今朝の『私たち日本の大事な友人である台湾に送られるワクチン』に、「続報」があります。産経ニュースに昨晩、今回の台湾への迅速なワクチン提供が実現した背景には、安倍晋三総理の動きがあったとする趣旨の報道が掲載されていました。中国が台湾へのワクチン供与を妨害しようとして、その結果が「6月4日のワクチン提供」だったのだとしたら、これは当てこすりとしてはなかなか強烈です。
「8964」を人類に記憶に…
本日で、あの忌まわしい「六四天安門事件」から32年が経過しました。
あらためて、その内容を振り返っておくと、本当にやりきれない思いがします。これについて、『ビジネスインサイダー』というウェブサイトに昨年、こんな記事が掲載されていました。
中国が歴史から葬り去ろうとしている天安門事件、30枚の写真
―――2020/05/28 17:40付 Business Insider より
「中国が歴史から葬り去ろうとしている天安門事件」。
当時の生々しい写真からは、ソ連、東欧諸国などの民主化を受けた、民主化を渇望する中国の民衆の熱い思いと緊迫感が伝わってくる思いがします。
天安門事件の犠牲者数を巡っては、「1人」という数字から「数百人」、「千人以上」など、さまざまな推計がありますが、その正確な人数はいまでも明らかではありません。こうしたなか、今から約3年半前、英国で「中国人民解放軍が殺害した人数は、少なくとも1万人にのぼる」との報道がありました。
天安門事件の死者は「1万人」 英外交機密文書
―――2017年12月26日付 BBC NEWS JAPANより
英BBCによると、この「1万人」という人数は、当時のアラン・ドナルド駐中英国大使が1989年6月5日付の極秘公電で英国政府に報告したもので、同大使はその情報源を「中国国務委員を務める親しい友人から聞いた情報を伝えてきた人物」から入手した、などと説明しているそうです。
いずれにせよ、中国共産党がどう取り繕おうが、この事件が歴史から消え去ることはありませんし、また、消し去ってはなりません。「1989年6月4日」を略した「8964」を、「人類として」記憶にとどめるべきでしょう。
安倍総理の活躍
さて、今朝の『私たち日本の大事な友人である台湾に送られるワクチン』では、アストラゼネカ(AZ)製のワクチンが台湾に届けられる、という話題を取り上げました。
【参考】『私たち日本の大事な友人である台湾に送られるワクチン』
私たちと価値や利益を共有する大事な友人にして重要なパートナー、そして東日本大震災の際を含め、私たちが困難な状況に陥ったときに助けてくれた台湾は、貴重なワクチンの行き先としては、まさに最適でしょう。
こうしたなか、「独自情報」として台湾へのワクチン提供を報じた産経ニュースには昨夜、こんな記事も掲載されていました。
ワクチンの台湾提供、安倍前首相ら動く 中国妨害警戒 日米台が水面下で調整
―――2021/6/3 22:03付 産経ニュースより
産経ニュースによると、今回の台湾への迅速なワクチン提供劇が実現した背景には、水面下で安倍晋三総理ら自民党議員が動いたこともあったとしています。以下、産経の説明の概要です。
- 台湾へのAZワクチン提供は、中国からの横槍を警戒しつつ、水面下で慎重に準備が進められた
- COVAXを通じて台湾に提供する案も検討されたが「時間がかかり過ぎる」と判断された
- 安倍晋三前首相ら自民党議員も動き、迅速な提供を実現した
(※記事原文にある「安倍晋三前首相」とは、安倍総理のことです。)
産経によると、もともと、台湾からは5月の連休明け以降、複数ルートを通じて「100万回分ほどワクチンを融通してくれないか」との打診があったそうです。
こうしたなか、5月24日夜、米国のヤング駐日臨時代理大使と謝長廷(しゃ・ちょうてい)台北駐日経済文化代表処代表の意見交換会に招かれた薗浦健太郎元首相補佐官が、日本で公的接種で当面使わないAZ製ワクチンの台湾への提供に言及。
ヤング氏がこれに「グッドアイデアだ」と賛意を示し、薗浦氏がさっそく翌日、安倍総理にこのやりとりを報告して協力を要請し、安倍総理が「すぐやろう」とこれに応じたことが、迅速なワクチン提供につながった、などとしています。
さまざまな点で象徴的
この産経の報道が事実かどうか、私たち一般読者には検証するすべはありません。
ただ、もしそうだとしたら、さまざまな意味で象徴的です。
安倍総理が動いたということは、安倍総理が政界で力を保持しているという証拠でもありますし、また、現役の総理大臣時代にはできなかった、「日台友好」などに向けた動きができるようになっているという点では、自由度が増したという言い方もできるでしょう。
また、ワクチン提供が実現した日付もさることながら、実現までの期間も、従来の日本政府では考えられないほど迅速です。実現するまでの期間が短かったことで、中国としても横槍を入れる時間が取れなかったことは、高く評価して良いでしょう。
実際、『台湾へのワクチン提供を「政治目的」と日本批判=中国』でも報告しましたが、中国の汪文斌(おう・ぶんはん)副報道局長は5月31日の記者会見で、この台湾へのワクチン提供を強く批判しています。
中国、日本の台湾支援けん制 新型コロナワクチン
―――2021年05月31日 20:20付 時事通信より
中国、日本の台湾ワクチン支援構想に不快感
―――2021年05月31日 19:10付 ロイターより
どちらの記事もほぼ記載内容は同じですが、ここでは時事通信の方の記事から、汪文斌氏の発言を紹介しておきましょう。
- 医療援助は救命という初心に立ち戻るべきで、政治的利益をはかる手段に成り下がってはならない
- 日本は今もなお自国のワクチン供給を十分確保できない。日本政府の表明は(台湾)島内を含む多くのメディアや民衆から疑問視されている
…。
「医療援助は救命という初心に立ち返るべき」。
台湾のWHO総会参加を邪魔するなど、台湾への医療援助を全力で妨害して来た者が口にして良い表現ではありません。そして、「政治的利益をはかる手段」にしているのは中国共産党自身であり、自己紹介としか言い様がない発言でもあります。
そして今回、ワクチン提供が「6月4日」に間に合ったこと自体、結果的には、中国に対する強烈な当てこすりでもあるのかもしれません。
安倍総理の訪台は?
さて、個人的な観測です。
安倍総理の自民党総裁・内閣総理大臣への「再々登板」がない、という前提の話ですが、もしかすると、コロナ禍が一巡した際、安倍総理が「一介の衆院議員」という立場にあれば、台湾を訪問して蔡英文(さい・えいぶん)総統を表敬訪問する機会もあるかもしれません。
もしそうなれば、日台友好に新たなページが書き加えられることになるでしょう。
「パイナップル」、「ワクチン」と続く日台友好の流れを、慎重に見守っていく価値はありそうです。
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独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
もし、今回の日本から台湾への新型コロナワクチン提供に、アメリカも関与していたら、「アメリカに(半導体サプライチェーン再構築で)協力しても見返りが全くない」ということを否定することになるのではないでしょうか。
蛇足ですが、(建前でも)「3.11で日本支援してくれたところが、WHOオブザーバー参加もできないので、日本が支援する」と言えば、日本国内で、これに反対することは難しいのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
「斌」は「ヒン」ではないでしょうか。
かもひろ様
>「斌」は「ヒン」ではないでしょうか。
音読みは「ヒン」と「フン」があるようですが、一般的には「ヒン」が多いと思います。
また、中国語での発音は「bin1」(ピン)ですので、「ヒン」の方が近いですね。
辞典・百科事典の検索サービス - Weblio辞書
https://www.weblio.jp/content/%E6%96%8C
かもひろさま
中国勤務時代にこの名前の部下がいましたが、日本人に聞こえる音としてはは「ビン」が近かったと思います。
日台友好の特使として安倍総理ほど適任は他にいません。
基本的には、元首相であればそういった特使の資格はあると思います。安倍総理のような卓越した実績は必要としません。ただ、その卓越した安倍総理がそれを行うことによって、台湾に対して、世界に対してより強いメッセージを送ることが出来ます。
そもそもアメリカでも元大統領が特使を務めることはありますので、アメリカでも違和感のない話でしょう。
安倍特使は、それこそ日本としてだけでなくアメリカ含めた陣営の切り札として大々的に行われるような気がします。
すごく期待しています。
中央通訊社が報道してます。
https://www.cna.com.tw/news/firstnews/202106045005.aspx
日本馳援台灣124萬劑AZ疫苗 日航專機起飛赴台
はにわファクトリー さま
まあガッツリと報道されてますね。
これを見るだけなら、喜ばしい話だと思います。
当記事とは関係ないコメントになるのでしょうが。
台湾にワクチン供与はいいとして、動くなら国内の効率よく無駄のないワクチン接種の為に顎いて欲しいものです。
日本の国威発揚のため、是とも安全なオリンピック開催を果たしたいものですね。
それ河野さんの仕事。
アメリカも追って台湾に供与を進めるようです。
日本から6.4に提供されたことを中共は、「メンツを潰されたと」大いに気にするでしょう。
吉と出るか裏目に出るかは、まだ分かりません。
一段と安倍首相復帰論が、盛り上がるんだと思います。
朝日新聞が「なぜ、アストラゼネカ製なのか」と社説に載せそうな気がします。
>※記事原文にある「安倍晋三前首相」とは、安倍総理のことです。
いつもなら「本ブログでは~」みたいな書き方だったと思いますが、何かあったんですか?
匿名様
>いつもなら「本ブログでは~」みたいな書き方だったと思いますが、何かあったんですか?
新宿会計士様が、うっかり本音を漏らしてしまったのかと思います(笑)
私には見えないようですが、もしかしたら「本ブログでは~」が隠し文字として埋め込まれているのかも・・・?!
安倍氏をリスペクトするのは自由ですが、わざわざ記事に総理と記述するのはどうかと思いますね。
まして、注釈を付すとか最初から適切に表記すれば済むのに、とか思っちゃいますけどね。
>安倍氏をリスペクトするのは自由
???
リスペクト?なのかどうかは
?なのですが(笑)、
一方で、
民主的な選挙結果を重ねての
長期政権なのに、
ご自分たち少数派が敵わないからと
呼び捨てや誹謗の言葉を盛りたくる
ドブサヨのブログさんたちの方は、
どうかと思うどころか、
そんなこんなのお方さんたちで
あることを自ら晒して
もらってるなあと感じるのが、
選挙結果でも明らかな
多数派国民良識層の見方でしょうな。
本文に書き忘れた内容を自己コメント。
新型コロナウィルス感染症、すなわちいわゆる「武漢肺炎」を全世界に撒き散らした国が中国であるという事実を踏まえるならば、「武漢肺炎との戦い」とは、「中国が全世界に撒き散らした感染症との戦い」である、と言い換えても良いでしょう。日本の試みは、その戦いにおいて台湾を側面支援しようとするものであり、単なるワクチン供与を越えて、「台湾をコロナの侵略から守るための共同作戦」という言い方をしても良いのかもしれません。
新宿会計士様
>台湾をコロナの侵略から守るための共同作戦
全く以て仰る通りです。
東日本大震災に代表される台湾の支援に応え、台湾をコロナ(中国)の侵略から守るためにも、安倍総理の決断は誠に時宜を得ており、その行動力も賞賛されてよいと思います。
「台湾をコロナの侵略から守るための共同作戦」の一文を読んでふと思いました。
台湾でワクチンが足りずコロナ蔓延したら、防疫と称して医療従事者を装った解放軍がワクチン接種部隊として進出するような事態も有り得るのではないかと。
中共にとって、民主主義とは政体を揺るがす疫病であり、コロナ(と民主主義)という疫病から台湾を解放するのだ、という戦術選択がないとも言えないわけで。
以上は妄想ですけど。中共の理論展開として不可能ではなく、むしろ好機かもしれない。
コロナにかこつけて中共が台湾に干渉する機会を封じたという意味で、しかも天安門事件に絡めた日程で民主主義の連帯を強調した、日本政府のファインプレーだと思います。
ところで、「安倍総理」の表記について。
菅総理は安倍総理が任期中に全うするはずだった仕事を執行する役割を引き受けたと思いますので、実質的にはいまも安倍氏が総理(そのような構図がいいのかはともかく)と見るのが普通と考えます。
自民党もそのような理解で菅氏を総裁に選んだのでしょうし。
ただ、なぜ「安倍総理」と表記するのかという説明はあってよかったのかなと思います。
台湾の各新聞社では日本からのAZワクチン送付の件、一面トップで報じられてますね。「124萬」(笑)。
外務省は当初、コバックスを通じた提供を検討したものの、安倍氏らから「それでは時間がかかりすぎる」との声が上がったとか。やっぱり外務省らしいわ。やる事遅すぎ!
台湾からは「スピード重視で対応を」との意向があったそうで、実にヨカ事です。日本の在庫は、確か9月が使用期限でしょう。追加支援もあるとの事ですから、総計1,000万回分でも早期にあげれば良いと思います(あんまり一度に集中すると、打ち手や会場の問題で台湾が困るかも)。
めがねのおやじ 様
2Fの妨害があったと言う話もありますね。
そりゃあ、和歌山にはパンダがウジャウジャ居ますから、中国様には義理立てしなくちゃあね。