自称元徴用工問題に関連し、原告側が金銭債権の差押に手をかけてしまったこと自体、この問題のフェーズを変えてしまった可能性がある、という話については、今朝の『徴用工債権差押で債務者「当社は三菱重工と取引なし」』を含めて指摘してきたとおりです。ただ、この問題が三菱重工に限らず、「日本企業と取引するすべての韓国企業」にも飛び火しかねないという点を、一部の韓国メディアが(不十分ながらも)指摘し始めたようです。
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日韓関係の基本は「積極的放置」だったのだが…
自称元徴用工判決からもうすぐ3年を迎えるなかで、これまで日本企業の資産売却は、現在のところ、待てど暮らせど実現する状況にありません。その理由は、これまで原告側が差し押さえてきたのが、非上場株式だの、知的財産権だのといった、換金が大変に難しい資産ばかりだったからです。
非上場株式や知的財産権の場合は、そもそも売却しようとしても「買い手」が出て来るかどうかわかりませんし、その際の値段についてもどうやって決めれば良いか、議論が分かれるところです(とくに日本の場合だと、非上場株式の査定に関しては、それを専門にする企業が存在しているほどです)。
そして、これらの資産は極端な話、差し押さえられた状態であっても、差押を喰らった側にとってのデメリットは「処分ができない」「合弁契約等を解消することができない」、などの話に過ぎず、正直、現状で日本企業に何らかの実害が生じているというのは考え辛いところです。
もちろん、韓国側でサラミを薄くスライスするように、少しずつ、少~~~~しずつ進む手続に対し、いちいち即時抗告を打ったり、抗弁書を出したりするのは大変な手間です(※その意味で、著者自身はすでに現時点において「日本企業に不当な不利益」が生じていると考えているほどです)。
しかし、こうした手間を除けば、とりあえず日本企業としては日本政府と連携し、「日韓請求権協定ですべて解決済み」と主張し、あとは放置していれば良いだけの話だったのです。
金銭債権差押でフェーズは変わってしまった?
ところが、当ウェブサイトでここ数日、今朝の『徴用工債権差押で債務者「当社は三菱重工と取引なし」』を含めて指摘してきたとおり、原告側が日本企業の金銭債権を差し押さえてしまったことで、「問題のフェーズ」が変わってしまった可能性があります。
その大きな理由は、金銭債権自体、流動性・換金性が非常に高い資産であることに加え、その差押により売掛債権の入金が滞るような事態が発生すれば、それだけで差し押さえられた日本企業の側に「不当な不利益」が生じる可能性が出てくるからです。
それだけではありません。
彼らが金銭債権に手を掛けたことで、三菱重工の件だけでなく、少なくとも現在、差押が行われている日本製鉄や不二越、さらには下級審で敗訴した日本企業や、韓国政府から「戦犯企業」として名指しされている企業にとっては、韓国に対し金銭債権を持つこと自体が大きなリスクに変わった、ということです。
ちなみにこの「金銭債権」に含まれるのは、売掛債権などの商事債権に限られません。
日本の金融機関が韓国の企業や銀行などに対して提供している信用(たとえばドル建て短期貸付金や支払承諾など)についても同様に、差し押さえの対象になりかねない、という話です。
想像するに、自称元徴用工側は、今回の金銭債権差押も「売却スルスル詐欺」の一環として、ちょっとだけ手を変えて「差押ゴッコ」をしかけたつもりだったのかもしれませんが、残念ながら国際社会はこうした「差押ゴッコ」を冗談として受け止めてくれるわけではありません。
韓経の続報:「判決が国内企業に飛び火」
こうした点に気付くメディアが、少しずつ出て来たようです。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された、『韓国経済新聞』(韓経)が配信した次の記事が、その典型例でしょう。
韓経:日本企業支給物品代金まで差し押さえ…強制徴用判決が国内企業に飛び火
―――2021.08.23 09:50付 中央日報日本語版より
韓経といえば、今朝の『徴用工債権差押で債務者「当社は三菱重工と取引なし」』ではその韓国語版の記事を紹介したばかりですが、こちらの記事もそれなりに本質的な点を述べています。それが、これです。
「賠償判決を履行しない日本企業の国内企業との取引代金が差し押さえられる決定も出てきた。これと似た事例がさらに出てくる可能性があり、国内企業の混乱も深まるという懸念が出ている」。
まさに、当ウェブサイトで当初から申し上げている点が、不十分ながらも指摘されているのです。
自称元徴用工側から見れば、「今回の差し押さえで被害者(※)が実質的に損害賠償を受ける道が開かれた」(※「被害者」とは自称元徴用工らのこと)という側面があることは間違いないにせよ、もしそれをやってしまえば、商取引上、韓国という国に対する信頼は失墜します。
韓経によれば、今回の差押案件である「LSエムトロンに対する金銭債権」の所有者が三菱重工ではなくその孫会社である三菱重工エンジンシステムであるという点について、「企業の混乱が生じた」などと述べていますが、これについては今朝も紹介した韓国語版の記事と同様なので、本稿では割愛します。
それよりも、「三菱重工業や日本製鉄など日帝強占期の強制徴用動員企業と取引する国内企業を対象に似た事例がさらに出てくる」、「日本企業と取引する国内企業のもうひとつの『韓日関係リスク』が生じることもある」、というのが、まさにこの韓経の指摘、というわけです。
もっとも、韓経はこれについて、次のように述べています。
「裁判所は常に同じ結論を出すとは限らない。しかし同じ法に対して正反対の結論を出すケースが続けば、強制徴用被害者だけでなく国内企業の混乱も深まる。誰もが尊重できる明確な基準が必要な時だ」。
これに関しては、当ウェブサイトとしてコメントを出す話ではありません。「韓国国内でどうぞ好きになさってください」、としか言い様がないのです。
日本がやらねばならないことは「韓国なしでも大丈夫な国づくり」
いずれにせよ、韓国の裁判所の大きな間違いは、本来であれば韓国の国内法で処理すべき事案を、外国企業である日本企業を巻き込んだ形で処理しようとした点にあり、また、「国際法が『三権分立』に優先する」という当然の原理を無視した点にあります。
もちろん、韓国側が自発的に、2018年10月と11月の自称元徴用工判決を完全に無効化する措置を講じてくれるのが、日韓関係にとってはいちばんスッキリした解決法ではあります。
ただ、それが期待できない以上は、「それ以外の方法」を日本が考えておく必要があります。
それは、「韓国が国際法を守ってくれない事態が生じたとしても、日本に生じる損害を最小化すること」です。
おそらく、交渉を通じてどうこうするというタイミングは、もう過ぎました。
今後は日本の覚悟次第、といったところでしょう。
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換金できない非上場株など差し押さえてどうすんだよ(馬鹿め)、どうせ差し押さえるんなら売掛債権みたいな流動性のある物にしないと(ダメじゃん)。
と、さんざこのサイトで議論されて来ました。
多分、自称被害者の関係者がこのサイトを覗いたんじゃないかと。
この差押に対する日本の対応は、金融機関の自己査定における韓国のカントリーリスクの引き上げが最も素直で筋が通っているのではないかと思うのですが、いかがですか。
その結果、邦銀の韓国企業に対する融資は縮小するかも知れませんが、外国銀行が代わりに融資するかも知れませんので、日本が責められる筋合いではないと言えるでしょう。
一番リスクに晒されているのは、多額の金融資産を持つ三菱UFJ銀行ですね。
さっさと韓国なんかから撤退すべきです。
それから、単なる銀行つながりですが、相変わらずシステム障害を繰り返すみずほ銀行に、信用が大事な国際決済業務を続けさせてはいけません。
一気に全面停止させると、どのくらい影響が出るか心配なので、とりあえず実験的に、5年ほど韓国での事業を債権回収のみに限定させてどうなるか観察してはいかがでしょうか。
イーシャさま
みずほのケースは、イーシャバイアス強めですね。
三菱グループで総がかりになれば、韓国経済は、ひとたまりも無いんですけどね。
久々に反日モンスターの話をするニダ。
韓国の反日は、国内の葛藤を詰め込むのに便利で、韓国人全てに利益をもたらして来ました。
韓国が豊かになるにつれ、葛藤は増える一方で、反日が詰め込まれた「反日モンスター」は、肥大化する一方で、慰安婦合意以降必ずしも韓国に利益をもたらしてくれなくなりました。
それでも韓国の葛藤は増え続けて、「反日モンスター」に入りきらない葛藤が、韓国人に損害を与えるようになりました。
ここでWOWKOREAからバンダービルドさんの記事
<W寄稿>日本発の一回目の後遺症が耐えられただと?二回目の際もそうだろうか?=韓国の対応
https://news.yahoo.co.jp/articles/3567d2000673c95d66fc4aef5c42be7762da27ab
反日する側と別に韓国内に被害者が出る可能性について書かれています。
NO JAPANの時の、航空会社や日系資本の企業に勤める人を思い出せば分かりやすいと思いますが、反日する側は被害が無く、日系企業から解雇された韓国人の被害者が出るという事です(日本にしてみれば、自業自得)。
ここでもう一歩踏み込んで考えると、今後は被害者の範囲が広がっていくのでは?と妄想する事が出来ます。文政権は中朝工作員が、反日扇動を利用して作ったと考えれば、独裁主義に進んでいる韓国の多くの人は被害者と考える事も出来ます。
ただ、韓国内の被害者は、日本に対する加害者で有ることを忘れてはなりません。もし彼らが日本に入ってくれば、日本に対する加害者に姿を変えるでしょうから、同情する事は無く、日本に入って来ないよう、出来るだけ関わらないようにせねばなりません。
まだまだ韓国の葛藤が増え、反日も深化するでしょうから、韓国国内の被害者が増えると考えるのは、それほどおかしな話では無いと思います。
「朝鮮半島を滅ぼすのは朝鮮人」という輝かしい未来に向かって、進んで行って欲しいニダ。
良い話であ~りませんか?
某国から、貿易決済は現金先払い方式にしてくれと選択するのですから。
でも、某国から買える物って何かな~。特に無いよね。
イオンが買う〇〇ものくらいかな~イヤ、半導体か?
日本が買える物があまり無いということで、全てバンバンザイかな?
ちょろんぼ様
◯◯には何を入れたら良いでしょうか?
麦酒は国内のS社になったし(北の方です)、カップ麺もヤバイと思ったのかT社やA社という日本メーカーに委託したし(超一流のN社には相手して貰えません)、キムチも漬物も日本メーカーですし(日本人のオーナーとはあえて申してません)。
となると、◯◯には「やす」でしょうネ〜(笑)貿易決済は現金先払い方式、とても良いと思います。
このところ選挙で芳しくない菅内閣が実害が生じるのを待って、びっくりするような報復措置を取ることができれば、日本のサイレントマジョリティが反応するかもしれませんね。嫌韓が政治利用される日が近いかも。征韓論の昔から朝鮮半島は政治利用されて来たのであり得ない話でもありません。
> 韓国側が自発的に、2018年10月と11月の自称元徴用工判決を完全に無効化する措置を講じてくれるのが
こういう措置を講じても、その時の都合により好きにできるとうことなので、まともな考えを持っていれば韓国企業と取引きしたいと思わないでしょう。
先に代金を現金払いしてくれれば別ですが。(受注生産品だと受注時に先払いでないと危ないですね。)
既に韓国企業は、現金払いでしか訴訟に名前の出てくる日本企業からはものを買えないはずです。金銭債権を残してしまうと今回みたいに差し押さえられますから。
もう既に韓国企業は被害を受けてますね。
今回みたいに子会社孫会社を通じて購入した場合にも同じような目に遭うんですから、今後はさらに該当日本企業グループとの取り引きは困難になるはずです。
自業自得。
韓国自体が色々葛藤があるので次から次へと「日本をやっつける措置」を繰り出してその時その時日本側の反応も合わせて大騒ぎに持ち込み、国内の様々な葛藤を反日に団結させる事でしのぐ、と言う動きは途切れることなく起こることに。で、今回の仕業となり、とんだマヌケな事に。
だが新宿会計士様のご指摘通り、これは従来言われてきた「セルフ経済制裁」となる事が出来るし、顕在化して成らせなければなりません。日本側としてはなるべく多くの企業に対して韓国のカントリーリスクを理由として対韓貿易に関しては最大限の注意を払い、なるたけ他で代替し、どうしてもと言う場合にも掛け払いを許さず、自社をリスクにさらさない措置を(株主として)企業に求めて行かねばなりません。これは政府の意向とかではありません。「世論に押されて体面上」でもありません。今回のような事がもしも実際の取引に発生するなら、それを分かっていてそれを軽視して対韓貿易取引や投資その他の取引をした場合には経営責任を問われる事でありましょう。
それはSamsungやポスコやヒョンデの様な大企業、半ば日本企業でもあるロッテなどの企業、零細企業に至るまで全体としてカントリーリスクなのであり、相手企業の「顔」とか実績とも無関係に突然襲いかかるリスクです。例外は一つもありません。
まずは、韓国向けの貿易保険の引き受けを停止してはいかがでしょう?
少なくとも一つのメッセージにはなると思いますが。