 
      又、第二次大戦中現在の中学校卒業程度の日本の少年・少女も勤労奉仕で
      各種工場で生産に携わりましたが、会社での扱いは彼等少年少女より、
      朝鮮半島出身労働者の方が待遇が良い状況でした。
      という事は、現在日本で働いている南国人が何年かすると、同じ理由で
      日本に対し訴訟する事になります。(理由は同じです)

  • お疲れさまです。
    丁寧な無視戦略が、少し効いている気がいたします。
    裁判所も、今度の大統領に丸投げと態度を表明いたしました。
    解決に前進がみられても、 今度の大統領だけの期間であると必要以上の接近はせず、警戒レベルを一つ下げるぐらいで隣国とのお付き合いを希望いたします。

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