「慰安婦合意を破ったとは言ってない、合意の枠組み内で日本を説得しているだけだ」
当ウェブサイトで、自称元慰安婦問題については2015年12月の「日韓慰安婦合意」により「最終的かつ不可逆的に解決済みだ」という話題を、それこそ何百回と繰り返してきました。こうしたなか、『韓国長官「現実的かつ合理的な方策を日本側と協議中」』でも触れた韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官の国会答弁という話題に、「続報」がありました。「慰安婦問題はすでに解決済みだ」という点を、鄭義溶氏自身が理解していないのです。
鄭義溶氏の噴飯物の発言
『韓国長官「現実的かつ合理的な方策を日本側と協議中」』では、韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官(※外相に相当)が韓国の国会の監査で、日韓関係についてこんな趣旨のことを答えた、とする話題を取り上げました。
- 原則を守る方法と、これと連携し、韓日関係をより未来志向的に発展させるいくつかの現実的かつ合理的な方策を模索しており、日本側とも協議中だ
- 日本との対話には最近、一部進歩がある
- 歴史問題に関しては慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復する問題、強制徴用被害者の権利補償問題が大きな原則だ
- この原則が崩れた形で日本と協議することはできない
昨日の『三菱重工の即時抗告と日韓膠着打開の「テーパリング」』でも触れましたが、日韓関係を巡り、このところ韓国側では「事態収拾に乗り出さない日本」に対する不安の声のようなものが見えて来ました。ただ、韓国の外交部長官は、この期に及んで「日本との協議が必要だ」、などとする認識をお持ちのようです。韓国メディアの報道によると、鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官は21日、「原則を守りつつ韓日関係をより未来志向的に発展させるいくつかの現実的かつ合理的な方策を日本側とも協議中」、「一部では進歩がある」、などと述... 韓国長官「現実的かつ合理的な方策を日本側と協議中」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
端的に申し上げて、「お話にならない」というのは、こういうことを指すのでしょう。
そもそも論ですが、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題には、本質的には①国際法・条約・約束違反、②韓国側による歴史捏造、という2つの特徴があり、いずれも「謝罪せよ」「賠償せよ」といわれても、私たち日本にとってはとうてい受け入れられない代物です。
この2つの論点、当ウェブサイトとしては敢えて「②韓国側による歴史捏造」という事実についても無視してはならないと考えていますが、日本政府がメインで主張しているのは、このうちの「①国際法・条約・約束違反」の部分です。
ただ、日韓慰安婦合意から6年、自称元徴用工判決から3年が経過するなか、韓国政府の反応を見る限りにおいては、日本政府がとくに強調している「国際法・条約・約束違反」に関しても、どうも韓国政府側にはまったく刺さっていないように見受けられます。
結局のところ、もし日韓関係を今後も健全に継続していくならば、韓国が国際法違反、条約違反、約束違反をやめてくれなければどうしようもできません。
いつもの「政治決着」として、日本が韓国に折れる、という形の解決もできないではありませんが、この場合は日本が国際法・条約・約束をみずから破っているのと同じことでもあるため、当ウェブサイトとしては「日本が原理原則を捻じ曲げる」かたちでの政治決着には強く反対している、というわけです。
鄭義溶氏の発言に「続報」があった
もっとも、現在の韓国政府の姿勢があまりにも「お話にならない」というのは、次の記事でも確認できます。
韓国外相「日本が和解・癒やし財団への拠出金の残額の使用に反対」
―――2021-10-22 07:16付 ハンギョレ新聞日本語版より
こちらは韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載されたもので、今朝方取り上げたのと同じく鄭義溶氏の21日の国会答弁について紹介したものと思われますが、新しい内容が紹介されています。
鄭義溶氏は、日韓慰安婦合意に基づいて設立された財団の残余資金・56億ウォンを巡って、これを「被害女性」(※自称元慰安婦のこと)を「記念できる事業」に使おうとしたところ、日本政府からは「他の目的で使ってはならない」として反対されている、と明らかにしたのだそうです。
どうして鄭義溶氏がこんなことを述べているのかといえば、おそらく日本政府側からは、韓国側が日韓慰安婦合意に従って設立した財団を一方的に解散したことについての「事情説明」あるいは「事態収拾」を求められているからではないでしょうか。
そして、今朝も取り上げた、鄭義溶氏が「日本とさまざまな案について協議してきた」と述べた内容については、じつは、この慰安婦財団の残金の使途も含まれていた、ということでしょうか。もしそうだとしたら、思わず頭が痛くなる内容ですね。
焦点は「慰安婦財団の残金」
ハンギョレ新聞によると、鄭義溶氏は自称元慰安婦のなかに財団からの資金を「受け取らない」と拒否した者がいる点などを踏まえ、次のような「現実的な案」を「引き続き日本と協議している」と述べたそうです(用語については当ウェブサイト側にて一部修正しています)。
- 男女平等基金の名目で韓国側が100億ウォンの基金を作り、そのまま日本に送る
- 10億円と基金の残金56億ウォンをあわせて自称元慰安婦らの記憶事業のために使う
- 日本が心から謝罪した場合、自称元慰安婦らに補償として支払う
この点、2015年12月の慰安婦合意のポイントを改めて振り返っておくと、問題の10億円は、日本政府が「(自称)元慰安婦の支援を目的として韓国政府が設立した財団に」拠出したものであり、それ以外の目的に使うことができるはずなどありません。
【参考】いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
- ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
- ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
- ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
- ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。
(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)
ハンギョレ新聞は、鄭義溶氏自身が今年4月、自称元慰安婦問題を巡る日本政府との交渉過程で、「非常に現実的な代案を示したが、日本側は一貫して自分たちの主張だけを繰り返した」と述べ、「注目を集めた」ものの、「具体的な協議内容」は明らかにしなかった、としています。
今回の鄭義溶氏の国会答弁は、その具体的な協議内容に初めて踏み込んだという意味では画期的なものでしょう(というよりも、外交交渉を国会の場でベラベラ喋ってしまうという時点で、なにかと驚いてしまうのも事実ですが…)。
最終的かつ不可逆的に解決済み
いずれにせよ、日本が求めているのは「2015年12月の日韓慰安婦合意の着実な履行」です。
極端な話、韓国政府が「この慰安婦合意により、(自称元)慰安婦問題については最終的かつ不可逆的に解決された」、「わが国は金輪際、(自称元)慰安婦問題を日本政府の前で話題に出さない」と宣言し、それを守る、という形でも良いかもしれません。
あわせて、今年1月8日に韓国の地裁が下した、日本政府に対する自称元慰安婦らへの損害賠償命令判決についても、韓国の国家としての責任において、無効化しなければなりません。
こうした基本的な解決策に言及がない時点で、鄭義溶氏の答弁は「ゼロ点」です。
こうしたなか、ハンギョレ新聞の記事には、こんな記述もあります。
「チョ議員とチョン長官(※)は同日、被害者問題が解決していないことについて、『原罪』がどこにあるのかをめぐって舌戦を繰り広げた」(※「チョン長官」とは鄭義溶氏のことと思われます)。
ハンギョレ新聞さん、ウソを書かないでください。
自称元慰安婦問題は、すでに「最終的かつ不可逆的に解決しています」。
しかも、鄭義溶氏は「文在寅政権は2015年慰安婦合意を破るとは一度も言ったことがない」と述べていますが、その直後に「合意の枠組み内で日本を説得し続けている」とも言い放ちました。
それを、国際社会の常識では「合意を破った」と言うのですよ。
『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも紹介した、韓国観察者の鈴置高史氏が7月16日付『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で述べた次の内容は、本当に至言です。
「平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。
文在寅氏「ブラックスワン・ストーカー」説、いつにもまして辛辣な小気味よさ巷間「日韓関係の特殊性」に関して議論する人はいますが、じつは特殊なのは「日韓関係」ではなく「韓国」だったと指摘されれば、思わず目からウロコが落ちるという思いをすることができます。日本を代表する鈴置高史氏が昨日、『デイリー新潮』に寄稿した最新論考では、文在寅氏が日韓首脳会談に拘る理由――「ブラックスワン・ストーカー説」――について、あらためて丁寧に説明されています。どうなった?「文在寅氏の訪日」論文在寅氏は日本にやって来るの?... 鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及 - 新宿会計士の政治経済評論 |
本当にたちが悪いのは、平気で約束を破っておきながら、自分たちがその約束を破ったという自覚すら持っていない、という点なのでしょう。
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>鄭義溶氏は「文在寅政権は2015年慰安婦合意を破るとは一度も言ったことがない」と述べていますが
言葉ではなくて行動で示してる♪
ってことですね(ノ*>∀<)ノ
不言実行ですね。
門外漢様
虚言実行ですよ。
七味様 門外漢様 頓珍韓様
尹美香の件もそうですが、目的外使用は即 詐欺 ですよね。
国家が平気で詐欺やらかす。
こんな国がFOIPやCPTPPに入れるわけがない。
なんてばかなんだと思います。
よりによって、日韓合意の相手国と仲介国の当時の代表がそれぞれ内閣総理大臣と合衆国大統領になっていると言うのに。
自分で雑談に書いておいてですが、元歯医者さんのブログでも取り上げてました。
>最終的かつ不可逆的に解決済み
新宿会計士さんの一言、これでお終いでしょう。
鄭義溶氏が次期大統領でもいいような気がしてきました。
最終的かつ不可逆的に日韓関係を破壊してくれそうです。
>極端な話、韓国政府が「この慰安婦合意により、(自称元)慰安婦問題については最終的かつ不可逆的に解決された」、「わが国は金輪際、(自称元)慰安婦問題を日本政府の前で話題に出さない」と宣言し、それを守る、という形でも良いかもしれません。
後者は、それだと韓国が国連などで「いわゆる日本軍慰安婦問題」を取り上げる事を禁じる事が出来ない気がします。
ちなみに、韓国が「解決済みの問題」として取り上げるか「未解決の問題」として取り上げるかも気になります。
「未解決の問題」として取り上げた場合は国際社会に日本へ圧力を掛けて欲しいと訴える事になり、「解決済みの問題」として取り上げた場合は日本に対する道徳的優位をより強固にしようという思惑かなぁと。
>ハンギョレ新聞さん、ウソを書かないでください。
>自称元慰安婦問題は、すでに「最終的かつ不可逆的に解決しています」。
厳密には、ハンギョレ新聞はウソではなく事実を書いていると思います。
国会で実際に行われたやり取りを報じているだけです。
ウソを言っているのはやり取りしている2名ですから、議員と長官に向けて「ウソを言わないでください」ではないかと。
ポッケナイナイしたから、言い訳をしているだけじゃないかと思います。
日本がうんと言わないから、あの金は使えない、と言いつつすでに金庫は空。
> 「わが国は金輪際、(自称元)慰安婦問題を日本政府の前で話題に出さない」
これでは不足です。2015年合意には以下の項目がありますので。
> 本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。
つまり、韓国政府は国際社会において二度と公論化してはならないということです。イアンフ像の問題を含め、韓国政府は2015年合意を全く履行しておりません。どれほど苦労して国家間合意を作り上げたとしても、一方が全く遵守しようとしないのであれば、いかなる協議も時間の無駄でしかありません。
まあ、現在の日本政府の姿勢そのものですね。
龍 さん
『本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。』だと、韓国が「いわゆる日本軍慰安婦問題」を歴史的事実だとし、国連人権委員会などで後世に残すべき記憶として提起するのを防げない気がするのが心配です。
> 日本との対話には最近、一部進歩がある
一回の接触のたびに、複数のウソをつくようですね。こうした国との国交、もういらないんじゃないでしょうか?
日本側が解決法を提案すれば(例えば自称慰安婦問題ではICJ提訴、自称徴用工問題では条約に基づいた協議や仲裁委員会の設置を提案した)無視する。韓国側が提案してくるのは根本的な国際法違反や国家間の合意を破ったという問題に口を拭って謝罪と賠償を要求するだけですものね。日本側としては手の打ちようがありません。
>こうした基本的な解決策に言及がない時点で、鄭義溶氏の答弁は「ゼロ点」です。
*きっと答案用紙に一つだけ記された「大きな”まる”」の意味を解っていないのですね・・。(0点)
出た!本日連発、3Kネタ。
ストライクアウトを宣告されたあとも、シツコッたらしくベンチに帰らず、身振りは恫喝調、目つきは哀願調の上目遣いでアンパイア睨んで、ついでに「監督、早よチャレンジしてくれんかいなぁ」と、そっち方向もチラ見。
記事三つとも、なんだかそんな光景が思い浮かぶ内容ですね(笑)。