正直、ウンザリします。米国で先月発足したバイデン政権が韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権を軽視しているフシがあるのは確かですが、その「真の狙い」が「韓国を脅して親米政権にすげ替えるため」なのだとしたら、またしても日本が振り回されることになるからです。その意味で、私たち日本人は、韓国観察者である鈴置高史氏の「バイデン政権下における米韓関係」に関する第3弾の論考を精読する必要があると思う次第です。
鈴置氏は「韓国観察者」?「日本観察者」?
鈴置高史氏といえば、「韓国観察者」と名乗っている論客です。
ただ、以前からしばしば報告しているとおり、最近、個人的には鈴置氏を「韓国観察者」と申し上げるのが良いのかどうか、少し疑問でもあります。その理由は簡単で、一連の鈴置論考を精読すれば、これらが単なる韓国論を超えて、「日本が進むべき道」を間接的に示しているように思えてならないからです。
その意味において、正直、鈴置氏は「優れた韓国観察者」であるだけでなく、じつは「優れた日本観察者」でもある、と申し上げた方が正確です。そんな鈴置氏が本日付でウェブ評論サイト『デイリー新潮』に寄稿した次の論考、非常に深みがあります。
慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は
「いつまで『慰安婦』を持ち出すのか。日本と仲良くできないなら見捨てるぞ」と米国が韓国に言い渡した。J・バイデン(Joe Biden)政権が文在寅(ムン・ジェイン)政権を見限ったのだ。韓国観察者の鈴置高史氏が解説する。<<…続きを読む>>
―――2021年2月15日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
今回の論考は、2月2日付の『「バイデンから電話が来ない」と気を揉む韓国人 原因は「習近平コール」か、それとも――』、2月8日付の『「文在寅外し」に乗り出した米日 「中国べったり」と見切り、政権交代待ち』に続く、「バイデン政権下の米韓関係論」の第3弾と見るべきでしょう。
東亜日報を通じて韓国を脅すバイデン政権
前回、前々回と切り口は似ているのですが、この議論が続く理由はおそらく、一連の鈴置論考を補強するような事実(ファクト)が次々と出て来ているからではないでしょうか。
実際、今回の論考では、のっけからこんな話題が取り上げられています。
「鈴置:東亜日報が興味深いニュースを報じました。バイデン政権の韓国担当者が同紙に対し、慰安婦や徴用工問題を唱え日本と対立を続けるのなら同盟を打ち切るぞ、と威嚇したのです。」
その「興味深いニュース」とは、韓国メディア『東亜日報』に2月10日付で掲載された、こんな記事です。
「最悪に突き進む」韓日関係に…米「韓国に対する期待を放棄するかも」と圧迫【※韓国語】
―――2021/02/10付 東亜日報より
鈴置氏によると、この東亜日報の記事では、「バイデン政権の当局者が1月9日、本紙に『私たちはクアッドの協議体化を急いでいる』、『日本との関係改善にも注目している』と述べた」などと記載されているのだそうです。
そのうえで、重要なのは次の記述です。
- 我々が韓国から聞かされることといったら、シンガポールの米朝首脳会談の精神と、慰安婦、強制徴用問題だけ
- 世界的なイノベーション国家である韓国が、北朝鮮や日本問題に関しては、いかなるイノベーションもしていない
- 韓国が(日本との関係で)前に進まないなら、バイデン政権はパートナーとしての韓国に対する期待を放棄しうる
非常に興味深い指摘ですね。
この東亜日報の記事が事実なのだとしたら、意味深です。今月の米韓電話首脳会談で、ホワイトハウス側の報道発表に「日米韓3ヵ国連携」の文言が含まれていなかったという事実と照らし合わせると、「このままだと米国は米韓同盟を断ち切るぞ」という警告にも受け取れるからです。
韓国の騙る「日韓関係改善」の正体とは?
ただ、そうなると、読者としては、「いや、でも最近の韓国は日韓関係改善を言い出しているんじゃないですか?」と反論したくなります。これに関する鈴置氏の見解も、また明快です。
「――文在寅政権は日韓関係を改善するでしょうか?
鈴置:しないでしょう。韓国政府にとって『改善』とは、何らかの形で日本政府が元慰安婦判決と自称・徴用工判決に従うことです。」
つまり、文在寅(ぶん・ざいいん)政権は、本心では日本との関係改善を図るつもりなどなく、それどころか引き続き、日本に対し、自称元徴用工判決などに従うことを要求する、というわけです。
余談ですが、菅義偉総理が文在寅氏との首脳会談に応じない理由も、コロナ禍だけにあるのではなく、こうした韓国側のよこしまな狙いを正確に見抜いているからではないでしょうか。
ただし、鈴置論考のうち、私たち日本人が本当に心して傾聴しなければならない部分は、この先にあります。バイデン政権の関心が、もはや文在寅政権ではなく、遅くとも2022年5月に発足するであろう「次の政権」に移っているフシがあるからです。
幸い(?)、北朝鮮は現在、核実験もICBM(大陸間弾道弾)の実験も中断しています。北朝鮮情勢の落ち着きを考えるならば、鈴置氏が指摘するとおり、バイデン政権が「交渉はおいおい進めれば良い」との判断に傾いていたとしても不思議ではありません。
「文在寅政権の任期は2022年5月まで。あと1年半もありません。そんな政権は無視し、『日米韓』の協力体制は、次の『まともな政権』と作ればいいわけです。」
…。
いかにも、バイデン政権が考えそうなことです。
要するに、現在の文在寅政権を軽視するとともに、韓国国民に対して「こんな政権を選んだら米国は許さないぞ」とばかりに脅すことで、自国にとって都合が良い政権を発足させようとする魂胆でしょう。
実際のところ、米国には(とりあえず表面的には)相手を従わせるための手段がいくつかあります。その代表的なものは「通貨(米ドル)」、「産業」、「軍事力」です。
実際、鈴置論考では、このところ、米国が『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』などのメディアを通じて韓国にさまざまなメッセージを送っていると指摘します。また、1997年のアジア通貨危機も、なかば人為的に発生させられたものだというのは、金融業界ではわりと有名な話でもあります。
さらには、日本が2019年7月に発表した対韓輸出管理厳格化に関連し、鈴置論考では「フォトレジストの供給を止めれば5G向け半導体が作れなくなる」など、産業面にも大きな打撃が生じるであろうと指摘しているのです。
外交を通じて相手を変えられるという思い上がり
ただし、当ウェブサイトなりに言わせていただくならば、「外交を通じて相手を変えることができる」というのは、思い上がりも甚だしいことです。結局、民主主義国においてはその国の民度を越える政権など出現しないからです。
それに、現在のバイデン政権が目指している「米国にとっての都合が良い政権」が「保守政権」を指しているのだとしたら、それは少々勘違いの度が過ぎます。バイデン氏が副大統領時代に直面した、米中二股外交を繰り広げた朴槿恵(ぼく・きんけい)政権は、まさにこの「保守政権」だったからです。
実際、鈴置論考でもこの点については、次のように指摘されています。
「――これだけ脅せば、次は親米政権が登場しますか。
鈴置:そうは簡単にいかないのが韓国という国です。左派だけでなく保守も『米国が怒っているようだけど、少々の甘えは許してくれるはず。韓国に兵を置いておきたいのだから』と考えがちなのです。」
この記述は、「1997年の通貨危機のように『痛い目』に遭わないと(韓国は)言う事を聞かない」という文脈で出て来るものですが、もう少し身もふたもない言い方をするならば、「痛い目に遭ったとしても、言う事を聞かない」という可能性も相応に高いでしょう。
この点、当ウェブサイトでは常に報告して来たことですが、韓国国内には「純粋な反日派」と「用日派」がいるらしく、行動としては一見すると似ていますが、目的は同じではありません。
- (A)用日派――歴史問題などを使って日本に罪悪感を植え付け、それにより日本から産業ノウハウ、技術、資本などを安い価格で手に入れようとする勢力
- (B)純粋反日派――歴史問題を使い、純粋に日本を貶めようとする勢力
このうち(B)の純粋反日派は、ある意味では感情の赴くままに反日をしてくれているので、むしろ彼らが韓国国内で力をつけてくれれば、私たち日本人の側に、「韓国は事実上の敵対国である」という認識が広まるのに役立ちます。
これに対し、(A)の用日派は、「我々も韓日関係は重要だと思っている」、「だからこそ日本はわが国の国民感情に配慮すべき」などと言いくるめることで、日韓関係を韓国にとって都合が良い形に持って行こうとします。
その意味で、日本にとってタチが悪いのは、(B)ではなく、むしろ(A)の方でしょう。つまり、日本にとっては、ここで韓国で「保守派(=用日派)」が息を吹き返す方が困惑するのです。
いずれにせよ、バイデン政権が文在寅政権を冷遇し始めていることは事実ですが、だからといって、「米国が韓国をやっつけてくれる」、「反日の韓国が酷い目に遭えば良い」、といった文脈で溜飲を下げる、というのでは困りものです。
鈴置論考を正しく読むならば、「仮に親米政権にすげ替えても、従中・卑日は続く」と見るのが正解でしょうし、個人的にはこの見解に全面的に賛同せざるを得ないのです。
View Comments (43)
司法・立法・行政を抑えているので、韓国与党はいずれの選挙でも勝利すると思います。
理由は、韓国の検察もトップが暫くすると入れ替わるので、
反対勢力だけ検挙するようになるかも。
米国でも、選挙の不正は司法がスルー状態のようです。
韓国ならば、もっと大々的に選挙の不正を行うと期待中です。
用日派の力は、低下してくれるはず。
アメさんは韓国に民主主義を根付かせた!って実績(と彼らが思ってる幻想)があるから切るって決断はできないだろうなあ。
日本としてはうまく韓国を焚き付けて自分から中国側に走らせるように仕向けるのがいいのかな。
日本の負担は増えるだろうけど、信用できない味方が隣にいるのよりはましか。
一部の日本人もそうですが、韓国を変える、というのは無駄な期待に基づいた思惑であることに気付いていない人がいます。韓国を変える、というのは韓国の民意を変える、ということであり、価値観を変える、ということに実質等しいのです。
それが徒労に終わることは韓国を見続けていればすぐに分かることですが、気をつけていないと容易にはまる落とし穴です。
韓国を変えるのではなく、先に韓国なしでやっていける体制を整える方が重要です。そこへ韓国が参加したいというなら使用料を払ってもらう、支払いに応じた権利を与える一時的な関係に限定すべきです。
おっしゃる通りです。>韓国を変えるのではなく、先に韓国なしで〜〜〜
私達は度々、「〇〇だが、それは韓国人のDNAの特徴だ」と突き放す意見に遭遇します。中華の外縁にあたる小中華の優等生だった李氏朝鮮は簡単な人民統治の手段として儒教を導入し土着シャーマニズと融合し、独自に変質した朝鮮儒教が道徳の柱だと言われています。その道徳とは「自分は相手より上か下か」が全て。朝鮮が中国に従順なのは自分より上だから、日本は遠い夷狄蛮族だから自分より下。驚くなかれこの精神がこの現世に於いても今だ健在のですよ。一例として、「相手は下だから我に金を貸し、我は仕方がなく金を借りてやるのだ」⬅︎麻生大臣が通貨スワップ拒否。事が思う様に進まないのは日本の所為だ〜で罵倒する。詰まるところ価値観の大きな違いからもう完全にアウト。助けない・教えない・関わらない、それこそ『三不の誓い』に徹し、国防に専念するしか無いと思う。南鮮北鮮の背後には中華思想の大御所中国が金印・銀印・銅印を持って控えているが、日本はそんな印なんか欲しくは無い。1Fか3Fか中間Fか知らないが印を欲しがる様では日本は終わり。
文大統領、ここが踏ん張りどころです。
韓国憲法を改正して自ら永世大統領を宣言するか、ドミニオンを使うなど、次も極左政権が続くよう、なりふり構わず得意の小狡い小細工を弄してください。
そうしないと、歴代の韓国大統領と同じ、悲惨な未来が待ち受けているのですよ。
日韓関係や米韓関係なんて小さなこと。
保身こそ、あなたにとって最も重要なことではありませんか。
イーシャさま
そう、死んでは元も子もない。
あなたはあなたのままで変わらずにいて下さい
そのままで~♬
追伸:
名曲を引用したことへの、謝罪と賠償の要求は受け付けません。
> 当ウェブサイトなりに言わせていただくならば、「外交を通じて相手を変えることができる」というのは、思い上がりも甚だしいことです。結局、民主主義国においてはその国の民度を越える政権など出現しないからです。
全く同感です。米民主党は積極的に韓国を変えようと思い、それは実現可能だと思っています。あたかも間違って文在寅政権になったが文在寅さえ首をすげ替えれば「正常な韓国」が実現してアメリカに都合良く上手く行く、その際には日本に戦後一貫して無理強いして来た韓国へのケツ持ちを今後も未来永劫続けさせよう、それで三方ヨシなのだと。
だが五千万人韓国国民の反日差別意識はそう簡単に変えられない。漸く日本は韓国のケツ持ちから離れられるかと言う時にまたしても韓国の面倒を見ろだとかお話にならない。そう言う思いが個人的には強いです。
「K国=反社会的勢力」で全て説明がつく、必殺のワンパターンコメントなので、
最近ずっと閲覧メインだったりします(匿名?某自称大使案件除く)。
今回のAとB、私には、「同じ穴のムジナ」にしか見えません。
ドラマや映画じゃなく、かつて仕事で損な!対応をしたこともあり、デジャブなのです♪
大抵の場合、ABの2人でやってきて・・・無茶苦茶な主張なんですよね〜
曰く、
B:(下品に大声で何回も)・・・セーや!
A:まぁ、まぁ、・・・するのは、オタクらも立場上難しいでっしゃろーし。
間をとって・・・くらいでどーでっしゃろー
私:(丁寧に丁寧に揚げ足取られないようご説明して)
・・・致しかねますのでお引き取りください。
※お引き取りの際に、Aが「地下鉄のる時は、きぃつけヤァ」「家族が怪我せーへんようにきぃつけたりやぁ」等の捨て台詞が入ったり、入らなかったり・・・
ただ、ABとも反社会的勢力なんですけど、明らかにAの方がタチが悪かったです。
結論として、ABいずれに対しても、丁寧な無視&関わらないのベスト。
関わるとしても相手の無茶苦茶な主張を丁寧に揚げ足取られないようかつ誤解のないよう拒否するのが吉です。
米国に対しては、その辺りの丁寧な説明と理解&今後の対応を共通認識として共有しておくことが必須だと考えています。
p.s. 本日18時現在、某自称大使のお名前は、駐日各国大使リストには記載ありません。
バイデンに脅された韓国政府は早速日韓関係の修復に乗り出すようですが、相変わらず頭の中は北朝鮮のことで一杯ですね。
そして使い古された告げ口外交で、アメリカに日本を圧迫してもらう気まんまん。
アメリカがどう出てこようと、日本としては毅然と対応してほしいものですが、はて。
[独占]政府高官「韓日関係、南北関係よりも優先する」任期の終わりに三角共助修復に乗り出す(韓国語)
2021.02.15
https://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=001&oid=020&aid=0003338462&lfrom=twitter&spi_ref=m_news_twitter
>>米国が北韓と中国の問題で韓米日協力の重要性を強調し韓日関係の改善を注文しているため、韓日関係を先に解決してこそ米国と対北政策の調整が順調に進むと韓国政府が判断。
>>文在寅政府が「南北関係の復元よりも韓日関係の復元が先に」と判断したのには、任期が1年余りしか残っていない状況で韓日関係の悪化が続くと、日本が韓国政府の対北朝鮮政策に否定的な状況が続くことがあるという懸念が作用したことが分かった。
>>「政府が過去史問題解決のために開かれた態度でアプローチしているにもかかわらず、日本が譲歩せず問題解決が難しい」という点も米国に説明していると政府関係者は伝えた。そうしながら「こうした状況を勘案し、米国が韓日関係改善のための役割を果たしてくれることを要請している」というのだ。
鈴置論考から引用します。
「1月28日、IMFが『いつまでも空売り規制を続けるべきではない』と韓国に忠告しました。規制を続けるほどにホットマネーが入り込み、バブル崩壊の際の衝撃が大きくなるからです。しかし、3月15日に解除の予定だった空売り規制は5月2日まで延期されました。2月3日のことです。
規制解除を延期したのは4月7日のソウルと釜山の市長選挙を政府が意識したためです。買い方に回っている個人、すなわち有権者に忖度し、選挙前の株価急落を予防したのです。」
「韓国の大統領の末路は悲惨です。それを防ぐには『自分を監獄に送らない次の政権』を作るしかない。2022年の大統領選挙で親米派が勝ちそうになったら、死に物狂いで阻止に動くでしょう。」
こうした指摘から予想できるのは、2022年5月の大統領選挙前に、差し押さえた日本企業財産の現金化や日本政府財産の差押は無いということです。(その後も無いでしょうけど。)
また、自称元徴用工判決も、自称元日本軍性奴隷判決も、目的は被害者を救済するためではなく、選挙に勝利する(自分たちの政治生命を守る)ためだということです。
そんなバカバカしい目的のための韓国政府との交渉に、日本政府は貴重なリソースを振り向けるべきではありません。常に、「約束を守れ」、「国際法を守れ」とだけ、馬鹿の一つ覚えのように言っておくだけで十分だと思います。
駐日大使(仮)のおっさんの今後の動向に注目ですね。
奴にとって手の平返しはお手のものだし、案外アメにすり寄って次期大酋長を狙ってるかもw
次期政権になっても、文政権でやったことをまず日本政府と日本国民が納得する形で解決しないと関係は続けられないと、はっきりしなけばならないと思います。
少なくとも私は、慰安婦合意の破棄と日韓基本条約の無視は、国交を続けるべきかどうかの重要問題であり、それなくして国と国との関係は続けられません。