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訪米日程終え「次の日程」としての解散総選挙の可能性

訪米日程をこなしてとんぼ返りした菅義偉総理。日米首脳会談の成果は上々で、明らかに合格点、といったところではあるのですが、日本の将来を楽観視することができる状況ではないのもまたたしかです。こうしたなか、内閣支持率は不支持率を微妙に上回っているか、下回っていてもその差は縮んでいる、という傾向が確認できるのですが、果たして解散総選挙は行われるのでしょうか。

日米首脳会談、成果は上々だが…

菅義偉総理大臣は週末、米国を訪問し、ジョー・バイデン大統領と外国首脳として初の対面での首脳会談を実施し、日本にとんぼ返りしました。

訪米の意義と成果については『台湾防衛にコミットした日本:日米同盟は経済同盟に!』でも触れたとおり、個人的には注目点は次の3点だと考えています。

  • 中国を名指ししたうえで、「台湾海峡」「香港」「新疆ウイグル自治区」「尖閣諸島」「南シナ海」など個別具体的な名称を明示したこと
  • 日米同盟が単なる二国間同盟ではなく、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を実現させるための多国同盟の基礎であるとともに、経済同盟への進化が宣言されたこと
  • バイデン氏には初歩的な言い間違えなどが多かったこと

ことに、FOIPを巡っては、バイデン政権はみずからの手柄だと強調しているフシがありますが、これはもともと麻生太郎総理が提唱した「自由と繁栄の弧」、安倍晋三総理が提唱した「セキュリティ・ダイヤモンド」構想などを下敷きにしたもので、ドナルド・J・トランプ前大統領がこれを採択したものです。

したがって、FOIP路線を敷いたのは、あくまでも安倍・トランプ政権であり、日本側の菅義偉政権がこれを承継し、発展させようとしているのにバイデン政権が乗っかっているにすぎない、という側面が強いと考えざるを得ません。

まだまだ心もとない日本の針路

ただ、ここで重要なのは、「誰の功績か」、という論点ではありません。

国家の意思として、日本と米国が同盟を単なる「軍事同盟」から「経済同盟」、さらには「価値同盟」にまで高めること、FOIPを推し進めて諸外国(差し当たってはクアッドの豪印両国、将来的には英仏なども?)を巻き込むことで合意した、という点が重要なのです。

なにより、バイデン氏が大統領に就任し、初めて対面で会った外国首脳が菅総理だったという事実自体、中国と全世界に対する極めて大きなメッセージでもあります。日米同盟が新たな高みに達しつつあることは、もはやだれの目にも明らかでしょう。

ただし、これについては日本にとっても「手放し」で喜んで良いものではありません。

8年近い安倍政権で、集団的自衛権の行使が(限定的ながらも)可能となったこと、特定秘密保護法がやっと施行されたことなど、日本が自主防衛に向けて少しずつ体制を整えていることはたしかですが、まだまだ不十分です。

日本が具体的に戦争に巻き込まれた場合、軍法が整備されていないため、極端な話、自衛隊員が戦闘行為の結果、中国人民解放軍の兵士を傷つけることになった場合、その自衛隊員が傷害容疑で立件されるのではないか、といった懸念が払拭できません。

また、立憲民主党などの妨害により、ろくに憲法審査会も開かれていないのは困りものですし、この期に及んで「ケンポーキュージョーを守れ」などとのたまっている勢力の現実感覚のなさには、ただひたすらあきれるばかりでもあります。

したがって、日米同盟が進化したとしても、肝心の日本の体制自体が整っていないなか、日本にできることにはさまざまな限界がある、という言い方をしても良いでしょう。

菅総理は続投?それとも…

こうしたなか、産経ニュースに土曜日、こんな記事が掲載されていました。

菅首相「総裁選前」の解散に含み 長期政権に意欲?

―――2021.4.17 21:08付 産経ニュースより

これは、菅総理が米国時間の金曜日午後(日本時間の土曜日午前)、米ワシントンで同行記者団の取材に応じ、「秋の自民党総裁選前の解散に含みを残した」、というものです。

産経によると、菅総理の自民党総裁としての任期は9月30日、衆議院議員の任期は10月21日までですが、その菅総理は解散総選挙を巡り、「新型コロナウィルス対策が大前提だ」、「秋までの衆議院議員任期、外交・安全保障、経済を視野に入れながら考える」と述べたのだそうです。

ただし、内閣不信任決議案が衆院に提出された場合、それが解散の大義になるかどうかについて尋ねられると、菅総理は「基本的にはそうだ」と述べたそうです(※もっとも、「不信任案は解散の大義になり得る」というのは、菅総理が内閣官房長官時代から述べていた内容でもありますが)。

そのうえで菅総理は、党総裁続投の意向については「衆院を解散し、勝たなければ続かない」などと述べたのだそうですが、これについて産経ニュースは「総裁選前の解散をにおわせた」としています。

首相が1年おきにコロコロ変わるのはいかがなものか

菅総理自身が安倍総理の自民党総裁としての残任期を引き継いだという事情もありますが、それでもあくまでも一般論ではあるものの、日本の国益を考えるならば、首相が1年単位でコロコロ変わるようなことは、できれば避けたいところでもあります。

実際、今世紀に入ってからは、2001年4月26日に退任した森喜朗元首相に代わって就任した小泉純一郎元首相が2006年9月26日までの1980日間在任したのを除けば、基本的には1年単位で退陣しています。

安倍晋三総理は2006年9月26日からちょうど1年後の2007年9月26日までの366日間で政権を投げ出しました。福田康夫元首相の任期は、同日から2008年9月24日に辞任するまでの365日間で終わってしまいました。

さらに、福田元首相のあとを継いだ麻生太郎総理の任期は、2009年8月の衆院選で自民党が大敗したことにより、2009年9月16日に辞任するまでの358日間で終わってしまっています。

その後は民主党政権で、鳩山由紀夫(2009年9月16日から2010年6月8日までの266日間)、菅直人(2010年6月8日から2011年9月2日までの452日間)、野田佳彦(2011年9月2日から2012年12月26日までの482日間)の各元首相が在任。

安倍総理が2012年12月26日に再登板するまで、じつに6代連続して、1年そこそこで政権が交代してきたのです。

内閣支持率は回復基調に/自民党支持率は高位安定

いずれにせよ、衆院解散総選挙は総理の専権事項ですので、あとは菅総理がこれをどう判断するかにかかっていますが、東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)を実施するならば、自然に考えて解散総選挙のタイミングはおのずと限られてしまいます。

こうしたなか、時事通信に金曜日、内閣支持率に関する記事が掲載されていました。

内閣支持、微増36% 緊急事態解除「早すぎる」58%―時事世論調査

―――2021年04月16日17時03分付 時事通信より

といっても、支持率調査自体が実施されたのは9日から12日だそうです。他のメディアと比べて調査の実施から公表まで時間がかかっている理由はよくわかりません。

いずれにせよ、今月に入ってから実施されたメディアの支持率調査のうち、読売新聞(4月2~4日実施)、朝日新聞(4月10~11日実施)、時事通信(4月9~12日実施)の3つの結果を見る限りでは、支持率と不支持率はほぼ拮抗していると見て良いでしょう(図表1)。

図表1 内閣支持率(2021年4月)
メディアと調査日 支持率(前回比) 不支持率(前回比)
読売新聞(4/2~4) 47.0%(▲1.0) 40.0%(▲2.0)
朝日新聞(4/10~11) 40.0%(±0) 39.0%(±0)
時事通信(4/9~12) 36.6%(+1.6) 37.7%(▲3.3)

(【出所】各社報道より著者作成)

しかも、「対抗馬」(?)であるはずの立憲民主党に対する支持率は、相変わらず地を這う状況にあります(図表2)。

図表2 政党支持率(自民vs立憲民主、2021年3~4月)
メディアと調査日 自由民主党 立憲民主党
朝日新聞(3/20~21) 33.0%(±0) 5.0%(▲2.0)
読売新聞(4/2~4) 39.0%(▲1.0) 5.0%(▲1.0)
時事通信(4/9~12) 22.5%(▲0.5) 4.2%(▲0.6)

(【出所】各社報道より著者作成)

自民党に対する支持率は立憲民主党のそれと比べ、メディアにもよりますが、だいたい5~8倍くらい、といったところでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、いつも報告しているとおり、日本の政界を商店ないしレストランなどに例えるならば、自民党は品揃えも品質も悪くて値段が高いスーパーマーケット、高くてまずいレストランのようなものでしょう。

これに対し、「立憲民主党スーパー」は店頭ののぼりでも配布するチラシでも、自店の「目玉商品」ではなく、「自民党の悪口」ばかりを印刷して配っている「ダメスーパー」でしょう。あるいは、レストランに例えていえば、「食中毒レストラン」、といったところでしょうか。

少なくとも自民党スーパーに行けば、高くても最低限、生活に必要なものは買えますが、立憲民主党スーパーでは欠品や不良品ばかりで、しかも返品もできないという状況だと考えていただければ良いと思います。

個人的に、こうした状況を招いた最大の責任は、やはり私たち有権者にあると思いますし、こうした状況の責任を負うのもまた私たち有権者です。

そして、これもいつも申し上げていることですが、選挙とは「すばらしい候補者群から理想の候補者を選ぶ手続」ではなく、「どうしようもない商店街で買い物をする際、本当にダメな商店を倒産させ、少しでもマシな商店で選ぶ」ような作業です。

だからこそ、私たち日本国民は、まずは選挙で必ず投票しなければなりませんし、棄権、白票はいずれも無責任極まりない行動です。そのことを、口を酸っぱくして申し上げる以外に方法はないのだと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • 解散総選挙の争点として
    (1) 韓国人への VISA 恒久復活(観光目的での入国不可)
    (2) 特別永住許可制度の厳格運用(3世以後への適用不可)
    (3) 全ての外国人を平等に扱うため、特別永住許可を廃止して一般の永住許可に一本化
    など、いかがでしょう。

    特定野党との意見の違いが、明確になると思います。

    • 追加で 嘘つき処罰法(政党、代議士、報道機関)息を吐くように嘘をつけば処罰する。www

      • 報道機関様およびジャーナリスト様に関しては、「報道の自由」の中身を国民こぞって議論し、出来る限り具体的に法律に書き込むのが宜しいと考えます。彼らは『議論すら許されない』などと言うでしょうが…

  • これから兎にも角にも、五輪を実行し、ワクチン接種が進めば、
    政権支持率も政党支持率も、現在と大きく変わる事は無いでしょう

    自民 280
    公明 30
    維新 25
    国民 25

    立憲 75
    共産 10
    他・無 20

    こんな所なんじゃないでしょうか? 
    立共には何の追い風もありません むしろ大逆風が吹きっぱなしです
    だいぶ忖度して75議席です。現在の113議席というのは、
    民民の大半を吸収しての焼け太りですから。
    55議席辺りまで減るのは普通にあると思ってます

  • 前回衆院選のような立憲と小池さんの党への風もないですし、れいわとかN国も期限切れ。普通にやれば自民党の地滑り的大勝でしょう。現在のコロナ対応の批判票を投じようにも受け皿がない。

    そろそろ週刊誌の選挙予測が出るだろう時期ですが、出てこないのは、選挙風をなるべく吹かせたくないからでしょうね。今やられたらやばい。

  • 更新ありがとうございます。

    菅総理大臣は、このまま次にバトンタッチでは無く、もう一期お願いしたいです。上手く安倍総理から引き継ぎましたが、この流れのまま反社・野党の上がり目は無いですから、自由民主党、日本維新の会(国民民主党も)で3分の2を取る事は可能でしょう。

    SGの宗教団体、公明党は親中で、いずれ袂を分かつでしょうし、足を引っ張ります。改憲まで待った無しの情勢ですから、出来る限り「大勝」が望ましいと思います。

    安倍晋三総理は、十分休んで貰い、願わくば「その次」に出馬して欲しい。やはり惜しいですネ。荻生田氏、河野氏、小野寺氏、世耕氏は更に次で丁度良い。この4人から2人ぐらい総理総裁に成れれば、オンの字ですね。

  • >立憲民主党スーパーでは欠品や不良品ばかりで、しかも返品もできないという状況だと考えていただければ良いと思います

    チラシの商品が店内価格ではチラシより高いかもしれませんよ。
    商品は盛りそばと掛け蕎麦と桜餅だけだったりしてwww

  • 本記事とは全然関係はないのですが、
    「立憲民主党スーパー」の「目玉商品」を見て何故か 大阪の「激安すぎて不安になる?スーパー玉出」を思い浮かべたました。

    共通点はカオス。

  • 立憲民主党食堂の売りメニューは鳩山ラーメンですから。油もアブラソコムツからとってます。

    >したがって、FOIP路線を敷いたのは、あくまでも安倍・トランプ政権であり、日本側の菅義偉政権がこれを承継し、発展させようとしているのにバイデン政権が乗っかっているにすぎない、という側面が強いと考えざるを得ません。

    さすがにこれはアジアリバランスを掲げていたオバマがかわいそう。FOIP路線を敷いたのは、あくまでも安倍・オバマでしょ。