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噴飯物:「文在寅氏歓迎しクアッド・プラスに入れよ」

FOIPの理念を理解しない国をFOIPに招くべきではない

ウェブ評論サイト『JBプレス』に昨日、この期に及んで、いまだに「韓国をクアッド・プラスに引き込むべきだ」、などと主張する意見を見かけました。そもそも「クアッド」自体が単なる国の数に由来する俗語であるという事実もさることながら、「クアッド」を論じるならば必ず説明すべき論点である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を無視していること、なにより「韓国を日本の側に取り込め」と主張していること――などから、全体的に「噴飯物」と言わざるを得ない論考です。

FOIPと韓国

FOIPとクアッドはイコールに非ず

クアッド(QUAD)とは、もともとはラテン語などに由来する「4」を意味する俗語であり、最近では日米豪印4ヵ国のことを指しています。

昨年秋口に2回目の日米豪印外相会談が東京で開催されたくらいからでしょうか、日本国内でも、そして世界的にも、この「クアッド」という単語が注目され始め、米国で今年1月に発足したジョー・バイデン政権も「クアッド重視」の姿勢をドナルド・J・トランプ前政権から引き継ぎました。

ただ、ここで誤解してはならないのは、この「クアッド」、「日米豪印の4ヵ国ありき」ではない、という点です。

もともとは、日本政府(というよりも安倍晋三総理大臣)が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」、あるいは英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略した「FOIP」という理念に強くコミットしているのがこの4ヵ国だった、という話です。

この「クアッド協議体」は、そもそも2004年12月に発生したスマトラ沖地震にこの4ヵ国が共同して国際的支援にあたったのが起源だ、などとされていますが、現在はまさに「自由主義、民主主義、法の支配、人権」といった普遍的価値・理念で結びついた協議体に発展しつつあります。

(※なお、少しだけ個人的な疑念を呈しておくと、「カースト」などの前近代的な仕組みが強く残っているなどとされるインドが、本当の意味で日米豪3ヵ国と基本的価値を共有しているのか、といった点については、ややスッキリしない部分ではあります。)

とはいえ、この「FOIP」ないし「クアッド」自体、現時点において何らかの具体的な条約機構、国際組織などの発足を伴っているわけではありません。

現状は日本政府が事実上の事務局を務めているようですが、どちらかといえば理念が先行しているイメージが強く、また、4ヵ国でFOIPに対するコミットメントの度合いにも濃淡があります。

また、4ヵ国以外にもFOIPにコミットしている国(たとえばカナダ)、FOIPに強い関心を示している国(たとえば英仏両国)などがあります。したがって、本来ならば「FOIP」と「クアッド」は別次元のものであり、「FOIP=クアッド」ではありません。

(※余談ですが、6月12日の日仏首脳会談では、エマニュエル・マクロン仏大統領のFOIPに対するコミットメントが若干弱くなったように見えるのは気がかりです)。

「クアッド・プラス」

こうしたなか、この春先によく聞かれた、そして最近になってあまり聞かなくなった用語のひとつが、「クアッド・プラス」です。

これは、「クアッド」にベトナム、韓国、ニュージーランドなど、いくつかの国を付け加えようとする発想で、誰が言い出したのかについてはよくわかりませんが、可能性が最も高いのは、おそらく韓国の政界またはメディアあたりでしょう。

用例としては、「中国包囲網であるクアッドに、韓国、ベトナム、ニュージーランドなどを加えた『クアッド・プラス』」、といったものです(※なお、念のために付言しておくと、日本政府がFOIPやクアッドが「中国を包囲・牽制するためのものである」と公式に述べたことは1回もありません)。

ただ、この「クアッド・プラス」という表現、極めてヘンテコです。

そもそも「クアッド」が「4」に由来する表現ですので、たとえば「クアッド」に1ヵ国加わって5ヵ国になるのであれば、それは「クアッド・プラス1」ではなく、「5」に由来する表現(たとえば「クインテット」、「ペンタ」、「ファイブ」、「イツツ」など)に改めるのが筋でしょう。

というよりも、クアッド自体がFOIPに強くコミットする国が対等な立場で参加する協議体ですので、「クアッド・プラス」という表現には、「クアッド」にぶら下がるだけの、何とも言えない「主体性のなさ」が漂ってくるのです。

あるいは、「『クアッド』に入ることで得られる利益は享受するけれども、『クアッド』としての義務は果たさない」という、いつものあの「ツートラック」でしょうか。

IPSってなんだ!?

これに絡めて紹介しておきたいのが、「IPS」という用語です。

前提条件としてお伝えしておきたいのですが、じつは、韓国のメディアや政治家らが「クアッド」や「クアッド・プラス」について言及する際、本来ならばそれとセットの用語であるはずの「FOIP」について取り上げることは、滅多にありません。

単純に、韓国メディアや「クアッドはFOIPにコミットしている国の協議体のことである」という点を理解していないからなのか、それとも「意図的に・わざと」無視しているからなのかは、わかりません。とにかく、「日米豪印=中国包囲網=クアッド」、というのが、どうやら彼らの認識のようなのです。

普通に考えたら、何もないのに日米豪印という地理的に離れた国々が理念も何もなしに結び付くことはあり得ないとわかりそうなものなのですが、なんだかよくわかりませんね。

ただ、最近だと、「クアッドはFOIPと密接な関係にある」という事実を覆い隠すことができなくなったからでしょうか、一部の韓国メディアがこの「FOIP」を、勝手に「IPS」と呼び変えているようなのです。

この「IPS」を使用している具体例のひとつが、昨日の『文在寅氏訪日に冷淡な日本、米大統領夫人には「歓迎」』でも取り上げた、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に14日付で掲載された次の記事です。

【コラム】韓半島が米中対決の弱点にならないようにしなければ(1)

―――2021.07.14 11:15付 中央日報日本語版より

この記事の冒頭には、こんな表現が出てきます。

米中戦略競争の最前線が東南アジアから東北アジアに北上中だ。中国のユーラシア一帯一路構想(BRI)と米国のインド太平洋戦略(IPS)が重なるところが東南アジアの陸地と海だ。

不肖ながら、「米国のインド太平洋戦略(IPS)」という用語、非常に違和感があります。

そもそも、FOIPの構成要素は「自由(free)」、「開放性(open)」、「インド洋(Indian Ocean)」、「太平洋(Pacific Ocean)」という4つであり、IPSには「自由」と「開放性」 という重要な要素が完全に欠落しています。

この「自由と開放性」という2つの要素は、まさにどちらも中国に存在しない概念であり、したがって、「FOIOP」から「FO」を抜いてしまうと、単なる地理的な戦略になってしまいます。

FOIPに参加する資格、あるのでしょうか?

少し深読みすると、このIPSという用語自体、「『自由と開放性』という2要素が含まれたままだと、韓国としては『クアッド・プラス』には参加できないから、わざわざIPSという用語を捏造してまで韓国が『クアッド・プラス』入りしようとしている」、という深層心理の投影なのかもしれません。

また、FOIPを進めているのは「米国」ではありません。

「日米豪印その他」です。

というよりも、そもそもFOIP自体、安倍晋三総理大臣の置き土産のようなものです(※もっとも、安倍総理から政権を引き継いだ菅義偉総理の方が、安倍政権時代よりもむしろ積極的にFOIPを進めようとしているフシもありますがが)。

つまり、日本由来のFOIPがクアッド諸国を束ね、G7コミュニケにまで盛り込まれたという事実を、韓国メディアとしては直視したくないのかもしれないのです(※おそらくその読みはドンピシャリ正解だと思いますよ!)。

ただ、「クアッド・プラス(?)」とやらに加わりたいのであれば、やはりFOIPへのコミットは避けて通れません。

そして、FOIPにコミットするということは、自由、民主主義、法の支配、人権尊重などの普遍的な原理を受け入れなければならない、という意味でもあります。

いや、それ以前に、もっと端的に言えば、「外国に対しウソをついてはならない」、「国際法に違反した判決を出してはならない」、「条約や国際的な約束を守らなければならない」、「遡及立法をしてはならない」という、国際社会の常識を学び、守らなければならない、という意味でもあります。

そして、それができない国がFOIPに入って来ることは、FOIP自体の弱体化を招きます。

このように考えていくと、FOIPは参加する国を選ぶ、というわけです。

(※余談ですが、個人的にはベトナムを含めた一部のASEAN諸国には、FOIPにフル・コミットする資格はないと考えている反面、台湾にはFOIPに参加する資格は十分にあると考えている次第です。)

文在寅氏の訪日と首脳会談

こうしたなか、ここ数日も当ウェブサイトでかなり積極的に取り上げている話題のひとつが、①文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が東京五輪を契機に訪日するかどうか、②その場合に日韓首脳会談が開かれるかどうか、そして③開かれるならばどんな内容となるか、という論点です。

これまでの報道をもとに、ざっくりと推理すると、韓国政府側は文在寅氏の訪日の条件として、日韓首脳会談を開催し、かつ、その会談のなかで「日韓諸懸案の全部または一部の解決の端緒を作る」という「お土産」を要求しているものと推定されます。

もしかして、韓国政府内には、「日本も東京五輪で外国首脳が来なくて困っているに違いない」、「文在寅大統領が参加するならば、日本にとっても大変に光栄なことであるに違いない」、「だからそのお土産を持たせろ」、といった発想でもあるのでしょうか。

もしその手の発想があるのならば、本当に考え方が甘すぎて呆れます(※というよりも、韓国政府関係者の発言などを眺めていると、たしかにそのように解釈するのが自然でしょう)。

もっとも、自称元徴用工問題にせよ、自称元慰安婦問題にせよ、日韓間の諸懸案については、基本的に次の3つのどれかしか落としどころがありません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

このうち「日韓関係破綻」に関する③を除外すれば、あり得る選択肢は①か②しかありませんが、どうも韓国側から①を提示しているフシはいっさいありません。

したがって、ここでいう「お土産」が③を意味するものであることは明らかでしょう。

かなりズレた「文在寅歓待」論

JBプレスの「?」な論考

このように考えるならば、日本としては「①を要求する」という一択しかあり得ず、そこを譲ってまで文在寅氏に日本に来てほしくないというのが、菅総理のホンネではないかと思うのです。

ただ、これに関連し、どこか「ズレた」議論を発見しました。ウェブ評論サイト『JBプレス』に昨日掲載された、次の論考です。

菅首相を悩ます「文在寅来日」問題、いっそ歓迎し踏み絵迫っては

―――2021.7.15付 JBプレスより

全部で3000文字もない文章ですが、文中を読んでいると、「首相官邸の事情に詳しい関係者に取材をしたのだろうな」、と思われる記述もある反面、何とも分析が浅いと感じざるを得ない論考でもあります。

記事の冒頭では、「官邸関係者によると」、菅総理の官邸が文在寅氏の訪日を「M問題」と呼び、「頭を悩ませているらしい」、などと述べています(ちなみに「M」は文在寅氏の「ぶん」の朝鮮語読みを頭文字にしたものだと思います)。

JPプレスの記事に言わせれば、なぜ「頭を悩ませて」いるのかといえば、「歓迎する状況にないが仏頂面で応対するわけにもいかない」から、なのだそうです。

ムスッとした顔で文大統領に会ったら、日韓関係に角が立つ。というよりオリンピック開催国の総理として面目が立たない」。

はて、そうでしょうか?

仏頂面で対応して、何が問題なのでしょうか?

この「首相官邸の関係者によると」、という記述については、正直、私たち外部者には検証のしようがありませんが、それでも記述内容の不自然さをもって、どうもこの論考自体の信憑性に対する疑念を抱いてしまいます。

平昌五輪の舞台裏

この点はさておき、気を取り直して、続きを読んでみると、やはり論点ごとに詰まってしまいます。

この「スタッフ」の方は、こう続けます。

2018年2月、韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピックが開かれた時、当時の安倍総理が招待を受けて、開会式に出席した。しかし文大統領は、金与正(キム・ヨジョン)党副部長ら北朝鮮訪問団のことしか頭になく、安倍総理は大いに冷遇された」。

この点についても、個人的には大いに疑問です。

そもそも2018年2月に安倍総理が平昌(へいしょう)に出掛けた理由は、おそらくは当時のマイク・ペンス米副大統領の要請があったからだと考えています。

当時も安倍総理は保守層の反対を押し切るようにして平昌に出掛け、金与正(きん・よしょう)ら北朝鮮の高官と「ニアミス」しましたが、これはおそらく、文在寅氏が金与正ら一行をペンス副大統領、安倍総理らに引き合わせるためにわざとそうした、というものでしょう。

実際、当時は文在寅氏が主宰する夕食会に、安倍、ペンス両氏がわざと遅れて参加し、ペンス氏はわざと途中で席を立つという「無礼」を働きました(個人的にこの行為は、安倍総理らが文在寅氏のメンツをつぶすために、わざと示し合わせてそうやったのではないかと疑っています)。

つまり、安倍総理の平昌出席は、単なる「冬季五輪の開会式参加」だけでなく、「北朝鮮高官に接触する」という目的があったのだと思います(ちなみに史上初の米朝首脳会談が実現したのは、その約4ヵ月後のことです)。

こうした背景、当時の安倍総理の行動などを丹念に調べれば、簡単に浮かび上がってくるのではないかと思うのですが…。

いずれにせよ、これらについてほとんど何も触れることなく、この論考では唐突に、次のように述べます。

おまけに、平昌から遠く離れたラブホテルのような宿泊地を与えられたため、頭に来た安倍総理は、予定を一日繰り上げて帰国してしまった。オリンピックの『M問題』は、そこから引きずっているのだ」。

なんだか、何が言いたいのかよくわからない文章ですね。

文在寅氏訪日と北朝鮮の関係

さて、なぜ文在寅氏が「降ってわいたように訪日を決めた」のでしょうか。

これについてはおそらく、文在寅氏にとっての重要な「政策目標」である北朝鮮が関わっていると考えるのが自然な発想でしょう。

個人的には『鈴置論考の文在寅氏「ストーカー」説と韓国の「狙い」』でも触れた「ブラックスワン・ストーカー」仮説、あるいは一部の論者が指摘する、「文在寅氏が米国から北朝鮮制裁の緩和の条件として日韓関係の改善を突き付けられている」、などの可能性があり得ると考えています。

ただ、リンク先の論考では、こうした仮説にはまったく触れられておらず、「北朝鮮」の「き」の字すら出てきません。出て来るのは、ソウルで韓国大統領府の取材を続ける韓国人ジャーナリストによる、次の趣旨の解説です。

4月のソウル・釜山両市長選での敗北にも関わらず、5月の訪米で文在寅氏はバイデン大統領と『意気投合』する姿を韓国国民に見せたこともあり、支持率をV字回復させた。日本に対しても同様に、気が合わなかった安倍総理が退陣し、菅総理が引き継いだので、これをチャンスと見ている」。

この記述も、なんだか分析としての底の浅さを感じますね。

いずれにせよ、2018年2月以降の平昌冬季五輪、韓国政府代表団の平壌(へいじょう)訪問、米国訪問などの流れを見ていると、文在寅政権は北朝鮮と切っても切れない関係にあるという点に、もっと敏感であるべきだと思うのですが…。

「韓国をクアッド・プラスに」

そのうえで、この論考のキモとなる、最も噴飯物の記述が、「アジア情勢を考えれば日韓首脳会談はチャンスになりうる」、という主張です。

日韓首脳会談について、ここからは愚見を述べたい。菅官邸は、『M問題』などと後ろ向きにならずに、広い視野に立って、前向きに来週の会談に臨んでもらいたい。というのも、今後のアジア情勢を決めるカギとなるのが、韓国だからだ」。

ほほう。

それは、いったいどういう趣旨による主張なのでしょうか。

端的にいえば、バイデン政権が対中政策として、クアッドに韓国を引き入れようとしている、というものです。具体的には、こんな考え方です。

バイデン政権としては、『QUAD』を『QUAD+』(4カ国+α)に広げていきたい。その際の最有力候補が、日本と同じアジアのアメリカの軍事同盟国である韓国なのである」。

じつに久しぶりに、「クアッド・プラス」という表現を見ました。

そして、「クアッド・プラス」という、そもそも韓国メディアでよく見かける表現を使いつつ、韓国がその「クアッド・プラス」とやらの最有力候補だと述べている時点で、この論者の方がFOIPを理解していない証拠に見えてなりません。

文章は、次のように続きます。

6月11日~13日に行われたイギリスG7(主要先進国)首脳会議に、韓国、オーストラリア、インドを招待した。いわゆる『G10体制』をお披露目させたのだ」。

…。

なんだか基本的な事実誤認があるようですが、今年のG7サミットを主催したのは英国であって、米国ではありません。

いや、もちろん、米国が英国に対して「韓国を招待したら?」とアドバイスした、という可能性は十分にありますが、もしそう思うのであれば、文章にヒトコト、そのように書いておくのが筋ではないかと思ってしまいます。

さらには、こんな記述もあります。

だが、アメリカや日本が思い描くような『G10体制』は、いまだできていな

ちょっと待ってください。

いつ日本が「G10体制」を思い描いたのですか?

日本が提唱しているのは「FOIP」であって「G10」ではありません。

基本的な事実誤認が多すぎます。

韓国はG10?まさか!

さて、リンク先記事の暴走は、まだ止まりません。

文在寅氏が参加したコーンウォールG7サミットについて、次のように述べるからです。

6月の『G10』の様子を見ていると(中略)裏切り者のユダかもしれない人物が混じっていたからだ。それは、文在寅大統領に他ならない。そのため今回、文大統領が日本へ来たいと言っているのだから、日本はアメリカと歩調を合わせて、『韓国は『QUAD+α』の仲間入りします』と、文大統領に踏み絵を踏ませればよいのだ」。

空手形を切るプロフェッショナルである文在寅氏のこと、そんな「踏み絵」を突き付けても、いとも簡単に踏み抜くに違いありません。というよりも、「韓国はクアッド・プラスの仲間入りします」ととりあえず宣言されて、自称元徴用工問題などの大幅な譲歩を要求してくるのは、目に見えています。

そもそも論ですが、「クアッド」に言及しているわりに「FOIP」に関する記述がまったく出て来ない時点で、この論考が「クアッド」を取り上げるにふさわしいものとも思えません。

韓国が自由・民主主義国に所属していながら、どうしてこれまでかたくなにFOIPに参加してこなかったのか、その背景を、記事執筆者の方は少しでも考えたことがおありなのでしょうか。

ちなみに、リンク先の論考は、次のように締められています。

そうやって、手練手管を駆使しながら、韓国を日本の側に取り込んでいく。昔の日本なら当たり前のようにできたことを、菅首相もやればよいのだ。その意味で、もしかしたら来週の日韓首脳会談は、『オリンピック外交のハイライト』になるかもしれない」。

周回遅れも甚だしい議論です。

昔の日本のように韓国を日本の側に取り込んでいけ、という主張だと理解しましたが、はたして昔の日本は韓国を「日本の側に取り込ん」できたのでしょうか?

実際には、日本の側に存在している「朝鮮半島生命線説(※)」を日本からの経済支援を引き出した全斗煥(ぜん・とかん)大統領以降の歴代の韓国大統領は、みな、日本を利用しようとしたか、それとも反日を全開にしていたかのどちらかです。

※朝鮮半島生命線説とは?

「韓国は地理的に見て日本に非常に近く、この地域が日本の敵対勢力に入れば日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす」、「このような事態を避けるため、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない」、などとする考え方のこと。

韓国のような国は「日本の側に取り込める」ようなものではありませんし、「取り込んだ」つもりになっていても、土壇場で裏切るのは目に見えています(あるいは、この論者様自身が論考のなかで、韓国を(裏切り者の)ユダにたとえていらっしゃったのをお忘れでしょうか)。

いずれにせよ、米国が韓国を「切る」という決断ができていないことはおそらく間違いない話ですし、また、米国が日本に対し、韓国に譲歩して関係を正常化せよ、などと要求してくる可能性もゼロではありません。

ただ、現在の日本は10年前の日本と異なります。

なぜなら、米国が日本にとって「なくてはならない国」であるのと同様、「FOIPの事務局」として機能することなどを通じ、日本もまた、米国にとって「なくてはならない国」に昇華したからです。

原理原則を捻じ曲げて韓国の不法行為を赦してやるという必要性がなくなってきたのは、FOIPを通じ、日本が外交的な立場を強めているからなのです。

その意味では、現時点で韓国を「日本の側に取り込む」ことを意識する必要も、韓国に対して「譲歩する」必要も、まったくないのです。

海の幸川の幸湖の幸でおもてなしを!

個人的な予測に基づけば、文在寅氏はおそらく7割くらいの確率で、日本にやって来るでしょう。

そして、菅総理は形式的な首脳会談に応じるとは思うのですが、ここでひとつ、あらためて提案させてください。

せっかくやるのであれば、密室での会談ではなく、テレビカメラに入っていただき、おいしくて安全な、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県の海の幸ないし川の幸、湖の幸などでの食事を堪能していただくのが良いと思います。

(※「栃木県と群馬県はそもそも海に面していないじゃないか」、といったツッコミは、韓国政府の方にお願い申し上げます。)

幸い、文在寅氏は海産物が好みだという情報もあるため(『【速報】韓国政府、米国に「ハンバーガー以外」を要求』等参照)、カニケーキと福島県産の水産物などをふんだんに盛り込んだ食事を、「菅元首相」と一緒に召し上がっていただくのです。

あ、ここでいう「菅元首相」とは、「菅(すが)総理」ではなく、あくまでも「菅(かん)直人元首相」のことですのでご注意ください。

感染症対策も兼ねて、おふたりで正面を向き、カメラに向かってニッコリ笑っていただき、おいしくて安全な日本食を徹底的にアピールしていただければ、日本にとってもハッピーですし、得bン在寅氏にとっても念願の「菅(かん)元首相」とのツーショット写真も撮れてハッピーでしょう。

菅総理、ぜひ、これでいかがでしょうか?

【参考】【重要】復興庁『おいしい福島』(※リンク先サイトに飛びます)

※復興庁にはとくに断りを入れていませんが、おいしくて安全な福島県産の食材については、当ウェブサイトとして積極的かつ勝手に宣伝活動を続けていきたいと考えている次第です。

新宿会計士:

View Comments (48)

  • 近藤氏の記事は、全体的にズレまくっていて、何故この記事が出て来たのか分かりません。
    同じJB pressで東京オリンピック時の文大統領来日の話題ならこの記事の方が、マシだと思います。
    文在寅「五輪訪日で首脳会談」計画がリーク合戦の末に風前の灯火
    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66066

    >「文在統領の東京五輪出席」は、文在寅政権下における、日韓関係改善の最後の足掛かりになる可能性があった。だがその実現性は急激に薄れつつある。韓国側の反日感情が依然として強い現状で、成果が保証されない大統領の訪日は、文在寅政権にとって逆風になりかねない。「平和の祭典」が東京で開かれても、日韓両国の距離は少しも縮まりそうもない。

    まだ、韓国側の考え方や置かれた状況が分かるでしょう。
    反日感情が強い国に譲歩しても、何の得にもなりませんし、韓国にそんな価値は有りません。

  • この近藤氏の記事はタブロイド紙レペルの軽さと薄さと事実誤認だらけなので、新宿会計士様がわざわざ貴重な時間を使うほどのものではないと感じます。
    この人の記事には韓国や中国の背景すら感じませんが、世の中をミスリードしたい連中のレトリックを学習できるのが、唯一の収穫でしょうか。

    • ウィキペディアとJRプレスのプロフィールを見ると
      近藤大介氏は週刊現代・現代ビジネス特別編集委員、明治大学国際日本学部講師。
      履歴をざっとまとめると
      1965年生まれ埼玉県出身、東大教育学部卒、国際情報学修士(1995年から1年間北京大学留学)。
      大学卒業後講談社に入社、「週刊FRIDAY」配属。その後週刊現代に移動。北京大留学はこの時期のようです。
       
      履歴詳細はウィキでご覧ください。
      個人的には見本のような香ばしいパヨクさんだな~、としか ^^;

  • おはようございます。
    本日の産経8面によれば、例の野党36歳党首が、「女性家族省や統一省をなくそう。統一をやめようというのではなく、外交と統一の業務がわかれているのは非効率」と言ったり、香港問題で中国を批判して反発されているとのこと。
    反日種族主義執筆者に対してではないですが、つい、ちょっとだけ、おお、と肯定的に思った私は甘すぎでしょうか。
    なお、非効率といえば日本の経済産業再生大臣は確かにいりませんね。

    • すみません。「に対してでは」ではなく「に対してほどでは」でした。失礼しました。

      • 朗報を追加させてください。産経9面:台湾TSMC 日本に半導体生産拠点(計画)。そういえば以前、広島への米国マイクロンの進出ニュースがありましたね。何が言いたいかと申しますと、日本は得意技のものつぐりで、韓国とサムスンを粉砕しましょう。中国には作らせず、買わせるだけにしましょう。

    • 理系初老さま
      36歳党首の発言は、現政権を否定するだけの物と考えた方が、良いと思います。

  • まあ、"クアッド"以前に、韓国には米国との軍事演習に、しっかり参加してもらわないとね。

  • 他の記事へのコメント
    https://shinjukuacc.com/20210715-02/#comments
    とダブルポストになってしまいますが、こちらの話題の方が適切なので一部コメント転載します。ご容赦ください。

    これは、条約違反・合意違反を既成事実化する悪手です。
    こんな考えを平気で表明する親韓派が居る事に注意する必要があります。 N谷元議員とか、M川るい議員とか。

    多分、米国政府の中にも居るでしょう。
    なんといっても彼らは、近視眼的な”敵の敵は味方”の忠実な実践者です。
    対日本におけるソ連
    対ソ連における中共
    対中共における”条約・合意を守らない国”(今これを実践しようとしている?)

    日本政府は、硬直した外交状態にしない為にも”条約・合意を守らない国”に対する制裁を先行してしっかりする必要があります。

    もし、首脳会談を強行する場合は、良い機会なので、テレビの前で全世界に向かって大統領に”条約・合意を守らない国、嘘を平気で吐く国と、議論しても無駄と考える。”と宣言できるか注目したい。本来、この適任者は、外務大臣と思うが、彼には無理。

  • 偉大な韓国は、G10やG8、クワッドよりも、もっと厳選された集団の一因であるべきです。
    厳選された国の数が少ない方が、歪んだ自尊心が満たされるでしょう。
    だから、韓国は、特定アジア三ヵ国の一員でよいではありませんか。

    文大統領がどうしても日本へ来て成果を残したいのであれば、例えば、慰安婦問題について以下のような声明文を用意しておきますから、サインだけしてください。それで、少しだけ事態が前進するでしょう。
    ・韓国が言い続けてきたいわゆる慰安婦は、自発的売春婦だと認める。
    ・呪いのツリ目像(韓国が言う少女像)は、「韓国人売春婦います」という看板であると認める。
    ・日本に居着いている多数の韓国人売春婦を全て韓国が引き取る。抵抗する者は韓国の責任で殺処分する。

    • イーシャ さん

      >・日本に居着いている多数の韓国人売春婦を全て韓国が引き取る。抵抗する者は韓国の責任で殺処分する。

      此処は韓国人売春婦ではなく『合法的に日本に入国した確たる証拠を提示出来ない在日コリアン』が良いと思います。

      韓国側は、韓国人が盗んだ対馬の仏像を同じ理屈で『韓国側に所有権がある』と認識した訳ですし。

      • あ、でも『慰安婦問題について』だから、イーシャさんの文章が適切ですね…。

        日本側からの「グランドバーゲン」的解決の内のひとつとして「在日コリアン問題」を扱い、其処で処理すれば良いのかもですね。

    • イーシャ様
      >特定アジア三ヶ国
      なるほど「T3」ですね!
      ベスト3だなんて、スゴいですよねー(棒。

  • IPSって何ですかぁ? IPアドレス?小保方晴子さんのSTAP?山中伸弥教授のIPS細胞?どれも違いますね。

    日本が事務局のFOIPはクチが裂けてもいいたくないから、しょうもない造語を作る。韓国がクアッドプラスって一時言ってたが、もう完全に死語になってます。G10とかも言ってたな(笑)。クアッドとFOIPの考え方、特に「自由で開かれたインド太平洋」を捻じ曲げて考える国は排除です。

    JBプレスの近藤氏の記事は酷いね。とても浅はかな論考です。読めたものじゃない。「ムスッとした顔で文大統領に会ったら、日韓関係に角が立つ」え?角が立ってるのは韓国の仕業だからですやん。何で嫌な相手にニコニコするの?来なくていいの!

    この際、無視。「来たければくればぁ〜」でヨシ。5分なら挨拶は出来るヨ〜。

  • 新宿会計士さんは「個人的な予測に基づけば、文在寅氏はおそらく7割くらいの確率で、日本にやって来るでしょう」とのことですが、私は希望的観測も含め、7割くらいの確率で来ない、と期待しております。そうなれば、韓国のGSOMIA撤退の撤回に続く日本外交の「パーフェクトゲーム」だと考えております。オリンピックの開会式に来たいという外交首脳を、こちらは礼を失することなく、シャットアウトできたのですから。菅首相はよっぽど(こちらのサイトをご覧の方たちと同程度に)ムンジェインのことが嫌いで、信用していないのでしょうね。JBプレスの近藤大介氏の評論は、あえてコメントする必要もない類のものかと思います。

  • 久し振りに近藤大介氏の記事を読みましたが、FOIPや文在寅、韓国人に対する理解の浅さを感じさせる内容だと思います。

    日本政府は野党候補を応援すれば良いとの主張をしていますが、『対日レイシストに非ずんば韓国人に非ず』という韓国社会の大前提を理解していないのだなぁと。

    米国も韓国を見切りつつある今、『自己評価が高過ぎるメンヘラマジキチリスカブス』を日本が相手にする理由は無いです。

    韓国側の『民族自決』を遠く離れた場所から眺めているべきです。

  • 個人的には文大統領がやたら日本に来たがるようになったのは、もはや北朝鮮は関係ないと思います。
    アメリカに北と話したければまず日韓関係を改善しろ、と言われたのかどうか知りませんが、日韓関係を改善したところで北が振り向いてくれるとは限りません。
    努力したところで空振りに終わる可能性は低くありません。
    近視眼的な韓国人のことですから、目的はもっと目の前のことでしょう。
    ワクチンとか、半導体製造関連とか、日韓スワップとか。

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