昨日は、中国の王毅(おう・き)外交部長(※外相に相当)が来日し、茂木敏充外相と会談のうえ、夕食会が行われたはずなのですが、これについては昨日夜11時時点で外務省のウェブサイトになんら情報が掲載されていません。このこと自体、日本政府が王毅氏を「歓迎」しているわけではないという証拠に思えてならないのですが、はて、真相はいかに?
目次
王毅氏の来日
茂木外相の冷ややかな対中認識
昨日から中国の王毅(おう・き)外交部長(外相に相当)が来日しています。これについて、茂木敏充外相との日中外相会談、夕食会が行われたはずなのですが、昨日夜11時時点で外務省のウェブサイト上、これに関する報道発表は出ていません。
もしかしたら現時点で外務省のウェブサイトを読むと何らかの情報は出ているのかもしれませんが、本稿にはそれらの情報を反映させることはできませんでした。
ただ、王毅氏を迎える日本政府の「塩対応」については、なんとなく想像がつきます。
茂木外相自身は昨日午前11時前に行われた記者会見で、「さまざまなことについて率直な意見交換をしたい」としつつも、「二国間にはさまざまな懸案がある」などとしたうえで、外相会談を行うことの成果については「なかなか予断できない」などと述べています。
個人的な記憶ベースで恐縮ですが、相手国からわざわざ閣僚がやって来るのに、「どんな成果が上がるかはわからない」などと述べるのは、なんだか異例ですね。というのも、通常は相手国の閣僚が来る際には、事務方が事前に何らかの成果物のすり合わせをしているケースが多いからです。
その典型例が、10月上旬に東京で行われた日米豪印4ヵ国(クアッド)外相会合でしょう。これは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を下敷きに、FOIPに積極的に参加している4ヵ国が東京に集まった会合です。
ためしに茂木外相の10月6日の記者会見録を読んでみると、茂木氏はFOIP構想やクアッド会合を巡り、「東シナ海、南シナ海などさまざまな地域の緊張関係があるなか、同じような価値観を共有する国々が誰でも参加できる枠組みだ」、などと歯切れよく即答しています。
こうした発言と比べてみたら、茂木外相の中国に対する認識が、米豪印などに対する認識とくらべ、非常に冷めていることがうかがい知れます。昨日夜10時になっても外務省に会見録が掲載されなかったこと自体、事前調整のなさの証拠に思えてなりません。
いずれにせよ、茂木外相の発言を追いかけていくだけで、日本が中国を「価値観を共有しない相手である」とみなしているだけでなく、言外に「価値を共有しない相手国である中国と対話したところで、大した成果が上がるとは思えない」というニュアンスが感じ取れてしまう、というわけです。
興味深いですね。
日中世論調査から透けて見える、両国の認識差
さて、最近は日中両国の認識にも、ずいぶんと大きな落差が生まれつつあるようです。
先日の『「日本にとって中国は重要」が7割を切ったことの意義』では、言論NPOが中国の国際出版集団と共同で実施した、第16回目の日中共同世論調査について話題に取り上げました。
内容を簡単に振り返っておきましょう。
相手国に対する印象
相手国に「良い印象」を持つ日本人は前年の15%から10%に減少する一方、「良くない印象」を持つ日本人は84.7%から89.7%へと、約9割に増加した。一方、中国では日本に対し「良い印象」を持つ人が45.2%、「良くない印象」を持つ人が52.9%で、両者はほぼ拮抗している。
現在の日中関係
現在の日中関係が「良い」と答えた日本人は前年の8.5%から3.2%に激減する一方、「悪い」と答えた比率が44.8%から54.1%に上昇した。一方、中国では「良い」が34.3%から22.1%に減少したものの、「悪い」も35.6%から22.6%に低下している。
日中関係は現在重要か
日中関係を「重要だ」と考える日本人は2020年において64.2%で、調査開始以来、初めて7割を割り込んだ。一方、中国では日中関係が「重要だ」と考える割合が前年の57.0%から74.7%に上昇している。
…。
つまり、中国では日本に良い印象を持つ人が半数近くに達し、かつ、日本との関係が「重要だ」と答える人も増えているのに対し、日本側では9割近い圧倒的多数が中国によくない印象を持ち、かつ、中国との関係が「重要だ」と答えている割合が減っているのです。
なぜ、日本側でこのような調査結果となったのかについては、言論NPOのレポートを読んでも、いまひとつ明らかではありません。
ただ、当ウェブサイト側にて勝手に想像するに、全世界に武漢肺炎という疫病をばら撒き、香港で自由・民主主義を圧殺し、チベット、ウイグルなどで人権を弾圧し、東シナ海、南シナ海を我が物顔で侵略するような国を、「好きになれ」という方が無理ではないかと思います。
中国とCPTPP
なぜ急にCPTPPなのか?
こうしたなか、中国共産党の機関紙『人民日報』のウェブ版・『人民網』(日本語版)に、一昨日、こんな記事が掲載されていました。
CPTPP参加の前向きな検討を習近平国家主席が初表明
―――2020年11月23日15:22付 人民網日本語版より
すでにわが国のメディアでも取り上げられている話ですが、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席が20日夜、テレビ会議形式で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットに出席し、CPTPPへの参加を「前向きに検討する」と表明したのだそうです。
人民網はこれについて、「『参加を前向きに検討する』との短い言葉には、相当の重みがある」と述べ、現在のCPTPPが次のような状況にあると述べます。
- CPTPPは2018年12月30日に発足し、日本、カナダなど11ヵ国が参加し、総人口約5億人、締約国のGDPは世界経済の13%を占める
- 協定に基づき締約国は工業製品や農産物の関税の撤廃・引き下げや貿易・投資面での円滑化措置を講じるほか、携帯電話の国際ローミング費の引き下げ、クロスボーダー・データ交換の制限撤廃、オンライン詐欺行為を制限する法令の共同制定なども行う
要するに、たんなる経済協定であるだけでなく、規制、法令の共通化を通じて域内の経済交流を効率化しようとする試みだ、という点に触れているのです。
余談ですが、習近平氏がCPTPP参加を表明したことは、先日発足した「地域的な包括的経済連携」(RCEP)がCPTPPと比べてかなり緩い協定に過ぎないという証拠でもあるといえるでしょう。
中国は自画自賛、ところが…!?
人民網はこれに関連し、次のように述べます。
「中国はかねてより貿易と投資の自由化及び円滑化の断固たる支持者であり、アジア太平洋地域の協力と経済統合の重要な参加国でもある」。
これは、笑うところでしょうか。
2010年のレアアース禁輸騒動、2017年の韓国に対する「THAAD報復」としての限韓令などの事例にもあるとおり、中国は貿易や投資を政治利用するとんでもない国です。
また、11月16日付の日経新聞電子版『中国、RCEP署名で高まる存在感 日本はインド取り込めず』という記事によると、習近平氏は経済政策を担う中国共産党の組織である中央財政委員会の会議で、4月、次のように述べたとも伝えられます。
「国際的なサプライチェーン(供給網)を我が国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」。
だいいち、『データで読む、「人民元の日本への挑戦」のお寒い現状』や『国際的な債券市場と人民元:2015年を境に成長停止』などでも説明しましたが、中国は自国通貨・人民元の国際化の進行を進めていません。
こんな国が、「貿易と投資家の自由化及び円滑化の断固たる支持者」とは、冗談としてはなかなか面白い冗談だと思います。
茂木外相の反応は冷ややか…?
では、中国のCPTPP参加を巡って、日本政府はどう考えているのでしょうか。
これについては、先ほども引用した茂木外相の昨日の記者会見の続きに、こんなやり取りが掲載されています。
【日本経済新聞 加藤記者】
先日のAPEC首脳会議で、中国の習近平国家主席が「TPP参加について積極的に考えている」とおっしゃいましたけども、来年日本がTPPの議長国でもありますけれども、日本政府としての対応をお伺いできますか。
【茂木外務大臣】
TPP11、これはまさにですね、米国がTPPを離脱する中で、残りの11か国で話合いを持って、特に日本が中心になって、まとめてきた協定でありまして、内容的に、ハイスタンダードでバランスのとれた21世紀型のルール、これを世界に広めていく、こんな意義を有しておりまして、こうした観点から、様々なエコノミーによります関心表明、これまでもそうでありますが、歓迎をしております。
他方、TPP11、これは市場アクセスに限らず、ルール面においても高いレベルの内容となっておりまして、今般の中国も含めて、関心表明を行っているエコノミーがこうした高いレベルを満たす用意ができているかどうかについては、しっかりと見極める必要があると考えているところであります。
我が国はご指摘のように、来年TPPの議長国でありまして、議長国として新規加入に関心を示すエコノミーの動向を注視しつつ、戦略的観点を踏まえながら、引き続きTPP11の確実な実施及びその拡大に取り組んでいきたい、そう考えております。
…。
要するに、「塩対応」ですね。
茂木外相のいう「TPP11は市場アクセスに限らず、ルール面においても高いレベルの内容となっている」とは、「中国はTPP11の高いレベルのルールをしっかり守れる国ではない」と言い放っているようにしか聞こえません。
日中新時代の幕開けか?
さて、そもそも論としてなぜ、王毅氏がこのタイミングで来日を決断したのかについては、しっかりと見極める必要があります。
この点、先日の『王毅外相の訪日・訪韓から見える「日中韓の力関係」』でも触れましたが、米中対立局面において中国が日本を切り崩そうと必死になっている、という可能性については、ひとつの仮説としては成り立つものでしょう。
先日の読者コメント欄を見ていると、王毅氏自身は日本でいう「外相」に相当するものの、中国の本当の意味の外交トップは楊潔篪(よう・けつち)中国共産党中央政治局委員であり、王毅氏はいわば「格下」の斬り込み隊のようなものだ、といった指摘もありました。
なにより、やはり個人的に気になるのは、普段であれば迅速に出てくる外務省からの報道発表がないことと、茂木外相自身、今回の王毅氏の訪日について「結果は予断できない」と述べているという事実でしょう。
日本として言うべきことは?
ただし、日本にやって来る王毅氏に対し、茂木外相としては、「言うべきこと」はいくらでもあります。
中国は最近、連日のように尖閣周辺海域に「公船」を派遣してきていますが、日本に対する不法行為だけではありません。南シナ海での違法な侵略行為を含め、周辺国ともさまざまなトラブルを起こしているのです。
こうしたなか、ちょうど昨日は、こんな記事もありました。
香港の著名民主派活動家3人、デモ扇動の罪認める 即日収監
―――2020年11月24日 12:07付 BBC NEWS JAPANより
これは、香港で昨年6月に行われた集会を「扇動した」として、公安条例違反罪に問われた3人の民主派活動家らの公判が23日に行われ、保釈の継続が認められず、3人が即日収監された、という話題です。すでに香港は「自由で開かれた社会」ではなくなった、という有力な証拠でもあります。
「自由で開かれたインド太平洋構想」を実現しようとする矢先、「自由で開かれていた」はずの香港で自由が失われているという事実を、日本を筆頭とする「FOIP」連合は重く受け止めるべきでしょう。
その意味で、FOIPはむしろこれからその真価が問われます。私たち日本国民も、この「価値観外交」の重要性を認識すべきときではないでしょうか。
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香港の活動家はまたアフラトキシン盛られるのかな?
大和堆の中国漁船問題はどうなるのか?
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
日中関係は今や米中関係の1パラメータですが、米中関係が流動的な状況ですので現状はどうにもならないと思います。
中国に離れる方向にして米中が密接になったりしたら中国からの報復をアメリカのフォロー無しにくらいかねません。
最悪米中協調の上で日本叩きをされかねないかと思います。
そうなると日本に正義があろうが無かろうが「負け組に応援する」奇特な国家はありません。
80年ほど前にABCD包囲網で世界中から資源輸入を絶たれる形でそれを嫌と言うほどわかった日本の害務省です。
G2である米中がどうなると見えないこういった状況ではトランプゲームでの「パス」の一手以外取りようがないかと思います。
国力の落ちた落ち目国家の哀しい所と思います。
あの大英帝国も同じ思いをしたのでしょうが。
以上です。駄文失礼しました。
逆ですよ
日本が今以上に経済的な地位が高い時に今のレベルの外交が期待できたでしょうか?
いや、ありえないでしょう
今でこそこのレベルの外交ができるようになったと考えるのが自然です
一国民としては、憂国主義はいい加減に卒業しましょうといったところです
匿名のコメント主様
当方の駄文にコメントを賜りありがとうございました。
匿名のコメント主様>憂国主義はいい加減に卒業しましょう
見解の相違の一言なのですが、パーヨクたる当方は現状認識に関して憂国主義の権化であると自称しても問題がないかと思われます(笑)。
このサイト上で無策ならば技術発展に基づいて民主主義と基本的人権の寿命は今世紀半ば迄と予想するのは当方くらいです(笑)。
安倍晋三という日本の首相で外交が卓越した人物が必要な状況になったのは喜ぶべきかどうか
安倍外交の方針は力の均衡理論に基づくオーソドックスなモノですが、日本の政治家はそれすらできない対米追従外交方針が普通でした。
アメリカが強力で下手打っても力ずくの解決する最終的手段が可能だったからです。
それが中国の成長で相対性に困難に成りつつあるのが西側社会の現実ではないでしょうか。
以上です。駄文失礼しました。
ひとつひとつの事象で見るべきじゃないかもしれないけど、ここのところ自民の中国寄りが気にはなってる。
国民の民意に沿ってはいない。
ただ、なぜそうしているのかはわからない。
訪日を口実にした訪韓がメインで、韓国を締め上げるためのものだと思ってたのです♪
天皇の即位式参列者をみると、平成の時に大統領や首相クラスをよこしておきながら、令和には格下の者や駐日大使でお手軽にすませた国が多かったね。
平成初めは、日本は「世界もうらやむ金持ち国」で、いまは落日燃ゆ・だから仕方ないんだが、その中で、中国は参列者を格上げ(副主席かな)してよこした数少ない国。
嫌いであろうと、礼儀には礼儀でもてなす、それが日本だと思うが。
言っていることが??
典型的なネット工作員、五毛にしか見えないね、あなた😂
だから、コイツと迷王星とカニ太郎と墺をみならえはお触り禁止なんだってwww
あ、触れちゃいけない人でしたか?
教えていただきありがとうございます!
パンダくらい持参するかと期待していました。手ぶらだったんでしょうか。
昨夜 19:25 掲載の日経記事を見てみましょう。文字数にして700余文字ありますが、その記事で情報として意味がありそうなのは、当方の判断ではたった2文だけです。第2文は「コロナウィルスで停止していたビジネス目的での(中略)再開する」第3文は「(略)らの往来が対象になる」です。それ以外の文章はすでに知られている事実の繰り返し過ぎず、いわば水増しに過ぎません。
解散選挙にうって出れば自民党の党勢拡大は確実視されている。夜盗がギャラクターだからです。ですが、自民党代議士が民意を把握できていないのであれば、慢心した彼らは足元からすくわれて想定外の転倒もあり得るのではありませんか。
七味さま
訪日がメインで、韓国には憂さ晴らしに寄るのです。
だんな様
仰っしゃるのが常識的な考えだと思うのです♪
ただ、中国としても自陣を固めたいだろうし、訪韓だけだとどっちが上かわかんないから、
( `ハ´) 日本に行ったついでに来てやったぞ
∑(;`∀´) 立ち寄っていだだきいだだき、ありがたき幸せ〜
みたいな感じで、中韓の関係を再確認させるのかな?って、思ったのです♪
米国も訪韓だけはしないみたいだし、ちょうどいいタイミングに見えたのです♪
中国外交部長、日本経由して25日ごろ訪韓か…「バイデン時代」けん制へ
https://japanese.joins.com/JArticle/272496
王さん、今日は韓国を訪問するのかな?
外務省の公式発表です
日中外相会談及びワーキング・ディナー
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page6_000480.html
中国は、「ビジネス・トラック、また、レジデンス・トラックを11月中に開始することで合意に至った」が、収穫だと思います。
日本側は、大体言いたい事を言っているのではないでしょうか。尖閣に関しては、平行線。
大国同士の外交と見れば、良いのではないかと思います。
米中、米露でも首脳会談は、しますからね。
更新ありがとうございます。
パンダなんか、もう要らないよ。子供産まれたら取り上げたり。でも王毅氏は手ぶらで来たのか?対中は、危険要因てんこ盛りです。まずは尖閣諸島での狼藉、大和堆でのメチャクチャな収穫、日本漁船はスルメイカの収穫減ってます。逆に日本漁船が怖がって逃げる騒動を起こしている。
更に香港問題、ウイグル自治区での「民族浄化」、トドメは武漢肺炎ウイルスについて、意図的に拡散させた凶悪犯罪。
茂木外務大臣も外務省も塩対応になるでしょう。両手上げて訪日を喜んでる日本人はいません。「何しに来た?」です。ただ単に菅総理に会う事と米国の大統領選の件、TPP参加ぐらいです。電話で済む(笑)。
パンダの子はパンダ。中華人民共和国のものです。
命名は公募の必要すらありません。「せんせん」「かくかく」略して「せんかく」に決まっているではありませんか。
はにわファクトリー様
ナイスです〜!センセンカクカク(笑)。ネーミングしてあげたから、持って帰りなさい。
「せんせん」「かくかく」は、石原慎太郎元都知事の発案だったと記憶します。夭折した双子?パンダにそう名付けてはと当時そうおっしゃってました。
パンダを飼う金があったら、日本ツキノワグマを保護して数を増やすべきなのではありませんか。日台友好の徴として台湾ツキノワグマとツーショット。
更新ありがとうございます。
検疫絡みの話以外中身はない結果になりそうですね。
塩の巨大結晶食わせるくらいの対応を貫徹して欲しいものです。