日本以外との国との関係で見る「韓国の特殊性」
「日韓関係がうまく行かない原因は、『日韓関係の特殊性』にあるのではなく、『韓国の特殊性』にある」――。そうした見解に説得力があるかどうかは、韓国の日本以外の国に対する態度を見てみれば、よくわかります。こうしたなか、参考になる事例のひとつが、イランと韓国の対立でしょう。最近、イランが韓国製の家電の禁輸措置を打ち出すとの報道があったようですが、その背景を改めて振り返っておきましょう。
ウォン建て石油取引という闇
以前の『イランによる韓国船拿捕の裏にある両国の浅からぬ因縁』を含め、当ウェブサイトで以前からしばしば取り上げている話題のひとつが、イランと韓国の「トラブル」ですが、とくにその中核を占めているのが、不透明な「ウォン建て石油取引」にあります。
つい先日の『米中リスクに「日本は支援せず」韓国ウォンの前途多難』も含め、普段からお伝えしているとおり、そもそも韓国の通貨・ウォンは、国際的な金融市場、資本市場、商取引などで広く通用している通貨ではありません。
すなわち、当ウェブサイトの用語でいうところの、「ソフト・カレンシー」の一種です。
そんな韓国ウォンを使ってどうやって石油輸出代金を支払うのかといえば、仕組みはどうやらこういうことだそうです。
- ①イランの中央銀行が韓国の銀行にウォン建ての預金口座を開設する。
- ②イランが韓国に石油を輸出する。
- ③韓国の輸入業者は石油代金をウォンでその銀行口座に振り込む。
- ④イランの中央銀行が入金を確認次第、輸出業者の銀行口座にイラン・リヤルを振り込む。
そして、この取引を続ければ続けるほど、イランにとっては、韓国国内に預けている韓国ウォン資金が溜まっていく、ということです。
ただ、そのウォン資金については、イランとその他の国(たとえば日本)との貿易決済などに使うことはできませんので、最終的にはどこかのタイミングで、それらのウォン資金を米ドルなどの外貨に両替し、韓国国外に移さなければなりません。
ウォン資金口座は制裁の「抜け道」「迂回路」=韓国メディア
現在、イランと韓国の間で生じているトラブルは、まさにこの点にあります。
過去のイランから韓国への石油輸出により溜まった資金(一説によると70億ドルを超えるともされています)については、米国の対イラン制裁の発動に伴い、韓国の当局によって凍結されたままなのです。
そして、話しはそれだけではありません。
そもそもこのスキーム自体、イラン、韓国両国の当局が、国連安保理による対イラン制裁を回避するための「迂回路」ないし「抜け道」として考案したものだという報道もあるのです。
政府「韓国ウォン口座維持協議を」…イランは返答せず(1)
―――2016.01.28 09:08付 中央日報日本語版より
リンク先は韓国メディア『中央日報』(日本語版)に5年半前に掲載された記事ですが、ここにハッキリ、こう書かれています。
「イランと金融取引が厳格に制限された状況でもそれなりに貿易が維持されたのは、ウリィ銀行と企業銀行に開設された韓国ウォン口座のおかげだった。韓・イラン当局が苦心の末に開いた『う回路』であり『抜け道』だった」。
つまり、イランにとってみたら、「これが抜け道であり、迂回路ですよ」という触れ込みで開いたはずのウォン資金口座が凍結されたというのは、理不尽以外の何物でもありません。
そして、そのどうもその資金に対するイランからの返還要求に対し、韓国政府のこれまでの対応は、たとえば『イランに救急車提案で火に油を注ぐ韓国政府の不誠実さ』などでも述べたとおり、第三者から見ても大変に不誠実です。
70億ドル(1ドル=110円とすれば、7700億円!)という金額の救急車(しかも日本製ではなく韓国製)というのも、なかなか凄まじい提案です。1台2500~3000万円だったとすれば、相当として、2~3万台以上ということでしょうか。
ちなみに総務省『平成30年版 消防白書』によると、日本の場合、全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、非常用を含め6329台(2018年4月1日時点)だそうです。人口で日本の3分の2程度のイランで、3万台の救急車が必要であるとも思えません。
なんだか、メチャクチャですね。
イランで韓国製家電の輸入禁止措置?
こうしたなか、昨日は『イラン・インターナショナル』に、こんな記事が出ていました。
Iran’s Raisi Bans Korean Home Appliances On Leader’s Orders
―――2021/09/30付 Iran Internationalより
これは、イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師が発した書簡に基づき、エブラヒム・ライシ大統領が韓国のLGやサムスンなどの家電の輸入を禁止する方針を打ち出した、とする話題です。
イラン・インターナショナルはまた、イランの凍結資金に関連し、イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相が鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外相と電話会談を行い、この問題を巡る努力を倍増させなければならないと述べた、とも伝えています。
しかも、イラン・インターナショナルは、「凍結されたウォン資金を、人道的な製品購入を目的に、スイスに移すことで、米国財務省と韓国が合意した」というする韓国側の7月の発表を巡っても、イラン側で「資金使途はワシントン(=米国)ではなくイランが決めるべきだ」とする反発が強まっている、などとしています。
この点、イランの側でも、ハメネイ師の支持に対しては「韓国産の家電の輸入を禁止した場合、中国製品がイラン市場を席巻してしまうことになる」という反発も生じているようですし、実際、イラン側の対抗措置として今回の措置がどれだけ実効的なものかについては疑問があることも確かです。
「韓国の特殊性」を感じる記事
ただ、問題の本質は、結局のところは「韓国の特殊性」に尽きるのではないかと思います。
というのも、これに関連し、中央日報にも今朝、こんな記事が出ていたからです。
イラン最高指導者「韓国製電子製品の輸入禁止」
―――2021.10.01 06:30付 中央日報日本語版より
中央日報によると、鄭義溶氏はイラン側に対し、次のように呼びかけたのだとか。
- 両国関係に悪影響を与えないようにしなければならない
- (外信に報道された韓国製電子製品輸入禁止令が事実なら)両者関係に役立つものがない
- そうならないように懸案をうまく解決し、管理していこう
…。
このあたり、自分の国で問題を起こしておきながら、「問題の解決義務が韓国にあると言い張るのは、両国関係に役立たない」、「両国は誠実に協議をしなければならない」と述べる、普段の韓国政府の言動そのものですね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、この手の記事を読むと、なぜか次の文章がすぐに頭に浮かんでくるようになりました。
「平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。
この記述、『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも紹介した、韓国観察者の鈴置高史氏が7月16日付『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で述べた内容です。
日本ではよく、「日韓関係がうまくいかない」理由を、「日韓関係が特殊だからだ」という点に求める意見があるのですが、そのような人にこそ、「韓国が日本以外の国とどういう関係を構築しているのか」という側面に注目して欲しいと思います。
実際、当ウェブサイトにさまざまな読者投稿を寄せてくださった「(元)韓国在住日本人」様という読者の方もご指摘のとおり、韓国は日本やイラン以外の諸国でも、さまざまなトラブルを発生させています。
韓国企業が加害者となった事例
- パラオの橋の崩落(SOCIO)
- インドネシアの溶鉱炉事故(POSCO)
- ベトナムでの建設現場崩落事故(三星物産)
- ラオスのダム崩壊(SK建設)
- インドのガス漏れ事故等(LG化学)
(【出所】当ウェブサイト『【読者投稿】在韓日本人「韓国さん、お達者で!」』)
いずれにせよ、「日韓関係がうまく行かないのは、『国と国との約束』、『国際的な法秩序や常識』といったものを、韓国があまりにも軽視し過ぎているからではないか」――、といった仮説について、改めて考えてしまう今日この頃です。
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韓国が借金を返さないから、取引停止にするのは、当たり前だと思います。
>「韓国産の家電の輸入を禁止した場合、中国製品がイラン市場を席巻してしまうことになる」
基本的にイランは、中国サイドに付く事になるから、仕方ないんじゃないかな。
>日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。
その特殊性の本質は、価値観の相違だと思います。
韓国の特殊な不動産賃貸の保証金制度みたいに、運用することを目的とした措置だったのでは?
イランは債権をアフガニスタンに割引きで売って、アフガニスタンが韓国の債務取り立てしたらどうですかね?
勿論アメリカドルかユーロで。
ウォン建て債権では?
韓国は最初から踏み倒すつもりで、イランに提案したのでしょう。
何故ならキチンと返還出来るチャンスを、シレッと無視したから。
これは、つまり韓国国内に資産を置いたら 韓国が自由に何でも出来ると同じ意味で
あります。
例えば、韓国が外国資本に対し税制優遇などを理由に韓国国内に資本投下しても、難癖をつけて、奪われても仕方ないと言う事。
イランは米国の制裁受けてるから仕方ないよねと言うのはバカです。
人のフリ見て我がふり直せ。
慰安婦問題があるから、取られても仕方ないよね。徴用工の問題があるから仕方ないよねといつ我が身に不幸が降りかかるか時間の問題でぜったい大丈夫とは言えないのです。
徴用工で資産売却した瞬間、韓国を奈落の底に一瞬で落とす準備を今の内にするべきです。
イランはその準備を怠りました。
日本はイランの後追いをしてはいけません。
大分以前のことになりますが、イランから研究交流で半年間日本に滞在していた女性研究者と知り合ったことがあります。熱烈なホメイニ支持者で、顔こそ出していましたが、いつも黒のブブカに身を包み、わざわざ東京からハラル食材を入手して、手作りの料理で暮らしていたのは大変だったと思います。
科学的な話題に関しては、問題なくはなしが通じるのですが、政治的どころか、社会的な事柄についても、正面切って議論すれば、まず喧嘩別れは必至。まあ、それはそれで面白かったし、「安心立命」ということで言えば、一神教の強みを実感したものでした。異教徒ばかりの日本。唾棄すべき国と思っているかといえば、そうでもなく、良いところはよく見ているし、リスペクトもしていたのは、それなりにインテリだったせいでしょうか。
一方の韓国。華夷秩序に凝り固まり、中華圏の遥か範囲外のイランなんぞは、禽獣の国くらいに思っているんじゃないでしょうか。反日は半分以上コンプレックスの所産でしょうが、イランに対するリスペクトなんて、皆無にしか見えない。
互いに自明のことと信じる絶対的価値判規範を奉じ、それがまったく噛み合わない、イランと韓国。利害だけの付き合いの「食い合わせ」具合がどんな方向に流れていくのか、よそ事ながら興味深いはなしではあります。
>70億ドル(1ドル=110円とすれば、7700億円!)という金額の救急車
うん。救急車の重量は1台あたり約3200㎏
これに素材の比重率(鉄/金)を大雑把に計算すると純金の救急車は1台あたり8000㎏
これに金のグラム単価(6850円?)をあてはめると1台当たり548億円
*その気さえあれば『純金製の救急車だと14台』でペイできちゃうってことのかもですね。
韓国がイランに提供しようとした救急車は十中八九これと思われます。
利息分だけで一旦ごまかして(しかも廃品を売りつける形で)、負債全額払うつもりなどさらさらないんでしょう。
韓国のハイテク救急車「廃車騒動」…1台2200万円で自慢の遠隔診療システムも型落ちPCで通信不良、誤作動続出
https://www.sankei.com/article/20150919-OSFRGKFFPJLH3PUGJ3OTAW3BYA/
韓国は、イランに対し一方的な「甘えの感情」を抱いている可能性があるのではないでしょうか?というのも彼らはイランと特別の関係にあると思っている節があるからです。それは、半島が高麗時代のことですから、約700年も前ですが、半島(高麗朝)とイラン(当時はイル・ハン朝)は、共に国王が、モンゴル帝国・元王朝皇帝フビライを通じて血縁関係にあり、親戚同士と見なされていたからです(うろ覚えですが、両王朝王室同士の通婚もあったと思います)。このような経緯で、韓国はイランに対し「自国を特別扱いすべき国」と思っている節があります。無論、表だって口にしませんが、韓国新聞の日本語版で、そのような雰囲気でイランとの因縁に言及する記事を見かけた記憶があります。
これは何やら、日本に対する感情と若干重なる部分があるようにも感じます。彼らの、日本に対する理不尽かつ児戯じみた振る舞いも、その根底には「甘え」が潜んでいるのではないでしょうか?つまり、韓国の潜在認識では、「日本・イランにとって韓国は特別な存在だから、両国は、韓国の無理を聞いて当然だ」、と。無論、イランと日本では、韓国に関する関わりの歴史が異なりますから、全く同じとは言えないのですが、少し似た部分があるのかな、なんて思ってしまいます。
ということで、上記仮説が成立するとして、上記韓国的妄想(日本・イランから特別扱いされて当然)を打ち砕くために何をすべきか、イランの対応は日本にとって非常に参考になると思うのです。
>70億ドル(1ドル=110円とすれば、7700億円!)という金額
このお金,口座封鎖でイランに渡す必要はないってことで韓国政府が既に使い込んじゃってるんじゃありませんかね.
韓国で良くあるポッケナイナイを政府レベルでやったと思えば容易に理解できます.韓国海軍の軍艦にソナーが装備されるはずだったのに実際に装備されて竣工したのは魚群探知機だったって笑い話のような実話もポッケナイナイのお蔭でしたし.