昨日、報道等で話題となったのが、韓国の国防白書で日本に関する記述が「パートナー」から「隣国」に引き下げられた、というものです。報じられている同国の国防白書はほかにも、レーダー照射事件を「低空威嚇飛行」、輸出管理適正化措置を「日本の輸出規制」など、事実に反することがらを並べ立てたうえで、「日本側の事実をごまかした一方的な発表が両国の国防関係を難航させている」などと主張しているようです。
韓国の厚顔無恥な国防白書
昨日、大きく注目されたのが、韓国の国防白書に関する話題です。
韓国の国防白書、日本を格下げ 「パートナー」から「隣国」に
―――2021.2.2 12:43付 産経ニュースより
韓国国防白書、日本を「パートナー」から「隣国」へ…「ギクシャクしていた関係があるため」
―――2021.02.02 16:22付 中央日報日本語版より
産経ニュースや韓国メディア『中央日報』(日本語版)などの報道によると、韓国国防部は2日、2年ごとに発行している国防白書の2020年版を発表したそうですが、そのなかで日本に関する記述を「協力していくべきパートナー」から「協力していくべき隣国」との表現「格下げ」。
あわせて、2018年12月の韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件を巡っても、「日本の哨戒機による韓国艦艇への威嚇飛行」、「日本側の事実をごまかした一方的な発表」などで「両国の国防関係が難航した」などと主張したそうです。
さらには、2019年7月に日本政府が発表した対韓輸出管理適正化措置を巡っても「輸出規制措置」と騙り、あわせて「日本の歴史歪曲、日本の政治指導者らによる独島(※竹島のこと)挑発」「未来志向的な発展への障害」になっているなどと述べているのだとか。
まったく、いちいちとんでもない話です。
そもそも論ですが、両国の国防協力の信頼関係をぶち壊したのは間違いなく韓国の側でしょう。韓国側はレーダー照射事件について、いまだに日本に謝罪していないばかりか、依然として「日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」などの見え透いたウソをついているからです。
また、歴史を歪曲しているのも、竹島問題などを巡って日本を挑発しているのも、すべて韓国の側ですし、日本の輸出管理適正化措置を巡っても「輸出『規制』」などと騙り、世界貿易機関(WTO)に提訴しているのも韓国の側です。
厚顔無恥とはこのことをいうのだと思います。
日本側もすでに韓国を「協力すべき相手」とみなさず
といっても、「パートナー」から「隣国」への格下げ自体は、日本側の措置とも整合していることは間違いありません。
先ほどの産経ニュースや中央日報などの記事によれば、韓国側の国防白書では「共通の安全保障懸案については継続的に協力していく」などと記載されたそうですが、この「国防協力」という視点では、むしろ日本側の対応の方が、さらに進んでいるという言い方もできるからです。
昨年7月の『防衛白書、「韓国との防衛協力と連携」をバッサリ削除』でも報告しましたが、じつは日本側も2020年版の防衛白書で、韓国の記述順序が後回しにされたうえで、「韓国との間で幅広い分野での防衛協力を進めるとともに、連携の基盤の確立に努める」の記述がバッサリ削除されているのです。
さらには、韓国は日本との「ハイレベル交流」実績(※防衛大臣、副大臣、政務官、事務次官、審議官、幕僚長が外国と交流した実績)が減少したうえ、韓国は国防白書上の連携すべき国々を示した地図からも姿を消してしまっているのです(図表)。
図表 韓国は?
(【出所】2020年防衛白書『図表Ⅲ-3-1-3』)
つまり、日本の防衛省としては、旭日旗を侮辱したり、火器管制レーダーを照射したり、『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(日韓GSOMIA)を破棄しようとしたりする国に対し、相応の取扱いをしているのだ、という言い方をしても良いでしょう。
ファクトチェック:日本が抗議したのは?
さて、韓国の国防白書発表を受け、中央日報には今朝、こんな記事が掲載されていました。
日本、韓国の新国防白書に反発…駐日武官呼んで「受け入れられない」
―――2021.02.03 06:31付 中央日報日本語版より
中央日報は防衛省の石川武報道官が記者会見で、国防白書中の竹島領有権などの記述を巡り、「日本の立場と相いれない内容が記述されている」としたうえで、「日韓、日米韓の連携を損なうことがないよう韓国側の適切な対応を強く求める」などと述べた、と報じています。
記事本文を丹念に読めば、日本が抗議したポイントは「竹島領有権」などの記述であるということはよくわかるのですが、タイトルだけを読むと、どうも韓国が日本を「パートナー」から「隣国」に格下げしたことに対し、日本が反発しているかにも見えます。
これについて原文を確認しようと思って、石川報道官の記者会見録がないか、防衛省のウェブサイトを探してみたのですが、見つけられませんでした。ただ、産経ニュースがおそらく同じ記者会見を記事にしていたようです。
防衛省、韓国国防白書の記述に抗議 レーダー照射など
―――2021.2.2 19:33付 産経ニュースより
産経ニュースは記事の第1段落で、「韓国海軍による火器管制レーダー照射問題などを巡り『事実をごまかした一方的な発表で両国関係が難航した』と記述したことに関し、韓国側に抗議した」とハッキリ報じています。
そういえば、中央日報の記事には「レーダー照射」という文言が含まれていませんでした。もしかすると、韓国側ではレーダー照射事件はナチュラルに「なかったこと」にされているのかもしれません。
いずれにせよ、産経ニュースは防衛省国際政策課長が在日韓国大使館の駐在武官を呼び出し、「わが国としては受け入れられない」、「極めて遺憾だ」と伝えたと報じているのですが、この書き方だと中央日報の記事とはずいぶん違った印象を受けます。
そして、この産経ニュースの報じ方だと、石川報道官の「北朝鮮の核・ミサイルを巡る状況を含め、日韓、日米韓の連携は重要」、「連携を損なうことのないよう、韓国側の適切な対応を強く求める」という発言についても、「韓国側が日米韓連携を壊している」というニュアンスがよく伝わるのではないでしょうか。
まずは朝鮮半島生命線説からの脱却を!
さて、くどいようですが、当ウェブサイトのスタンスは明白です。
以前から申し上げているとおり、日本は覚悟を決めたうえで、そろそろ「朝鮮半島生命線説」の考え方からは決別すべきです。
ここで「朝鮮半島生命線説」とは、次の①、②の考え方です。
- ①韓国は地理的に見て日本に非常に近く、この地域が日本の敵対勢力に入れば、日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす。
- ②だからこそ、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない。
このうち①についてはそのとおりでしょう。何も間違ってはいません。
しかし、①が正しいからといって、自動的に②が成り立つというものでもありません。なにごとも「費用対効果」というものがあるからです。韓国(あるいは朝鮮半島全体)を日本の友好国に引きとどめておくためだけに「あらゆるコスト」を払うだけの余裕は、日本にはありません。
この点、今朝の『鈴置論考から考える「米国は文在寅政権を除去するか」』でも少し触れたとおり、日米首脳会談などの場では、少なくとも公式発表からは「日米韓」という文言は見当たりませんし、事実上、形骸化しつつあることも間違いありません。
ただし、米国との関係を踏まえるならば、現在の時点で日本から「日米韓3ヵ国連携」の破棄を言い出すのは望ましくありません。先ほどの石川報道官の発言にもあるとおり、少なくとも公式には「日米韓」という枠組みは生きているからです。
だからこそ、日本としては日韓関係が完全に破綻するまでの猶予期間内に、韓国との防衛協力を見直し、産業面のサプライチェーンの再構築を急ぐべきだと思う次第です(※もっとも、その「猶予期間」の長さがどのくらいなのかについては、今ひとつ読めないところではありますが…)。
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メディアというのは、よりセンセーショナルになるよう内容をミスリードします。わざと。
国内でもそんなメディアがゴマンとあります。
海外の、しかも朝鮮のメディアとなればその程度の論点ずらしはデフォでしょう。
まだこれから半島に合弁会社立ち上げようとセントスる大企業もあるやに聞き及びますが…
中国に研究所を持つGoogleを標的として企業も政治に責任を持てという声が米国では高まっています。
そう言われると、今まで企業は国の安全についてほとんど無関心で活動してきていますが、この流れも米国から変わって日本に及ぶのも時間の問題かもしれません。
近所の元兵隊農家のところで防衛白書の冊子を軽く流し読みしてきました。写真付きの目立つ記事では、やはり例年よりもオーストラリア、インド、英国圏の存在感が強かったですね。
韓国はというと、実際に協力できていないのだから当然ではありますが、それにしても全体に渡って記述が少ない。実績も無いし期待も無い、という感じ。
各国との協力実績を記述したページなど、中国・ロシアですら会談した、交流した、と並んでいる中で、韓国は「GSOMIA終了を停止した、さすがに現実考えたんじゃね」だけでしたし……見様によっては仮想敵国よりも交流していないのです。
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/
PDF等で公開されていますので、時間のある時にでもどうぞ。
防衛白書、私もさらりと目を通しました。
第一部の我が国を取り巻く安全保障環境の中に韓国の話はまるでありませんね。まあ日頃の韓国の言動からして当然と言えば当然ですが。
韓国はF35を導入してどこで整備するのか見物だなぁ。今から楽しみと言えば楽しみです。
読売新聞の速報来ましたね、新宿会計士さんの予想が大当たりです。おめでとうございます!
外務省のホームページに吉田外務報道官会見記録が出ましたね。
報道官が「次期大使」と言っていますのでアレグマンも出ており、
大使になるのは確定事項なのでしょう。
憤りを感じるところではありますが、叩きやすそうな人物ではあります。
矢塚さま
>アレグマンも出ており、大使になるのは確定事項なのでしょう。
私もそのように読みました。
今まで報道された内容の通りで、新しいものは有りませんでしたね。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、韓国と同じく、自分は間違いない存在と自惚れてしまうので)
古代ローマの時代から、「人は見たいものしか見ることができない」存在であると言います。(もちろん、日本もそうかもしれませんが)現在の韓国人が典型なのかもしれません。しかし、国のトップがそうなら、国がもちません。その意味では文大統領も鳩山由紀夫(元)首相も、その悪い例ではないでしょうか。(若年性痴呆症という言葉があります。さて、(年齢に関係なく)誰が痴呆症なのでしょうか)
駄文にて失礼しました。
更新ありがとうございます。
やっと韓国側からハッキリと言ってくれたか!(笑)。パートナーからタダの隣国。いい響きですね〜。
産経によると、「防衛省の石川武報道官が記者会見で、韓国国防白書の竹島領有権や海自哨戒機レーダー照射事件の記述を巡り、日本の立場と相いれない内容が記述されている」と。
韓国こそ、嘘つきですからネ。で、理論的に辻褄合わなくなったら黙るか火病起こすか、違う事を言い放つ(爆笑)。バイデン大統領様、こんな奴らと日米韓同盟なんて、ムリっしょ?隙さえあらば、日本を叩き、米国情報をシナに渡そうとしてるのに。
悪い事言わない。韓国なんて対北や対中で何の役にも立たないゾ。あの半島は戦場ヶ原や。大国が好きなようにサンドバッグにして来た土地です。
自由主義陣営が共産党国や独裁者国に打ち勝つ為には、朝鮮半島は要らない。無駄な労力が増えるだけです。釜山に紅旗が翻ったら、ATMやNHK見てる老人らも分かるでしょう。でも、朝鮮は日本にとって、邪魔なだけ。
相変わらずの「遺憾である。到底受け入れられない」だけですか。
K国防衛白書は既に日本を味方と考えていない証拠であるからして、日本の防衛白書もK国を仮想敵国に格上げしてあげてはいかがですか(自衛隊の中では既にそうかもしれませんが)。
K国が単独で侵攻してくる可能性は低いでしょうが、例えば中国・日本が東シナ海で衝突したとき、火事場泥棒のように対馬・九州に同時侵攻してくる可能性は高いです。
歴史を手繰れば元寇の時は朝鮮人がお先棒を担いで対馬、北九州を蹂躙し多くの日本人を奴隷として拉致しています。歴史は繰り返す、です。
中国との交戦だけでなく、同時に韓国からの侵攻も対処する2面防衛を想定して、今から装備面など準備が必要な気がします。日韓の軍隊が交戦を始めたとき両方ともに同盟関係を持つ米軍は身動きが取れないと想定しています。 あるいは米国がK国から完全に手を引いて、K国が完全に中国の属国になっているならば、ますます元寇の再来はあり得そうに思えます。
拝啓 文在寅大統領閣下 殿
10年前には想像すらできなかったことですが、もはや今日、日本政府と韓国政府は、お互いに何の遠慮も無しに、本音で言いたい事を率直に言い交わせる関係になりました。
人間関係においても国家間の関係においても、心を偽らずに互いに本音で語り合うことは、相互理解を深め、理想の関係を構築する上で、欠かすことのできないものであります。
これもひとえに、文在寅大統領閣下の信念に忠実で正直かつ真っ直ぐな数々の行動の賜物であります。ここに日本国民を代表して、心より厚くお礼申し上げる次第です。
今後とも、その少年のような純粋な心を失わず、真っ直ぐに全力でひたすら前進を続けられることを大いに期待しております。加えて、憲法を改正し、プーチン大統領のように終身大統領を目指されることを希望いたします。 敬具
韓国国防白書に「釣魚島(尖閣)」と中国の主張を優先した標記があると小耳に挟んだのですが、ソースを確認できる方いらっしゃいます ?
事実だとすれば、この点こそ抗議すべきではないでしょうか。
イーシャ様
ちょっと気になって調べてみました。
韓国国防省のホームページでそれらしきものが閲覧できますが、なにぶんハングルで目がチカチカしてしまって…。違ったらごめんなさい。
https://www.mnd.go.kr/user/mnd/upload/pblictn/PBLICTNEBOOK_202102040549325290.pdf
PDF内を「댜오위다오」(釣魚島 dyaowidao)で検索したところ16ページに「조어도(센카쿠/댜오위다오)」と出てきました(ヒットは1件のみ)。Googleで翻訳かけると「釣魚島(尖閣諸島/釣魚島)」。
読みは「jo-eodo(senkaku/dyaowidao)」なのでおそらく「韓国(日本/中国)」の順で併記されているようです。
IVD 様
お調べいただき、ありがとうございます。
おでん発音記号は気分が悪くなるもので。
韓国語が中国語に合わせているのは気に入りませんが、そういうことなら許容範囲ですね。
東シナ海に言及があれば、中国語欄に東海と記してあるかに興味が湧きます。
(調べていただく必要はありません)
>韓国(あるいは朝鮮半島全体)を日本の友好国に引きとどめておくためだけに「あらゆるコスト」を払うだけの余裕は、日本にはありません。
ここについて私は少し意見が違います。
韓国が本当に日本の友好国でいるのならば、韓国の地政学的な重要度を考えれば、その状況の維持のためにあらゆるコストを払うのもアリかも知れません。
しかし現実には、韓国は反日的な言動や国際的な反日プロパガンダだけでなく、軍事的に見ても既に日本にとって最大の脅威となりつつある仮想敵国なのです。
無論、単純な脅威の規模としては共産チャイナやロシアのほうが韓国の脅威よりも遥かに大きいのは事実ですが、一般にリスクは被害の規模(簡単の為に戦争での被害規模は相手の軍事力つまり脅威の規模に比例すると考えることにします)そのものではなく、それと実際に起こる確率との積です。
リスクのもう一つの因子である日本を攻撃して来る確率において、韓国はロシアは言うまでもなく北朝鮮や共産チャイナと比べても遥かに高いというのが私の考えです。その私の考えは被害妄想などではなく一定の根拠があります。即ち、民主化以降つまり韓国内で左翼教師による教育が合法化され全教組による反日教育の徹底によって、小学生が描いた日本を核ミサイルで攻撃する絵(何人もの児童が同様の絵を描いている)が鉄道の駅に誇らしく掲示され、そんな非人道的な絵を描く児童が教師から称賛されたり、日本を核攻撃する小説やそれの映画が大ヒットしたりする韓国の国民性です。
そのような韓国の小学生が描いた非人道的な対日核攻撃の様々な絵は、例えば次のページにあります。
http://shiratorijun.blog4.fc2.com/blog-entry-22.html
我々日本国民は、韓国の軍部ではなく韓国の大衆が日本を核攻撃したいと願っているという事実をきちんと認識する必要があります。
韓国が日本にとって既に仮想敵国と化していることは、ここ15年ほどの韓国軍の装備更新の内容(イージス艦、弾道ミサイルの射程延伸、強襲揚陸艦、半島での戦いにとっては無駄に航続距離の長い大型戦闘爆撃機F-15E等)や現時点で韓国で導入を議論されている新たな装備の候補(STOVL空母、原潜、弾道ミサイルの更なる射程延伸等)を見れば明らかです。
自由民主主義にとってのアジア大陸の橋頭保として共産主義の防波堤である筈の韓国は共産主義国家である共産チャイナや北朝鮮との戦いに準備しているのではなく、こともあろうに対日戦のための軍備ばかり増強して来たし今後も増強し続けようとしているのです。
その最大の脅威となっている仮想敵国を味方かの如く日本がコスト負担をして経済的な便益を与えるのは日本にとって自殺行為に他なりません。
特に、鈴置氏の最新エッセイにあるようにアメリカが韓国を切り捨てる=米韓同盟が終焉する可能性を窺わせる動きがバイデン新政権から現実に出て来た以上、アメリカから捨てられた=対日行動に関して束縛されなくなった韓国が日本に対して先制攻撃を仕掛けてくる(例えば関東以西の空自や海自基地に対して韓国が保有しているとされる数千発の短距離弾道弾…これは流石に通常弾頭だろうが…の雨を降らせ、空自戦闘機を一時的に出撃不能にした隙に対馬に侵攻する等)ことも絵空事ではなくなるのです。
韓国が対日戦の準備を着々と進め軍備を増強し続けている以上、日本も対韓戦に関して真剣に検討し必要な軍備をせねばなりません。そうしなければ人民解放軍に尖閣を奪われるよりも先に韓国に対馬を奪われる事態にさえなりかねない。
韓国はもはや旧世代の人々が抱いているノスタルジーつまり「かつては同じ釜の飯を食った仲間」ではなく、日本を侵略し日本人を抹殺か奴隷化することを本気で願っている国になってしまったのです。そしてその根本的な原因は、この1世紀余に亘り日本とアメリカとが韓国をこれ以上ないほど甘やかしてしまったからです。
「子供をちゃんと育てることは極めて難しい。だが子供を駄目にするのは実に簡単だ。子供の望む物を全て与えてやれば良い」。これはとあるアメリカ・ドラマの吹き替えで主人公が語っていたセリフですが(ドラマ名は失念しました、悪しからず)、日本とアメリカとの対韓政策の失敗を実に端的に言い表していると個人的には思っています。
中国ロシア北朝鮮、いずれも自らの勢力拡大ないしは生き残りが行動の原点にあると思えるのですが、彼の国のみその理念が行動の原点にあるように思えます。
故に普通なら考え得ないところで、日韓戦、そこまで行かなくてもパネー号事件並の事態はあり得そうですね。
御説には概ね同意なのですが、
> 韓国の地政学的な重要度
そもそもこの点をきっちり否定することが必要ではないでしょうか。
いみじくも韓国国防白書がわざわざ記述してくれたように、隣国であることは間違いないので、地政学的な意味や軍事的な意味がゼロということはありえませんが、果たして「重要」と見做すに値するか、甚だ疑問であると思っています。
現実問題として、わが国の安全保障と海上輸送路の安全とを考えた場合、わが国にとって、朝鮮半島よりも台湾の方がよほど戦略的な重要性が高いと考えます。しかし、朝鮮半島の戦略的重要性に言及したりするがために、明治以来の固定観念である「朝鮮半島生命線説」が生き続けてしまっているのではないかと、少々疑いを持っているのです。つまり、「重要性」をウンヌンしているからこそコストがどうしたとかいう話になるのであって、もはやそれ以前の問題であること、「重要性」について検討する意味すらないとしなければ、生命線説の亡霊はいつまでも付きまとうだろうと考えます。
むしろ、現状では、わが国にとって戦略的に極めて重要である台湾の支援に、どこまでのコストを掛けるべきか、あるいは掛けられるのか、ということを真面目に検討すべきであろうと思います。わが国自身の問題である以上、アメリカさん宜しくねだけでは済まされません。
一方で、たとえ重要ではなかろうと、地政学的な意味がけしてゼロではない韓国をそのまま放置しろということではありません。御説にあるように、韓国軍は対日戦を意識した軍備増強に励んでおり、アメリカの重しが緩めば、対馬への侵攻、あるいは日本の要地に対する巡航ミサイルによる攻撃を実行に移しかねません。また、韓国人が熱望する核武装が実現した場合、何かの拍子で後先考えずに核攻撃を仕掛けてくる可能性も否定できません。従って、関わり合いになりたくないのは山々ですが、ただ放置するに任せるというのも適切とは言えないと思います。
さしあたりわが国が取れる体制といえば、結局のところ、韓国を潜在的敵国と見做し、対応を進めることであろうと思います。一例としては、対馬に対艦ミサイル、対空ミサイルを、これ見よがしに配備するなんてことも考えられるでしょう。
韓国が徹底的に改心し、アメリカ(および日本)の忠実な同盟国として振舞うようになるなどということがあれば、潜在的敵国扱いはいつでも解除できます。しかしながら、そんなことは正に「盲亀の浮木、優曇華の花」であって、期待すべくもないと考えます。
折角向こうさんがこちらを「敵国」と公然と呼んでくれたのですから、それに応じないという手はないでしょう。
龍様、
>そもそもこの点をきっちり否定することが必要ではないでしょうか。
失礼ですが、それはナンセンスです。
釜山など半島南端に人民解放軍の弾道ミサイル(通常弾頭)を並べられたら、反応時間を考えると対馬はおろか九州(新田原や芦屋など)や中国地方(例えば呉など)の自衛隊基地への弾道ミサイルによる先制攻撃は防げませんからね。
その直後に、南西諸島を航空攻撃してきたら防戦できる空自の戦闘機はいなくなってしまいます。
従って地政学的には日本にとって半島はそれなりに重要なのですよ。その事実は事実としてきちんと認める必要があります。それを認めずに「半島には地政学的な価値が無い」と強がったところで日本にとっては何の役にも立たない。そんなのは太平洋戦争で「鬼畜米英!」と叫んで威勢だけ良かった国士様たちと何も変わらず国を滅ぼす元です。
更に言えば、(A)半島に人民解放軍が展開している状況で共産チャイナに南西諸島を奪われれば、九州は南と北の両方から挟撃される状況になり、九州や中国地方の防衛は極めて困難になるでしょうね。その場合には以前にも書きましたが、日中国境線は最終的に中国地方~近畿地方のどこかになってしまうでしょう。
つまり朝鮮半島は確かに日本にとって地政学的な弱点ではあるのです。特に現在のように中華の支配者が日本を敵視し侵略を狙っている状況においては。
しかし半島(特に南部)が極めて反日従北従中(というよりも恐中)性向の強い政権に支配されてしまい、下手をするとその支配は長期に及ぶとなれば、半島を使っての日本防衛を考えても何の役にも立ちません。現実と乖離しているからです。
つまり近未来における日本の国防が破綻しないようにするには、朝鮮半島が遠からず人民解放軍の支配下に入る状況での国防体制や装備は何が必要かを具体的に考え準備しておかねばならないのです。
しかし同時に(A)から言えることは、逆に考えると、半島が人民解放軍に支配されても南西諸島を奪われなければ、九州防衛は可能だということです。
従って南西諸島防衛をどうするか、特に南西諸島有事の際に急行できる九州にある空自基地の戦闘機が使えない状況で南西諸島への共産チャイナの侵略を如何に跳ね返し続けるかの方策を考え具体的に実現する、これが半島が敵側の手に落ちた状況で日本の国防が破綻しないために必要なことです。
こういった思考は「半島は日本にとって地政学的に価値など無い」という強がりでは全く出て来ません。ちょうど「鬼畜米英!正義は我にあり」と幾ら叫んだところで対米戦への勝利の道筋が何も出なかったようにです。
周りを敵国ばかりに取り囲まれた日本の民として必要なのは己の弱点を無視して気勢を上げる威勢の良さや強がりではなく、弱点を弱点として冷静に認識し対策を考えること、そして可能ならば少しの狡猾さや狡賢さです。
朝鮮半島の地政学的価値がゼロであるなどとは申しておりません。日本にとって、朝鮮半島南部が「こちら側」であるほうが都合が良いのは自明です。しかしながら、そこの住民があのままである限り、もはやそれは望むべくもないと考えます。従って、わが国としては、国土防衛の最前線は対馬であり、朝鮮半島は無いもの、場合によっては敵方であるという前提で戦略を組み立てる必要があると考えます。朝鮮半島の戦略的重要性について云々するのは、もしも「こちら側」であってくれたならという一種の「タラレバ」論であり、ありえないことを未練たらしく突っつくのに似ています。ならば、最初から「重要性」などということについて思い煩うことなく、頭から消すべきであるというのが私の主張です。ただ、何も対処しなくて良いなどとはけして主張していませんので、お間違えの無いように。
日本の国土防衛上、南西諸島が極めて重要であるという点に関して異論はありません。さらに海上通商路の安全までを考えた場合、その延長線として台湾の重要性がもっと語られるべきでしょう。台湾問題は、単に貿易面や文化交流のみならず、わが国の安全保障にも直結する問題なのです。
海上通商路という観点で見た場合、さらにその先のフィリピンやベトナムなどまで視野に入ってきますが、日本の国力やコストを考えると、そこまで面倒見ようというのはあまり現実的ではありません。哨戒機や巡視艇の供与程度はともかく、現実的にはアメリカの海軍力に頼ることになるでしょう。そしてQUADがそれを補完するという形になると思われます。
結局のところ、アメリカの思惑はどうあれ、韓国はもはや「こちら側」ではない、韓国が韓国である限り「こちら側」になることはない、と見切った上での戦略構想が必要であると考えます。アメリカが韓国を厳しく躾けるだろうなどと期待してはいけません。
自衛隊は、従来の対ソ戦に備えた配備態勢から、少しづつ対中国を意識した配備態勢にシフトしつつありますが、まだまだその途上です。今後とも着実に進めるべきと思いますが、対中国シフトを構築していくにあたって、朝鮮半島はすでに中国側であるとの前提に立ち、部隊等の配備を検討すべきであると考えます。米韓同盟が消滅してから着手するのでは遅すぎるからです。
だから、今回いただいたレスの内容が本来の主張であるならば、「『(我が国にとっての)韓国の地政学的価値』を否定する」などという我々が国防のあるべき姿を考える上で何の利益もない間違ったことを最初から言わなければ良いのですよ。
日本にとって半島とくに南半分の地政学的価値は否定しようのないものなのです。
但し、その地政学的に重要な場所の支配者が常に我が側にあるとは限らないから、日本は常にそこが敵側に支配される可能性に対処しておかねばならないというだけの話です。
そして現実に、現時点では(恐らくは近い将来も)南半分の支配者は敵側あるいは日本を敵視する勢力に支配されているというに過ぎません。
言い換えれば朝鮮半島南部が共産主義の支配下に入ってしまった(†)これからの時代は、南西諸島有事の際に九州の空自基地は使い物にならなくなっている可能性が十分にあるということです。
注†:文政権は司法の左翼支配など政界だけでなく官界・司法界でも保守派の根切りにほぼ成功したので韓国の次期の支配権が用日保守派の手に戻る可能性はほぼ消えたと私は考えています。
軍も陸軍は別にして海軍や空軍は必ずしも用日保守派でなく反日性向が強く対日戦を求めて軍備増強に努めているので従北左翼との親和性は高いと思われます。
従ってアメリカ主導で韓国陸軍がクーデターでも起こさない限り保守派が息を吹き返す余地はないでしょうが、そんな時代錯誤の帝国主義的な手法で韓国を取り戻すために世界中から批判を浴びるリスクをアメリカ政府が冒す可能性は実質ゼロでしょう。アメリカにとって割に合わないですからね。
それにアメリカにとっては、半島南部が共産主義の手に落ちても直接にリスクがあるのはアメリカではなく日本だけですから。そうなればそうなったで防衛費増大で日本の経済力や科学技術投資額を殺げるので、アメリカとくに歴史的に常に日本を敵視し太平洋戦争はおろか戦後もあらゆる手段で日本の力を殺ぐことに腐心して来た…その代わりに日本を牽制できればOKとばかりに共産チャイナを現代のナチスドイツあるいは現代のスターリンソ連に育て上げてしまったという意味でバランス感覚ゼロの米民主党政権にとっては悪い話ではない(日本にとってはもちろん世界全体にとっても悪い話ですけれどね)。