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「韓国への譲歩と妥協を念頭に」という周回遅れの議論

朝鮮半島生命線説に騙された論考というケーススタディ

先月刊行した『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』の主題は、「日韓関係が破綻したら日本にも打撃はあるが、それを恐れずに日韓関係破綻の準備を進めるべき」というものです。そして、「朝鮮半島生命線説」「足して2で割る」式解決が間違っているという点についても、改めて強調したいと思います。こうしたなか、日韓関係を巡り、あまりにも周回遅れ過ぎる論考を発見しました。

「いま」日韓関係を議論する必要性

先日の『GSOMIA破棄騒動巡る「韓国側からの答え合わせ」』の冒頭でも少し報告したとおり、本来、個人的に「今年力を入れるべきテーマは日中関係論」だと考えていたにも関わらず、当ウェブサイトでは韓国の話題が連続してしまっています。

というよりも、先月は生まれて初めての韓国論である『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』を出版したため、どうしても自分のなかでもその「余波」が続いてしまっている、という言い方をした方が良いのかもしれません。そして、この時期だからこそ、韓国論を精力的に取り上げることが大事だと思う次第です。

この点、韓国が日本に対して仕掛けて来ている不法行為の数々、そしてそれらに対する韓国政府の具体性のなさについては、『韓国政府「韓日関係改善努力」表明も具体的提案はゼロ』でも説明したので、とりあえず本稿では繰り返しません。

ただ、「いま」日韓関係を議論しなければならない理由があることもまた事実です。それは、当ウェブサイトなどでも何度となく繰り返してきたとおり、現在の日韓関係の「落としどころ」が、究極的には次の3つしかない、という点を、いま一度強調しておきたいからです。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
  • ③韓国が国際法違反を続け、日本が韓国に譲歩しないことで、日韓関係が破綻する

これについて、どう考えるべきでしょうか。

選択肢②は最初から排除しなければならない

まず、③について説明しましょう。

韓国が現在の国際法に違反するような状態を継続し、日本がこれを不当だと言い続ければ、やがて日韓関係は継続できなくなり、破綻します。

実際、『貿易統計③日本の貿易上、台湾と韓国の地位は逆転へ?』や『偶然か?中韓両国でほぼ同時に「セルフ経済制裁」発動』などでも触れたとおり、その影響はジワリと広がっており、少なくとも日本にとっての韓国の重要性は徐々に低下していることが確認できます。

だからこそ、日韓関係が破綻しないようにするためには、少なくとも「韓国の国際法違反状態」、「それに対して日本が苦情を申し入れているという状態」のどちらかを解消することが必要だ、というわけです。

ただ、もしも日本が「国家」でありたいのならば、②の選択肢については、絶対に選んではなりません。

その理由は簡単で、もしも日本が②の選択肢を選んでしまったならば、韓国に対し「付け入る隙」を再び与えたという事を意味するからです。当然、今後は二次被害、三次被害が予想されますし、また、日本自身が韓国の不法行為を放置することで、国際秩序の破綻に加担するからです。

したがって、日本が目指すべきは①の選択肢であり、①の選択肢が期待できないのならば、②ではなく③、すなわち「日韓関係の破綻」を覚悟し、それに向けて粛々と準備を進めることなのです。

さて、上記「3つの落としどころ」では①と②を独立した選択肢として提示していますが、その理由についても簡単に述べておきましょう。

日本の外務省あたりが大好きなのが、「足して2で割る」という方法ですが、これを上記①~③にあてはめるならば、「日韓双方が少しずつ譲歩する(①と②を少しずつ混ぜる)」、という方式です。

一見すると、この「足して2で割る」というやり方は、合理的です。双方が少しずつ損をするけれども、それで丸く収まるならば良いじゃないか、という発想ですね。

「足して2で割る」な!

ただ、大変申し訳ないのですが、これだと問題の解決になりません。

「お互いに譲歩する」が成り立つのは、相互の行動が等価であるときに限られます。「相互の行動が等価である」とは、「日韓双方に少しずつ悪いところがある」、という意味であり、このようなときにこそ、お互いが譲歩することで解決を図るという選択肢が出て来るのです。

しかし、当ウェブサイトでくどいほど繰り返してきたとおり、日韓の行動は「等価」ではありません。韓国が日本に対し、一方的に不法行為を仕掛けているのです。だからこそ、韓国が少しでも不法行為の状態を生じさせていて、日本がそれに少しでも譲歩したとしたら、韓国は儲けもの、というわけです。

これが、「ゼロ対100」理論です。

ゼロ対100理論

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、インチキ外交の数々を駆使して「相手にも落ち度がある」などと言い募り、過失割合を「50対50」、あわよくば「ゼロ対100」に持ち込もうとする、韓国や北朝鮮に特有の屁理屈のこと。

くどいようですが、現在のように100%韓国が悪い局面で、日本が1ミリでも韓国に譲歩することは、日本が一方的に韓国に譲歩したことになります。韓国が100の不法行為のうち50を是正したとしても、50の不法行為が残っているならば、「不法行為を働いている」という事実は消えないからです。

くどいようですが、日韓関係の落としどころは、①韓国が法や約束を守るか、②日本が韓国に譲歩するか、③日韓関係が破綻するか、の3つしかありません。

現在の日本人には、このどれを取るのかという覚悟が問われているのです。

元外交官の周回遅れの議論

こうしたなか、上記の「ゼロ対100」理論に見事に騙されていると思しき議論がありました。『現代ビジネス』に本日掲載された、次の論考です。

文在寅の“自爆”が再び…! 日米韓「崩壊」で、これから本当に起きる「危なすぎるシナリオ」

―――2021/03/05付 現代ビジネスより

リンク先記事は5000文字弱ですが、ウェブページにして8ページにもまたがります。ページビュー(PV)を稼ぐためでしょうか(※どうでも良いのですが、ブチブチ細切れにした議論を読むために何度もクリックさせられるのは読者の利便を損ねている気がします)。

それはさておき、リンク先の記事は、元外交官の方が執筆したものです。

具体的には、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領による3月1日の演説を「文在寅氏の限界を示すもの」としたうえで、「日本がこれから韓国とどのように向き合っていくべきか」を議論したものですが、敢えて言葉を選ばずに申し上げるなら、議論としては周回遅れです。

議論の冒頭に、こんな記述があります。

外交の基本は、如何に国益に最大限かなったものとするかということである。その意味で日韓の歴史問題だけを見るのではなく、米国との関係、文在寅政権以後を見据えた韓国との関係、北朝鮮の脅威にいかに対抗するか、中国の拡張政策にいかに備えるかなど広い視野で考えていかなければならない」。

この点自体は、正論でしょう。また、詳しい紹介は省きますが、この論考では、「現在の韓国が中国の拡張政策、北朝鮮の脅威に対抗するうえでまったく役に立たないだけでなく、有害ですらある」という点にも、一応は言及しているようです。

しかし、最後の方にある文章が、メチャクチャです。

韓国が米国との関係を重視し協力の道を進むのであれば日本もこれを支援する必要がある」。

いったい、いつの議論をしているのでしょうか。

朝鮮半島生命線説の間違い

結論からいえば、韓国が米韓同盟強化に舵を切ったとしても、日本がそれに協力する必要はありませんし、むしろそのような政権こそが厄介です。

そもそも韓国が中国の拡張、北朝鮮の脅威に対し、日米と積極的に協力して対処して来たという事実はありません。たとえば文在寅氏の前任者である朴槿恵(ぼく・きんけい)氏が日本に対し何をやったか、忘れてしまったのでしょうか。

さらに、この論者の方を含め、多くの外務省出身者、学者の方々が勘違いなさっているのですが、韓国で「親日政権」が発足することを期待するのは間違っています。というよりも、そんな政権、今までに存在したという事実はありませんし、おそらくこれからも出現することはないでしょう。

むしろ日本にとって厄介なのは、李明博(り・めいはく)政権のように、見た目が「親米政権」であるものの、内情は熾烈な反日・用日政権が韓国に誕生することです。むしろそれは避けなければならない、というのが当ウェブサイトの見立てです。

こうしたなか、この外交官の方の議論に出てくる次の記述は、当ウェブサイトで繰り返し指摘してきた「朝鮮半島生命線説」そのものです。

韓国が米国の意向を無視して北朝鮮への歩み寄りの姿勢を崩さず、むしろ強化する場合には米国は韓国を見放すかもしれない。それは日本にとっても安全保障上きわめて大きな危険が迫ってくることになる。そうした事態とならないようにするのが日本の国益である」。

ここで、当ウェブサイトの定義する「朝鮮半島生命線説」とは、次のような考え方のことです。

  • ①韓国は地理的に見て日本に非常に近く、この地域が日本の敵対勢力に入れば日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす。
  • ②このような事態を避けるため、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない。

①は間違っていませんが、②が大間違いです。韓国ないし朝鮮半島国家が日本の友好国として、未来志向でともに発展するような関係になったことはないという事実を、あまりにも軽視し過ぎています。

これ以上、なにを譲歩しろと言うのか

そのうえで、この論者の方は、次のように議論を締めくくっています。

そのためには韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべきである」。

はて。

これ以上、韓国と何を協議するのでしょう。

これ以上、韓国に何を譲歩するのでしょう。

ありもしない慰安婦問題を、「これは日本という国家による犯罪でした」と認めて「ごめんなさい」と謝るのでしょうか。

ありもしない徴用工問題を、「日本が迷惑を掛けました」と認めて、おカネを払って「謝りますから許してください」と懇願するのでしょうか。

ふざけるのも大概にしてください。

韓国で政権が代わったとしても、現在の韓国が「国際法をきちんと守る方向に舵を切り、日韓関係の破綻を回避する」だけの賢明さを持っているとは思えませんし、むしろ下手な親米・用日派政権が誕生すれば、融和姿勢を出して「ゼロ対100」理論をフル活用して日本を騙そうとして来るかもしれません。

日本がいま、やらねばならないことは、朝鮮半島が敵対国の勢力下に入る(あるいは朝鮮半島国家が敵対国になる)という「最悪の事態」を恐れるあまり、韓国に対し無用な譲歩をこれ以上続けることではありません。

その最悪の事態に向けた覚悟を決め、軍事的にも経済的にも強くなることです。

「日韓関係をどうしよう」、「日米韓3ヵ国連携をどうしよう」と議論するフェーズは、とうの昔に終了しているのです。

新宿会計士:

View Comments (73)

  • 外務省には「みんな仲良く」以上の見識がないことが見て取れる論説でした。彼等に外交方針を委ねたら危機管理ができません。外交は政治主導で、と訴えたいところですが、菅義偉政権には荷が重いように見えます。

    国民のレベルが政治家のレベルを決めるのですから、自戒と精進を。

    • 武藤 正敏 氏は駐韓外交官でしたが 流石に頭にきて 反韓方向に舵を取りましたが やっぱり信念がないことがバレバレの記事でした。「外務省には「みんな仲良く」以上の見識がない」・・短いが本質をついた言葉です。自分の備忘録に登録させてもらいました。

  • 東大には無能が多いね
    早慶の方がまだ有能が多い
    極左に塗れまくってて、使えねえ奴らばっかり

  • 「雑談」の方でもコメントしましたが、武藤元駐韓大使は真正な意味での親韓派です。彼は今でも文在寅一味さえいなくなれば韓国が「まともな国」に戻れると信じているようなので、その意味では「周回遅れの議論」でもなんでもありません。彼は彼の信念に基づいてそう書いているので、最初からそのつもりで読めばいいというだけの話です。
    武藤元大使の韓国に関する現状分析はかなり正確で、鈴置氏のそれと同等以上だと思います。彼の「信念」には賛同できないので、結論に関してもほとんど賛同できませんが、彼の現状分析に関しては十分傾聴に値します。なにより、文在寅氏の「危険性」について、ほぼ最初に指摘したのが武藤元大使であることを忘れてはならないと思います。

    ということで、武藤元大使の結論部にはけして賛同できませんが、彼の議論を「周回遅れ」と評したり、あたかも価値のないものであるかのように扱うのはいかがなものかと思います。

    • >武藤元大使の韓国に関する現状分析はかなり正確で、鈴置氏のそれと同等以上だと思います

      ???
      そうですかね?

    • ほぼ同感です

       結論については賛否があるでしょうが
      私的には(国益に沿った)「中立的意見」と受け止めてます

    • 自分も同意見です。
      武藤元駐韓大使の主張はずっと追っていましたが、韓国についての知見は筑波大の古田博司教授、ジャーナリストの鈴置高史氏と同じくらい高いと思っています。
      条件付き結論の部分だけを殊更取り上げて、ほぼ全体を否定するのはフェアではないと感じました。

    • >文在寅一味さえいなくなれば韓国が「まともな国」に戻れると信じている

      アメリカ現政権もそう信じているのでは?
      とすると一年半後に親米保守派が政権についたら、危ないですね。
      アメリカは日本に譲歩を迫ってくるかもしれません。

      • 残念ながら、可能性は否定できませんね。
        ただ、もはや合法的な手段では親米保守政権などできないと踏んでいるので、あまり心配しなくても良いかもしれません。

    • 武藤サンの認識中もっとも同意できない部分は、
      かのくにが「まともな国」であった(ことがある)と思われているトコロです…

    • 龍 さん

      仰る事は分かるのですが、

      >ということで、武藤元大使の結論部にはけして賛同できませんが、彼の議論を「周回遅れ」と評したり、あたかも価値のないものであるかのように扱うのはいかがなものかと思います。

      新宿会計士さんは武藤元大使の現状分析ではなく、分析の後の主観による判断が周回遅れと述べているのだと受け止めますので、龍さんの指摘もややズレている気がします。

    • 武藤元駐韓大使は紛れもなく許親韓派です、過去の日本の対韓外交の軌跡から見れば、韓国にも配慮した中立的な視点の人とも言えるでしょうが。

      彼が変容したのは韓国の一連の対日外交で、日本で嫌韓が国民レベルで大きくなったのを、いち早く察知したからでしょう。
      その場の変わり身の早い人です、根は変わりません。

  • いつも刺激的な論考をありがとうございます。
    その中でも、今回は特に最初から最後まで大きく頷きながら読んだエントリーでした。

    個人的には、奴らとの関係は、これからが本当の正念場だと思っています。
    ムン小酋長が、まったくお話にならない相手なのは衆目の一致するところで、アメリカも同様に考えていると見て間違いなさそうですが、問題はその次です。

    つまり、向こうの現政権が代わりさえすれば何とかなると考えている日本人が外務省をはじめ政治家にも結構いるのではないか、という懸念です。

    いまは一枚岩でも、政権が代わって新大統領がちょっとリップサービスを言っただけで、こちらが腰砕けのように、また事勿れの温い対応に戻ってしまう……。
    かってほど影響力は無くなっても、反日メディアは当然のように「手を取れ」と五月蝿く言うことは容易に想像できます。アメリカだって分かりません。

    こんな近い未来は悪夢でしかありません。

    正直に告白すると、日本の親切心や人の善さに付け入る奴らに対しては、怒りを通り越して憎しみを覚えるまでになっています。様々なコメントを見ても、こう感じている日本人は決して少なくないと思います。

    こういう素直な庶民感覚を大切にしない人たちには、今後、厳しくNOを突き付けなければいけないという思いを新たにしました。

    そのためにも、新宿会計士さんの活動はますます重要になると痛感しています。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、権力なき老害になってしまうので)
     結局のところ、人間は状況が変わっても意識は簡単には変えられないということでしょうか。そして、それまでの経験が長いほど、それまでの経験に拘るので、老害と言われるのでしょう。(もしかしたら、我々も『日韓断交論者の老害』と言われる日が来るのかもしれません)
     駄文にて失礼しました。

  • サイト主さんはちょっと熱くなりすぎでは。

    「これ以上、なにを譲歩しろと言うのか」で、武藤氏の「韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべき」が何を示しているのかわからないのに、「ふざけるのも大概にしろ」というのはね…。

    • 同感です。譲歩しろと言っているわけでもありませんしね。
      同じ知韓派でもジャーナリストの牧野愛博氏なら譲歩するべきだとはっきり書くでしょうが。

      • >同感です。譲歩しろと言っているわけでもありませんしね。

        >>そのためには韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべきである。

        譲歩しろってはっきり書いてあんじゃん。

        • 横から失礼。「譲歩しろってはっきり書いてあんじゃん。」って仰いますが、武島氏の原文は「のためには韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべきである」であり、はっきり「譲歩しろ」ってはっきり書いてあるわけじゃありません。あなたの方こそ他人のコメントを読んで熱くなっていませんか?

          正し「同感です。譲歩しろと言っているわけでもありませんしね。」も曲解です。譲歩しろとはっきり言っているわけじゃありませんが、武藤氏のこれまでの発言を読むと、言外に譲歩を伺わせています。これだけで武藤氏の論考を読む価値が削がれます。

          だから私は武藤氏は鈴置氏などに並ぶ優れた現状分析をできているとは思えませんし、その現状分析にあの結論というのはちょっとどうかなと。正直全否定でもおかしくない。

          蛇足ですがブログ主は武藤氏の記事を評価するところは評価してますよ。全否定じゃない。その辺は読解力をもうちょっと磨いた方が良いと思う。

    • >武藤氏の「韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべき」が何を示しているのかわからないのに、

      判らないんだったら勉強しろっつー話で。

  • 武藤元大使については、龍さんが書いている通りですが、良心的日本人の成れの果てのように思います。
    韓国での中朝工作員と自由民主主義の戦いは、朴槿恵大統領が弾劾された時に、中朝工作員の勝ちになりました。武藤元大使は、その負けを認めたくないのだと思います。

    >「外交の基本は、如何に国益に最大限かなったものとするかということである。その意味で日韓の歴史問題だけを見るのではなく、米国との関係、文在寅政権以後を見据えた韓国との関係、北朝鮮の脅威にいかに対抗するか、中国の拡張政策にいかに備えるかなど広い視野で考えていかなければならない」。

    中国、北朝鮮との脅威や対立に「韓国が役に立つ、韓国が必要だ」と考える事自体が、センスの無さを感じます。
    韓国は、中国、北朝鮮と一緒になって、日本を攻撃しようと考えているでしょう。アフター文在寅は、文在寅より反日性向の強い大統領になるはずです。

    「韓国における中朝工作員と自由民主主義の戦いの負け」を認める事が、日米両政府も大事だと思います。
    日本国内にも沢山いますしね。国会にもね。
    気をつけなければなりません。

    • 仰るとおりです。

      私は何度もこちらに、韓国の民主化運動を通じた北朝鮮の工作の影響力を書いてきましたが、本気にしてもらえたような感触はありません。おそらく日本でも米国でも、北朝鮮の工作を軽く見る考えが主流なのではないかと思います。

      それから私は、韓国社会は案外多様であるとも書いています。武藤元大使のように現地に長くいる人でも、多様な韓国人の内、保守(用日)勢力との人脈が強ければ、北に連なる人々との接触機会が少なく、次の政権に保守の復活を夢見てしまうのかもしれません。至近距離の観察では全体像が見えにくいこともあるでしょう。

      いずれにせよ、米国の貧弱なインテリジェンスでは朝鮮半島の実像を把握することはできず、今後も日本は米国の鶏肋執着に付き合わされるだろうと私は悲観しています。

      • 阿野煮鱒 さま
        黒田さんも擁韓派ですよね。
        日韓に妥協点が有ると思っている。
        「非韓派」だけじゃ無く「悲韓派」が、出て来てもおかしくないのにね。

    • > 武藤元大使は、その負けを認めたくないのだと思います。

      それを認めちゃうと、武藤元大使が半生を捧げてきた対韓外交を根底から否定することにもなりかねないですからね。気持ちは分らんでもありません。
      ただ、あれほど冷静に韓国の現状を分析できる人なので、もはやどうにもならないところまで進んでいることは薄々はわかっていると思います。だからこそ、「ポスト文在寅」の希望に縋りつくしかないのではないかと推察します。
      まあ、世界には「奇蹟も魔法もある」そうなので、絶対にあり得ないとまでは言わなくても良いかなと。

      • 龍様

        >それを認めちゃうと、武藤元大使が半生を捧げてきた対韓外交を根底から否定することにもなりかねないですからね。気持ちは分らんでもありません。

        そうでしょうね。武藤元大使ですら半ば「匙を投げざるを得ない」ほど、現在の日韓関係は修復が難しい段階に至っていることの証左としてこの記事を読みました。

        >そのためには韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべきである。

        今後韓国と協議をする意味があるかどうかはさておき、韓国の被害者根性をここまで肥大化させた「ある程度の妥協」なるものを米・バイデン政権からねじこまれないように、注意深く見ていく必要がありますね。

      • 龍さま
        負けを認めるのは、難しいんだと思いますので、それは良しとしてます。
        現状を認識しつつ、過去の考え方に固執するのは、どうかなと思います。

  • 「それよりも、これから日本がやらねばならないことは、少なくとも文在寅政権下の韓国と対話を進めることではありません。1年少々のちに発足するであろう「ポスト文在寅政権」に備え、粛々と準備することです。」最近、ではこのようなお言葉も「周回遅れ」のように感じています。

    隣国ができてからの政府や大統領を何代も見てきましたが、結局、何も変わらないですよね。これはもう民族性でしょう。もはや次の大統領に期待することなく、「今」も「今後」も政府や外務省や総理が韓国や国際社会に働きかけや訴求をし続けないと彼らは自ら気付いて正義に戻ることはないように感じますね。我が国の元首相を暗殺した者が銅像として建っていてあがめられている国です。李ライン制定後に竹島を占領されてからもう何十年ですかねぇ。教科書に歴史捏造記事を書き、日本にはありもしない拷問様式を再現した展示館を作り日本がやったと自国の学生や観光客に説明している国ですからねぇ・・・。

    しかし、どうにかならんもんですかねぇこの南北朝鮮とROPとロシアという隣国は・・・。

    • > 政府や外務省や総理が韓国や国際社会に働きかけや訴求をし続けないと彼らは自ら気付いて正義に戻ることはない

      それは日本が外交圧力で韓国を変えようという発想です。それは無理です。
      しかも「正義」って… そんな各自・各国の主観に依存する当てにならないものを共有するおつもりですか?

      > どうにかならんもんですかねぇ

      どうにもなりません。
      キチ○イやヤクザと交際するつもりで望まないと。

  • 元駐韓国特命全権大使殿の結論部「米国は韓国を見放すかもしれない。それは日本にとっても安全保障上きわめて大きな危険が迫ってくることになる。」が唐突に出てくることに戸惑いました。
    もう少し米国が韓国を見放した場合どうなるかを説明しないと話が繋がりません。

    折角結論に至る前半部の分析はしっかりしているのに最後で飛躍しているため、今日の東アジア情勢では日本の安全保障を高めるためには核の抑止力を米国に頼らず自前で持つしかないという現実を直視できないおっさんのたわ言みたいになってしまいました。

  • 更新ありがとうございます。

    元駐韓大使の武藤正敏氏は超エリートの東京大学卒ではありませんよ。偏差値やネームバリューでランク付けする気は無いですし、本意では無いです。また私にはとても頭の良い方が行ける学校と認識してますが、高級官僚としては二、三番手グループの横浜国立大学卒です。

    東京大学がダントツで、京都大学、大阪大学、一橋大学、東京工業大学、慶應義塾大学、早稲田大学辺りがトップグループでしょう。旧帝大でも地方校では話になりません(地元では東大、京大の次 笑)いわゆる「旧国立二期校で上位」というポジションと思います。

    さて武藤正敏氏の論考、途中迄は良いんですが、外交官の限界か外務省はその程度なのか、最後の数行でぶち壊しです。
    長い事韓国に携わっていたら、多少相手の立場にシンパシーを感じるのかも知れない。

    また外務省内にアメリカンスクールやチャイナスクールのように、先輩から代々引き継いで来たコリアンスクール(笑)みたいなタテ系統の伝統があるのでしょうか?いずれにせよ韓国系統に配属が長かったという事は、米国、英国、仏国、独国、印度、中国、露国らの外交官より、本省から見たら格下扱いかも知れません(失礼な事を書いてすみません)。

    以下、大問題の周回遅れの部分です。
    「韓国が北朝鮮への歩み寄りの姿勢を崩さず、むしろ強化すれば米国は韓国を見放す。それは日本に安全保障上、大きな危険が迫ることになる。そうならないようにするのが日本の国益だ。韓国との協議、ある程度の妥協は念頭に置いておくべきだ」。

    武藤正敏氏には、対韓姿勢で好感を持ってたのに、かなりガッカリしました。会計士様のいつも言う、日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」では、②の日本が原理原則をねじ曲げて、韓国に媚びへつらう事はあり得ない。絶対にしてはならない事です。

    ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける。
    か、
    ③韓国が国際法違反を続け、日本が韓国に譲歩しないことで、日韓関係が破綻する。
    しかないです。このまま平行線でしょうから、③の選択となり、韓国が「敵性国」に完全になる準備が急務です。もっとも相手がはちゃめちゃなので、無視、ほったらかしで良いと思います。

    • めがねのおやじ 様
       お説概ね同意します(細かいところは異論があります)が、以下の行の様な見識を疑われる言説は、今後は避けた方が良いかと思います。

      >高級官僚としては・・・・
      は、”大学に対する世間一般の評価がそのようなもの”という程度であればまだしも、個人を評価するのに出身大学を引き合いに出すのはどうかと思います。ノーベル章を受賞された梶田さんは埼玉大学、大村さんは山梨大学卒です。

      ”偏差値やネームバリューでランク付けする気は無いですし、本意では無いです。”とお書きになられているので、ご自身もお分かりと思いますが。

      • 農家の三男坊様

        ありがとうございます。

        しかし私は「エリート官僚」という括りなら、自説を曲げるつもりはありません。武藤氏のお名前と出身大学を明らかにして、「超エリートではない」という書き方をしましたが、戦前の高文にしろ、外交官試験にしろ、上級職という呼び名時代にしろ、東京大学を始めとする学群は、ずば抜けた成績です。これが事実であり、スタートラインが入省した段階で、決定的に違います。

        埼玉大学とか山梨大学卒の方がノーベル賞を受賞された。喜ばしい事です。長崎大学も大阪市立大学卒の方もいらっしゃいましたね。でも、これらノーベル賞受賞者の方は、個人或いは複数の研究者との果てしない研究と上長に当たる指導教官(教授ら)と、徹底的な勉学、研究で生まれたものであり、所属する学校が特にその受賞者を若い頃から優遇したり、研究の支えをしたりした訳ではありません。

        国は、エリート官僚はどこから採用するか、という事です。一番「優秀であるべき」東京大学から採用するのは、当然ではないですか。この優秀学生層らは大学入試という18歳〜20歳の頭が柔らかく何でも吸収出来る年齢では、優れてたんです。それで就職に官僚が選ばれた。

        ノーベル賞受賞者は20歳代後半から40歳代迄の研究をやり尽くし、発表し、他の学者が実践してみて初めてその価値が評価されるという、とても時間のかかるものです。

        ですから私は、韓国系統だから米国英国中国担当官より落ちる、と書いたのは官僚機構の中では課長、部長、局長そして次官が居る。その方々は一番「無難な人選をしている」と言えると思います。優秀層は大国に当てる。事実でしょう。

        もう一度言いますが、「個人を評価するのに出身大学を引き合いに出すのはどうかと思います」というお考えは、私は私人、一般人、雇用されている中堅以下のサラリーマンなら名前を晒すのは躊躇しますが、公人として元韓国大使をされ、現在も朝鮮半島問題にマスコミを通して発信されている武藤正敏氏なら、この程度の紹介はあっても、私が非難されるのは理解出来ません。「学歴を馬鹿にしている」「出身大学ですべて人生決まるのか」というご指摘なら、私の意図する所とは全然違います。ただ、高級官僚はこういうピラミッドになっているのは事実ですネ。

        • めがねのおやじ 様
           返信ありがとうございます。
           めがねのおやじ様の「エリート官僚」に対する認識は理解しました。御説を曲げよというつもりはありませんが、

          私が申し上げたいことは:
           ・出身校は本人の現在の実力の微かな一部。
           ・武藤元大使は韓国に関するエキスパート、的外れのラベルを頼りに判断することは、見識とご意見の価値を大きく損なう。
           ・武藤さんが韓国に関して知見・見識で#1と言うつもりはありませんが、韓国に関してはエキスパートであり、“その意見に対して個別に是々非々で論じるべき”
          ということです。

          個別に指摘したい点は
          >「超エリートではない」
            は、世間一般の目からすればその通りでしょう。

          >戦前の高文にしろ、外交官試験にしろ、上級職という呼び名時代にしろ、東京大学を始めとする学群は、ずば抜けた成績です。
            統計データと個人の能力を同一視するのは良く有る誤りです。

          >これが事実であり、スタートラインが入省した段階で、決定的に違います。
           ここが決定的な誤りです。本人の入省選考時の評価、本人の希望と外務省の需要(配置計画)で割り振られると思いますし、スタートラインの違いと今の韓国問題に対する見識・意見の妥当性には直接的な関係はありません

          >個人或いは複数の研究者との果てしない研究と上長に当たる指導教官(教授ら)と、徹底的な勉学、研究で生まれたものであり・・
          その通りであり、これは官僚にも(社会一般にも)言える事だと思います。
          >一番「優秀であるべき」東京大学から採用するのは、当然ではないですか。・・・
           “東大からも採用している”です。
          また、“嘗て、その時測った物指では優れていた”というのはその通りですが、それをそのまま“現在の評価と取り違えるのは誤り”と言っています。
          >韓国系統だから米国英国中国担当官より落ちる、と書いたのは官僚機構の中では課長、部長、局長そして次官が居る。その方々は一番「無難な人選をしている」と言えると思います。優秀層は大国に当てる。事実でしょう。
           ここでも統計的一般論と個別の話を混同しています。
          武藤さんが韓国に関して知見・見識で#1と言うつもりはありませんが、韓国に関してはエキスパートであり、“その意見に対して個別に是々非々で論じるべき”と言っています。
          東大が天野 篤 先生に頭を下げなければならなかったことを考えてください。
          >高級官僚はこういうピラミッドになっているのは事実ですネ。
           社会一般にそう信じられていることは否定しませんが、このピラミッドが絶対ではなく、藪中次官の例もあります。無能な人事評価者が無難と思って選択した結果がどうなるかは、日本の多くのサラリーマン経営者を見ればお判りでしょう。居ても居なくても良い人物しか選ばれなくなるのです。
          私はこの方々を”お公家さん”と呼んでいます。

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