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さまざまなウェブサイト等を調べてみると、セルフ経済制裁という用語をよく耳にするようになったのは、2019年2月以降だそうです。こうしたなか、セルフ経済制裁の興味深い事例が2つほどありました。一部の論点は『台湾産パイナップル禁輸が中国へのセルフ経済制裁に?』でもすでに紹介したとおりですが、あらためてセルフ経済制裁の事例を確認しておきましょう。
セルフ経済制裁
拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』にも織り込んだ用語のひとつに、「セルフ経済制裁」があります。これについては最初に誰が言い出したのかよくわかりませんが、調べてみると、遅くとも2019年2月6日には、某ウェブ評論サイトに掲載されていたようです。
その該当記事を発見しました。
韓国が「セルフ経済制裁」を喰らう?ソウル市の条例案に思う
―――2019/02/06 14:00付 新宿会計士の政治経済評論より
なんと、当ウェブサイトがその発生源のひとつだった可能性があるのです(ただし、初出が当ウェブサイトで間違いないのかといえば、そのあたりは若干微妙ですが…)。
いずれにせよ、この「セルフ経済制裁」、何かと便利な言葉なので、個人的にはもっと世の中に広まってほしいと考えています。というのも、相手国に対する直接的な経済制裁(※狭い意味での経済制裁)が難しい場合でも、相手国に経済的な打撃を与えることができる手段として機能することがあるからです。
パイナップル騒動
その典型的な事例が、『台湾産パイナップル禁輸が中国へのセルフ経済制裁に?』でも取り上げた「台湾パイナップル騒動」です。
これは、中国が台湾から輸入したパイナップルに害虫が検出されたとして、3月1日以降、台湾からのパイナップルの輸入を禁止する措置を講じたところ、日本企業などが台湾パイナップルを買い付けた、という、なかなか興味深い話題です。
財務省税関が発表する『普通貿易統計』によれば、わが国の昨年を通じたパイナップル(HS番号0804.30-010、ただし生のものに限る)の輸入高は157,032トン、金額で133億9037万円だったそうです(図表1)。
図表1 HS0804.30-010の2020年における輸入高
相手国 | 数量と割合 | 金額と割合 |
---|---|---|
フィリピン | 152,970トン(97.41%) | 129億1308万円(96.44%) |
台湾 | 2,144トン(1.37%) | 3億3789万円(2.52%) |
その他 | 1,919トン(1.22%) | 1億3940万円(1.04%) |
合計 | 157,033トン(100.00%) | 133億9038万円(100.00%) |
(【出所】財務省税関『普通貿易統計』より著者作成)
昨年のパイナップル輸入は、数量・金額ともに全体の9割超をフィリピン産が占めていたのですが、逆にいえば、台湾産が増える余地がまだある、ということでもあります。
台湾産パイナップルを食べてみたい
実際、台湾国営の『中央通訊』(日本語版)には2日付で、こんな記事も掲載されています。
台湾産パイン、4万トン超受注=中国への年間輸出量に相当、日本向け増
―――2021/03/02 18:22付 中央通訊日本語版
中央通訊によると、台湾行政院(※内閣に相当)農業委員会の陳吉仲(ちん・きちちゅう)主任委員(※閣僚に相当)は2日、記者会見で、台湾産パイナップルの国内外からの受注量が4万1687トンに達したと述べたのだそうです。
また、陳吉仲氏は「日本向けの輸出量は現時点で昨年を大きく上回っている」と述べたそうですが、この発言が事実なら、年初からの2ヵ月あまりで2000トンを超えた、ということです。大変な伸び率ですね。
いずれにせよ、「相手国に打撃を与えようとして制裁を発動したら、その制裁により自国が打撃を喰らった」という意味では、今回の事例は(中央通訊の報道が事実ならば)、金額的には微々たるものとはいえ、結果的に中国に対するセルフ経済制裁となった格好です。
しかも、複数のコメント主の方々もご指摘になったとおり、今回の「パイナップル」の一件は、台湾が「中国意識」をさらに薄める契機ともなりかねません。気に入らないからという理由で嫌がらせを仕掛けてくるような国とは距離を置く、というのは、流れとしては至って自然だからです。
いや、そもそも中国は台湾を「国ではない」、「自国の不可分の領土だ」などと騙っていますが、自由もなく民主主義もない中国ごときが自由・民主主義国である台湾に高圧的な態度を取っていること自体、長い目で見たら中国自身に対する「セルフ制裁」のように機能するのではないかと思えてなりません。
ノージャパンで船会社が倒産の危機
こうした「セルフ経済制裁」の事例は、ほかにもあります。韓国で「日本旅行ボイコットとコロナ禍の影響で韓国の船舶会社が倒産の危機に立たされている」、という話題です。
ここでは韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の記事を紹介してみたいと思います。
日本旅行ボイコットにコロナまで 韓日結ぶ旅客船会社が倒産危機=韓国
―――2021.03.02 15:39付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースは「日本による対韓輸出規制強化への反発から始まった日本旅行のボイコット」に加え、昨今のコロナ禍の影響で、釜山と日本を結ぶ旅客船の客足がほぼ途絶え、結果的に韓国の船舶会社が倒産の危機に瀕している、と報じています。
そもそも日本が韓国に輸出規制・禁輸措置を課した事実はありませんが、韓国で大々的なノージャパン運動が生じたことは事実です。実際、日本産の飲料(ビールなど)の対韓輸出高が急減したことは、貿易統計などのデータでも明らかです。
財務省税関『普通貿易統計』によれば、2018年において128億円だった「飲料及びたばこ」の対韓輸出高は、2019年に73億円、そして2020年にはじつに25億円にまで減少してしまいました。2年前と比べて5分の1水準です。
ただし、そもそも論として、『貿易統計③日本の貿易上、台湾と韓国の地位は逆転へ?』でも報告したとおり、日本の韓国に対する輸出高は、2020年を通じて4兆7662億円(日本の輸出高全体の6.97%)です。飲料の輸出高はコンマ数パーセントと、本当に微々たるものに過ぎません。
じつは、日本の貿易構造上、韓国に対しては「BtoC」(消費者向け製品)ではなく、「BtoB」(生産者向け製品)の輸出が中心であり、韓国の消費者が日本製品の不買運動を仕掛けたところで、その打撃は日本経済をかすりもしないのです。
旅行単価の低い国
もちろん、対馬のように、地域によっては韓国人観光客に大きく依存していた事例もあるのですが、全体で見るならば、韓国人がノージャパン運動をしたことによる日本経済への打撃は、ほぼ存在しないと考えて良いでしょう。
ついでにもうひとつ申し上げておくと、国土交通省・観光庁が2020年3月31日付で公表した『2019年の訪日外国人旅行消費額』によれば、訪日外国人の2019年における旅行支出は1人あたり158,531円でした。
しかし、日本旅行で消費する金額は、オーストラリア人旅行者が247,868円、英国人旅行者が241,264円などであるのに対し、韓国人はなんと76,138円で、「まさかの10万円割れ」、というわけです。
近場から来日しているケースだと、1人あたり旅行額が抑えられる事例も多いのですが(たとえば台湾の場合は1人あたり118,288円でした)、韓国人の旅行支出額はほかの国と比べて断然低く、はたして韓国人観光客が日本経済にとって有り難い存在だったのかについては、冷静な評価が必要です。
いずれにせよ、コロナ禍は不幸でしたが、それ以前のノージャパン運動は韓国によるセルフ経済制裁となったと考えられなくはありません。
このあたり、わが国が遅かれ早かれ発動するであろうさまざまな制裁に先立ち、中国や韓国の「失敗事例」を研究しておくことも有意義かと思う次第です。
View Comments (13)
> 韓国人はなんと76,138円で、「まさかの10万円割れ」
韓国人なんかを受け入れて、日本の観光業を疲弊させるより、
韓国人を排除して、本来の日本の良さを、他国からのお客様に楽しんでもらいましょう。
これを機に、観光業も量から質への転換を図るべきです。
当然、韓国人売春婦は入国禁止で。
>これを機に、観光業も量から質への転換を図るべきです。当然、韓国人売春婦は入国禁止で。
大賛成です。折角の観光地で彼等を見ると神社仏閣毀損放火と言うイメージが付き纏い、その様な目でつい見てしまう。現に、山寺なんかはハングルだらけで酷かった、それもナイフで彫り込む傷。日本の観光地には至る所にハングルの落書きが有ります。それともういい加減に観光案内板や駅の案内表示やバス停などから、ハングルを消去する時期じゃないでしょうか、本当に見苦しくもあり、腹が立ちます。外国人用案内は国際標準語だけにしましょうよ。
イーシャ様
>当然、韓国人売春婦は入国禁止で
一言余計では(笑)。
マジなはなし、国富が奪われているという見方も成り立つでしょうが、国内の性犯罪の減少に、多少は役に立ってるという可能性はないでしょうかね。
まあ、アチラでは売春婦が山ほどいようが、異常に性犯罪の発生率が高いんだから、あまりそうした効果はないのかも知れませんが。
伊江太様。
この様なK売春、性犯罪は今までは避けて通っていました。で、コレからも避けていくつもりです。
で、性犯罪者はK売春婦達にカネを使って処理をスル様なモノでは無いと、愚考致します。
で、Kの人達が女も男も集まる所は風紀が悪くなる様な気がします。ビザの短縮化を(例えば2日)するのが良いかと思います。或いは日帰りの1日にするとか……。
そ〜すればアッチも、ホ〜フクだ〜、と言ってきます。メデタシ、メデタシ、メデタシです。
観光なんて物理的キャパに上限があるモノを薄利多売するなんてキガクルウトル
適利適売
あとトリアエズ半島と大陸はビザ発給をもっと厳格に!
K国:セルフ経済制裁の起源は他でもない、私だ!!
C国:(うるさい奴がいるな・・・。)「セルフ経済制裁」を世界遺産に登録して、ヤツらを黙らせよう!!
お後がよろしいようで。
更新ありがとうございます。
2019年2月の「セルフ制裁」の記事で、読者投稿欄を見ましたら、懐かしいお名前、今も続けて投稿されている常連さんを発見しました。オ、私も載っている(笑)。
パイナップルの件は中国のイヤラシイ輸入禁止措置が、世界を敵に回しました。たかが45億円ぐらい中国にしたら、なんて言う数字では無いでしょう。
だから昨年2,000トン台の日本が5,000トンに倍増、3倍増しただけで評価が上がる。これもセルフ制裁ですネ。さ、台湾パイナップルを食べよう!(笑)
中国と、その末弟分の韓国はやる事が似てます。日本旅行で消費する金額は76,138円、世界サイテー。訪日外国人平均の旅行支出は1人あたり158,531円。オーストラリア人旅行者が247,868円、英国人旅行者が241,264円。
それで爆弾犯や徘徊悪者いたり、売春婦居たり、来なくて良い。ビザ免除プログラム廃止しましょう。
「セルフ経済制裁」、たしかに敵国に被害をあたえるための、今後有効な戦略的ツールになりそうですね。
経済制裁を行うことで、「その制裁が自国に具体的にどの程度の金額的損失をもたらすのかという正しい計算」ができなければ、自爆になりますからね。
その意味で、
1.客観的な数値予測分析を行うためには日頃から正しい会計処理による統計が必要
2.感情的に走らない冷静な判断力が必要
という二点において、中国は1、韓国は2が不足しているように思います。
従って、敢えてセルフ経済制裁を行うように仕掛けるという戦略を日本は取るべきかもしれません。
日本政府には、具体的に実行しそうなセルフ経済制裁をリストアップし、当然ながら日本に与えるマイナス金額も踏まえつつ、早速作業に入って頂きたいものです。
賛成です。
セルフ経済制裁のトリガーの研究が必要ですね。
相互作用確実な経済制裁より、楽な上に外聞も良し。
核武装の議論でもあった通り、互いに核を構えて対峙するより、暖かく自爆を見守るほうが遥かに効率的、健康的ですし。
セルフ経済制裁のキーの一つは相手国の国民感情を悪化させること、自爆芸も辞さない無能な政権を樹立させることでしょうか。
妥協を繰り返し、長期的に上位にあると錯覚させたことが戦略だったとすれば、それはそれで空恐ろしいことですが。
セルフ経済制裁という言葉が頻繁に使われはじめたのは、ホワイト国除外によるノーアベ、ノージャパン騒動の2019年8月頃からのようです。つまり当ブログで報じた(2019年2月)約半年後と言えそうです。
数字に表れてないと思いますが韓国人はパチンコに結構金遣います。コロナ前は福岡へのパチンコツアーとかありましたから。日本に出張に来ても夜一緒にメシも食わずにパチンコ直行するヤツ何人もいました。花札を韓国に持込んで堕落させたと日本に謝罪と賠償を求めるぐらいバクチ好きですから韓国ではパチンコ禁止です。日韓議連も現実不可能な事を言わないでパチンコ解禁に動けばいいのに。日本からは帰還事業として産業ごと輸出。直ぐにGDP2位の産業になります。
これもセルフ経済制裁ですか?(笑
韓国がソウルフードのキムチを守るために「韓国産キムチ」と表記できる基準を作って登録及び許可されたものだけが表記できるように法を整備したそうです。ところが、この登録申請が一件もないそうです。というのは、韓国産キムチを名乗るためには、韓国内で生産された材料で製造しなければならないと定められているのですが、現在韓国内で使われている白菜はほとんど中国産なのです。そして多量に必要となる唐辛子は、韓国産だと米国で許可されていない農薬が使われていて、国産唐辛子に切り替えたら輸出ができなくなるというわけで、唐辛子は日本から輸入しているそうです。したがって「韓国産キムチ」の基準を満たす製品がないのです。そこで早速「材料は輸入したものであっても、韓国内で加工したものは韓国キムチとしよう」という、都合の悪いルールは都合よく変えてしまおうという誠にかの国らしい議論が巻き起こっているそうな。どっとはらい。
中国のパイナップル騒動もセルフ経済制裁になるんですか?
買わない(買えない)だけで、特に損はしていない気はするんですが。
後述の「帰属意識」の問題も、「かもしれない」だしセルフ”経済”制裁ではない気がします。