昨日の『「前夜祭問題」は秘書の収支報告書不実記載で幕引きか』の「続報」です。朝日新聞が今朝、「東京地検は安倍氏の秘書らを略式起訴する方向で検討に入った」と報じました。もちろん、現時点ではまだ安倍総理に対する任意聴取が終わっていないため、確定ではありませんが、結論的には当ウェブサイトの見立てが正しかったという可能性が高そうです。ただ、それと同時に浮かび上がるのが、メディアと官僚の癒着という問題です。
朝日新聞「略式起訴へ」
安倍晋三総理(9月に辞任)の個人事務所を巡る「桜を見る会」の前夜祭を巡る費用補填問題については、昨日の『「前夜祭問題」は秘書の収支報告書不実記載で幕引きか』でも報告したとおり、当ウェブサイトとしては「秘書の収支報告書不実記載として立件」でおしまい、と考えています。
その見立てが正しいのかどうかはまだよくわかりませんが、朝日新聞に今朝、こんな記事が掲載されていました。
安倍氏公設秘書ら略式起訴へ 「桜」3千万円不記載か
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―――2020年12月4日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より
朝日新聞は東京地検特捜部が本件で、安倍総理の公設第1秘書(安倍晋三後援会代表)と事務担当者の2人を、政治資金規正法違反(不記載)罪で略式起訴する「方向で検討に入った」と報じています。ということは、おそらくは地検特捜部からのリークを朝日新聞が受け取った、ということでしょう。
検察庁ウェブサイトによると、この「略式起訴」とは、100万円以下の罰金・科料に相当する事件について、被疑者の異議がない場合に、検察官が提出した書面で審査する裁判であり、簡易裁判所が管轄します。
金額的に見たら当然
実際、政治資金規正法違反(不実記載)の罰則は「3年以下の禁固」か「50万円以下の罰金」(同第24条)ですが、もしも「略式起訴とする」という朝日新聞の報道が事実ならば、検察としては50万円以下の罰金刑として秘書らを略式起訴し、秘書らは罰金を納めて終了、です。
考えてみれば当然でしょう。そもそも安倍総理は選挙区内の有権者をわざわざ買収しなくても、圧倒的な地盤により小選挙区で当選できるほどの実力を持った人物です。補填した金額から判断しても、「有権者を買収する意図があった」とは認定できないでしょう。
朝日新聞によると、立件対象となるのは2016年から19年にかけての4年分の総費用と参加者の会費の不記載であり、その金額については約3000万円(会費収入の1100万円、費用支出の1900万円)と報じています。
朝日新聞は以前から、2015年から19年にかけての費用支出が約2300万円、会費収入が約1400万円などと報じてきたので、不実記載の合計額は3700万円となるはずですが、金額が異なっている理由は2015年が立件対象となる期間から除外されているからだと思われます。
1人あたりの会費が5千円だっだとすれば、事務所側が負担したのは参加者1人あたり2~3千円くらいでしょうし、「思ったほど有権者が集まらなかったから赤字になって費用を補填した」、というのが実情に近いのではないでしょうか。
いずれにせよ、朝日新聞は任意聴取を要請した安倍総理本人からの認識を聞いて最終判断するものとみられる、としていますが、これも当ウェブサイトで昨日報告した内容とほぼ同じです。
バランスを取ったのか?
それより気になるのは、検察による情報リークです。
見たところ、現時点ではこれを報じているのは朝日新聞くらいです。個人的な印象ですが、安倍総理の「前夜祭」問題そのものの情報については読売新聞やNHKに優先的に流したため、検察としてはバランスを取るために朝日新聞にも情報を小出しで流してあげたのかもしれません。
これについては先日の『検察が捜査情報をリークするとしたら、その目的は何か』でも報告したとおり、大手ウェブ評論サイト『アゴラ』の新田哲史氏が先月26日付で寄稿した、「じつは官邸のシナリオ通りではないか」とする記事に、こんな記述が出て来ます。
「検察担当の現場記者は連日、夜討ち朝駆けで命を削って取材している。その積み上げた成果が特ダネにつながっているのは間違いない」
大変申し訳ないのですが、個人的にはこのくだり、まさにメディアと野党と官僚が癒着し、腐敗し切っている証拠にしか見えません。検察からのリーク情報など、記者の努力というよりはむしろ、検察が持っている情報を分け与えてもらっているだけだからです。
本件、検察が情報をメディアにリークしたのはほぼ間違いないと考えて良いと思いますが、新田氏の見立てによれば、検察が「反安倍の急先鋒」であるメディアではなく、どちらかといえば「反安倍」色が薄い読売新聞に情報を流したのは、官邸の了解のもとで「秘書の虚偽報告」シナリオに落ち着かせるためです。
そして、今回の朝日新聞の記事がたしかなら、実際に「秘書の虚偽報告」で幕引き、というわけです。金額的にも大したことがなく、また、おそらくは秘書らの側にこれといった悪意もないからです(※それにしても政治資金規正法に対する順法意識の欠落はお粗末というほかありませんが…)。
ただ、本件についてはどうもスッキリしません。「メディアと官僚の癒着」が垣間見えたからです。
当ウェブサイトでは以前から、「官僚が自分たちに都合の良い情報をメディアに流し、メディアは与党議員に厳しく、野党議員には甘い情報を流すという傾向がある」、と申し上げて来ました。
今回は「桜を見る会」疑惑を巡って、おそらくは新田氏の見立てどおり、官邸のコントロールに沿って自体が展開したのだと思いますが、これを悪用すれば、検察が政権を倒すために、情報を小出しにリークする、ということもできてしまいます。それが「山本真千子疑惑」でしょう。
今回、安倍総理の過失は、内閣総理大臣という重責にありながら、野党やメディアに付け入る隙を与えた脇の甘さ、ということですが、それと同時に垣間見えたのは、官僚とメディアによる情報コントロールという、日本社会の闇です。
国民から選ばれたわけでもない官僚とメディアが隠然たる権力ないしは影響力を握るという構図は、私たち日本国民にとっては非常に大きな問題です。メディア改革が急がれるゆえんでしょうが、これについてはまた別稿にて詳しく議論したいと考えている次第です。
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官僚のロイヤリティがどの辺りにフォーカスされているのか…
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、朝日新聞と違って自分は間違う存在であると自覚しているので)
朝日新聞記者としては、鳩山民主党政権成立に手を貸したとの負い目から、(彼らの感覚では)安倍政権批判を手加減していたが、次の菅義偉政権に変わったので、遠慮なく安倍前首相批判を始めたという、ことでしょうか。(なにしろ、そろそろしないと、その後に入社してきた後輩への、先輩のメンツがつぶれますから)
蛇足ですが、朝日新聞としては、(彼らの感覚では)「もはや、国民は鳩山民主党政権成立前の報道を忘れているだろうから、夢をもう一度で、朝日新聞の力で政権交代を実現しよう」と考えているのではないでしょうか。(なにしろ、彼らの(少なくても、ある一定の年齢以上の)意識は、いまだにビフォー・ネットのままの人が多いですから)
駄文にて失礼しました。
> 鳩山民主党政権成立に手を貸したとの負い目から、
> 安倍政権批判を手加減していた
それはないでしょう。朝日新聞の最終目標は日本の破壊です。
民主党政権ならば日本を滅茶苦茶にしてくれると見込んで政権交代を目論んだのです。無能で支離滅裂で破壊衝動を内包した政治家ほど朝日新聞にとって好ましい政治家です。
そして、第一次安倍政権の時から朝日新聞は安倍総理に憎しみをぶつけていました。当時の朝日新聞主筆だった若宮啓文氏は「安倍叩きは朝日の社是」と言い放ち、別の幹部は「安倍の葬式はうちで出す」と発言しました。
日本が有能で建設的なビジョンを持つ政治家に率いられることはあってはならないことです。だから朝日新聞は全力で安倍総理を引きずり下ろすことに精魂を傾けました。
> 先輩のメンツがつぶれますから
朝日新聞社を就職先に選ぶ人間は、先輩も後輩も、日本を滅茶苦茶にしてやりたい願望を持つ同志ですから、メンツの心配はないでしょう。
> 夢をもう一度で、朝日新聞の力で政権交代を実現しよう
日本を破壊するために、朝日新聞は飽くなき努力を続けるでしょうね。
因みに、戦前の朝日新聞は、日本を滅茶苦茶にするために開戦論を煽り、その目論見どおり、日本は国民300万人の命を失い、国土を焼け野原にされました。
朝日新聞は、決して侮ってはいけない、恐ろしくもおぞましい存在です。
阿野煮鱒様へ
(朝日新聞だけではないかもしれませんが)朝日新聞村は、朝日新聞社内でしか通用しない理屈で、前例に従って動いているのではないでしょうか。それは、朝日新聞村の村民でない人には、理解できないだけなのです。(だから、朝日新聞は自分たちの理屈を理解しようとしない(彼らが言うところの)愚民に、怒っているのです)
駄文にて失礼しました。
更新ありがとうございます。
安倍総理に任意聴取。またマスコミがテレビで騒いでます。なんか知らんけど、「ひるおび」とかで、出演が田崎史郎氏(笑)。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2020/12/04/kiji/20201204s00041000313000c.html
大した金額でもないし、公設第一秘書が執行猶予付き判決だと見ています。しかしマスコミは検察や官僚にネタ貰っといて、スクープも無いでしょうに。
江戸時代の「火消し」ですか?(笑)。とにかく周りも延焼しないように叩き壊す(と言いながら関係ない路地裏も叩き潰す)。ワーワー騒いでカネ貰って酒飲んでオワリ。ヤクザもんですね。
田崎氏によると、来年の国会でも野党が安倍総理を追求するだとか。ヒマなんだね~野党は。やっぱり日本維新の会に野党第一党になってもらうか。
安倍さんも杉田さんも反日勢力に狙われているのだから、甘すぎる。
公私の区別をつけるのは、我々庶民でも当然のこと。
少しでも安全保障に関心がある政治家はほんと用心してもらいたい。
内容に比して検察が強気すぎるんですよ。
不自然です。
くるくるパヨクは「三権分立キター!」などと大喜びですけど、あれらが言う三権分立って要するに「ウリは無罪!ナムは■刑!」ですからね。
まともな法治国家であれば、現役議員でもある前総理に(任意とはいえ)事情聴取するとかウルトラデリケート事案ですよ。司法権による三権分立の侵害につながりかねないですから。そんな労力かける意味ある?
アベ本体まで引っ張れる罪状には見えないし、政局的にも今アベ狩りをする必要性がわからない。
この騒動からは違和感しか感じません。
ただひとつ言えることは、安倍総理は身の安全を第一に考えてください!
検察とマスゴミの結託はままありますが、このニ者だけでこんなんゴリ押しするかなぁ。もっと大きな後ろ盾があればしっくり来るんですけど。
頭の悪い巨大権力から「何でもいいから騒ぎを起こせ、ケツは持ってやるアル」としょうもないオーダーがあり、しょうもないしネタもないけど従わないと■される、そんなシチュエーションがもしあればこんな感じになるんじゃねえかと想像しました☆
米大統領選では、中道〜右派と目されるメディアもマスゴミスクラムの一員として報道しない自由に全力で取り組んでますしwww、どこぞの巨大国家権力さんもいよいよ尻に火がついてるのかなー、と、恐怖半分面白半分で眺めておりますw
仮に安倍総理が政治資金規正法違反で、トランプ大統領が脱税で訴追されるとしたら時代の変化の早さに驚きます。
ちょっとしたアンチテーゼです。
朝日新聞をはじめとした新聞やマスメディアが、多くの問題をはらんでいるのは納得のいくところではあるのですが、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏もまた元新聞記者であったわけです。
個人のジャーナリストとして質を高める場としての大手メディアがなくなった場合、鈴置高史氏のような人材が今後現れるのでしょうか?鈴置高史氏をはじめ、現在の優れた論考者?(正しい表現かわかりませんが)が元新聞記者が多い気がするのは気のせいでしょうか?