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メディアの意識は一般社会常識と比べ遊離していないか

先日から当ウェブサイトで取り上げている、厳冬期に徒歩で北海道を目指そうという沖縄の青年の話題については、結局、ご本人がその挑戦の無謀さを理解したうえでいったん中止にするという結末を迎えたようです。未来ある若者が命を落とすことにならず、まずはホッとしている次第ですが、その一方で、この一見ささいな(?)騒動の背景には、やはり「メディアのセンスが社会常識と著しく遊離している」という問題があるように思えてなりません。

無謀旅行騒動の顛末

冬の北海道に徒歩で挑む沖縄の若者に辛辣な大人の意見』や『真冬の北海道野宿計画を「美談」にしたメディアの責任』では、「気候が厳しくなるなかで、無謀にも、沖縄の若者が徒歩で北海道に向かおうとしている」、とする話題を取り上げました。

若い人の挑戦は、素晴らしいと思います。著者自身も若いころ、ずいぶんといろんなことに挑戦したつもりですし、とにかくやりたいことをやりたいようにやるのは後悔しない(かもね)、と言いたい気持ちもあります。ただ、「若さ」にかまけて、あまりにも無計画で無謀なことをやるのはいかがなものかと思ってしまうのも事実です。沖縄の18歳が「今から」真冬の北海道まで徒歩で出掛けると聞くと、どうもおそろしい気持ちになってしまうのです。旅行の思い出著者ごときが若い人たちに偉そうに教えを垂れる立場にはないという点は承知して...
冬の北海道に徒歩で挑む沖縄の若者に辛辣な大人の意見 - 新宿会計士の政治経済評論
先日の『冬の北海道に徒歩で挑む沖縄の若者に辛辣な大人の意見』で取り上げた若者の日本列島縦断という話題を巡っては、その後も北海道在住者などを中心に、「無謀だ」、「せめて時期を選んでくれ」、といった悲痛な意見が寄せられているようです。ただ、個人的な見解ですが、おそらくこの方は北海道に上陸すらできずに、下手をすると西日本を抜けることもできずに旅を終えるのではないかという気がしてなりません。こうしたなか、もうひとつ気になるのが、この無謀な計画をあたかも美談であるかのごとく報じたメディアに責任はないの...
真冬の北海道野宿計画を「美談」にしたメディアの責任 - 新宿会計士の政治経済評論

当ウェブサイトで2回にわたって取り上げた以上、その「顛末」についても報告しておく義務があります。

ご本人がインスタグラムに画像ファイルを投稿し、どうもこの旅行の中止を宣言したようなのです。

(※なお、インスタグラムの画像は埋め込むためのコードが無駄に膨大であるため、埋め込みについては省略します。)

宣言文をわざわざ画像ファイルにして投稿するというあたり、個人的には大変な違和感もあります(というか、めちゃくちゃ読み辛いです)。

また、埋め込みコードの都合上、インスタグラムではなく、せめてツイッターに投稿してくれた方がマシだとは思うのですが、この点はとりあえず脇に置きましょう。

誠実な発言

ご本人の宣言を当ウェブサイトなりに修整・要約すると、こんな具合です。

  • 厳冬期である12月から1月にかけ、日本海側や北海道を辿るという行程は、雪道を走行するドライバー、地元の方々などに多大な迷惑を掛ける行為であることを実感した
  • 旅はあくまでも趣味の範囲内のものであり、費用もちゃんと時間を取って働いて稼ぐべきものであって、クラウドファンディングを利用すべきものではないため、支援してくれた方々に対しては直接連絡を取り、返金したいと思う
  • 旅は人に迷惑をかけないことを大前提すべきであり、今回の旅はいったん中止する

…。

そのうえで、この方は末尾をこんな文章で結んでいます(※原文ママ)。

僕の無計画で無責任な行動のせいで、沢山の人にご迷惑をおかけしたことを、とても深く反省しています。本当に申し訳ございませんでした。

文章の公表の仕方はともかくとして、内容自体は大変にまっすぐで真摯なものではあります。

いずれにせよ、ちょうど厳冬期に入る時期にわざわざ日本海側などを経由して北海道を目指すという、およそ常識ある大人であればだれであれ「無謀だ」と断言するような旅行をとりやめてくれたことについては、「大変によかった」と、個人的にはとりあえず歓迎したいと思う次第です。

メディアの責任は?

もっとも、「本人が無謀な旅を断念しました」、では済まされないのは、やはり、メディアの責任でしょう。

日本縦断2800キロを徒歩で挑む 18歳の比嘉さん、きょう波照間を出発

―――2021年10月22日 10:14付 琉球新報より

沖縄の18歳が日本縦断2800キロを徒歩で挑む理由 きょう日本最南端の波照間島を出発

―――2021/10/22 12:39付 Yahoo!ニュースより【琉球新報配信】

誰の目から見てもこの無謀な挑戦を巡り、琉球新報の元記事を読むと、「知識がある大人ほどとめてくる」、「両親にも反対されたが、●●さんは諦めなかった」(※あえて実名は伏せておきます)と、まるでこの無謀な挑戦を止めることが「悪いこと」であるかのように記載されています。

この点、昨日の記事では、プロから見れば「素人」レベルの登山家が明らかに無謀な挑戦をした結果、命を落とした事例を取り上げたところ、読者コメント欄では、1990年代に風呂桶に風船を括りつけて米国に向かい行方不明になった男性の事例が紹介されていました。

何でもかんでも、メディアが悪い、というつもりはありません。

しかし、少なくとも今回の事例に関しては、「北国では冬の寒さで命を落とすこともある」、「無謀な行動で周囲に迷惑を掛けることがある」といった、ちょっとした社会常識があれば誰でも気付くはずのことに、新聞記者が気付いているフシがない、という点を重く受け止める必要があります。

新聞社は世間の常識から遊離していないか

そういえば近年、いわゆる「新聞紙」の社会的影響力が急低下しているという話題は、今朝の『紙媒体の新聞から10代が離れた』でも取り上げましたが、少し厳しい言い方をすれば、これは新聞という「紙媒体」の問題ではなく、新聞業界で働く人々の意識の問題であるように思えてなりません。

「テレビ利権」はいまだに根強いが、果たしてその将来は?以前の『新聞を「情報源」とする割合は10代以下でヒトケタ台』では、総務省の調査結果を速報的に紹介したものの、記事のなかに盛大な事実誤認が含まれており、その訂正に追われるあまり、続きについて紹介しそびれてしまいました。ただ、ネット上でちょっと興味深い記事を発見したという事情もあるため、あらためて「メディア利権」についての先行きについて、考えてみたいと思います。総務省の調査当ウェブサイトにおける盛大な事実誤認のお詫び以前の『新聞を「情報源」とす...
紙媒体の新聞から10代が離れた - 新宿会計士の政治経済評論

記者クラブ制度、再販売価格維持制度、消費税等の軽減税率といった社会的な優遇措置をいくつもいくつも受けた結果、最低限の社会常識すら身に着けていない人たちが新聞記事を書き、そしてそうした人たちが経営者になる結果、業界としても腐敗が進む」――。

そういえば、「北海道」に関しては、もうひとつ思い出す事例があります。

それは、自社の記者が不法侵入により私人逮捕された件についての自社内での調査報告書を公表したものの、その報告書を登録読者限定でしか公表せず、しかも記事に「noindexタグ」を付けたという、北海道新聞社という事例です(『社内調査報告記事にnoindex設定した北海道新聞』等参照)。

「noindexタグ」を仕込む北海道新聞に「国民の知る権利」を騙る資格はない以前の『許されない違法取材:新聞記者、建造物侵入容疑で逮捕』で、北海道新聞の記者として勤務する22歳の女が建造物侵入容疑で逮捕された、とする話題を取り上げました。これに関する北海道新聞社の調査報告書が掲載されたらしいのですが、ここで極めて不自然な点が2つあります。それは、検索エンジンに引っかからないことと、会員登録しなければ記事自体が読めないことです。違法取材・建造物侵入者逮捕事件の「その後」以前の『許されない違法取材:新聞記...
社内調査報告記事にnoindex設定した北海道新聞 - 新宿会計士の政治経済評論

北海道新聞社と琉球新報社という、地理的には遠く離れている2つの新聞社には、しかし、「世間一般の常識から遊離しているのではないか」という点では共通点があるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (20)

  • 新聞社の人は次のように考えているはずです。
    「何か無謀な旅を計画している若者がいる」ーー>珍しい若者がいるというニュースにしよう。
    「旅が苦難の末、成功した」ーーー>美談としてニュースにしよう。
    「旅は、無謀すぎて不幸な結果になってしまった」ーー>事件としてニュースにしよう。
    いずれにしてもニュースにできるな、よしよし。

    • 人の生死より
      金になるか、ならないか、でしか見てないのが丸分かりですね。

    • 勘違いしている人が多いですが
      ネズミーマウスは 「夢を与えている」のではなく「夢を売っている」のです
      同じく民間マスコミは「情報を正しく報道する」のではなく「情報を加工して販売」しているのです

      メディア淘汰されているのは
      偏向報道しているからではなく、売れない情報を販売しているからです

  • 眞子さまの話を見ると、紙媒体によらずマスメディアに問題が多かったと思います。
    「ネタ」に角度を付け過ぎで、事実と異なる様な印象付けする報道姿勢が、マスゴミと言われる所以だと思います。

  • 謝罪文を画像で出すのは目的として「検索よけ」があります。
    企業とかなんちゃら団体のような謝罪慣れしている所は最近この手法を使う事が多いですが、
    今回の件で一個人がこのやり方使った事に少し不審点を感じて居ます。
    何かバックに胡散臭い団体がいるのかと勘ぐってしまいます。

  • まあ、意固地をやめて人の厳しい意見を受け入れようとしただけ、「とある退学生」よりはましですね。

  • ちょっと論点がずれるけど・・・・・

    >支援してくれた方々に対しては直接連絡を取り、返金したいと思う

    本人の決断だからとやかく言うのは野暮だけど、返金なんかする必要あるのかな?

    クラウドファンディングを募るときどの程度計画を示してたのかわかんないけど、お金を出す人がいなければ、そもそも計画がスタートしてなかったんじゃないかって思うのです♪

    そう思うと、
    >ちょっとした社会常識があれば誰でも気付くはずのことに、新聞記者が気付いているフシがない、という点を重く受け止める必要があります。
    というのは、新聞の中の人だけじゃなくて、こんな計画にお金を出した人や、出資を募ることを認めたクラファンの中の人にも言えると思うのです♪

    こんなことを言うと、みんなが悪いみたいな言い方になっちゃって、あんまし建設的じゃないかもだけど、頭をよぎっちゃうのですm(_ _)m

  • 帰って来たようですね。英断、英断。メディアに祭り上げられたら後だと辞めるに辞められないので撤退の決断は知性がある証だと思います。
    加えて謝罪文も中々、的確にポイントが抑えられていて近年稀に見る名謝罪だと感心しました。

    最も、−がゼロになっただけですので「無計画会計士少年」の汚名は返上出来ていなので、今後の行動で名誉挽回してもらいたいものです。

    コロナ禍で会計の勉強をしているのと、精神が来るみたいですね。学生も適度に体を動かさなければいけません。

  • 放火して火災現場を取材した人がいたはず

  • 成功したらしたで自由若者の闘志を讃え「それにつけても日本の息苦しさよ…」

    死んだら「自由若者の移動さえままならない、日本は国民の命を軽視している!生命維持インフラの崩壊!」

    今回のように事前に止めたら「集団圧力が若者の自由な発想や生き方を規制するファシズムの浸透した日本は滅ぶ」

    どう転んでも我田引水しながらマスコミ自体は儲けてウハウハ。

    国境の無い記者団とかの国境の無い医師団のパクり組織ですら指摘する記者クラブなんて、既存マスコミの利権であって国や自治体は負担が大きくて止めたがってる。
    常設の会場に飲食設備や会員各社別の電話回線だのインターネット環境だの電源だの設置することを「報道の自由」「知る権利」とか持ち出して要求。

    再販制度だから仕方ない、売れなかった新聞は本社に返品すれば現金の代えられますよ販売店さん?

    新宿会計士様のサイトへの書き込みは最近スキマ時間でスマホから(ゆえに誤字脱字が酷い…と言い訳する)アクセスしてますが、PCで拝読すると、Amazonの洒落か嫌がらせか?新聞紙をネット販売する広告が表示されます。
    あれ買って本社に売ったらどうかな?
    表示価格の仕入れ価格で新聞発行社は買い取る義務が生じるのでは?
    再販制度なんだし。

    一番悪質なのが税制優遇。
    自由な報道や憲法で保証された知る権利を言うなら特定のマスコミだけ特別税制なのを本来拒否する立ち位置なんじゃないのかな

    根っ子は朝日の本多勝一あたりから始まったんですが「事実では無く『真実』を報道するのがジャーナリズムだ!」の綺麗事から、感化されたジャーナリスト個々が作文や自己政治思考思い込み小咄や創作を「報道」と称して書き散らかし始めた事と松田剛健あたりが「編集工学」とか言い出して見出しや記事で読者の心理操作始めて大文字感出してる状況(本多勝一や松田剛健のやり方ってゲッペルスの方法論じゃないか?)で根は深い闇。

  • 中止されたとのこと、とりあえずはホッとしました。
    つまらんことで命を賭することもないので。
    琉球新報は話題になって良かったなんて思ってたら、本当にゲスいなと感じます。ご本人も仰っていた、【良識ある大人】の範疇でなかったということでしょう。どこかの政党のようですが。
    かつての上司が熟慮せずにお伺いにいくと「よく考えればわかること」と言っていましたが、まさにそれだと思います。これを糧に変な大人の喰い物にされない知恵をつけて頂ければいいのではないかと思う次第です。

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