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NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実

1兆円を超す金融資産、不透明な連結決算に加えて「隠れ人件費」疑惑も

NHKが2021年3月期(=2020年度)の財務諸表と連結財務諸表を公表しました。当ウェブサイトとしては、NHKが「公共放送」として相応しくないほど非常識に超高額な人件費を負担している点や、国民からかき集めた巨額のカネを1兆円以上、さまざまな形で保有している点を指摘して来ましたが、ここで最新状況について改めてまとめておくとともに、あらためて、NHKの「あり方」について考えてみたいと思います。

NHK問題の要諦

NHK問題をまとめると…?

当ウェブサイトではこれまで、「NHK問題」について、しばしば議論をしてきました。そうした議論に加え、複数のコメント主様からのフィードバックなども踏まえて整理してきた結果に基づけば、NHKを巡っては、少なくとも次のような論点があると考えられます。

NHKを巡る諸論点
  • ①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
  • ②公共放送が必要だったとしても、現在のNHKにそれを担う資格があるのか
  • ③「見ない人からも徴収する」などの受信料制度は妥当なのか
  • ④1兆円超の金融資産、莫大な不動産などは、NHKの経営に必要なのか
  • ⑤少なく見積もって職員1人あたり1550万円超という人件費水準は妥当なのか

また、NHK固有の問題点としては、少なくとも次のようなものをれ金金融穗することができるでしょう。

公共放送と商業放送の線引きが曖昧である(あるいは意図的に曖昧にされている)
  • NHKが主張する「公共放送」には明確な定義がないし、実際、NHKは歌番組、クイズ番組、お笑い番組、アニメ、ドラマなど、民放・商業放送と同じジャンルの番組も放送している
  • NHKが実際に放送している番組には、政治的中立性が疑わしいもの、客観的な事実関係が疑われるものなども含まれている(あるいはその可能性がある)
企業集団の状況・財務内容が不透明である
  • NHKには連結集団全体で、2020年3月末時点において、年金資産(=オフバラ項目)を含めて1兆円を超す金融資産が存在する
  • NHKが保有している渋谷の放送センターを含めた各不動産物件は取得原価会計により計上されているが、時価評価すれば数千億円、あるいは数兆円規模になるかもしれない
  • NHKが過去に作成した番組のコンテンツについては一般にネット上で無料公開などされておらず、コンテンツ利用権は有効活用されているとは言い難い
NHK受信料の使途
  • NHKは財務諸表/連結財務諸表を作成してはいるが、関連会社を多数設立しており、これら関連会社における人件費の状況については開示していない
  • NHK本体の人件費は単純計算で1人あたり1550万円前後だが(2020年度実績)、NHK職員に対する豪奢な社宅などの一部報道が正しければ、「隠れ人件費」は1人あたり年間数百万円に達する可能性もある
  • NHKの契約収納費は受信料収入全体の10%近くにも達するなど、受信料の徴収コストが高過ぎる

…。

NHKが「公共放送」を担う資格があるかは別問題

この点、あくまでも個人的な意見を申し上げるならば、「公共的なコンテンツを放送する機能」というものがあっても良いとは思いますが、その場合であっても、何が「公共的なコンテンツ」に該当するのかの国民的な議論は必要だと思いますし、実際、多くの国民もこの点に強い不満を抱いているフシがあります。

たとえば、災害時の各地の罹災状況と避難所に関する情報、緊急支援物資に関する情報、安否に関する情報などについては、ニーズとしては強いでしょう。また、ニュースキャスターの音声などのバイアスなしに、国会中継をそのまま視聴したいと考える国民もいるかもしれません。

ところが、現在のNHKの放送が、こうしたニーズに答えていると言えるのかは別問題です。

とくに、災害時に被災地上空から「悲惨な絵」を撮影し、センセーショナルに報じるというのは、正直、百害あって一利なしですし、ましてや被災地でロケ車などが災害支援を妨害するということは、本来、あってはならないことです。

また、NHKの国会中継は、特定議員の出番になると、「国会中継の途中ですが、ここでニュースをお知らせします」、という具合に、いきなり打ち切られることもあるようです。

このように考えていくと、果たして本当にNHKが「公共放送」として相応しい仕事をしているのか、極めて疑問でもある、というわけです。

NHKの財務分析

NHKの財務諸表/連結財務諸表

ただ、NHKは財務的に見れば、「超優良企業」です。

そして、NHKは2021年3月期(=2020年度)の財務諸表連結財務諸表を公表しました。

これについて、真っ先に注目したいのが、相変わらず豊富な金融資産と異常に高額な人件費です。

まずは、連結財務諸表上確認できる金融資産の残高です(図表1)。

図表1 NHKが保有する金融資産(2021年3月末時点)
項目 2021年3月期 前期比増減
現金及び預金 991億円 ▲51億円(▲5.11%)
有価証券 4184億円 +813億円(+19.44%)
長期保有有価証券 1204億円 ▲99億円(▲8.24%)
建設積立資産 1693億円 ▲2億円(▲0.10%)
年金資産 4430億円 +532億円(+12.01%)
合計 1兆2503億円 +1194億円(+9.55%)

(【出所】NHK『令和2年度 連結財務諸表』より著者作成)

あくまでも図表1に記載している項目は、連結貸借対照表や退職給付注記などをもとに、換金可能性が高そうな項目のみを重点的に抽出したものですが、単純合計で前期比1000億円以上増え、1.25兆円(!)に達しています。

NHKが2021年3月期に徴収した7006億という受信料の約1.8年分、というわけですね。

この点、「年金資産は職員やOBらの退職給付に充てるための資金であり、NHKの資産ではない」とする意見もありますが、こうした意見も適切ではありません。年金資産自体、過去・現在のNHKの職員に支払われるための原資だからです。

渋谷の一等地なのに562億円以下!?NHKに不動産は必要ですか?

次に、図表1で気を付けなければならないのは、ここで「1.25兆円もの金融資産」については、あくまでも金融商品に限られている、という事実です。NHKが渋谷の一等地などに保有する莫大な土地・建物については、上記「1.25兆円の資産」にはカウントされていません。

ちなみにNHKの連結財務諸表上計上されている有形固定資産は、「▼建物及び構築物(2234億円)、▼機械装置及び車両運搬具(1539億円)、▼土地(550億円)、▼建設仮勘定(340億円)」、などとなっており、合計しても4735億円に過ぎません。

NHKは物件明細やその用途を開示していないため、NHKがどれほどの土地・建物を保有しているのか、実態はよくわかりませんが、少なくとも渋谷の一等地にある放送センターの敷地は82,645平米です(※2016年8月30日付NHK『放送センター建替基本計画の概要』参照)。

そして、この渋谷放送センター敷地だけでなく、NHKは全国各地にさまざまな不動産物件を保有していると考えられます。その時価は下手をすれば数兆円に達すると考えられ、いずれにせよ、帳簿価額である562億円とはかけ離れています。

もっと大きな問題は、そもそも巨大な敷地に巨大な放送センター、スタジオ、このインターネット時代に果たして本当に必要なのか、という点です。このインターネット時代において優秀なクリエイターが動画サイトに投稿している動画と比べ、コストを掛け過ぎではないでしょうか。

さらに、NHKの不動産を巡って、不審な点はほかにも数多くあります。

なかでも数多く設立されているNHK関連会社のオフィスに加えて、NHK職員が格安で入居するための超豪奢な社宅などをNHKが保有しているとの報道などもあります(『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』等参照)。

これらの情報について真偽は定かではありませんが、NHKの不透明な決算を見ていると、無碍に否定することはできません。

職員1人1573万円という異常に高額な人件費

次に問題なのが、NHKはかき集めた莫大な受信料の使途です。

NHKが2021年3月までの1年間で収納した受信料は前年度比226億円減って7005億7515万円でしたが、図表2はその使途の一部を抜粋したものです。

図表2 NHKの収支項目の抜粋(2021年3月)
科目 金額 前期比増減
経常事業収入(①) 7137億8292万円 ▲235億円(▲3.29%)
うち、受信料 7005億7515万円 ▲226億円(▲3.23%)
国内放送費 3111億1781万円 ▲385億円(▲12.37%)
国際放送費 192億1583万円 ▲54億円(▲27.91%)
契約収納費 575億0021万円 ▲53億円(▲9.17%)
給与 1095億2092万円 ▲20億円(▲1.80%)
退職手当・厚生費 537億1804万円 +41億円(+7.57%)

(【出所】NHK『令和2年度 財務諸表』より著者作成)

驚くことに、7005億円のうちの「国内放送費」に充てられているのは44.41%に過ぎず、「国際放送費」とあわせても、「放送費」に充てられているのは47.15%に過ぎません。

そして、7000億円を超える受信料収入のうち、約25%が人件費に充てられており、さらに10%近くが「契約収納費」に使われている、ということです。

NHKが受信料をかき集めるために、受信料の1割を費やしているというのも、恐ろしい話ですね。

そして、大きな問題点は、それだけではありません。NHK職員に対する人件費が、引き続き、異常に高額であるという事実です(図表3)。

図表3 NHKの人件費(2021年3月期)
区分 金額 前期比増減
職員給与(①) 1090億4925万円 ▲20億円(▲1.80%)
役員報酬(②) 3億8693万円 ▲0億円(▲1.52%)
退職手当(③) 325億1377万円 +38億円(+11.66%)
厚生保健費(④) 211億6687万円 +3億円(+1.29%)
①~④合計 1631億1681万円 +21億円(+1.28%)
①、③、④合計 1627億2989万円 +21億円(+1.29%)

(【出所】NHK『令和2年度 財務諸表』P65より著者作成)

図表3の数値が図表2の数値と微妙に合っていない理由については、よくわかりませんが、とりあえず先に進みましょう。

上記①~④のうち、②については役員報酬であるため、「職員」に対する人件費は②を除いた金額、すなわち①+③+④です(ただし、厳密には「退職手当」や「厚生保健費」に役員にかかるものが含まれているようですが、それについて分けることができないため、ここではその点を無視します)。

2021年3月期において、1600億円を超える人件費が計上されているというのも凄い話ですが、もっと驚くのは、①、③、④の合計額を職員1人あたりで割ると、1573万3335円と、じつに1600万円近くに達るのです(ちなみに昨年は1554万5538円でした)。

なお、NHK『よくある質問集』によると、2020年度のNHKの職員は10,343人(うち男8,285人、女2,058人)だとされています。

そして、この1573万3335円はNHK「本体」のみの1人あたり人件費であり、子会社・関連会社についての人件費の開示はありません。

※なお、かつてツイッターなどで「退職手当にはOBに対する年金の支払が含まれている」、「これを現役職員1人あたりで割るのはおかしい」と述べてきた人がいましたが、この指摘には事実誤認があります。厳密には、「退職給付費用」は「退職給付債務の当期発生分」に数理計算上の差異などの償却を加減して求まるため、年金資産の運用パフォーマンス等次第では過去のOBに支給すべき金額の積立不足が含まれる可能性もありますが、その逆の可能性もあり、一概に「OBの分が含まれている」とはいえません。ただし、当ウェブサイトとしては退職給付会計の細かい仕組みについて述べるつもりはありませんので、疑問に思われた方は市販の解説書などをお読みください。

職員は豪奢な社宅に住んでいる!?

さて、人件費の話が出たついでに、先ほどの不動産の論点に戻りましょう。

NHKの財務諸表・連結財務諸表では、残念ながら、NHKが所有しているはずの不動産の物件明細は見当たりません。しかし、一部のメディアは、NHKが職員のために豪奢な社宅を格安の家賃で提供している、などと報じています。

少し古い記事ですが、たとえば『サンデー毎日』は今から約6年前に、こんな記事を掲載しています。

受信料収入でNHK職員の「好待遇」全調査

NHK受信料値下げの「公約」を事実上撤回した籾井勝人会長。だが、値下げの原資はある。視聴者のために「放送界の覇者」といわれるNHK職員の恵まれた待遇を再考すれば、巨額の「埋蔵金」が掘り出されるのも夢ではないのだ。<<…続きを読む>>
―――サンデー毎日 2015年5月31日号より

これによると、NHK職員は東京都心部にある100平米の社宅を月額3万円(!)という異常に安い家賃で借りているのだそうです。仮にこれが事実なら、NHK職員は下手をすると、年間数百万円から、場合によっては一千万円近い「隠れ給料」をもらっているという計算です。

というのも、東京都心で100平米を超える物件について、不動産探しのウェブサイトなどで調べてみると、だいたい月額で安くても40万円、標準で60~80万円、下手をすれば100万円を優に超える物件が出てくるからです。

仮に、NHK職員の社宅が、民間所有の月額83万円の物件とほぼ同じ条件だったとしましょう。

この社宅にNHK職員が月額3万円で住んでいたとしたら、NHKが80万円分の差額を補填してくれているのと同じです。そして、年収は960万円(!)増える、という計算ですね。

もちろん、NHK職員が受け取っているであろう「隠れ給与」については、計算条件によっても大きく変わって来ます(当ウェブサイトの今年1月の『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』では、少なめに「600万円」という試算を示しています)。

これらの「隠れ給与」、NHKの財務諸表上は、おそらく、有形固定資産勘定に計上され、人件費ではなく減価償却費に紛れているという可能性が濃厚です。

NHKと「国民の敵」論

利権の特徴

さて、普段から当ウェブサイトでは、「利権」にはだいたい3つの特徴があるのではないか、とする仮説を立てています。

利権の3つの特徴
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の怠惰と強欲で利権が自壊することもある。

(【出所】著者作成)

1つ目の「利権とは理不尽なものである」というのは、多くの方に共感していただけるでしょう。利権の多くは、もともとは何らかの理由があって成立したものなのかもしれませんが、徐々に時代にそぐわないものとなっていき、やがてはあきらかに不合理、あるいは理不尽なものとなってしまうわけです。

そして、2つ目の「いったん確立した利権はなかなか壊れない」という点についても、同様に多くの方に共感していただけるものと信じています。便器にこびりついた汚れが落ちないのと同様、いったん確立した利権は、ちょっとやそっとでは壊れない、というわけですね。

NHKは経済合理性の例外

これを、NHKについて当てはめて考えておきましょう。

日本は本来、「自由民主主義国」です。

ということは、日本で大きな社会的影響力を持っているのは自由主義の原理によって消費者に支持され、自由経済競争に勝ち残ってきた企業であるはずですし、日本で大きな権力を握っているのは民主主義の手続によって有権者の多数から支持された政党であるはずです。

逆にいえば、自由経済競争で勝ち残ったわけでもないくせに、やたらと大きな社会的影響力を握っている組織、民主主義の手続で有権者から選ばれたわけでもないくせにやたらと大きな権力を握っている組織というものは、基本的に存在を許されません。

この点、当ウェブサイトでは以前から「国民の敵」という考え方を提示しています。これは、私たち日本国民が選んだわけでもないくせに、非常に強い権力や社会的影響力を持ち、私たちの社会を悪くしている勢力のことであり、もう少し正確にいえば、少なくとも次の①、②の類型があると考えています。

国民の敵とは
  • ①普通選挙を通じて有権者から信任されたわけでもないくせに、不当に強い政治的な権力を握り、国益を破壊する勢力。
  • ②経済競争を通じて消費者から選択されたわけでもないくせに、不当に強い社会的影響力を握り、国益を破壊する勢力。

もちろん、世の中のありとあらゆる組織が、自由主義や民主主義の仕組みで成り立たねばならないというわけではありません。なかには政府系金融機関のように、国策的に特定産業を支援する機関などがあっても良いですし、国や地方の行政機構を考えたら、すべての役人を選挙で選ぶというのも非現実的です。

ただ、当ウェブサイトが問題視したいのは、「選挙で選ばれたわけでもないくせに」、または「経済競争で勝ち残ったわけでもないくせに」、不当に大きな権力・影響力を握っているような組織の存在です。

自由主義の例外はどこまで許されるのか

そもそも論として、私たちが暮らす自由主義社会においては、「自分が購入する財・サービスに見合ったカネを払う」のが鉄則です。逆にいえば、「自分が購入しない財・サービスにカネを払うことはない」、という意味でもあります。

たとえば、A社、B社と2つの会社の製品があったとして、消費者であるXさんは「A社の商品が気に入った」、「B社の商品が気に入らない」と思えば、カネを出してA社の商品を買い、B社の商品を買わなければ良いだけの話です。

この場合、XさんはA社にカネを払い、B社にカネを払わない、という行動を取ります。これは当たり前の話ですね。

ただし、どうしてもやむを得ない事情により、自分が購入しない財・サービスにカネを払わねばならないこともあります。その典型例は税金でしょう。とくに所得税の場合、たくさんの税金を払ったからといって、受けられる公共サービスの質が上がるわけではありません。

極端な話、毎年所得税をほとんど払っていないような人であっても、高額納税者であっても、役所に行って住民票を取るのに待たされる時間は同じです。

こうした例外はいくつかあるのですが、それでも基本的には私たちが暮らす社会では、「自分が購入する財・サービスに見合ったカネを払う」というのが大原則であり、あとはどこまで例外を認めるかについては、私たち有権者が議論し、社会的なコンセンサスを形成していかねばならない論点です。

NHKは自由主義の例外である

以上を踏まえたうえで、現在のNHKが自由主義の例外である、という事実を指摘しておきましょう。

基本的に現在の法律では、消費者はテレビを設置すれば、自動的にNHKに対し、事実上、カネを払わなければならないとされています。その根拠法が放送法第64条第1項本文です。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

つまり、放送法第64条第1項本文では「テレビを設置したら(NHKを見る、見ないに関係なく)NHKと契約をしなければならない」と定めています(厳密にいえば、「契約をしろ」であって「カネを払え」ではないのですが、事実上、「NHKにカネを払え」、という根拠法のようなものです)。

この点、私たち消費者の側には、いったんテレビを設置してしまった場合、「NHKにカネを払わない」という選択を取る自由がありません。これは非常におかしな話です。極端な話、私たち消費者がNHKを1秒も視聴しなかったとしても、「NHKにカネを払わない」という自由を許されていないからです。

これは明らかに経済の自由に反します。先ほど、「消費者の側には、B社の商品が気に入らなければ、B社にカネを払わない自由がある」と申し上げましたが、極端な話、「B社の商品が気に入らなくて買っていないにも関わらず、B社にカネを払わないといけない」からです。

ただし、私たち日本国民が税金を払わなければならないのと同様に、NHKにも何らかの「特別な事情」が存在するならば、自由主義の例外として、放送法が私たち日本国民に対し、受信料を支払うことを強制することの合理性があるはずです。

逆に、「特別な事情」もないくせにそれを強要しているのであれば、NHKは間違いなく「国民の敵」です。

では、NHKという組織に、私たち一般消費者から受信料を強引にむしりとっていくだけの「合理性」があるのでしょうか。

NHKの未来

そして、NHKの最新の財務諸表をレビューしてみた結果、NHKの人件費水準、NHKの抱え込む巨額の資産、不透明な時価情報など、相変わらず問題点は山積しているように思えてなりません。

もちろん、このような話を掲載すると、「NHKでなければ制作できない番組もある」、「商業主義と無関係なNHKでなければ、とくに科学系の良質な番組を作ることはできない」、といった反論をいただくことがあります。

くどいようですが、当ウェブサイトが問題にしているのは、「NHKの受信料の水準が妥当なのか」、「NHKの番組を見ない人からも受信料を半強制的に徴収するのが、社会正義に照らして正しいのか」、という論点であり、「NHKの番組が良質かどうか」という点は単なる論点ずらしです。

それに、NHKが制作している科学系の番組が「良質」なのかどうかはさておき、一般論として申し上げるなら、どんな組織であっても、それなりにコストをかければ、それなりの質の番組を制作することができるのは当然の話です。

つまり、「公共放送が必要かどうか」という議論と、「NHKが『公共放送』として相応しいかどうか」という議論は、この際、明確に分けなければなりません。

さらに大きな問題があるとすれば、NHKの経営に対し、国会も、監督官庁である総務省も、十分に監視・監督しているようには見えず、また、私たち一般国民に対しても彼らが十分な情報を開示しているとは言い難い点です。

たとえば、NHKを含めた地上波テレビ局が制作する番組については「BPO」という業界内組織が自主規制をしていると称していますが、BPOが放送コンテンツを監視するための機構として十分に機能しているのかといえば、その答えは「NO」でしょう。

放送法第64条の規定をタテに、巨額の受信料を一方的にかき集め、反社会的な番組を制作したり、NHK職員を異常に厚遇したり、連結集団内に子会社をたくさん作ったり、1兆円を超える金融資産を溜め込んだりする組織に「公共性」があるのかどうか。

この点については、もう1度、国民レベルで議論すべきでしょう。

もっとも、昨今のコロナ禍の影響もあり、たとえば『コロナ禍でのテレビ局経営:在京5局はすべて減収減益』でも説明したとおり、民放各局はどこも収益状況が苦しく、NHKだけが巨額の利益を得て、職員1人あたり1600万円近い人件費を計上し続けることが許されるのかどうかは微妙でしょう。

NHKが昨年、受信料水準を「月額35円」値下げしたこと(『「金融資産1兆円以上」のNHKが月額35円値下げ』等参照)などの行動を見ていると、NHKという組織が利権にドップリ浸かるあまり、NHK経営陣らに世論を読む力はないように思えてなりません。

やはり「利権3原則」の3番目、「利権を持っている者の怠惰と強欲で利権が自壊することもある」は、NHKにも当てはまるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (17)

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、NHKと同じく、自分は間違えない存在と自惚れそうなので)
     NHKの一人あたりの適切な人件費を算出するのは、人件費を下げていって、どこまで日本国民が(番組の質の低下に)我慢できるかで、測るしかないのではないでしょうか。
     蛇足ですが、「コロナ渦なので、(テレビを所有していれば払わなければならない)NHK受信料を、一時的に無料にする」と、立憲民主党あたりが言わないのでしょうか。
     駄文にて失礼しました。

  • NHKから国民を守る党で議席を獲得した国会議員がドアホウであったことがくれぐれも悔やまれます。

    • まことに申し訳ありません。本当にすみません。
      「NHKでは東京オリンピックの注目競技を7月21日(水)のソフトボールから、8月8日(日)の閉会式まで毎日地上波でライブ中継します」
      ----取り急ぎご連絡まで。7月21日、急な私用のため休みます。

  • BKの建屋、ガワもそやけどナカもカネ掛かった造りやもんなァ
    テレ大のナカ見たら愕然とする差やで

  • ヤフーの株式ランキングの中に平均年収というのがある。それによると、放送業界はTBS 15,010千円、日本テレビ 13,840千円 テレビ朝日 13,820千円、テレビ東京 12,900千円。どれもすごいですね。民間がいくら払おうが自由だがNHKは総務省所管の特殊法人。一般庶民から集めた受信料からこんなに給料払っていいの?
    コロナ禍で再放送ばかりやって経費はかなり減っているはず。受信料かえせ!

    • 受信料徴収率下がっても経費も減って黒字転換だそうでっせ

  • 更新ありがとうございます。

    NHK本体の人件費は1人あたり1550万円前後!あり得ないっす。そんな年収貰った事ないから僻みもあるのでしょうが、NHK職員に対する豪奢な社宅が正しければ、人件費+住宅助成費+福利厚生費等では2,500万円以上(チキンだなぁ。もっとあるやろ 笑)。

    NHKが公共放送と言えるか、というとかなり疑問です。事実のみ伝えるニュース、天気予報、災害情報ぐらいなら公共ですが、娯楽や趣味、教育系、芸術、スポーツ、映画、ドラマ、海外放送等はやって貰わなくて結構です。ましてや昔からマイナー競技にテコ入れして来た「NHK杯」なんかも辞めてください。そんなものに勝手に経費使わないで(公共なら)下さい。

    私は、今のNHKは廃局が望ましいと思う。何万人もの人の痛みを伴うが、NHKは既に害悪です。浮いた金は国庫に回す。NHKを潰せば、民放もキー局5社が2社ぐらいに減るのでは?寡占化期待ではなく、今より更に視聴者が減るという意味です。残った2社も青息吐息の状態期待。

  • 朝日新聞や毎日新聞や中日新聞(東京新聞)は、非上場とは言え、一応は民間の営利団体ですから、倒産の可能性はゼロではありません。

    しかし、NHKは放送法によってしっかりと守られています。どんなに内部が腐敗堕落しようと、NHKが自壊・倒産する可能性はありません。NHKを解散/解体/改革するには、放送法を改定する他に道はありません。

    N国党は投票者を裏切り、それ以外の政党はNHKを改革する意思を持ちません。立法府の不作為を改めるには、論理上は国民がしかるべき政治家を国会に送る必要があります。しかし、私はNHK改革/解体を目指すような政治家が現れる期待を持ちません。もしも放送法改正を公約に掲げるような政治家が現れたら、NHKと民法がスクラムを組み、よってたかってその政治家を社会的に抹殺するでしょう。

    カーナビのワンセグにまで受信料支払いを要求し、ネット配信にまで受信料を徴収しようとするNHKの魔の手から逃れるすべはありません。NHKは盤石です。

    唯一の可能性は、国民が放送法改定の世論を盛り上げ、自民党を後押しし、全力で放送法改正を叩き潰しに来るマスコミの攻撃から政治家を守ることです。今もって惰性でTVを観ている家庭・個人が多数いる現状では、そうした機運が盛り上がる可能性は少ないと思います。

    自分にできることはやろうと、周囲にNHKの問題を説明していますが、かつて民主党の危険性を説いたときに「そんな、まさか」と相手にしてもらえなかったように、NHKへの信頼は篤く「そんな、まさか」の反応ばかりです。諦めずに続けます。

    >「NHKの番組が良質かどうか」という点は単なる論点ずらしです。

    その通りです。教育テレビの必要性を説く方もいらっしゃいますが、それ故にNHKが現状のままで良いというのであれば論点ずらしです。

    > NHK経営陣らに世論を読む力はないように思えてなりません。

    そもそも、そんなにNHK批判の世論は盛り上がっていないと思います。無い世論は読めないでしょう。皆様、頑張って参りましょう。

  • 高すぎる賃金は、報道の公益性の観点から問題有ると思いますね。

  • 公共組織は、業務上での利潤を追求せず社会に還元するのが原則なのかと。
    実態を隠し、帳簿上での利益を計上せず社員に還元するのは本末転倒・・。

    *まさかの剰余金対策としての人件費増で、私腹を肥やしていたなんてね。

  • 朝日新聞は木曜日に前の週の月曜から日曜までの視聴率の良かったテレビ番組20本を「ベスト20」として掲載しています。最初これを見たとき、あれっと思いました。NHKの番組が半分近くを占めていて、1位と2位はNHKの朝のドラマとニュースでした。見た目、民放はNHKに負けてます。NHKよりも民放のほうが視聴率に神経質になっているのだろうと思っていたので意外でした。
    それ以後、このベスト20をときどき見ていると、更に不思議なことが。2、3カ月前まで20本のなかにフジテレビの番組がない! フジテレビという局が存在していません。
    最近はフジテレビのドラマが1本だけランクインするようになりました。
    今日はNHKは3本だけ。フジテレビのドラマも1本。でも、今回が最終回なので来週にはどうなるか。

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