産経・FNNが内閣支持率調査を出してきました。これによると岸田文雄内閣に対する支持率は63%で、自民党に対する支持率も45%に達しました。ただ、調査項目を読んでいくと、いろいろと不可解な内容も多々あることは事実でしょう。とくにワクチン接種を含めたコロナ対策を巡っては、岸田首相の功績というよりは、前任者である菅義偉総理の功績ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
内閣支持率調査の怪
当ウェブサイトでは以前から、6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社が実施するものと、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)に基づく内閣支持率、政党支持率などの調査結果を「定点観測」しています。
ただ、自分自身で「定点観測している」と申し上げておいて何ですが、この内閣支持率調査、調べれば調べっるほどに謎は深まるばかりです。
調査を実施するメディアによっては明らかに内閣支持率・不支持率の水準に差異が認められますし、また、調査を実施する頻度、回数、タイミングなどについても、あきらかにおかしいと首をかしげることもあるからです。
いずれにせよ、内閣支持率というものは、しょせんは民間メディアが実施する単なる参考資料のひとつに過ぎず、それを絶対視すべきではない、という点に関しては、おそらくは間違いないのでしょう。
こうしたなか、先日の『政権支持率「ご祝儀限定的で衆院選に不安」、本当に?』では、当ウェブサイトで「定点観測」している調査のうち、4つの調査が同時に出て来て、いずれも発足直後としては支持率は低調だった、などとする話題を取り上げました。
これらの4つは、どれも調査実施日が10月4日から5日にかけてのことでしたが、とくに10月4日といえば、菅義偉総理が閣僚の辞表を取りまとめて総辞職し、また、国会で岸田氏が次期首相に指名された当日のことであり、具体的な閣僚名簿もその日の夜になって公表されたほどです。
このような状態で、どうやってその内閣を支持するかどうかを判断しろとおっしゃるのか、かなり謎です。
産経の調査では支持率63%
こうしたなか、産経・FNNも最新の世論調査を公表したようなので、調査結果について更新しておきましょう(図表1)。
図表1 内閣支持率(2021年10月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
---|---|---|
共同通信(10/4~5) | 55.7%(+25.6) | 23.7%(▲34.8) |
朝日新聞(10/4~5) | 45.0%(+15.0) | 20.0% |
読売新聞(10/4~5) | 56.0%(+25.0) | 24.0%(▲33.0) |
日経・テレ東(10/4~5) | 59.0%(+23.0) | 25.0%(▲31.0) |
産経・FNN(10/9~10) | 63.2%(+20.9) | 27.4%(▲24.8) |
(【出所】各社報道より著者作成。前回比増減は2021年9月の菅義偉内閣との比較)
これで見てみると、産経・FNNによる調査結果は、ほかの4つのものと比べ、内閣不支持率はほぼ同水準ですが、支持率については唯一、6割を超えていることがわかります。
産経・FNNの肩を持つわけではありませんが、調査実施日が10月9日から10日であるというのは、内閣が発足し、岸田首相や閣僚らの記者会見結果も出て来たタイミングでもあるため、ほかの4つの調査と比べれば、調査実施日の設定は適切だと思います。
ただし、産経・FNNの調査だと、自民党政権に対して好意的な結果が出ることも多いため(※著者私見)、このあたりは割引いて考えるべきではないでしょうか。
コロナ対策は前政権の功績
こうしたなか、当ウェブサイトで産経・FNNによる菅義偉内閣の「コロナ対策を評価しない」とする世論調査を紹介したことがあるのですが、今回の調査結果も、なにかとツッコミどころだらけです。
内閣支持率6割超 自民支持率も45%
―――2021/10/11 11:39付 産経ニュースより
産経ニュースには、こんな趣旨の記述があります。
「政府の新型コロナウイルス対策を『評価する』との回答は前回調査より14.4ポイント増の56.9%で半年ぶりに50%を超えた。新型コロナワクチンの接種が『順調に進んでいる』との回答も73.8%で、18.5ポイント上昇した」。
おもわず、「おいおい!」と声を荒げたくもなります。
『いよいよ最終段階のワクチン接種』や『コロナ終息?菅義偉の偉業とメディア・野党の体たらく』などを含め、当ウェブサイトではこれまで何度も何度も申しあげてきたとおり、ワクチン接種がここまで急激に進んだのは、間違いなく、菅義偉総理大臣の功績です。
政府のコロナ対策、岸田首相が新たに打ち出したものはほとんどありませんし、ワクチン接種がほぼ完了したのも、菅総理のイニシアティブの功績であって、岸田首相の功績ではありません。
前回、「コロナ対策は十分ではない」「ワクチン接種は遅れている」などと答えた人で、今回、その回答を逆転させたという人がいらっしゃるならば、なぜご自身の意見を変えたのか、小一時間問い詰めてみたい気持ちでいっぱいになる、というわけです。
立憲民主党の支持率が低すぎる!
さて、最近のマスメディアは、「岸田内閣は発足直後のわりに支持率は低調だ」というストーリーを作ろうとしているフシがあるのですが、政党支持率は残酷です(図表2)。
図表2 政党支持率(2021年10月)
メディアと調査日 | 自由民主党 | 立憲民主党 |
---|---|---|
朝日新聞(10/4~5) | 37.0%(±0) | 5.0%(±0) |
読売新聞(10/4~5) | 43.0%(+7.0) | 7.0%(±0) |
日経・テレ東(10/4~5) | 51.0%(+4.0) | 8.0%(±0) |
産経・FNN(10/9~10) | 45.3%(+1.8) | 6.4%(▲0.5) |
(【出所】各社報道より著者作成)
どの調査で見ても、自民党への支持率が2桁で、一番低い朝日新聞の調査結果でも37%に達している一方、立憲民主党は最も高い日経・テレ東の調査ですら8%に過ぎません。
もちろん、これはあくまでも「政党支持率」であって、「小選挙区で投票する候補者が所属する政党」「比例区で投票する政党」を答えたものではありませんが、さすがにこの状況で、自民党が立憲民主党に惨敗し、政権を失う、という可能性は非常に低いと考えて良いでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そういえば、立憲民主党といえば、こんな話題もありました。
愛媛4区で公認取り消しへ 立民・杉山氏、不適切投稿で
―――2021/10/11 13:16付 産経ニュースより
すでにツイッター上ではかなり話題になっていますが、立憲民主党が公認を予定していた人物(29)がツイッターに不適切な内容を投稿していたとして、公認を取り消す方針を明らかにしたのだそうです。
該当する者がいかなるツイートを投稿していたかについては、当ウェブサイトとしては紹介できませんが、極めて下品で性的・猥褻な内容のものである、とだけ申し上げておきましょう(※といっても、当ウェブサイトの読者の方であれば、当然にご存知の方も多いとは思いますが…)。
そして、これらの投稿がツイッター上で話題になり始めたのは先週のことですが、今になってやっと公認取り消しとは、いかに立憲民主党の危機管理が甘いか、あるいはいかにマスメディアが立憲民主党に対して甘いか、という証拠に思えてなりません。
いずれにせよ、来る衆院選は政権与党を選ぶための選挙であるとともに、衆院における最大野党を選ぶための選挙でもあります。
さらには、新聞・テレビを中心とするマスメディア(あるいはオールドメディア)が「自民党下げ」「野党上げ」の報道を行っているフシもあるなか、自民党が危なげなく勝利をおさめた場合、それは「自民党の勝利」「野党の敗北」であるだけでなく、オールドメディアの敗北でもあるのかもしれない、などと思う今日この頃です。
View Comments (21)
>立憲民主党の支持率が低すぎる!
立憲民主党の支持率を視姦するニダ。
つまらなかったニカ?
読売や日経の調査では、支持するかしないか答えなかった人に対して、『あえていえば支持しますか、支持しませんか』といった『重ね聞き』をするらしいのですが、朝日や毎日はそれをしないのだとか…。
今回のアカ日の指示率+不支持率の和が65%しかない、というのも頷けます。
そうそう、拉致被害者について「もう生きている人はいない」などど発言した立民議員もいましたね。
本当に議員(比例のようですが)なのでしょうか?信じられませんね。
おぞましい問題のツィート群は2013からの3年間ほどのようで、当時は議員ではなく、過去の
つまらない過ち若気の至りといえばまぁそうなのですが。だとしてももし友人だったら、
ぱっと交友切ります。
いざ出馬となってもなぜこんな汚れたアカウントを使う。せめて新垢取れと。
連合など支援者にも迷惑になるのですが、なぜこのような人物が過去を確認もされずに
呼ばれてしまうのか。彼の知能も立憲の体質も疑問に思わざるをえません。
実現力があっただけに、菅総理の発信力不足が悔やまれますね。
受け身に構えて、切って捨てればよかった官房長官の頃とは違ったのでしょうね。
発信力ってなんでしょね、河野氏の発信力はSNSによるものですが総理にそんな時間はないと思います。
一応ぶら下がり会見もしていますし、マスコミ向けにそれなりの発表(例えばファイザー社との直談判で1億回分のワクチン契約等)もしていたはずです、マスコミの役割は政府からの発表をわかりやすく読者に伝えるはずなのにそれを報道しなかったり、場合によっては捏造(「重症リスクの高い人以外は自宅療養」を「入院対象を重症者らに限定」と報道)していました。
マスコミの言う発信力不足ってマスコミの不作為を隠すための方便だと思います。
発信するための特権を与えているのに、その意思も能力もないわけなので、特権は剥奪して自由競争させたらいいと思いますね。
>マスコミの言う発信力不足ってマスコミの不作為を隠すための方便だと思います。
その通りですね。
マスコミの不作為とはその通り。最近、こんなに感染者数は減ってるのにマスコミではワクチンのおかげという説明はあまり見かけないのが気になります。減る要因としてはワクチン接種率の向上以外の要素はあまりないように思いますが、これも不作為かもしれません。
カズ様
記者クラブが何の為にあるか知っておりますでしょうか?
一記者様と総理大臣等が、一対一で質問に答える機会となっており
記者クラブ会員以外の他メディアの人達を入れない排他機関です。
ここで確認できた情報を元に新聞等の記事を作成するのですが、ここで大臣等に
質問をせず演説する記者や意味の無い質問をする記者様がおります。
折角一次情報が得られる機会に何故今一番必要な質問をせず、演説するかと言えば
大臣等の答弁を聞く必要が無いからです。 記者会見場に出席した事実が欲しいだけ。
記者様の妄想で記事を作成するので、大臣等に発信能力が無いと言うのです。
本来はNHKが政府等の報道する義務を負っているのですが、NHKが他国の報道機関化
している為、政府等の発信・公表機関が無いのです。、
ワクチン接種がここまで進んだのは菅内閣の功績です。
菅さんは残念ながら優しすぎたのでは。
これからの宰相は小泉、安倍のように堂々としたタイプでないと長続きしないのではという気がします。
お疲れ様です。
ワクチン接種がここまで進んだのは菅内閣の功績です。
そして、支持率があがっているのは、(そういうつもりではなかったと推察されますが結果として)2階氏を引きずりおろせたからだと思います。なので、やはりこれも辞任を決意した菅さんの功績です。
最近のコロナ陽性者数をみると、ますます10月1日付、伊江太さんの第16稿のご指摘通りと思われます。陽性者の人数を見ると、増加も減少もスパイラル的に変化しています。増加に際しては、確かに感染力の強い変異株の存在があると考えられるのですが、伊江太さんの指摘のように怪しい検査機関での検査が相当増えるんじゃないかと。逆に減少するときには怪しい検査機関に依頼される分から減ると考えられるので、当然ながら激減すると。その証拠は陽性率にあると思います。スパイラルの増加に従って陽性率が増えていき、減少に従って陽性率が減ってきます。そもそも陽性率がそんなに変わるなんて怪しいと考えます。検査機関別の陽性率等、公開されませんかね?もしくは東京都などとっくに気づいていて、怪しい検査機関に頼むのを減らしているのかもしれませんね。
陽性判定されたCt値の分布は、どっかの自治体が公開し分析すべきだと思うのですが、なぜやらないのでしょうか。Ct値が「35」を超えると、他人に感染力があるウイルスはほとんど培養できないという結果も報告されており、「40」とか異様に高い感度で、大量にゴミを拾い上げている(冤罪をつくっている)可能性はないのでしょうか。
日本の病院では、もともとCTやNRIによる画像診断が充実しているので、五輪が終了しワクチン接種も進んだた今、精度の怪しいPCR検査自体が不要になってきたのではと思います。
>前回、「コロナ対策は十分ではない」「ワクチン接種は遅れている」などと答えた人で、今回、その回答を逆転させたという人がいらっしゃるならば、なぜご自身の意見を変えたのか、小一時間問い詰めてみたい気持ちでいっぱいになる、というわけです。
この「回答逆転」の方達は、マスコミにコントロールされた国民的政権交代運動に加担して民主党に政権を作った人達で、政権成立後にひら返しで文句を言い出した人達が多く含まれていることでしょう。
あえてこのような人々に「大衆」という言葉と使わせてもらえば、「大衆は民主党政権成立を心底反省してマスコミに踊らされない、という期待は決して持てない」ということが証明されているのだと思います。
心底腹が立ちますが、「小一時間問い詰めた時間を返してほしい」という事態が発生しますので、説教は不毛でしょう。
大衆がマトモになるよりも、マスコミから「マス」を取り除く方が手っ取りばやりです。そのためには、Webをはじめとした情報媒体の多様化が早々にも必要でしょうね。
総選挙には間に合いませんが、、、。
個人的には、
菅政権の退陣は本当に残念でしたが、国益のためにはバッチリのタイミングでした。菅総理がこの状況を意図して作ったと想像するとちょっと泣ける。
(でも進次郎は泣くな)
自民党が絶対良いというのではないですが、現在の国内・国際情勢から見て、とても野党に任せらない。
岸田政権はなんとか及第点ぐらいの可能性は持てるので、ひとまず安定多数をキープしていただきたいというところです。
> Webをはじめとした情報媒体の多様化が早々にも必要
基本的にはそのような方向性に賛成なのですが、その一方で武漢肺炎やワクチンに関するデマの拡散、反ワクチン教徒の蔓延に関しては、WEBやSNSの普及に依るところが非常に大きいと思います。つまり、情報媒体の多様化は、同時に混乱やミニカルトの乱造に繋がりかねないという危険性をも孕んでいるということです。
個人的にはマスメディアによる情報媒体の独占は打破されるべきとは思うのですが、媒体多様化に伴う混沌の増進は、社会全体にとって果たして本当に良いことであるのか、今一つ自信が持てません。なので、諸手を上げて賛成するにはちょっと躊躇してしまいます。
最終的には、「大衆」の情報リテラシーの問題に帰着すると思いますが、マスメディアが流す情報の真偽を判定できない人たちが、多様化された各情報媒体の真偽を判定できるようになるとはちょっと思えません。必ずしも完全なウソとは言い切れないけれども実はかなり極端な意見に飛びつく人たち、洗脳されてしまう人たちが続出するのではないかということを懼れます。
なお、「オレは情報リテラシーを十分鍛えているから、『洗脳』なんかされるわけがない」と思い込んでいる方々に一言。「そういう人たちこそが一番騙しやすい」のです。
龍様
ありがとうございます。
「情報リテラシー」に帰着しますね。
>必ずしも完全なウソとは言い切れないけれども実はかなり極端な意見に飛びつく人たち、洗脳されてしまう人たちが続出するのではないかということを懼れます。
これについては、もはやリテラシー以前の価値観が大きく作用すると思います。
物事の基準が価値観であり、私達は歴史や文化や伝統を用いるわけですが、こういうったことが希薄化していることが、併せもった問題だとおもいます。
情報リテラシーと日本的価値感のどちらも、醸成には時間がかかると思うところです。
>「岸田内閣は発足直後のわりに支持率は低調だ」というストーリー
これは毎日新聞社会調査研究センターの調査結果ありきで用意していたストーリーでしょうね
あそこの調査ならメディアが望む結果が出ますので記事を用意しやすい
素朴な疑問ですが、前回の岸田総理の内閣支持率は、何だったのでしょうか。
総裁選で圧勝しなかったから支持率低かったのかな?
バシラス・アンシラシスは土壌常在菌様
前回の内閣支持率は、(あったかもしれない)河野太郎新首相や高市早苗新首相、あるいは野田聖子新首相との比較で、今回は枝野党首との比較ということでしょうか。
菅前総理の功績は今ぐらいの時期でわかると思っていましたので、辞任は痛恨でした。あれはマスコミや国民の無理解によるものだと思っており、責任は重大です。
支持率などはコロナの感染が収まってきたら、自然に上がるぐらいのあやふやなものです。民意は選挙。支持率は民意ではないことを理解しないといけませんね。