今年も8月がやって来ました。8月15日には、76年目の終戦記念式典(令和3年度・全国戦没者追悼式)が実施されます。こうしたなか、沖縄タイムスによれば、日本世論調査会が実施した「平和」に関する全国郵送世論調査の結果、式典で総理大臣が「加害と反省に言及するべきだ」とする回答が47%だったのに対し、「必要はない」と答えた人は49%で、しかも若い人ほど「必要ない」との回答比率が高かったのだそうです。
今年も8月がやって来ました
8月といえば、日本人にとっては忘れられない月です。
いうまでもなく、2回の原爆忌、そして8月15日の「終戦記念日」など、どうしても「戦争と平和」について考えざるを得ないのです。
ただし、昨年の『安倍政権は連続在任最長へ:国の在り方、今こそ議論を』などを含め、これまでに何度となく申し上げてきたとおり、8月15日を本当の意味での「終戦の日」と見るべきかどうかという点については、個人的には大いに疑問です。
なぜなら、8月15日は昭和天皇が終戦の詔書を玉音でご放送された当日であり、「すべての戦闘行為が終結した日」ではないからです。
たとえば、内閣府の『北方領土問題』などによると、ソ連が当時の日ソ中立条約を一方的に破って日本に対し宣戦布告したのが1945年8月9日のことであり、ソ連軍が千島列島最北端の占守(しむしゅ)島に上陸したのは、ポツダム宣言受諾に関する玉音放送が流れた8月15日よりも3日後の18日のことです。
その後、ソ連軍は島づたいに南下し、8月31日までに千島列島の南端である得撫(うるっぷ)に到達しています。
また、いわゆる「北方4島」については、樺太方面から侵攻した別動隊が8月28日に択捉島を占領したのを皮切りに、9月1日から5日までの間に、国後、色丹の両島、さらに歯舞群島のすべてを占領した、などとされています。
ソ連軍のこれら一連の動きについては、「火事場泥棒」というよりほかに表現のしようがありません。
ただし、1945年といえば、日本軍の敗色が濃厚になってきた時期であるにもかかわらず、ソ連軍はナチスドイツが降伏した5月ではなく、わざわざ8月に入ってから対日宣戦布告しています。このこと自体、どうもソ連(やその後継国であるロシア)が、どうも日本を恐れているように思えてならないのです。
そして、北方領土などの問題については、いまだに解決する目処が立たないかにも見えますが、基本的にはロシアの国力が低下していけば、いずれ解決の目処が立っていくのではないかと思う次第です。
(※余談ですが、この『安倍政権は連続在任最長へ:国の在り方、今こそ議論を』の記事を掲載した直後に安倍晋三総理大臣が辞意を表明し、その1ヵ月後には菅義偉総理大臣が就任しています。政界において「一寸先は闇」と言いますが、まさにそのとおりでしょう。)
脱戦後が徐々に進む
さて、1945年、すなわち昭和20年8月15日の「終戦」から、すでに76年が経過しました。
その間、日本は戦後復興を遂げ、一気に世界第2位の経済大国に浮上したものの、今世紀に入ってからはGDPで中国に抜かれ、する必要もない消費税等の増税により、日本経済は長年の停滞に苦しんでいます。
ただ、日本人の精神を長年縛ってきた敗戦のくびき、そして「戦争をしてはならない」というマインドコントロールも、かなり解けて来ているのではないでしょうか。
これについては余裕があれば近日中に改めて議論するつもりですが、端的にいえば、新聞、テレビを中心とするマスメディア(あるいはオールドメディア)による世論支配力が低下して来たからだと思います。
そして、こうした「戦後からの脱却」という視点で非常に興味深い記事が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載されていた、こんな記事です。
日本人の49%、「終戦記念日に加害と反省に言及する必要ない」
―――2021.08.02 10:18付 中央日報日本語版より
中央日報によると、日本の世論調査会社が今年6~7月に実施した世論調査で、「終戦記念日の追悼式で総理大臣が加害や反省に言及する必要はあるか」という質問項目に対し、「必要だ」とする回答が47%であったのに対し、「必要ない」が49%に達していたのだとか。
さらには、若い世代であるほど「必要ない」とする回答が多かった、としています。
情報源のひとつは、沖縄タイムスか
ただし、この記事だけだと、「日本の世論調査」としか記載されていませんが、記事のなかで「沖縄タイムズ」(※原文ママ)という単語が出て来ます。
これについて、出所を調べていくと、たしかに沖縄タイムスに本日、こんな社説が掲載されていました。
社説[平和世論調査]緊張緩和のビジョンを
―――2021年8月2日 05:00付 沖縄タイムスより
(※ちなみに正式なメディア名は、「沖縄タイムズ」ではなく「沖縄タイムス」ですので、ご注意ください。)
沖縄タイムスによると、これは同社自身も加盟する「日本世論調査会」が実施した『平和に関する全国郵送世論調査』というものだそうであり、問題の記述は同記事の末尾に出て来ます。
「『加害と反省に言及するべきだ』47%に対し、『必要はない』と答えた人は49%で、ほぼ拮抗している。若い世代に『必要ない』が多い」。
おそらく、これが中央日報の記述の情報源なのでしょうが、残念ながら現時点で、この設問項目のこれ以上の詳細については見当たりません。本当に47%の人が「反省すべきだ」と答えたのか、むしろそちらの方が信じられない、という人も多いのではないでしょうか。
(※なお、これ以外にも「日本は核兵器禁止条約に参加すべきか」、「日本が今後、戦争をする可能性があると思うか」などの質問項目のあるようなのですが、割愛します。もしご興味があれば沖縄タイムスの社説を直接読んで下さい。)
沖タイ「若い人たちに言葉が届いていない」
さて、沖縄タイムスの社説を読んでいると、末尾にこんな記述がありました。
「懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。若い人たちに届く言葉や手法が求められている」。
「懸念される」とありますが、果たして「懸念している」のは、いったい誰なのでしょう。
この手の「あえて主語を抜いた文章」には強い違和感を抱かざるを得ません。
もっとも、「若い人たち」に沖縄タイムスなどの主張が届かなくなり始めているというのは、どうも間違いなさそうです。
というよりも、新聞・テレビなどのマスメディア(≒オールドメディア)の世論を動かす力がピークだったのは、おそらくは2009年8月の衆議院議員総選挙のときだった、というのが、当ウェブサイトなりの仮説でもあります。
2013年~14年の「特定秘密保護法・安保関連法反対」騒動、2017年の「もりかけ騒動」、2020年以降のコロナ禍、と、騒動が発生するたびに、オールドメディアの影響力は下がって来たのではないかと思います。
今回は「五輪騒動」により、メディアは多くの広告主を敵に回した、といった分析もありますが(『メダルラッシュなのに新聞に広告入らず=日刊ゲンダイ』参照)、オールドメディアの主張が国民世論に響かなくなりつつあることについてはおそらく間違いないでしょう。
View Comments (31)
左派メディアの崩壊は記者クラブの崩壊に繋がるのか?
戦後100年辺りに大きなターニングポイントを迎えそうな予感がしますね。
懸念されるのは、沖縄タイムズの偏向した報道姿勢だと思います。
>本当に47%の人が「反省すべきだ」と答えたのか、むしろそちらの方が信じられない、という人も多いのではないでしょうか。
→ 私もそう思います。
>懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。
→ 懸念されるのは中国様をおいていったいどこが?
世論調査は太平洋戦争のことについて尋ねてるのに、なんで日中戦争の忘却が問題と、沖縄タイムスはかんがえてるんでしょうねぇ
…(´・ω・`)
百歩譲って、沖縄決戦を遂行した大日本帝国陸海軍の沖縄に対する加害者意識。
ソトナーの理不尽忘れるべからず?
沖縄決戦は確かに理不尽。
アメリカが沖縄に攻めてこなかったならば、沖縄決戦もなかったでしょうに。もちろん、これは、例えですがね。
何で日本ばかり悪いとされるのでしょうか。もう、いい加減にしましょうよ。
興味がなくて何も知らなければ「え、まぁ謝るものは謝ったほうがいいんじゃない?」となりがちです。特に日本人は退いて穏便に済ます文化であり且つ日本に於ける"戦争"というコトバは絶対悪ですからね。
そういった傾向であってすら「謝ったほうが良い」が半数に及ばないというのは、相当だと思います。「謝るもの」であるかを否定でき、沖縄タイムスの戯言などに惑わされないのなら、「頼もしい」ものではあれど「理解していない」などと非難するいわれはない。
というか、戦争を広く絶対悪と認識しているのもどうかとは思うものの、日本の一方的加害であったなどと思っている人は現代にどれくらいいるやら…?
そもそも個別の事案ではなく概念としての戦争に一方的な善悪など無いし、フィクションでも勧善懲悪は幼稚と見られ、各々の正義のぶつかり合いを描く作品が売れますし。
>「懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。若い人たちに届く言葉や手法が求められている」。
私はプーチンが嫌いですが、彼の「謝罪は一度すれば十分だ」というセリフには賛同します。
日中戦争に、事実として日本が中国に対して加害者の立場に立ったことはあるでしょうが、それに伴う責任は、我が国は国際法によって誠実に解消しています。日中共同宣言と日中友好条約がそれです。日中共同宣言発表の時点で、両国間の戦争状態は終結し、それによって我が国は加害者ではなくなりました。加害者意識など有害無益、全く不要であり、直ちに捨て去るべきものです。百年一日の頭を有するローカル紙の記者ごときに分かる理屈ではないのでしょうが。
その通りです!
更新ありがとうございます。沖縄タイムスってどんな購読者層を対象にしているのでしょうか?甚だ疑問なのはまず、「懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。若い人たちに届く言葉や手法が求められている」。
日中戦争なんて昭和40年代以後に生まれた人には「聞いた事も無い語句」でしょう(笑)。第二次世界大戦、太平洋戦争ならともかく、その直前の日中戦争(日華事変)なんて、忘れると言うより、「聞いたことない」じゃないですか?オクレ過ぎ(笑)ですよ。
8月15日。嫌な記憶しかありませんね。その前の週は広島、長崎原爆で「繰り返しません。過ちは」でしょう?主語の無い言葉が刻まれています。首相の言質が「必要はない」と答えた人は49%で、若い人ほど「必要ない」との回答比率が高かった。当然でしょう。
私は米国のマンハッタン計画やルーズベルト大統領を無条件に支持はしません。けども、76年も経ち、当時を具体的に知る人は、ほとんど鬼籍に入ってます。それなら、終戦を優位に進める為、ミッドウェー海戦後やレイテ後に中立国を介して講和を結ばなかった軍部を糾弾するべきと思います。
日本が暴走したのは、文民統制が出来なかった事、大陸奥地、樺太、東南アジアに食指を伸ばした事。すべてこれら愚策に尽きると思います(少なくともレイテ後に講和を進めれば、樺太の殺戮はありませんでした)。明治~昭和前半の日本人は、先進国に追いつこうと極端に走りすぎるきらいがある。顔色伺いすぎの今の方がマシかも(笑)。
同感です。
反省すべきは、なぜ無謀な戦争に突入し、継続されていったのか、その意思決定やインテリジェンスを検証し、継承していくことこそが、平和を実現できるのだと思います。加害者意識だけで平和の実現を可能とするとは、思えません。
>懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。
時間とともに忘却されてくのは仕方ないことだと思うのです♪
それに「加害意識」が薄らぐことに、なんの問題があるのか、わかんないのです♪
中国人が「かつて日中戦争で日本から被害を受けたから、謝罪(と賠償)をしろ」と考えるのはその人の勝手だけど、「あんたはその時生まれてなかったんじゃないの?」というツッコミはしないまでも、それにあわせて、
m(_ _)mごめんなさい
なんてする必要はないと思うのです♪
しょせんは当事者じゃない者の間で、被害意識や加害意識なんてものをぶつけあっても、意味がないと思うのです♪
それに、中国となにかの利害が対立してたときに、加害意識を持ってて「以前、悪いことしたから、ここは譲ることにしよう」なんて考えるのなら、そんなのは害悪にしかならないと思うのです♪
あと、
>普天間飛行場の「一日も早い危険性の除去」の必要性が、まだ十分に理解されていないというほかない。
というのも、何を言ってるのか?と思ったのです♪
普天間が危険だから何とかしなきゃいけないってことで、何年もかけて辺野古への移転を決めたのに、いざ実施しようとすると、鳩山元総理の甘言に踊らされたという面はあるにしても、辺野古は嫌だとか言い出したのは、誰だったんですか?と思うのです♪
>普天間の危険性を言うなら、政府の姿勢を「支持しない」と答えた人は、「支持する」の38%を大きく上回り、57%に上った。
ってことを憂慮すべきだと思うのです♪
>軟弱地盤の存在が明らかになり、先の見通しが立たなくなったことが影響しているのだろう。
と、さらっと書いてるけど、軟弱地盤で工事が難しくなってるなら、むしろ政府に工事費の積み増しをしてでも、予定通り完成させるように要求することが、普天間の危険性をなんとかするためには必要だと思うのです♪
沖縄に住んでない気楽さから言えることかもだけど、なんだかんだ言って工事を妨害する姿をみてたら、知事を筆頭に沖縄県自体が
>普天間飛行場の「一日も早い危険性の除去」の必要性
なんて、あんまし感じてないのかな?って思っちゃうのです♪
基地を押し付けられてる沖縄県の方々の気持ちを理解してない、って言われるとそのとおりだけど、これが、あたし自身の率直な感想なのです m(_ _)m
「懸念されるのは、日中戦争が忘却され、加害意識が日本社会から急速に薄らいでいくことだ。若い人たちに届く言葉や手法が求められている」
若い人に届く言葉が簡単に考えられるなら、現政権や都知事だってコロナ対策に苦労しないです。
というか沖縄タイムスさんが求めているんですよね。
やはりコンテストで素直に募集をかけてはいかがでしょうか?